襟えり

襟えり・衿えり（えり）は、衣服いふくにおいて、首くびを取とり囲かこむ所ところにつけられている部分ぶぶん。英語えいごのカラー（collar）に相当そうとうするが、本来ほんらい、カラーは衣服いふくの身頃みごろとの接合せつごうとは関係かんけいなく頸部につける円筒えんとう状じょうの物ものの総称そうしょうをいう（後述こうじゅつ）。

襟えり
サー・アーサー・ミールジーナー・マイヤーズの肖像しょうぞうより

ワイシャツの襟えりより、上うえからラウンドカラー、レギュラーカラー、ショートポイントカラー、ボタンダウン、タブカラー、ウィングカラー

シャツの襟えりより、上うえからポロシャツ、ヘンリーネック、UネックのTてぃーシャツ

歴史れきし

江馬えま務つとむによると襟えりとは衣服いふくの端はし（縁辺えんぺん、へり）を指さす語かたりであるという。また、えりの漢字かんじには「襟えり」や「衿えり」がある。杉本すぎもと正ただし年ねんによると古代こだい中国ちゅうごくには襟えりの部分ぶぶんを表現ひょうげんする文字もじが多おおくあり当時とうじから襟えりの文化ぶんかが発達はったつしていたという。

一方いっぽう、英語えいごのカラー（collar）は本来ほんらいは材質ざいしつや衣服いふくの身頃みごろとの接合せつごうと関係かんけいなく、頸部につける円筒えんとう状じょうの物ものの総称そうしょうをいう。カラーは古代こだいエジプトでは最もっとも発達はったつした装身具そうしんぐであった。カラーには衣服いふくの身頃みごろと接合せつごうしておらず、スカーフカラー（Scarf collar）のように独立どくりつして着き装そうすることが可能かのうなものもあるが襟えりの分類ぶんるいから除外じょがいされることがある。なお、首くびに巻まくものは付つけ襟えりとも呼よばれている。

襟えりは諸しょ地域ちいきの衣服いふくで自然しぜん発生はっせいしたと考かんがえられているが、西洋せいようの服装ふくそう史しでは14世紀せいき後半こうはんのプールポワンの裁断さいだん図ずには襟えりが含ふくまれており、立体りったい裁断さいだんの発達はったつとともに複雑ふくざつ化か・洗練せんれん化かされた。

襟えりの機能きのう

襟えりと気候きこう

襟えりは衣服いふくの首くび回まわりに当あたる部分ぶぶんではあるが、その服飾ふくしょくが発達はったつした地域ちいきで様々さまざまな方向ほうこう性せいが模索もさくされ、日常にちじょう的てきに着きる衣服いふくでは、地域ちいきの気候きこう風土ふうどに即そくした発展はってんを見みせている。

襟えりと装飾そうしょく

襟えり回まわりは会話かいわの際さいに、相手あいての顔かおに次ついで良よく目めに入はいる場所ばしょである。このため衣服いふくにも装飾そうしょくや意匠いしょうが凝こらされる場合ばあいもある。

やや装飾そうしょくとは趣おもむきを異ことにするが、軍服ぐんぷくでは襟えりに階級かいきゅう章あきらなどを添付てんぷする場合ばあいがあり、それらは襟章えりしょうと呼よばれる。その一方いっぽうで議員ぎいん記章きしょう（いわゆる「議員ぎいんバッジ」）など社会しゃかい的てき役職やくしょくを示しめすバッジ（ないしメダル）を飾かざる場合ばあいもある。

襟えりの構造こうぞう

襟えり腰こしと襟えり幅はば

折おり返かえされた衿えりにより頸部に沿そって立たつ部分ぶぶんを襟えり腰こし（衿えり腰こし）という。襟えり幅はば（衿えり幅はば）は立たち襟えりの衣服いふくでは頸部に沿そって立たつ部分ぶぶん（のぼり代だい）をいう。また、折おり襟えりの衣服いふくでは頸部に沿そって立たつ襟えり腰こしまで含ふくめて襟えり幅はばという場合ばあいと、襟えり腰こしと区別くべつして折おり返がえった部分ぶぶんのみを襟えり幅はばという場合ばあいがある。

ラペル

衣服いふくの襟えりと前ぜん身頃みごろは接合はぎあわしているが、襟えりが折おり返がえりそれとともに転てんじている前ぜん身頃みごろの部分ぶぶんをラペルという。下した襟えりともいう。

襟えりの分類ぶんるい

構造こうぞう上じょうの分類ぶんるい

襟えりは頸部に沿そって立たつ立たち襟えり（立たち衿えり）、折おり返かえされている折おり襟えり（折おり衿えり）、前まえに開ひらいたラペルを構成こうせい要素ようそに含ふくむ開ひらき襟えり（開ひらき衿えり）に分類ぶんるいされる。

• 立たち襟えり（立たて襟えり）
  • 立体りったい構成こうせいには詰襟つめえり、スタンドカラー、マンダリンカラーなどがある（出典しゅってん参照さんしょう）。
    • 詰襟つめえり
    • スタンドカラー（stand collar）
    • マンダリンカラー（mandarin collar）
    • ミリタリーカラー（military collar）
    • 襞ひだ襟えり（ひだえり、ruff）
    • ピカデリーカラー（piccadilly collar）
    • ポークカラー（Poke collar）
    • グラッドストンカラー（Gladstone collar）
    • ジョニーカラー（Johnny collar）
    • バンドカラー（Band collar）
  • 平面へいめん構成こうせいには棒ぼう衿えり（ぼうえり）、広こう衿えり（ひろえり）、撥ばち衿えり（ばちえり）などがある。
• 折おり襟えり（折襟おりえり）
  • 折おり襟えりにはステンカラー、ロールカラー、ポロカラー、リングカラーなどがある（出典しゅってん参照さんしょう）。
    • ロールカラー（roll collar）
    • ポロカラー（polo collar）
    • コンバーチブルカラー（convertible collar）
    • リングカラー（ring collar）
    • フォーリング・バンド（falling band）
    • バーサカラー（bertha collar）
    • ピエロカラー（Pierrot collar）
    • ケープカラー（cape collar）
    • バスター・ブラウン・カラー（Buster Brown collar）
    • ピーターパンカラー（Peter Pan collar）
    • イートンカラー（eton collar）

女性じょせい服ふくのテーラードカラーの例れい

セーラーカラー

• 開ひらき襟えり（開襟かいきん）
  • 開ひらき襟えりにはテーラードカラー、アルスターカラー、ワイド・スプレッド・カラー、ウィングカラーなどがある（出典しゅってん参照さんしょう）。
    • テーラードカラー（tailored collar）
    • アルスターカラー（ulster collar）
    • ワイド・スプレッド・カラー（wide spread collar）
    • ウィングカラー（wing collar）

なお、ワイシャツやポロシャツなどに付つけられる台たい襟えりは立たち襟えりと折おり襟えりの複ふく合ごう形がたとされている。また、ショールカラー（shawl collar）やセーラーカラー（sailor collar）は折おり襟えりにも開ひらき襟えりにも分類ぶんるいすることができる。

構造こうぞう上じょうの分類ぶんるいではスタンダップ・カラー（スタンド・カラー、立たて衿えり）、フラット・フィッティング・カラー（フラット・カラー）、ロールド・カラーに分類ぶんるいされることもある。

パターンによる分類ぶんるい

襟えりはパターン（洋裁ようさい用よう型紙かたがみ）に開ひらいたときの形状けいじょうから、ストレート（直線ちょくせん的てき）、コンケープ状じょう、コンベックス状じょうに分類ぶんるいされる。

衣服いふくの種類しゅるいと襟えり

ワイシャツ

• ポロカラー（ボタンダウン）
• レギュラーカラー
• ワイドカラー

「ワイシャツ#襟えり」を参照さんしょう

和装わそう

• 地ち衿えり（じえり）
• 掛衿かけえり（かけえり）
• 半はん衿えり - 襦袢じばんに付つける、付つけ替かえの衿えり。

「長ちょう着ちゃく#衿えり」を参照さんしょう

その他たの襟えりの呼称こしょう

• ボートネック - ゆるやかな曲線きょくせんで横よこに広ひろくくられた、浅あさい船底ふなそこ形がたの衿えり。
• Uネック
• Vネック
• キーネック
• ハイネック
• とっくり襟えり（タートルネック）
• 丸首まるくび襟えり（クルー・ネック crew neck / フィッシャーマン・ネック）。
• ヘンリー・ネック (henley neck) - 前ぜん開ひらきでボタン留とめのクルー・ネック。オックスフォード州しゅうのヘンリーで行おこなわれたボートレースの選手せんしゅの着用ちゃくようした襟えり型がたが起源きげん。
• ドッグイヤーカラー - 犬いぬの耳みみに似にた襟えり、ボタンで閉とじればスタンドカラーになる。ドリズラーに使つかわれている。
• デタッチャブルカラー（[:en]） - 襟えりや袖口そでぐちがボタンで取とり外はずせるようになっている。

関連かんれん項目こうもく

• ワイシャツ#襟えりの種類しゅるい
• 長ちょう着ちゃく - 着物きものの衿えりについて。
• ホワイトカラー
• ブルーカラー
• ハイカラ
• en:Upturned collar
• 襟えりカラー

外部がいぶリンク

• ワイシャツの襟えり型がたについて