積せき和わ演算えんざん

積せき和わ演算えんざん (せきわえんざん) は、演算えんざんのひとつで、積せきの和わを求もとめる、つまり乗算じょうざんの結果けっかを順次じゅんじ加算かさんする演算えんざんである。乗の累算るいさん (じょうるいざん) とも言いう。MAD/MADD (multiply-add) もしくは MAC/MACC (multiply-accumulate) と呼よばれることもある。演算えんざん式しきは以下いかのように表あらわされる。

$a\leftarrow a+b\times c$

積せき和わ演算えんざんはデジタル信号しんごう処理しょりにおいて非常ひじょうに多おおく使用しようされる演算えんざんで、デジタルシグナルプロセッサでは積せき和算わさん命令めいれいを1クロックで実行じっこうできる専用せんようの演算えんざん回路かいろを持もつ。また、1秒間びょうかんにこの積せき和わ演算えんざんを何なん回かい実行じっこうできるか、がプロセッサの性能せいのう指標しひょうとして使つかわれることもある。

なお、和わではなく差さを用もちいる場合ばあいは、積せき差さ演算えんざん（multiply-subtract）と呼よばれる。

$a\leftarrow a-b\times c$

積せき和わ演算えんざんはドット積せきの計算けいさんに現あらわれる。ベクトル ${\boldsymbol {v}}$ と ${\boldsymbol {w}}$ のドット積せきは「アキュムレータ $y$ に対たいし要素ようその積せき $v_{i}\times w_{i}$ を足たし込こむ」という積せき和わ演算えんざんを要素ようそ分ぶん繰くり返かえすことで得えられる。行列ぎょうれつ積せき（GEMM）の各かく要素ようそは行こうと列れつのドット積せきで計算けいさんされるため、行列ぎょうれつ積せきは積せき和わ演算えんざんの集あつまりと言いえる。

融合ゆうごう積せき和わ演算えんざん

積せき和わの演算えんざん式しきにおいて、途中とちゅうの積算せきさん$b\times c$の演算えんざん結果けっかを浮動ふどう小数点しょうすうてん数すうの値ねとしていったん丸まるめてしまうと、最終さいしゅう演算えんざん結果けっかに大おおきな誤差ごさが発生はっせいする。途中とちゅうの積算せきさんを丸まるめず、積せき和わ演算えんざんを1命令めいれいで行おこなってしまうことで、最終さいしゅう演算えんざん結果けっかの誤差ごさを小ちいさくするのが融合ゆうごう積せき和わ演算えんざん (fused multiply-add, FMA/FMAD) である。FMAはIEEE 754規格きかくの2008年ねん改訂かいてい版ばん (IEEE 754-2008) で標準ひょうじゅん化かされている。

CPUでは、HPのPA-RISC、IBMのメインフレームコンピュータ3090のVF拡張かくちょう、IBMのPowerプロセッサ、インテルのItaniumプロセッサ、インテルx86系けいプロセッサの拡張かくちょう命令めいれいであるFMA命令めいれいセット、ARMの拡張かくちょう命令めいれいであるVFPv4やNEONv2で、このFMA命令めいれいが実装じっそうされている。CPUやDSPに限かぎらず、GPU（NVIDIA製せいやAMD製せいやインテル製せいなど）でもFMA命令めいれいがサポートされている。

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