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音響外傷 - Wikipedia

音響おんきょう外傷がいしょう(おんきょうがいしょう、または音響おんきょうせい外傷がいしょう〈おんきょうせいがいしょう〉、Noise-induced hearing loss、Acoustic trauma)とは、強力きょうりょく音波おんぱによって内耳ないじ蝸牛かぎゅう障害しょうがい難聴なんちょうなどがしょうじる聴覚ちょうかく機構きこう損傷そんしょうけることである。音響おんきょうせい聴器障害しょうがいともばれる。原因げんいんとなってこったおと聴取ちょうしゅ可否かひかんする閾値上昇じょうしょう聴力ちょうりょく低下ていか)が、たとえ一部いちぶ周波数しゅうはすうであっても、正常せいじょう聴力ちょうりょくくらべて21dB以上いじょう上昇じょうしょうしたまま回復かいふくしない状態じょうたいのことをう。聴力ちょうりょく低下ていかは、一般いっぱん健康けんこう診断しんだん[1][2]の 1kHzきろへるつ , 4kHzきろへるつもちいる選別せんべつ聴力ちょうりょく検査けんさ(オージオメーター)をおこなことでスクリーニングされる[1]

みみ構造こうぞう断面だんめんしき

なお、剣道けんどう競技きょうぎしゃにみられる難聴なんちょう[3]感覚かんかく細胞さいぼう音圧おんあつによる外傷がいしょうせい機能きのう低下ていかではなく中枢ちゅうすう神経しんけい損傷そんしょうによるものとかんがえられている[4]

分類ぶんるい

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オージオメーターのれい

おとへの曝露ばくろ時間じかん継続けいぞく時間じかん)により、2つにけられる[5]

  1. 狭義きょうぎ音響おんきょう外傷がいしょう瞬間しゅんかんてきあるいはきわめてみじか時間じかん瞬間しゅんかんてき聴覚ちょうかく障害しょうがいされる[6]。かつては「騒音そうおんせい突発とっぱつ難聴なんちょう」とばれたこともある[7]
    • ばく発音はつおん銃火じゅうかエアバッグ[8]などが原因げんいんで、130dBでしべる(A)以上いじょう爆発ばくはつによる気圧きあつ外傷がいしょうとの鑑別かんべつ必要ひつよう自衛じえいかん[9]煙火えんか[10]
  2. 広義こうぎ音響おんきょう外傷がいしょう)コンサート難聴なんちょう、ディスコ難聴なんちょう[11][12]、ヘッドフォン難聴なんちょう[12]すうふんから数時間すうじかん程度ていど強大きょうだいおん曝露ばくろ[13]
    • その急性きゅうせい音響おんきょうせい難聴なんちょう。100〜120 dBでしべる(A)程度ていど強大きょうだいおんすうふんから数時間すうじかん曝露ばくろ[6]

症状しょうじょう

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耳鳴みみなり、聴力ちょうりょく低下ていかまれにふらつきや目眩めまい[14][5]

おと生体せいたいへの影響えいきょう

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産業さんぎょう医学いがくジャーナル Vol.38 職域しょくいきかす耳鼻咽喉科じびいんこうか最新さいしん知識ちしきより引用いんよう[14]

騒音そうおんレベル 生体せいたいへの影響えいきょう
3〜65 dBでしべる(A) 心理しんりてき影響えいきょう
65〜85 dBでしべる(A) 心理しんりてき影響えいきょう
生理せいり機能きのうおよぼす影響えいきょう
85〜120 dBでしべる(A) 心理しんりてき影響えいきょう
生理せいり機能きのうおよぼす影響えいきょう 内耳ないじ障害しょうがい
120〜 dB(A) 高度こうど内耳ないじ障害しょうがい

騒音そうおん環境かんきょう滞在たいざい就労しゅうろうするさいは、聴力ちょうりょく保護ほご防音ぼうおん保護ほごばれるみみせんやイヤーマフなどのおとげんじゃくさせる装具そうぐにつける[15]

治療ちりょう

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有効ゆうこう治療ちりょう方法ほうほう確立かくりつされていない。軽度けいど急性きゅうせい音響おんきょうせい聴器障害しょうがい投薬とうやく治療ちりょうにより軽快けいかいすることがある。

突発とっぱつせい難聴なんちょう同様どうようでステロイドけいこう炎症えんしょうやく、ビタミンざい代謝たいしゃ促進そくしんざい投与とうよおこなわれる[16][17]治療ちりょう効果こうか様々さまざまもと聴力ちょうりょく回復かいふくしない場合ばあいがある[18]動物どうぶつ実験じっけん(ラット)での結果けっかでは、軽度けいど障害しょうがいたいしてはステロイドは効果こうかったが音響おんきょう障害しょうがいおおきい場合ばあい効果こうかかったと報告ほうこくされている[19]
  • 狭義きょうぎ音響おんきょう外傷がいしょうのうち、曝露ばくろ音圧おんあつが 115dBSPL をえると内耳ないじ機械きかいてき障害しょうがいしょうじることおおく、ステロイドけいこう炎症えんしょうやくによる治療ちりょう効果こうかのぞめない[17]

出典しゅってん脚注きゃくちゅう

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  1. ^ a b 朝比奈あさひな紀彦のりひこ難波なんばげん黒田くろだいち ほか、騒音そうおん難聴なんちょう臨床りんしょうてき研究けんきゅう AUDIOLOGY JAPAN. 1994ねん 37かん 6ごう p.726-731, doi:10.4295/audiology.37.726
  2. ^ 朝比奈あさひな紀彦のりひこ, 内藤ないとう 陸奥むつおとこ, 飯田いいだ ゆうおこり ほか、一般いっぱん健康けんこう診断しんだんにおける騒音そうおんせい難聴なんちょう症例しょうれい検討けんとう AUDIOLOGY JAPAN. 1992ねん 35かん 4ごう p.385-386, doi:10.4295/audiology.35.385
  3. ^ 加藤かとう榮司えいじ, 東野とうの哲也てつや剣道けんどうによる聴覚ちょうかく障害しょうがい高等こうとう学校がっこう剣道けんどう部員ぶいんたいする18年間ねんかんにわたる聴覚ちょうかく健診けんしん成果せいか」『日本にっぽん耳鼻咽喉科じびいんこうか学会がっかい会報かいほうだい115かんだい9ごう日本にっぽん耳鼻咽喉科じびいんこうか学会がっかい、2012ねん、842-848ぺーじdoi:10.3950/jibiinkoka.115.842ISSN 0030-6622NAID 130003299258 
  4. ^ 研究けんきゅう題名だいめい剣道けんどう難聴なんちょう発生はっせいのメカニズム解明かいめいしん機能きのう防具ぼうぐ開発かいはつ 代表だいひょう研究けんきゅうしゃ:濱西はまにし伸治しんじ (PDF)
  5. ^ a b 和田わだ哲郎てつろう騒音そうおんせい難聴なんちょう最近さいきん知見ちけん (疫学えきがく, 基礎きそなど) 日本にっぽん耳鼻咽喉科じびいんこうか学会がっかい会報かいほう 2017ねん 120かん 3ごう p.252-253, doi:10.3950/jibiinkoka.120.252
  6. ^ a b 和田わだ哲郎てつろう佐野さの はじめ, 西尾にしお 信哉のぶや狭義きょうぎ音響おんきょう外傷がいしょうとその急性きゅうせい音響おんきょうせい難聴なんちょう治療ちりょう経過けいか AUDIOLOGY JAPAN. 2017ねん 60かん 5ごう p.359, doi:10.4295/audiology.60.359
  7. ^ 大橋おおはし正實まさみ土田つちた伸子のぶこ佐藤さとう信清のぶきよ ほか、騒音そうおんせい突発とっぱつ難聴なんちょう検討けんとう AUDIOLOGY JAPAN. 1985ねん 28かん 5ごう p.778-783, doi:10.4295/audiology.28.778
  8. ^ 野澤のざわ真理子まりこ野口のぐちけいひろしつつみつよしエアバッグによる音響おんきょう外傷がいしょういちれい AUDIOLOGY JAPAN. 2002ねん 45かん 6ごう p.692-696, doi:10.4295/audiology.45.692
  9. ^ 志多したとおる阿部あべのぼる高橋たかはし尚美なおみ ほか、音響おんきょう性急せいきゅう性感せいかんおん難聴なんちょういち症例しょうれい 耳鼻じび臨床りんしょう 1985ねん 31かん 6ごう p.1191-1195, doi:10.11334/jibi1954.31.6_1191
  10. ^ 奈波良一りょういち花火はなび健康けんこう 日本にっぽん健康けんこう学会がっかい雑誌ざっし 2012ねん 20かん 4ごう p.214-217, doi:10.20685/kenkouigaku.20.4_214
  11. ^ 中村なかむら賢二けんじ山本やまもと和久かずひさディスコ サウソドによる騒音そうおんせい突発とっぱつ難聴なんちょういち症例しょうれい 日本にっぽん耳鼻咽喉科じびいんこうか学会がっかい会報かいほう 1977ねん 80かん 7ごう p.729-731, doi:10.3950/jibiinkoka.80.729
  12. ^ a b 坪井つぼい康浩やすひろぎゅうさこ泰明やすあき春田はるたあつし ほか、騒音そうおんせい難聴なんちょう原因げんいん年次ねんじてき変化へんか AUDIOLOGY JAPAN. 1991ねん 34かん 5ごう p.605-606, doi:10.4295/audiology.34.605
  13. ^ 西川にしかわえき西川にしかわ恵子けいこロック音楽おんがくによる急性きゅうせい音響おんきょう外傷がいしょうれい 耳鼻咽喉科じびいんこうか臨床りんしょう 1992ねん 85かん 2ごう p.175-180, doi:10.5631/jibirin.85.175
  14. ^ a b 和田わだ哲郎てつろうはらあきら職域しょくいきかす耳鼻咽喉科じびいんこうか最新さいしん知識ちしき 騒音そうおんせい難聴なんちょう歴史れきし医学いがくてき社会しゃかいてき背景はいけい 産業さんぎょう医学いがくジャーナル Vol.38 No.6 2015
  15. ^ 江川えがわ義之よしゆき効果こうかてき聴力ちょうりょく保護ほご選定せんていほうについて 産業さんぎょう安全あんぜん研究所けんきゅうじょ 安全あんぜん衛生えいせいコンサルタント 2005/1がつ (PDF)
  16. ^ おも疾患しっかん-難聴なんちょう外来がいらい 東北大学とうほくだいがく病院びょういん 耳鼻咽喉じびいんこうとう頸部外科げかがく教室きょうしつ
  17. ^ a b 横井よこい尚子しょうこ石川いしかわ正治しょうじ加納かのう章子あきこ ほか、原著げんちょ急性きゅうせい音響おんきょう外傷がいしょうモデルにおけるデキサメタゾン室内しつない投与とうよによる聴性誘発ゆうはつ反応はんのう変化へんか じゅん天堂てんどう医学いがく 2003ねん 49かん 2ごう p.185-193, doi:10.14789/pjmj.49.185, NAID 110000184918
  18. ^ もりみつるたもて松元まつもと一郎いちろう落合おちあい洋一郎よういちろう ほか、音響おんきょう外傷がいしょう治療ちりょうにおける基礎きそ臨床りんしょう 耳鼻じび臨床りんしょう 1977ねん 23かん 6ごう p.781-785, doi:10.11334/jibi1954.23.6_781
  19. ^ 高橋たかはし和彦かずひこ木村きむら伸一しんいち和田わだ哲郎てつろう音響おんきょう外傷がいしょうにおけるメチルプレドニゾロンの治療ちりょう効果こうかについて AUDIOLOGY JAPAN. 1995ねん 38かん 4ごう p.291-297, doi:10.4295/audiology.38.291

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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