出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』
法学>民事法>民法>コンメンタール民法>第4編 親族 (コンメンタール民法)
(日常の家事に関する債務の連帯責任)
- 第761条
- 夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。
前条の「婚姻費用は夫婦で分担される」 趣旨に従い、『日常の家事』に関する法律行為については夫婦が連帯責任を負う旨を定めた。即ち、『日常の家事』に関する法律行為については夫婦がの一方の行為について、もう一方が履行等の責任を負う。なお、明治民法第804条においては、日常の家事について妻は夫の代理人とみなすという構成によっていた。戦後改正においても、判例[判例 1]により夫婦が相互に日常の家事に関する法律行為につき他方を代理する権限を有することをも規定しているものと解すべきとされている。
「日常の家事」の範囲[編集]
具体的問題となるのは、「日常の家事」の範囲であるが、判例[判例 1]においては、「個々の夫婦がそれぞれの共同生活を営むうえにおいて通常必要な法律行為を指すものであるから、その具体的な範囲は、個々の夫婦の社会的地位、職業、資産、収入等によつて異なり、また、その夫婦の共同生活の存する地域社会の慣習によつても異なるというべきであるが、他方、問題になる具体的な法律行為が当該夫婦の日常の家事に関する法律行為の範囲内に属するか否かを決するにあたつては、同条が夫婦の一方と取引関係に立つ第三者の保護を目的とする規定であることに鑑み、単にその法律行為をした夫婦の共同生活の内部的な事情やその行為の個別的な目的のみを重視して判断すべきではなく、さらに客観的に、その法律行為の種類、性質等をも充分に考慮して判断すべき」としている。
- 「日常の家事」の範囲とされるもの
- 衣食に関する費用、家電製品・家具等の購入費用
- 移動等に用いる自家用車
- 医療費、交際費、娯楽費
- 夫婦の子の教育費ほか養育に関する費用
- 専ら居住に関する土地・家屋の賃貸費などの費用、持ち家等の改修費など。
- 「日常の家事」の範囲外とされるもの
- 居住する家屋の住宅ローンなど(共有でない場合、所有権者である夫婦いずれかの債務であって、もう一方には及ばない)
- 判例
- 子の事業資金のため、夫所有の不動産を売却した例[判例 2]
- 妻が夫を代理して手形貸付取引契約(妻の知人が信用金庫から貸付をうける取引契約)の連帯保証をした例[判例 3]
代理の解釈[編集]
夫婦の一方が日常の家事に関する代理権の範囲を越えて第三者と法律行為をした場合においては、判例[判例 1]は「その代理権の存在を基礎として広く一般的に民法第110条所定の表見代理の成立を肯定することは、夫婦の財産的独立をそこなうおそれがあつて、相当でないから、夫婦の一方が他の一方に対しその他の何らかの代理権を授与していない以上、当該越権行為の相手方である第三者においてその行為が当該夫婦の日常の家事に関する法律行為の範囲内に属すると信ずるにつき正当の理由のあるときにかぎり、民法110条の趣旨を類推適用して、その第三者の保護をはかれば足りるものと解するのが相当である」としている。
即ち、夫婦のいずれかを一方の当事者とする法律行為において当然に代理法理を援用すべきではなく、第三者に対して日常の家事に関する法律行為であると客観的に信じられる場合に限って権限踰越の表見代理は認められるべきであり、一般的に日常の家事の範囲外と観察される場合、表見代理の適用はない[判例 2][判例 3]。
参照条文[編集]
- ^ 1.0 1.1 1.2 土地建物所有権移転登記抹消登記手続請求 (最高裁判決 昭和44年12月18日)
- ^ 2.0 2.1 最高裁判決 昭和43年7月19日 判時528.35
- ^ 3.0 3.1 貸金請求 (最高裁判決 昭和45年2月27日)
明治民法において、本条には以下の規定があった。戸主制廃止に伴い削除廃止。
- 隠居又ハ入夫婚姻ニ因ル戸主権ノ喪失ハ前戸主又ハ家督相続人ヨリ前戸主ノ債権者及ヒ債務者ニ其通知ヲ為スニ非サレハ之ヲ以テ其債権者及ヒ債務者ニ対抗スルコトヲ得ス
このページ「
民法第761条」は、
まだ書きかけです。
加筆・
訂正など、
協力いただける
皆様の
編集を
心からお
待ちしております。また、ご
意見などがありましたら、お
気軽に
トークページへどうぞ。