アメリカ海軍 かいぐん では、1940年代 ねんだい から海洋 かいよう における音波 おんぱ 伝搬 でんぱん の研究 けんきゅう に着手 ちゃくしゅ し、音源 おんげん の探知 たんち や位置 いち 極限 きょくげん に関 かん する実験 じっけん が行 おこな われた。この際 さい にモーリス・ユーイング 博士 はかせ たちが発見 はっけん したのが深海 ふかうみ サウンドチャネル (SOFAR channel ) であった。海中 かいちゅう での音速 おんそく は水温 すいおん ・塩分 えんぶん ・圧力 あつりょく の影響 えいきょう を受 う けるため、深海 ふかうみ 等温 とうおん 層 そう と主 あるじ 水温 すいおん 躍 おど 層 そう のあいだで、音速 おんそく が最小 さいしょう となる。この音速 おんそく 極小 きょくしょう 点 てん は、音 おと 線 せん (音 おと の伝播 でんぱ 経路 けいろ )に対 たい して一種 いっしゅ のレンズのように働 はたら くため、これを中心 ちゅうしん とした深海 しんかい サウンドチャネルのなかで放射 ほうしゃ されたエネルギーはチャネル内 ない に留 と まり、海面 かいめん や海底 かいてい への反射 はんしゃ による音響 おんきょう 的 てき 損失 そんしつ を生 しょう じにくい。このため、中 ちゅう 程度 ていど の音響 おんきょう 出力 しゅつりょく であっても、非常 ひじょう に長距離 ちょうきょり まで伝搬 でんぱん することができた。
これを活用 かつよう して、まず配備 はいび されたのがSOFAR(Sound Fixing and Ranging )システムであった。これは洋上 ようじょう で墜落 ついらく した飛行 ひこう 士 し の捜索 そうさく 救難 きゅうなん のためのシステムであり、墜落 ついらく した飛行 ひこう 士 し が爆発 ばくはつ させた小 ちい さな爆 ばく 弾 だん (Sofar bomb ) の音 おと をハイドロフォンで捉 とら えて、三角 さんかく 測量 そくりょう によって飛行 ひこう 士 し を発見 はっけん するというものであった。そしてまもなく、このシステムは潜水 せんすい 艦 かん の長距離 ちょうきょり 探知 たんち に応用 おうよう されるようになった。1949年 ねん 、海軍 かいぐん 研究 けんきゅう 試験 しけん 所 しょ (NRL ) は、カリフォルニア州 しゅう ポイント・スール 沖 おき のSOFARハイドロフォンによって潜水艦 せんすいかん を10–15海里 かいり (19–28 km)の距離 きょり で探知 たんち し、年末 ねんまつ までには探知 たんち 距離 きょり は数 すう 百 ひゃく 海里 かいり にまで延伸 えんしん された。
当時 とうじ 、ベルリン封鎖 ふうさ などを通 つう じて冷戦 れいせん 構造 こうぞう が顕在 けんざい 化 か しつつあり、ソ連 それん に対 たい する備 そな えの必要 ひつよう 性 せい が叫 さけ ばれていたが、ソ連 それん 海軍 かいぐん はズールー型 がた やウィスキー型 がた など、UボートXXI型 がた に範 はん をとった水中 すいちゅう 高速 こうそく 潜 せん の配備 はいび を進 すす めていたことから、対 たい 潜 せん 戦 せん 能力 のうりょく の整備 せいび には高 たか い優先 ゆうせん 度 ど が与 あた えられた。この一環 いっかん として、1950年 ねん からハートウェル計画 けいかく が発動 はつどう された。この研究 けんきゅう は、500ヘルツ以下 いか という超 ちょう 低 てい 周波 しゅうは を対象 たいしょう として、最低限 さいていげん 20波長 はちょう 以上 いじょう のソナー・アレイを作 つく り(500ヘルツなら60メートル、100ヘルツなら300メートル)、深海 ふかうみ サウンドチャネルを利用 りよう して長距離 ちょうきょり 探知 たんち を行 おこな うもので、リアルタイムでスペクトル分析 ぶんせき を行 おこな うことも提言 ていげん された。一方 いっぽう 、潜水艦 せんすいかん 開発 かいはつ グループからは、8分 ぶん の1オクターブのフィルターを使用 しよう した潜水艦 せんすいかん 探知 たんち や、100ヘルツをピークとして25ヘルツから200ヘルツという低 てい 周波 しゅうは の潜水 せんすい 艦 かん 音響 おんきょう 信号 しんごう の発見 はっけん が公表 こうひょう された。またベル研究所 けんきゅうじょ が参加 さんか したジェジベル計画 けいかく (Project Jezebel )では、低 てい 周波 しゅうは 音 おん の分析 ぶんせき および記録 きろく (low frequency analysis and recording, LOFAR )のためのパラメーターが明 あき らかにされ、分析 ぶんせき 幅 はば 1~0.5ヘルツのリアルタイム・スペクトル分析 ぶんせき 器 き が提案 ていあん された。
1951年 ねん には、バハマ ・エルーセラ島 とう にハイドロフォンをつけたブイ6つ(3つは水深 すいしん 12メートル、2つは293メートル、1つは305メートル)と、ハイドロフォン40個 こ から構成 こうせい される長 なが さ305メートルのリニアアレイ1つ(水深 すいしん 439メートル)が設置 せっち され、1952年 ねん 4月 がつ には、将官 しょうかん 達 たち の前 まえ でデモンストレーションを成功 せいこう させた。これを受 う けて、全米 ぜんべい 研究 けんきゅう 評議 ひょうぎ 会 かい 水中 すいちゅう 戦 せん 委員 いいん 会 かい はLOFARを潜水 せんすい 艦 かん 探知 たんち のブレークスルーと宣言 せんげん し、海軍 かいぐん はシーザー計画 けいかく を開始 かいし した。この計画 けいかく では、長距離 ちょうきょり 探知 たんち ・類別 るいべつ システムの製造 せいぞう ・設置 せっち についてベル研究所 けんきゅうじょ と契約 けいやく を締結 ていけつ し、この契約 けいやく をもって、システム名 めい はSOSUSと称 しょう されるようになった。
当初 とうしょ 計画 けいかく では、設置 せっち 場所 ばしょ は当初 とうしょ はセーブル島 とう 、ハッテラス岬 みさき 、バミューダ諸島 しょとう など大西洋 たいせいよう の6ヶ所 かしょ とされていた。1952年 ねん 9月 がつ には3ヶ所 かしょ 、1954年 ねん 1月 がつ には更 さら に3ヶ所 かしょ 増 ふ えて12ヶ所 かしょ となった。同年 どうねん 5月 がつ には太平洋 たいへいよう にも拡張 かくちょう されることになり、太平洋 たいへいよう 側 がわ には7基 き のアレイが設置 せっち された。またアルジェンシャには浅 あさ 深度 しんど の水中 すいちゅう 固定 こてい 聴音 ちょうおん 機 き が設置 せっち された。これらのシステムは1960年 ねん 末 まつ までに運用 うんよう 状態 じょうたい に移行 いこう した。また1962年 ねん には、バミューダ北西 ほくせい に22基 き 目 め のアレイが設置 せっち された。
シーザー計画 けいかく によって敷設 ふせつ されたシステムはSOSUSフェーズIと位置付 いちづ けられており、水深 すいしん 1,000尋 ひろ (1,818 m)に敷設 ふせつ された1,000フィート (300 m)長 ちょう のリニアアレイから構成 こうせい されていた。標準 ひょうじゅん 的 てき には、これらのアレイは40個 こ のハイドロフォンから構成 こうせい されており、幅 はば 5度 ど の音響 おんきょう ビームを形成 けいせい した。
当時 とうじ 、水上 みずかみ 航 わたる 走 はし やシュノーケル 航 こう 走 はし が不要 ふよう な原子力 げんしりょく 潜水 せんすい 艦 かん の配備 はいび が進展 しんてん したことで、レーダーやアクティブ・ソナーなどによる探知 たんち 可能 かのう 性 せい は極 きわ めて低 ひく くなっていたのに対 たい し、原子力 げんしりょく 潜水 せんすい 艦 かん は常 つね に原子 げんし 炉 ろ や蒸気 じょうき タービン からノイズを発生 はっせい するという特性 とくせい があり、パッシブ・ソナーによる聴知は有望 ゆうぼう と期待 きたい された。アメリカ海軍 かいぐん では、SOSUSと攻撃 こうげき 型 がた 原子力 げんしりょく 潜水 せんすい 艦 かん (SSN)、対 たい 潜 せん 哨戒 しょうかい 機 き によるパッシブ対 たい 潜 せん 戦 せん システム を構築 こうちく し、これに対抗 たいこう した。1961年 ねん には、アメリカからイギリスに航行 こうこう する原子力 げんしりょく 潜水 せんすい 艦 かん 「ジョージ・ワシントン 」を追尾 ついび して、まずその能力 のうりょく を実証 じっしょう した。1962年 ねん のキューバ危機 きき では、ソ連 それん 海軍 かいぐん のフォックストロット型 がた 潜水 せんすい 艦 かん の探知 たんち に成功 せいこう した。また1963年 ねん の「スレッシャー 」の喪失 そうしつ 、1968年 ねん の「スコーピオン 」の喪失 そうしつ の際 さい には、沈没 ちんぼつ 位置 いち 特定 とくてい にも重要 じゅうよう な役割 やくわり を果 は たした。
続 つづ いてフェーズIIとして、前方 ぜんぽう 地域 ちいき への展開 てんかい が着手 ちゃくしゅ された。これは1962年 ねん にアダック島 とう に配備 はいび された長距離 ちょうきょり 探知 たんち 用 よう OBOEアレイの成功 せいこう を踏 ふ まえたものであり、極東 きょくとう 、北大西洋 きたたいせいよう およびノルウェー海 うみ に配備 はいび された。1970年 ねん 初頭 しょとう には北 きた アメリカおよび西 にし ヨーロッパに追加 ついか のアレイが配備 はいび されたほか、同 どう 時期 じき には西太平洋 にしたいへいよう および中部 ちゅうぶ 太平洋 たいへいよう にもアレイが配備 はいび された。
しかしソビエト連邦 れんぽう は諜報 ちょうほう 活動 かつどう などによってこのパッシブ対 たい 潜 せん 戦 せん システムの重要 じゅうよう 性 せい に気 き づき、1970年代 ねんだい 中期 ちゅうき から、ヴィクターIII型 がた SSN(671RTM型 がた ) やチャーリーII型 がた SSGN(670M型 がた ) 、デルタ型 がた SSBN(667B型 がた ) など、対抗 たいこう 策 さく を講 こう じて静粛 せいしゅく 性 せい を格段 かくだん に向上 こうじょう させた潜水 せんすい 艦 かん の艦隊 かんたい 配備 はいび を開始 かいし した。またSOSUSアレイを回避 かいひ するなどの対抗 たいこう 戦術 せんじゅつ も出現 しゅつげん し、アメリカ軍 ぐん のパッシブ対 たい 潜 せん 戦 せん システムの効果 こうか は減殺 げんさい されはじめていた。このことから1984年 ねん から、SOSUSを補完 ほかん して機動 きどう 的 てき 運用 うんよう される広域 こういき 捜索 そうさく センサーとして、AN/UQQ-2 SURTASS が配備 はいび された。SOSUSとSURTASSの音響 おんきょう 信号 しんごう 処理 しょり は海軍 かいぐん 海洋 かいよう 信号 しんごう 処理 しょり 施設 しせつ (Naval Ocean Processing Facility, NOPF)で一元 いちげん 的 てき に行 おこな われており、1985年 ねん には、SOSUSとSURTASSの組 く み合 あ わせは、統合 とうごう 水中 すいちゅう 監視 かんし システム(IUSS )として認知 にんち された。
IUSSは、最盛 さいせい 期 き には16ヶ所 かしょ のSOSUSサイトと19隻 せき の音響 おんきょう 測定 そくてい 艦 かん (T-AGOS)、人員 じんいん 4,000名 めい を擁 よう していた。しかし冷戦 れいせん 終結 しゅうけつ を受 う けてソ連 それん 潜水 せんすい 艦 かん を探知 たんち する必要 ひつよう 性 せい は急激 きゅうげき に低下 ていか し、1989年 ねん から1993年 ねん の間 あいだ に予算 よさん は60パーセント削減 さくげん され、94年 ねん までに人員 じんいん は1,000名 めい 、サイトは4ヶ所 かしょ 、T-AGOSは8隻 せき にまで削減 さくげん された。ミッドウェーとハワイのセンサーは廃止 はいし され、サンニコラス島 とう のセンサーは科学 かがく 的 てき 研究 けんきゅう に開放 かいほう された。
2018年 ねん 現在 げんざい 、SOSUSは潜水艦 せんすいかん 探知 たんち というよりは、地震 じしん 学 がく や海洋 かいよう 哺乳類 ほにゅうるい の回遊 かいゆう 、地球 ちきゅう 温暖 おんだん 化 か といった海洋 かいよう 学 がく の研究 けんきゅう 、そして麻薬 まやく 密輸 みつゆ 阻止 そし といった法 ほう 執行 しっこう 機関 きかん のニーズに用 もち いられている。SOSUSが欠 か けたのちのIUSSは、SURTASSのほかにLFAとNDSで構成 こうせい されていると推定 すいてい されている。NDSは分散 ぶんさん 型 がた ネット・システムと称 しょう されており、SOSUSにかわる固定 こてい 型 がた センサーと考 かんが えられる。SOSUSのいくつかの監視 かんし 機能 きのう を備 そな えているが、陸上 りくじょう を介 かい さずに直接 ちょくせつ に洋上 ようじょう 艦艇 かんてい と交信 こうしん できるほか、音響 おんきょう 以外 いがい のセンサを搭載 とうさい しているという説 せつ もある。LFAは音響 おんきょう 測定 そくてい 艦 かん (T-AGOS)搭載 とうさい の大 だい 出力 しゅつりょく ・低 てい 周波 しゅうは アクティブ・ソナーである。
Friedman, Norman (1997). The Naval Institute guide to world naval weapon systems 1997-1998 . Naval Institute Press . ISBN 9781557502681
Urick, Robert J. 著 ちょ 、新家 にいのみ 富雄 とみお 編 へん 『水中 すいちゅう 音響 おんきょう 学 がく 改訂 かいてい 』三好 みよし 章夫 あきお 、京都 きょうと 通信 つうしん 社 しゃ 、2013年 ねん 。ISBN 978-4903473918 。
小林 こばやし , 正男 まさお 「現代 げんだい の潜水 せんすい 艦 かん 第 だい 23回 かい 」『世界 せかい の艦船 かんせん 』第 だい 880号 ごう 、海人 あま 社 しゃ 、2018年 ねん 6月 がつ 、141-147頁 ぺーじ 。
西沢 にしざわ , 優 ゆう 「システムとしての海上 かいじょう 自衛隊 じえいたい ASW」『世界 せかい の艦船 かんせん 』第 だい 432号 ごう 、海人 あま 社 しゃ 、1991年 ねん 2月 がつ 、76-81頁 ぺーじ 。
山崎 やまざき , 眞 しん 「水上 すいじょう 艦 かん と潜水 せんすい 艦 かん 今 いま どっちが優勢 ゆうせい か? (特集 とくしゅう 世界 せかい の水上 すいじょう 戦闘 せんとう 艦 かん その最新 さいしん 動向 どうこう )」『世界 せかい の艦船 かんせん 』第 だい 832号 ごう 、海人 あま 社 しゃ 、2016年 ねん 3月 がつ 、106-109頁 ぺーじ 、NAID 40020720360 。