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SOSUS - Wikipedia

SOSUS

アメリカ海軍かいぐん水中すいちゅう固定こてい聴音ちょうおんもちいた海洋かいよう監視かんしシステム

音響おんきょう監視かんしシステム英語えいご: Sound Surveillance System, SOSUS、ソーサス)は、アメリカ海軍かいぐん水中すいちゅう固定こてい聴音ちょうおん海底かいてい設置せっちされたパッシブ・ソナー)をもちいた海洋かいよう監視かんしシステム[1][2]

アメリカ海軍かいぐんでは、1940年代ねんだいから海洋かいようにおける音波おんぱ伝搬でんぱん研究けんきゅう着手ちゃくしゅし、音源おんげん探知たんち位置いち極限きょくげんかんする実験じっけんおこなわれた。このさいモーリス・ユーイング博士はかせたちが発見はっけんしたのが深海ふかうみサウンドチャネル (SOFAR channelであった。海中かいちゅうでの音速おんそく水温すいおん塩分えんぶん圧力あつりょく影響えいきょうけるため、深海ふかうみ等温とうおんそうあるじ水温すいおんおどそうのあいだで、音速おんそく最小さいしょうとなる[3]。この音速おんそく極小きょくしょうてんは、おとせんおと伝播でんぱ経路けいろ)にたいして一種いっしゅのレンズのようにはたらくため、これを中心ちゅうしんとした深海しんかいサウンドチャネルのなかで放射ほうしゃされたエネルギーはチャネルないまり、海面かいめん海底かいていへの反射はんしゃによる音響おんきょうてき損失そんしつしょうじにくい。このため、ちゅう程度ていど音響おんきょう出力しゅつりょくであっても、非常ひじょう長距離ちょうきょりまで伝搬でんぱんすることができた[4]

これを活用かつようして、まず配備はいびされたのがSOFAR(Sound Fixing and Ranging)システムであった。これは洋上ようじょう墜落ついらくした飛行ひこう捜索そうさく救難きゅうなんのためのシステムであり、墜落ついらくした飛行ひこう爆発ばくはつさせたちいさなばくだん (Sofar bombおとをハイドロフォンでとらえて、三角さんかく測量そくりょうによって飛行ひこう発見はっけんするというものであった[4]。そしてまもなく、このシステムは潜水せんすいかん長距離ちょうきょり探知たんち応用おうようされるようになった。1949ねん海軍かいぐん研究けんきゅう試験しけんしょ (NRLは、カリフォルニアしゅうポイント・スールおきのSOFARハイドロフォンによって潜水艦せんすいかんを10–15海里かいり (19–28 km)の距離きょり探知たんちし、年末ねんまつまでには探知たんち距離きょりすうひゃく海里かいりにまで延伸えんしんされた[2]

当時とうじベルリン封鎖ふうさなどをつうじて冷戦れいせん構造こうぞう顕在けんざいしつつあり、ソ連それんたいするそなえの必要ひつようせいさけばれていたが、ソ連それん海軍かいぐんズールーがたウィスキーがたなど、UボートXXIがたはんをとった水中すいちゅう高速こうそくせん配備はいびすすめていたことから、たいせんせん能力のうりょく整備せいびにはたか優先ゆうせんあたえられた。この一環いっかんとして、1950ねんからハートウェル計画けいかく発動はつどうされた。この研究けんきゅうは、500ヘルツ以下いかというちょうてい周波しゅうは対象たいしょうとして、最低限さいていげん20波長はちょう以上いじょうのソナー・アレイをつくり(500ヘルツなら60メートル、100ヘルツなら300メートル)、深海ふかうみサウンドチャネルを利用りようして長距離ちょうきょり探知たんちおこなうもので、リアルタイムでスペクトル分析ぶんせきおこなうことも提言ていげんされた。一方いっぽう潜水艦せんすいかん開発かいはつグループからは、8ぶんの1オクターブのフィルターを使用しようした潜水艦せんすいかん探知たんちや、100ヘルツをピークとして25ヘルツから200ヘルツというてい周波しゅうは潜水せんすいかん音響おんきょう信号しんごう発見はっけん公表こうひょうされた。またベル研究所けんきゅうじょ参加さんかしたジェジベル計画けいかくProject Jezebel)では、てい周波しゅうはおん分析ぶんせきおよび記録きろくlow frequency analysis and recording, LOFAR)のためのパラメーターがあきらかにされ、分析ぶんせきはば1~0.5ヘルツのリアルタイム・スペクトル分析ぶんせき提案ていあんされた[2]

1951ねんには、バハマエルーセラとうにハイドロフォンをつけたブイ6つ(3つは水深すいしん12メートル、2つは293メートル、1つは305メートル)と、ハイドロフォン40から構成こうせいされるながさ305メートルのリニアアレイ1つ(水深すいしん439メートル)が設置せっちされ、1952ねん4がつには、将官しょうかんたちまえでデモンストレーションを成功せいこうさせた。これをけて、全米ぜんべい研究けんきゅう評議ひょうぎかい水中すいちゅうせん委員いいんかいはLOFARを潜水せんすいかん探知たんちのブレークスルーと宣言せんげんし、海軍かいぐんはシーザー計画けいかく開始かいしした。この計画けいかくでは、長距離ちょうきょり探知たんち類別るいべつシステムの製造せいぞう設置せっちについてベル研究所けんきゅうじょ契約けいやく締結ていけつし、この契約けいやくをもって、システムめいはSOSUSとしょうされるようになった[2]

当初とうしょ計画けいかくでは、設置せっち場所ばしょ当初とうしょセーブルとうハッテラスみさきバミューダ諸島しょとうなど大西洋たいせいようの6ヶ所かしょとされていた。1952ねん9がつには3ヶ所かしょ、1954ねん1がつにはさらに3ヶ所かしょえて12ヶ所かしょとなった。同年どうねん5がつには太平洋たいへいようにも拡張かくちょうされることになり[2]太平洋たいへいようがわには7のアレイが設置せっちされた。またアルジェンシャにはあさ深度しんど水中すいちゅう固定こてい聴音ちょうおん設置せっちされた。これらのシステムは1960ねんまつまでに運用うんよう状態じょうたい移行いこうした。また1962ねんには、バミューダ北西ほくせいに22のアレイが設置せっちされた[1]

シーザー計画けいかくによって敷設ふせつされたシステムはSOSUSフェーズIと位置付いちづけられており、水深すいしん1,000ひろ(1,818 m)に敷設ふせつされた1,000フィート (300 m)ちょうのリニアアレイから構成こうせいされていた。標準ひょうじゅんてきには、これらのアレイは40のハイドロフォンから構成こうせいされており、はば5音響おんきょうビームを形成けいせいした[1]

当時とうじ水上みずかみわたるはしシュノーケルこうはし不要ふよう原子力げんしりょく潜水せんすいかん配備はいび進展しんてんしたことで、レーダーやアクティブ・ソナーなどによる探知たんち可能かのうせいきわめてひくくなっていたのにたいし、原子力げんしりょく潜水せんすいかんつね原子げんし蒸気じょうきタービンからノイズを発生はっせいするという特性とくせいがあり、パッシブ・ソナーによる聴知は有望ゆうぼう期待きたいされた。アメリカ海軍かいぐんでは、SOSUSと攻撃こうげきがた原子力げんしりょく潜水せんすいかん(SSN)、たいせん哨戒しょうかいによるパッシブたいせんせんシステム構築こうちくし、これに対抗たいこうした[5]。1961ねんには、アメリカからイギリスに航行こうこうする原子力げんしりょく潜水せんすいかんジョージ・ワシントン」を追尾ついびして、まずその能力のうりょく実証じっしょうした。1962ねんキューバ危機ききでは、ソ連それん海軍かいぐんフォックストロットがた潜水せんすいかん探知たんち成功せいこうした。また1963ねんの「スレッシャー」の喪失そうしつ、1968ねんの「スコーピオン」の喪失そうしつさいには、沈没ちんぼつ位置いち特定とくていにも重要じゅうよう役割やくわりたした[2]

つづいてフェーズIIとして、前方ぜんぽう地域ちいきへの展開てんかい着手ちゃくしゅされた。これは1962ねんアダックとう配備はいびされた長距離ちょうきょり探知たんちようOBOEアレイの成功せいこうまえたものであり、極東きょくとう北大西洋きたたいせいようおよびノルウェーうみ配備はいびされた。1970ねん初頭しょとうにはきたアメリカおよび西にしヨーロッパに追加ついかのアレイが配備はいびされたほか、どう時期じきには西太平洋にしたいへいようおよび中部ちゅうぶ太平洋たいへいようにもアレイが配備はいびされた[1]

しかしソビエト連邦れんぽう諜報ちょうほう活動かつどうなどによってこのパッシブたいせんせんシステムの重要じゅうようせいづき、1970年代ねんだい中期ちゅうきから、ヴィクターIIIがたSSN(671RTMがたチャーリーIIがたSSGN(670MがたデルタがたSSBN(667Bがたなど、対抗たいこうさくこうじて静粛せいしゅくせい格段かくだん向上こうじょうさせた潜水せんすいかん艦隊かんたい配備はいび開始かいしした[5]。またSOSUSアレイを回避かいひするなどの対抗たいこう戦術せんじゅつ出現しゅつげんし、アメリカぐんのパッシブたいせんせんシステムの効果こうか減殺げんさいされはじめていた。このことから1984ねんから、SOSUSを補完ほかんして機動きどうてき運用うんようされる広域こういき捜索そうさくセンサーとして、AN/UQQ-2 SURTASS配備はいびされた。SOSUSとSURTASSの音響おんきょう信号しんごう処理しょり海軍かいぐん海洋かいよう信号しんごう処理しょり施設しせつ(Naval Ocean Processing Facility, NOPF)で一元いちげんてきおこなわれており、1985ねんには、SOSUSとSURTASSのわせは、統合とうごう水中すいちゅう監視かんしシステム(IUSS)として認知にんちされた[2]

IUSSは、最盛さいせいには16ヶ所かしょのSOSUSサイトと19せき音響おんきょう測定そくていかん(T-AGOS)、人員じんいん4,000めいようしていた。しかし冷戦れいせん終結しゅうけつけてソ連それん潜水せんすいかん探知たんちする必要ひつようせい急激きゅうげき低下ていかし、1989ねんから1993ねんあいだ予算よさんは60パーセント削減さくげんされ、94ねんまでに人員じんいんは1,000めい、サイトは4ヶ所かしょ、T-AGOSは8せきにまで削減さくげんされた。ミッドウェーとハワイのセンサーは廃止はいしされ、サンニコラスとうのセンサーは科学かがくてき研究けんきゅう開放かいほうされた[2]

2018ねん現在げんざい、SOSUSは潜水艦せんすいかん探知たんちというよりは、地震じしんがく海洋かいよう哺乳類ほにゅうるい回遊かいゆう地球ちきゅう温暖おんだんといった海洋かいようがく研究けんきゅう、そして麻薬まやく密輸みつゆ阻止そしといったほう執行しっこう機関きかんのニーズにもちいられている。SOSUSがけたのちのIUSSは、SURTASSのほかにLFAとNDSで構成こうせいされていると推定すいていされている。NDSは分散ぶんさんがたネット・システムとしょうされており、SOSUSにかわる固定こていがたセンサーとかんがえられる。SOSUSのいくつかの監視かんし機能きのうそなえているが、陸上りくじょうかいさずに直接ちょくせつ洋上ようじょう艦艇かんてい交信こうしんできるほか、音響おんきょう以外いがいのセンサを搭載とうさいしているというせつもある。LFAは音響おんきょう測定そくていかん(T-AGOS)搭載とうさいだい出力しゅつりょくてい周波しゅうはアクティブ・ソナーである[2]

他国たこく類似るいじシステム

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ソ連それん海軍かいぐん水中すいちゅう固定こてい捜索そうさくきょく展開てんかいしていたが、財政ざいせい悪化あっかにより施設しせつ老朽ろうきゅうし、探知たんちセンサーが他国たこく沿岸えんがんげられたケースもある。

中国ちゅうごく海軍かいぐん同様どうよう設備せつび充実じゅうじつちからそそいでおり、「水下みぞおちてききょうもう系統けいとう」としょうするものが南シナ海みなみしなかい東シナ海ひがししなかい黄海こうかい展開てんかいされつつある。

海上かいじょう自衛隊じえいたい水中すいちゅう固定こてい聴音ちょうおん設置せっちしているが、これは西太平洋にしたいへいようのSOSUSと連接れんせつされていた可能かのうせい示唆しさされている[6]

出典しゅってん

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  1. ^ a b c d Friedman 1997, pp. 23–24.
  2. ^ a b c d e f g h i 小林こばやし 2018.
  3. ^ Urick 2013, pp. 71–76.
  4. ^ a b Urick 2013, pp. 97–101.
  5. ^ a b 山崎やまざき 2016.
  6. ^ 西沢にしざわ 1991.

参考さんこう文献ぶんけん

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  • Friedman, Norman (1997). The Naval Institute guide to world naval weapon systems 1997-1998. Naval Institute Press. ISBN 9781557502681 
  • Urick, Robert J. ちょ新家にいのみ富雄とみお へん水中すいちゅう音響おんきょうがく 改訂かいてい三好みよし章夫あきお京都きょうと通信つうしんしゃ、2013ねんISBN 978-4903473918 
  • 小林こばやし, 正男まさお現代げんだい潜水せんすいかん だい23かい」『世界せかい艦船かんせんだい880ごう海人あましゃ、2018ねん6がつ、141-147ぺーじ 
  • 西沢にしざわ, ゆう「システムとしての海上かいじょう自衛隊じえいたいASW」『世界せかい艦船かんせんだい432ごう海人あましゃ、1991ねん2がつ、76-81ぺーじ 
  • 山崎やまざき, しん水上すいじょうかん潜水せんすいかん いまどっちが優勢ゆうせいか? (特集とくしゅう 世界せかい水上すいじょう戦闘せんとうかん その最新さいしん動向どうこう)」『世界せかい艦船かんせんだい832ごう海人あましゃ、2016ねん3がつ、106-109ぺーじNAID 40020720360 

外部がいぶリンク

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