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不定積分 - Wikipedia

不定ふてい積分せきぶん

微分びぶんぎゃく操作そうさ
積分せきぶん定数ていすうから転送てんそう

関数かんすう不定ふてい積分せきぶん(ふていせきぶん)という用語ようごにはつぎげるよん種類しゅるい意味いみもちいられる場合ばあいがある。

(ぎゃく微分びぶん) 0)
微分びぶんぎゃく操作そうさ意味いみする:すなわち、あたえられた関数かんすう連続れんぞくであるとき、微分びぶんするとその関数かんすう一致いっちするようなあらたな関数かんすう原始げんし関数かんすう)をもとめる操作そうさのこと、およびその原始げんし関数かんすう全体ぜんたい(集合しゅうごう)[ちゅう 1]ぎゃく微分びぶんantiderivative)とう(積分せきぶん定数ていすう無視むしする)。
(積分せきぶんろん) 1)
一変いっぺんすう関数かんすう f(x)たいして、定義ていぎ域内いきない任意にんいの閉区あいだ [a, b] うえてい積分せきぶんF(b) − F(a)一致いっちする関数かんすう F(x)関数かんすう f(x)不定ふてい積分せきぶん (indefinite integral) とう。
(積分せきぶんろん) 2)
一変いっぺんすう関数かんすう定義ていぎ域内いきない定数ていすう a から変数へんすう x までの(端点たんてん定数ていすうでない)積分せきぶんあたえられる関数かんすう関数かんすう f(x)a基点きてんとする不定ふてい積分せきぶん (indefinite integral with base point a) とう。
(積分せきぶんろん) 3)
ルベーグ積分せきぶんろんにおいて定義ていぎ域内いきないはか集合しゅうごう変数へんすうとし、変数へんすうとしての集合しゅうごうじょうでの積分せきぶんとする集合しゅうごう関数かんすう関数かんすう f集合しゅうごう関数かんすうとしての不定ふてい積分せきぶん (indefinite integral as a set-function) とう。

文献ぶんけんによって、ぎゃく微分びぶん意味いみで「不定ふてい積分せきぶん」をあつかっている場合ばあいと、上述じょうじゅつ積分せきぶんろん1〜3の意味いみあつかっている場合ばあいがあり、注意ちゅういようする。たとえば岩波いわなみ数学すうがく辞典じてんでは後者こうしゃ積分せきぶんろんにおける不定ふてい積分せきぶん記述きじゅつされている。ただしこれらはそれぞれ無関係むかんけいではなく、後述こうじゅつするように、たとえば (積分せきぶんろん) 1) は (積分せきぶんろん) 3) をすう直線ちょくせんじょうかんがえたものであって (ぎゃく微分びぶん) 0) と同等どうとうとなるべきものであり、(積分せきぶんろん) 2) は本質ほんしつてきには (積分せきぶんろん) 1) や (積分せきぶんろん) 3) の一部分いちぶぶんなすことができる。また (積分せきぶんろん) 2) から (ぎゃく微分びぶん) 0) をることもできるが、この対応たいおう一般いっぱんにはぜんしゃでもたんしゃでもない。これ以後いご、この項目こうもくかんがえる積分せきぶんは、とく指定していがないかぎり、リーマン積分せきぶんであるものとする。

また後述こうじゅつするように、(積分せきぶんろん) の意味いみ不定ふてい積分せきぶん連続れんぞくでない関数かんすう一般いっぱんすると、不定ふてい積分せきぶん通常つうじょう意味いみでの原始げんし関数かんすうとなるとはかぎらなくなり、(初等しょとう数学すうがく) と一致いっちしなくなるのだが、連続れんぞく関数かんすうたいしてはほぼ一致いっちする概念がいねんであるため、しばしば混同こんどうしてもちいられる。

ぎゃく微分びぶん定義ていぎ

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関数かんすう f(x) (積分せきぶんされる関数かんすうという意味いみ積分せきぶん関数かんすうという) があたえられたとき、微分びぶん方程式ほうていしき  かいとなる関数かんすう F(x) 各々おのおのである特殊とくしゅかいf(x)原始げんし関数かんすうといい、かいとなる関数かんすう F(x) 全体ぜんたいである一般いっぱんかいf(x)ぎゃく微分びぶんとしての不定ふてい積分せきぶん という。原始げんし関数かんすうという言葉ことばアドリアン=マリ・ルジャンドルによる[1]

関数かんすう f(x)不定ふてい積分せきぶんは、端点たんてん指定していしないリーマン積分せきぶん記法きほうライプニッツ記法きほう)をもちいて

 

のようにあらわされる。この表記ひょうきピエール・ド・フェルマーによる[1]定義ていぎから、不定ふてい積分せきぶんひとつの関数かんすうあらわすものではないことに注意ちゅういすべきである (実際じっさいいちかい微分びぶん方程式ほうていしき一般いっぱんかいなのであるから、すくなくともひとつの積分せきぶん定数ていすうばれる任意にんい定数ていすうふくむ)。ただし、実用じつようじょう任意にんい定数ていすうめるごとに原始げんし関数かんすうひとあらわれるから、あたかもひとつの関数かんすうであるかのようにあつかうことができる。

不定ふてい積分せきぶん定義ていぎ

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不定ふてい積分せきぶん

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閉区あいだじょう積分せきぶん関数かんすう f(x)定義ていぎ域内いきない任意にんいの閉区あいだ [a, b]たいして、つぎ微分びぶん積分せきぶんがく基本きほん公式こうしきたす関数かんすう F(x)f(x)不定ふてい積分せきぶん という:

 

基点きてん不定ふてい積分せきぶん

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閉区あいだじょう積分せきぶん関数かんすう f(x)たいして、定義ていぎ域内いきない定数ていすう a から変数へんすう x までのてい積分せきぶん

 

f(x)a基点きてんとする不定ふてい積分せきぶん という。

集合しゅうごう関数かんすうとしての不定ふてい積分せきぶん

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ユークリッド空間くうかん  はか集合しゅうごう X におけるルベーグはか集合しゅうごうぞくルベーグ測度そくどのなす測度そくど空間くうかんじょうルベーグ積分せきぶん可能かのう関数かんすう fたいして、はか集合しゅうごう  変数へんすうとする集合しゅうごう関数かんすう

 

関数かんすう f集合しゅうごう関数かんすうとしての不定ふてい積分せきぶん という。このとき、 絶対ぜったい連続れんぞく完全かんぜん加法かほうてき集合しゅうごう関数かんすうとなる。

ぎゃく微分びぶん不定ふてい積分せきぶんてい積分せきぶんとの関係かんけい

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f(x) を閉区あいだじょう連続れんぞく関数かんすうとする。このとき、不定ふてい積分せきぶんぎゃく微分びぶんつぎ意味いみ対応たいおうする。

不定ふてい積分せきぶんからぎゃく微分びぶん

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連続れんぞく関数かんすう f(x)たいして、微分びぶん積分せきぶんがく基本きほん定理ていりだいいち基本きほん定理ていり)から

 

つから、a基点きてんとする不定ふてい積分せきぶんあたえられる関数かんすう  f(x)原始げんし関数かんすうのひとつである。

さらに不定ふてい積分せきぶん F(x)定義ていぎから、 a基点きてんとする不定ふてい積分せきぶん  一致いっちするから、f(x)原始げんし関数かんすうのひとつであり、したがって   もそうである。

ぎゃく微分びぶんから不定ふてい積分せきぶん

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ぎゃく連続れんぞく関数かんすう f(x)原始げんし関数かんすう F(x)あたえられれば、微分びぶん積分せきぶんがく基本きほん定理ていりだい基本きほん定理ていり)から、定義ていぎ域内いきない任意にんいの閉区あいだ [a, b]たいして 微分びぶん積分せきぶんがく基本きほん公式こうしき

 

成立せいりつするから、F(x)f(x)不定ふてい積分せきぶんである。

集合しゅうごう関数かんすうとしての不定ふてい積分せきぶんから基点きてん不定ふてい積分せきぶん

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n = 1X が閉区あいだとし、基点きてん aX固定こていする。 X うえ連続れんぞく関数かんすう f の「集合しゅうごう関数かんすうとしての不定ふてい積分せきぶん」とするとき、変数へんすう  たいして、  のとき   と、また   のとき  いてられる関数かんすう F(x) は、 たすから、f(x) の「 基点きてんとする不定ふてい積分せきぶん」をあたえる。

基点きてん不定ふてい積分せきぶんからぎゃく微分びぶん

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連続れんぞく関数かんすう f(x) の「 基点きてんとする不定ふてい積分せきぶん  は、基点きてん  定義ていぎ域内いきない任意にんい移動いどうさせることで「不定ふてい積分せきぶん」の部分ぶぶん集合しゅうごうあたえる。ただし、この対応たいおう一般いっぱんにはぜんしゃにもたんしゃにもならない。たとえば   という連続れんぞく関数かんすうかんがえた場合ばあい、その「不定ふてい積分せきぶん」は   であるが「 基点きてんとする不定ふてい積分せきぶん  からは  場合ばあいしかられず、おな あたえる  ふた存在そんざいする。

ぎゃく微分びぶんてい積分せきぶんとの関係かんけい

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てい積分せきぶんを、定義ていぎから直接ちょくせつにリーマン微小びしょう長方形ちょうほうけい面積めんせき総和そうわ)の極限きょくげんとしてもとめるのは非常ひじょう困難こんなんであるが、連続れんぞく関数かんすう不定ふてい積分せきぶん初等しょとう関数かんすうあらわせる場合ばあいは、微分びぶん積分せきぶんがく基本きほん公式こうしきもちいると単純たんじゅん計算けいさん問題もんだい帰着きちゃくさせることができる。

性質せいしつ

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以後いごほんこうではとくにことわらないかぎ関数かんすう連続れんぞく関数かんすうとし、「不定ふてい積分せきぶん」という用語ようごぎゃく微分びぶんという意味いみもちいる。

ひとつの連続れんぞく関数かんすうたいするふたつの原始げんし関数かんすう定数ていすうちがいしかなく、すべての変数へんすうこう一致いっちすることを証明しょうめい (黒丸くろまるしるしから開始かいし) する。 実際じっさい  を閉区あいだじょう連続れんぞく関数かんすう f(x)原始げんし関数かんすうのひとつとし、おな定義ていぎいきにおける f(x)ほか原始げんし関数かんすう   をとると、

 定数ていすう

たす適当てきとう定数ていすう  存在そんざいする。

  • 条件じょうけんより   であるから、平均へいきん定理ていりより  定数ていすうである。

ゆえに f(x)ぎゃく微分びぶんとしての不定ふてい積分せきぶん任意にんい定数ていすう  もちいて

 

くことができる。 ここで任意にんい定数ていすう  通常つうじょう積分せきぶん定数ていすうばれる。 したがってとく 基点きてんとする不定ふてい積分せきぶん任意にんい定数ていすう  もちいて

 

あらわすことができる。

一般いっぱん公式こうしき

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  •   (部分ぶぶん積分せきぶんほう
  •   (置換ちかん積分せきぶんほう
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有名ゆうめい関数かんすうたいする公式こうしき

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一般いっぱん

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はか関数かんすう不定ふてい積分せきぶん

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閉区あいだじょうのルベーグ積分せきぶん関数かんすう f(x)たいしても、定義ていぎ域内いきない定数ていすう  ひと固定こていするとき、任意にんい定数ていすう  もちいてあらわされる

 

f(x) 基点きてんとする不定ふてい積分せきぶんぶことができる。ただし、 場合ばあい  であり、 場合ばあい  である。このよう一般いっぱんかんがえた場合ばあいは、Cをとめるごとに、x連続れんぞく関数かんすうじつ絶対ぜったい連続れんぞくとなる)をあたえるが、F(x)かならずしも微分びぶん可能かのうではない。また、積分せきぶん測度そくど  集合しゅうごうじょうf(x)えたとしても変化へんかしないから、F(x)微分びぶん可能かのうてんにおいても、しるべ関数かんすうf(x)一致いっちするとはかぎらない。すなわち、このよう一般いっぱんかんがえた場合ばあいには、一般いっぱんには原始げんし関数かんすう不定ふてい積分せきぶんことなる概念がいねんとなる。

あるいはもし、原始げんし関数かんすう概念がいねんをもさらに一般いっぱんし、たとえばほとんどいたるところ微分びぶん可能かのうでそこでの微分びぶん係数けいすうf(x)一致いっちする連続れんぞく関数かんすう  原始げんし関数かんすうぶと、今度こんどふたつの原始げんし関数かんすう定数ていすうであることが一般いっぱんにはりたなくなり、微分びぶん積分せきぶんがく基本きほん公式こうしき成立せいりつしないことになる。実際じっさいカントール集合しゅうごうからつくられる単調たんちょう増加ぞうか関数かんすうであるカントール関数かんすうは、定数ていすう関数かんすうでないのに、恒等こうとうてき   をとる定数ていすう関数かんすうのここでの意味いみ原始げんし関数かんすうとなっている。ただしカントール関数かんすう絶対ぜったい連続れんぞくではなく、一般いっぱん原始げんし関数かんすうにさらに絶対ぜったい連続れんぞくせい要求ようきゅうするのであればこのようれい排除はいじょされる。

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ 不定ふてい積分せきぶんあるいは原始げんし関数かんすうもとめることを積分せきぶんするという

出典しゅってん

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  1. ^ a b 黒木くろきあきらとく『なっとくする数学すうがく記号きごう講談社こうだんしゃ〈ブルーバックス〉、2021ねん、79,216ぺーじISBN 9784065225509 

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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