桁けた橋きょう

桁けた橋きょう（けたばし、けたきょう）とは、横よこにかけた橋桁はしげたによって橋はし面めんを支ささえる方式ほうしきで作つくられた橋はしのことである。橋はしを支ささえるためにアーチなどの特別とくべつな構造こうぞう体たいを用もちいない橋はしであり、橋はしの途中とちゅうに橋脚きょうきゃくを設もうける場合ばあいと設もうけない場合ばあいがある。英語えいごの Girder bridge からガーダー橋きょうとも言いい、日本語にほんごの「ガード」はこれに由来ゆらいする^[1]^[2]^[3]^{[注釈ちゅうしゃく 1]}。また、日本にっぽんで古ふるくから広ひろく親したしまれてきた丸太まるた橋はしも桁けた橋きょうの一種いっしゅとしてみてもよい^[4]。

構造こうぞう

桁けた橋きょうは両りょう端はしを橋脚きょうきゃくが支ささえる水平すいへい部材ぶざいで構成こうせいされている。桁けたの重量じゅうりょうに桁けた上じょうを移動いどうする物体ぶったいの重量じゅうりょうが加くわわって垂直すいちょく力りょくが生うまれ、その力ちからは建築けんちく物ぶつを伝つたわり橋脚きょうきゃくに支ささえられる^[5]。桁けた橋きょうは支ささえ間あいだ（支ささえ承うけたまわと支ささえ承うけたまわの間あいだ）をあまり長ながくできないので、長ながい桁けた橋きょうでは橋脚きょうきゃくを多おおく立たててつないでいく。これには、1本ほんの桁けたを2個この支点してんで支ささえる単純たんじゅん桁けた橋きょうを連つらねる方法ほうほうと、1本ほんの桁けたを3個こ以上いじょうの支点してんで支ささえる連続れんぞく桁けた橋きょうがある。単純たんじゅん桁けた橋きょうは構造こうぞう計算けいさんが簡単かんたんなのが利点りてんである。一方いっぽう、連続れんぞく桁けた橋きょうは構造こうぞう計算けいさんは複雑ふくざつになるが、同おなじ断面だんめんの単純たんじゅん桁けた橋きょうよりも長ながい支ささえ間あいだとすることが可能かのうである。副次的ふくじてきな効果こうかとして床板とこいたのつなぎ目めが少すくなくなるため、車両しゃりょうで渡わたる際さいの乗のり心地ごこちが良よくなる。また、地震じしんなどで橋脚きょうきゃくの間隔かんかくが拡ひろがってしまった場合ばあい、単純たんじゅん桁けた橋きょうでは桁けたが落おちてしまうが、連続れんぞく桁けた橋きょうではその可能かのう性せいは低ひくい^[6]。さらに連続れんぞく桁けた橋きょうの構造こうぞうから単純たんじゅん桁けた橋きょうよりも丈夫じょうぶさが増まし、材料ざいりょうを節約せつやくすることもできる^[7]。鉄道てつどう・道路どうろなど様々さまざまな高架こうか線せんには桁けた橋きょうがよく用もちいられるが、近年きんねんでは連続れんぞく桁けた橋きょうが多おおい。

他たの形式けいしきと比くらべると強度きょうどを保たもつために材料ざいりょうが多おおくなり、橋脚きょうきゃくを余計よけいに必要ひつようとする。そのため、大型おおがたの橋はしには適てきさない。しかし単純たんじゅんさゆえの利点りてんもあり、最近さいきんではかなり大型おおがたの橋はしにも桁けた橋きょうが採用さいようされている。

橋脚きょうきゃくを建たてづらい中央ちゅうおう部ぶではトラスやアーチなど別べつの構造こうぞうを採用さいようして支ささえ間あいだを長ながく取とり、橋脚きょうきゃくを建たてやすい周辺しゅうへん部ぶでは単純たんじゅん桁けた橋きょうを連つらねる構造こうぞうの橋はしも多おおい。

片方かたがたの桁けたを橋脚きょうきゃくより伸のばしてカンチレバーとし、支持しじ受うけを設もうけそこに桁けたを乗のせる構造こうぞうの橋はしをゲルバー橋きょうと呼よび、桁けた橋きょうであればゲルバー桁けた橋きょうとなる。

単純たんじゅん桁けた橋きょう
箱はこ桁けた橋きょうの構造こうぞう
単線たんせん上路あげろデッキガーダー橋きょう（単純たんじゅん桁けた橋きょう）島原しまばら鉄道てつどう。中央ちゅうおうの橋脚きょうきゃくの両側りょうがわに高たかさの違ちがう2本ほんの桁けた橋きょうが架かかっている。
単線たんせん下か路ろスルーガーダー橋きょう島原しまばら鉄道てつどう。スルーガーダーとすることにより、両りょう端はしの橋桁はしげたのみで支ささえることが可能かのう。
大だい規模きぼなコンクリート連続れんぞく箱ばこ桁けた橋きょう（信越しんえつ大橋おおはし）
ゲルバー桁けた橋きょうの例れい（相模さがみ大橋おおはし）

桁けた橋きょうの部材ぶざい

桁けた橋きょうは主しゅとして、車両しゃりょうや橋はし自身じしんの重おもさ（荷重かじゅう）などに主しゅとして抵抗ていこうする主しゅ桁けたと路面ろめんを直接ちょくせつ支ささえる床ゆか版ばんからなる。桁けた橋きょうでは「曲きょくげ」によるたわみが発生はっせいし、主しゅ桁けた内部ないぶの上側うわがわに圧縮あっしゅく応力おうりょくが発生はっせい、下した側がわに引張ひっぱ応力おうりょくが発生はっせいする。したがって上部じょうぶの圧縮あっしゅく力りょくに強つよい鉄筋てっきんコンクリート床ゆか版ばんに桁けたの力ちからも分担ぶんたんさせることが多おおい。主しゅ桁けたは引張ひっぱり力りょくに強つよい鋼材こうざいかプレストレスト・コンクリートにする。桁けたはI形かたちやT形かたちあるいは箱はこ形がたなど、より少すくない材料ざいりょう（断だん面積めんせき）で十分じゅうぶんな剛性ごうせい（断面だんめん2次じモーメント）を確保かくほできるような形状けいじょうが選えらばれる。床ゆか版ばんは鉄筋てっきんコンクリート床ゆか版ばんの他ほか、より強度きょうどが必要ひつようなときはプレストレスト・コンクリート床ゆか版ばんが用もちいられるほか、施工しこう期間きかんの短縮たんしゅくや薄型うすがた化かが求もとめられる場合ばあいには鋼はがね床ゆか版ばんも使つかわれる。他たに以下いかの補助ほじょ材ざいが適宜てきぎ用もちいられる。主しゅ桁けた間あいだが適切てきせつに荷重かじゅうを分担ぶんたんできるようにする横よこ桁けたや縦たて桁けた、橋はしの立体りったい的てきな形状けいじょうを保たもち、風ふうによる横よこ方向ほうこうの荷重におもに抵抗ていこうする横よこ構（よここう）や対たい傾かたぶけ構（たいけいこう）、座ざ屈こごめを防止ぼうしする補ほ剛ごう材ざい（ほごうざい）など多数たすうの部材ぶざいがある。

一般いっぱんに長ちょう支ささえ間あいだの桁けた橋きょうほど複雑ふくざつな構造こうぞうになる傾向けいこうがある。一方いっぽうで短たん支ささえ間あいだの桁けた橋きょうには薄うすい主しゅ桁けたと床ゆか版ばんが一体いったい構造こうぞうになった「床ゆか版ばん橋きょう」と呼よばれる形式けいしきがある。

ギャラリー

鈑桁橋きょう（瑞雲ずいうん橋きょう）
箱はこ桁けた橋きょう（阿賀野川あがのがわ大橋おおはし）

脚注きゃくちゅう

[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]

注釈ちゅうしゃく

^ 各かく辞書じしょとも和製わせい英語えいごとはしておらず、goo辞書じしょでは「ガーダーの訛なまったもの」と解説かいせつしている。

出典しゅってん

^ 精選せいせん版ばん日本にっぽん国語こくご大だい辞典じてん. “ガード”. コトバンク. 2022年ねん8月がつ24日にち閲覧えつらん。
^ “ガード”. Weblio. 2022年ねん8月がつ24日にち閲覧えつらん。
^ “ガード”. goo辞書じしょ. 2022年ねん8月がつ24日にち閲覧えつらん。
^ 倉くら西にし茂しげる・中村なかむら俊一しゅんいち編へん『最新さいしん橋きょう構造こうぞう第だい3版はん』森北もりきた出版しゅっぱん、2004年ねん3月がつ、65-72頁ぺーじ。
^ 中井なかい博ひろし・北田きただ俊行としゆき編へん『新編しんぺん橋梁きょうりょう工学こうがく』共立きょうりつ出版しゅっぱん株式会社かぶしきがいしゃ、2003年ねん12月がつ10日とおか、116-118頁ぺーじ。
^ 土木どぼく学会がっかい関西かんさい支部しぶ編へん『図解ずかい・橋はしの科学かがくなぜその形かたちなのか？どう架かけるのか？』講談社こうだんしゃ〈ブルーバックス B-1676〉、2010年ねん3月がつ20日はつか、39頁ぺーじ。ISBN 978-4-06-257676-5。
^ エドワード・デニソン・イアン・スチュアート編へん『橋はしの形かたちを読よみ解とく』産さん調ちょう出版しゅっぱん、2012年ねん10月がつ1日にち、96-97頁ぺーじ。