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未遂 - Wikipedia

未遂みすい(みすい)とは、狭義きょうぎには犯罪はんざい実行じっこうへの着手ちゃくしゅがあったが、行為こういしゃ本人ほんにん意思いしもとづかない外部がいぶてき障害しょうがいによってこれを完成かんせいしなかった場合ばあい障害しょうがい未遂みすい)をいう[1]。また、広義こうぎには自己じこ意思いしによって犯罪はんざい中止ちゅうしした場合ばあい中止ちゅうし未遂みすい中止ちゅうしはん)をふく[2]対義語たいぎご既遂きすい

概説がいせつ

本来ほんらい刑罰けいばつ法規ほうき基本きほんてき構成こうせい要件ようけん既遂きすいはん予定よていしてつくられているものである[2]未遂みすいはんはこのような基本きほんてき構成こうせい要件ようけん修正しゅうせいして既遂きすいいたぜん段階だんかい一定いってい行為こういについてそれ自体じたい処罰しょばつするものである[3]

結果けっか責任せきにん主義しゅぎをとっていたふる刑法けいほう時代じだいには現実げんじつ発生はっせいした結果けっかへの責任せきにんうことでりた[4]未遂みすいという概念がいねん発達はったつするのは中世ちゅうせいのイタリア法学ほうがくにおいてであり、カロリーナ刑事けいじ法典ほうてんでは既遂きすいはんよりもかるばっせられるべきむねさだめられていた[4]

実行じっこう開始かいし実行じっこう着手ちゃくしゅ)がありながら既遂きすいいたらない行為こうい未遂みすいとする現代げんだいてき意味いみでの未遂みすいはん概念がいねんは、1810ねん制定せいていされたフランスけい法典ほうてん2じょう由来ゆらいし、1871ねんのドイツけい法典ほうてん継受けいじゅされたことにはじまる[4]

近代きんだい学派がくは立場たちばでは犯罪はんざい行為こういしゃ危険きけんてき性格せいかく発現はつげんとみることから、未遂みすいはん処罰しょばつ根拠こんきょについても行為こういしゃ法敵ほうてきたいてき意思いし発現はつげんにあるから行為こういしゃ意思いし差異さいがない以上いじょう未遂みすいはん既遂きすいはん同様どうよう処罰しょばつすべきであるとするのにたいし、古典こてん学派がくは立場たちばでは犯罪はんざい行為こうい客観きゃっかんてき側面そくめん基準きじゅんかんがえるべきとし、構成こうせい要件ようけんてき結果けっか発現はつげんする危険きけん増大ぞうだいしたがって予備よびよりも未遂みすい未遂みすいよりも既遂きすいほうおも罪責ざいせきわれるべきであるとする[5][6]

なお、未遂みすいはん不能ふのうはん区別くべつ問題もんだいについては不能ふのうはん参照さんしょう

日本にっぽんほう

未遂みすいはん態様たいよう処罰しょばつ

未遂みすいはんについて日本にっぽんほうでは刑法けいほう43じょう規定きていがある。

刑法けいほうだい43じょう未遂みすい減免げんめん
犯罪はんざい実行じっこう着手ちゃくしゅしてこれをげなかったものは、そのけいげんけいすることができる。ただし、自己じこ意思いしにより犯罪はんざい中止ちゅうししたときは、そのけいげんかるし、また免除めんじょする。

未遂みすいのうち、自己じこ意思いしによって中止ちゅうししたもの(刑法けいほう43じょう後段こうだん)が中止ちゅうし未遂みすい、これ以外いがい未遂みすい障害しょうがい未遂みすいにあたる。

未遂みすいはん一般いっぱんてきあつかいは「げんけいすることができる」ということであるが(裁量さいりょうてきげんけい規定きてい)、とくに「自己じこ意思いしにより犯罪はんざい中止ちゅうししたとき」(中止ちゅうし未遂みすい)については、「げんかるし、また免除めんじょする」とさだめられており必要ひつようてき減免げんめんしなければならない(必要ひつようてき減免げんめん規定きてい)。

未遂みすいはん処罰しょばつについて日本にっぽんほうでは刑法けいほう44じょうで「未遂みすいばっする場合ばあいは、かく本条ほんじょうさだめる」と規定きていしており、具体ぐたいてきに「未遂みすいばっする」という規定きていがある場合ばあいにのみ処罰しょばつされる。

障害しょうがい未遂みすい要件ようけん

犯罪はんざい実行じっこう着手ちゃくしゅ

犯罪はんざい実行じっこう着手ちゃくしゅ」の意味いみについては主観しゅかんせつ客観きゃっかんせつ対立たいりつがある[7]

主観しゅかんせつ近代きんだい学派がくは
行為こういしゃ犯罪はんざいてき意思いし基準きじゅんとして実行じっこう着手ちゃくしゅ認定にんていする学説がくせつ主観しゅかんせつでは外部がいぶてき客観きゃっかんてき行為こうい故意こい認識にんしきするための手段しゅだんとみるにすぎない[7]
主観しゅかんせつたいしては行為こうい客観きゃっかんてき意味いみ考慮こうりょすべきで犯罪はんざい意思いしへの偏重へんちょうただしくないという批判ひはんがある[8]
客観きゃっかんせつ古典こてん学派がくは
犯罪はんざい行為こうい客観きゃっかんてき側面そくめん基準きじゅんとして実行じっこう着手ちゃくしゅ認定にんていする学説がくせつ
形式けいしきてき客観きゃっかんせつ
犯罪はんざい構成こうせい要件ようけん基準きじゅんとして実行じっこう着手ちゃくしゅ認定にんていする学説がくせつ
実質じっしつてき客観きゃっかんせつ
法的ほうてき侵害しんがい現実げんじつてき危険きけんせい有無うむ基準きじゅんとして実行じっこう着手ちゃくしゅ認定にんていする学説がくせつ
折衷せっちゅうせつ
主観しゅかんせつでも行為こういしゃ主観しゅかんはなれた客観きゃっかんてき行為こうい予定よていされ、客観きゃっかんせつでも基本きほんてき構成こうせい要件ようけんについての構成こうせい要件ようけんてき故意こい必要ひつようであるから、りょうせつ区別くべつ実益じつえきはないとして行為こうい主観しゅかん客観きゃっかんりょう側面そくめんから実行じっこう着手ちゃくしゅ認定にんていする学説がくせつ[9]

犯罪はんざいげなかったこと

未遂みすいはん犯罪はんざい基本きほんてき構成こうせい要件ようけん完全かんぜん充足じゅうそくされるにいたらなかった場合ばあい成立せいりつする[10]

実行じっこう行為こうい着手ちゃくしゅしたが実行じっこう行為こうい完了かんりょうしなかった場合ばあい着手ちゃくしゅ未遂みすい実行じっこう行為こうい完了かんりょうしたが構成こうせい要件ようけんてき結果けっか発生はっせいしなかった場合ばあい実行じっこう未遂みすいかけこうはんまたは終了しゅうりょう未遂みすい)という[10]。ただし、着手ちゃくしゅ未遂みすい実行じっこう未遂みすい区別くべつ自体じたい刑法けいほうじょう重要じゅうよう意味いみたない[10](ともに障害しょうがい未遂みすい)。

中止ちゅうし未遂みすい要件ようけん

自己じこ意思いしにより犯罪はんざい中止ちゅうししたときは中止ちゅうし未遂みすいとなる(b:刑法けいほうだい43じょう後段こうだん)。

かく本条ほんじょうにおける未遂みすいはん処罰しょばつ規定きてい

刑法けいほう44じょうけて、未遂みすい処罰しょばつする場合ばあいにはかくしょうごとに別個べっこ規定きていかれており、とく重大じゅうだい犯罪はんざいについてはほぼすべてに未遂みすいざいばっする規定きていかれている。

未遂みすいばっする場合ばあい法文ほうぶんれいに、以下いかのようなケースがある(カッコない条文じょうぶん解説かいせつ原文げんぶんにはない)。

だい203じょう
だい199じょう殺人さつじんおよ前条ぜんじょう自殺じさつ関与かんよおよ同意どうい殺人さつじん)のつみ未遂みすいは、ばっする。
だい228じょう
だい224じょう未成年みせいねんしゃ略取りゃくしゅおよ誘拐ゆうかい)、だい225じょう営利えいり目的もくてきとう略取りゃくしゅおよ誘拐ゆうかい)、だい225じょうの2だいいちこう代金しろきん目的もくてき略取りゃくしゅとう)、だい226じょう国外こくがい移送いそう目的もくてき略取りゃくしゅとうならびに前条ぜんじょうだい1こうからだい3こうまでおよだいよんこう前段ぜんだん略取りゃくしゅしゃ収受しゅうじゅとう)のつみ未遂みすいは、ばっする。
だい243じょう
だい235じょう窃盗せっとう)からだい236じょう強盗ごうとう)まで、だい238じょう事後じご強盗ごうとう)からだい240じょう強盗ごうとう致死傷ちししょう)までおよだい241じょうだい3こう強盗ごうとう強制きょうせい性交せいこうとうおよどう致死ちし)のつみ未遂みすいは、ばっする。

脚注きゃくちゅう

  1. ^ 有斐閣ゆうひかく 法律ほうりつ用語ようご辞典じてん [だい3はん]』法令ほうれい用語ようご研究けんきゅうかい へん有斐閣ゆうひかく、2006ねんISBN 4-641-00025-5 704ぺーじ障害しょうがい未遂みすい」のこう
  2. ^ a b 大塚おおつかひとし 2008, p. 250.
  3. ^ 大塚おおつかひとし 2008, pp. 250–251.
  4. ^ a b c 大塚おおつかひとし 2008, p. 251.
  5. ^ 大塚おおつかひとし 2008, pp. 251–252.
  6. ^ こうくぼさだじん et al. 1983, pp. 161–162.
  7. ^ a b こうくぼさだじん et al. 1983, p. 161.
  8. ^ 大塚おおつかひとし 2008, p. 252.
  9. ^ こうくぼさだじん et al. 1983, p. 163.
  10. ^ a b c こうくぼさだじん et al. 1983, p. 165.

参考さんこう文献ぶんけん

  • 大塚おおつかひとし刑法けいほう概説がいせつ 総論そうろん だい4はん有斐閣ゆうひかく、2008ねん 
  • こうくぼさだじん石川いしかわざいあらわ奈良なら俊夫としお佐藤さとう芳男よしお刑法けいほう総論そうろんあおりん書院しょいん、1983ねん 

関連かんれん項目こうもく