標本化定理は、フーリエ級数を用いると簡単に証明することができる。
理想的な標本化パルス列s(t)は、Tをサンプリング周期とし、デルタ関数 を用いて、
と表される。標本化入力信号をg(t)とすると、出力信号p(t)は
であるから、
となり、明らかにg(nT)の系列となる。
ここで、出力信号p(t)の周波数成分を計算するためにs(t)をフーリエ級数展開すると、
となる。ただし、 である。
扱いを容易にするために入力信号g(t)は振幅A、周波数 の単一正弦波として次のように置く。
これに対する出力信号p(t)は、上の式より
となる。この式から周波数スペクトルの図を描き検討すると証明ができる。
抵抗と電圧のゆらぎについてのナイキストの定理
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標本化定理はハリー・ナイキストが1928年に予想しており、これに対して1949年のクロード・シャノンの証明が有名である。そのため、シャノンの標本化定理やナイキスト=シャノンの標本化定理と呼ばれることが多い。
しかし、その後の研究で、シャノンとは独立に標本化定理を証明していた人物が次々と見つかった。ソビエト連邦のウラジーミル・コテルニコフ(1935年)、ドイツのH.P.ラーベ(1938年)、日本の染谷勲(1949年)の論文が発見され、それぞれ標本化定理を証明した数学者として取り上げられた。このうちコテルニコフは1999年にドイツのエドゥアルト・ライン財団から「標本化定理を最初に証明した」として基礎研究賞を受賞している。
また、標本化定理の展開式と同じものを補間法の公式として、イギリスのエドマンド・テイラー・ホイッテーカーが1915年に証明している。そのため、ホイッテーカーも標本化定理の証明者としてみなされる場合がある。またホイッテーカーの証明方法からの日本の小倉金之助の論文(1920年)が、世界で最初の標本化定理の証明であると、2011年にブッツァーらによって発表されている。
- ^ 『物理学辞典』 培風館、1984年