民法みんぽう第だい760条じょう

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条文じょうぶん

（婚姻こんいん費用ひようの分担ぶんたん）

第だい760条じょう

夫婦ふうふは、その資産しさん、収入しゅうにゅうその他た一切いっさいの事情じじょうを考慮こうりょして、婚姻こんいんから生しょうずる費用ひようを分担ぶんたんする。

解説かいせつ

日本にっぽんの民法みんぽうにおいて夫婦ふうふの財産ざいさん関係かんけいは、別べつ産さん・別べつ管理かんり制せい（第だい762条じょう）が原則げんそくであり、配偶はいぐう者しゃの財産ざいさん（資産しさん・収入しゅうにゅうなど）を一方いっぽうの配偶はいぐう者しゃが自由じゆうに処分しょぶんできるものではない。しかしながら、婚姻こんいん生活せいかつをするに際さいして、例たとえば、夫おっとが勤つとめ人にんで、妻つまが専業せんぎょう主婦しゅふの場合ばあい、夫おっとが生活せいかつ費ひを渡わたす場合ばあいであっても、妻つまが家計かけいを管理かんりする場合ばあいであっても、生活せいかつ上じょうの一般いっぱん的てきな支出ししゅつについては、ことさらに、委任いにんなどの法律ほうりつ構成こうせいをとらず、また、扶養ふよう義務ぎむの履行りこう等とうの形式けいしきにとらわれず、いずれの所有しょゆうであるかなどを意識いしきせずに消費しょうひすることができる。

この費用ひようの分担ぶんたんは、まず夫婦ふうふ間あいだの合意ごういにより決きめられ、明示めいじがなければ収入しゅうにゅうなど夫婦ふうふの生活せいかつ態様たいように応おうじて分担ぶんたんされるものとされる。さらに、その負担ふたん方法ほうほうは、金銭きんせんの負担ふたんだけでなく、家事かじや育児いくじの担当たんとうなどの労働ろうどうによる負担ふたんによるものも含ふくまれると解ほぐされている。婚姻こんいん生活せいかつに必要ひつようとされた応おう分ぶんの支出ししゅつは相互そうごに債権さいけん債務さいむ関係かんけいはなく、婚姻こんいん費用ひようから購入こうにゅうした物品ぶっぴん（家具かぐ・家電かでん、乗用車じょうようしゃなど婚姻こんいん生活せいかつを維持いじするのに必要ひつような物品ぶっぴん）は、等分とうぶん負担ふたんによる一種いっしゅの共有きょうゆう物ぶつと解かいされる。従したがって、これらの物品ぶっぴんは、離婚りこん時じ等とうに負担ふたん額がくにかかわらず等分とうぶん分割ぶんかつされる。

婚姻こんいん費用ひようの分担ぶんたんが問題もんだいとなるのは、婚姻こんいん生活せいかつが破綻はたんし離婚りこん等とうにあって、分担ぶんたんにより負担ふたんすべき費用ひようが支出ししゅつされていなかった場合ばあいであり、離婚りこん後ごにあっても、財産ざいさん分割ぶんかつとは別べつに請求せいきゅう権けんが独自どくじに存続そんぞくする（最高裁さいこうさい決定けってい令れい和わ2年ねん1月がつ23日にち）。

なお、婚姻こんいん費用ひようの分担ぶんたんについて定さだめた明治めいじ民法みんぽう第だい798条じょうにおいては、妻つまが戸主こしゅである場合ばあいを除のぞき、夫おっとが負担ふたんするものとされていた。

参照さんしょう条文じょうぶん

• 民法みんぽう第だい752条じょう（同居どうきょ、協力きょうりょく及および扶助ふじょの義務ぎむ）
• 民法みんぽう第だい755条じょう（夫婦ふうふの財産ざいさん関係かんけい）
• 民法みんぽう第だい761条じょう（日常にちじょうの家事かじに関かんする債務さいむの連帯れんたい責任せきにん）
• 民法みんぽう第だい762条じょう（夫婦ふうふ間あいだにおける財産ざいさんの帰属きぞく）

判例はんれい

1. 婚姻こんいん費用ひよう分担ぶんたん審判しんぱんに対たいする抗告こうこく審しんの取消とりけし決定けっていに対たいする許可きょか抗告こうこく事件じけん(最高裁さいこうさい決定けってい 令れい和わ2年ねん1月がつ23日にち)民法みんぽう第だい772条じょう、民法みんぽう第だい877条じょう

   婚姻こんいん費用ひよう分担ぶんたん審判しんぱんの申立もうしたて後ごに当事とうじ者しゃが離婚りこんした場合ばあいにおける婚姻こんいん費用ひよう分担ぶんたん請求せいきゅう権けんの帰きすう

   婚姻こんいん費用ひよう分担ぶんたん審判しんぱんの申立もうしたて後ごに当事とうじ者しゃが離婚りこんしたとしても，これにより婚姻こんいん費用ひよう分担ぶんたん請求せいきゅう権けんは消滅しょうめつしない。

2. 婚姻こんいん費用ひよう分担ぶんたん申立もうしたて却下きゃっか審判しんぱんに対たいする抗告こうこく審しんの変更へんこう決定けっていに対たいする許可きょか抗告こうこく事件じけん(最高裁さいこうさい決定けってい 令れい和わ5年ねん5月がつ17日にち)民法みんぽう第だい772条じょう、民法みんぽう第だい877条じょう

   婚姻こんいん費用ひよう分担ぶんたん審判しんぱんにおいて、夫おっととその妻つまが婚姻こんいん後ごに出産しゅっさんし戸籍こせき上じょう夫婦ふうふの嫡出ちゃくしゅつ子ことされている子こであって民法みんぽう772条じょうによる嫡出ちゃくしゅつの推定すいていを受うけないものとの間あいだの父子ふし関係かんけいの存否そんぴを審理しんり判断はんだんすることなく、夫おっとの上記じょうき子こに対たいする上記じょうき父子ふし関係かんけいに基もとづく扶養ふよう義務ぎむを認みとめた原審げんしんの判断はんだんに違法いほうがあるとされた事例じれい

   婚姻こんいん費用ひよう分担ぶんたん審判しんぱんにおいて、夫おっととその妻つまが婚姻こんいん後ごに出産しゅっさんし戸籍こせき上じょう夫婦ふうふの嫡出ちゃくしゅつ子ことされている子こであって民法みんぽう772条じょうによる嫡出ちゃくしゅつの推定すいていを受うけないものとの間あいだの父子ふし関係かんけいの存否そんぴは訴訟そしょうにおいて最終さいしゅう的てきに判断はんだんされるべきものであることを理由りゆうに、上記じょうき父子ふし関係かんけいの不ふ存在そんざいを確認かくにんする旨むねの判決はんけつが確定かくていするまで夫おっとは扶養ふよう義務ぎむを免まぬかれないとして、上記じょうき父子ふし関係かんけいの存否そんぴを審理しんり判断はんだんすることなく、夫おっとの上記じょうき子こに対たいする上記じょうき父子ふし関係かんけいに基もとづく扶養ふよう義務ぎむを認みとめた原審げんしんの判断はんだんには、違法いほうがある。

参考さんこう

明治めいじ民法みんぽうにおいて、本条ほんじょうには以下いかの規定きていがあった。戸主こしゅ制せい廃止はいしに伴ともない廃止はいし。

1. 隠居いんきょノ取消とりけし前ぜんニ家督かとく相続そうぞく人じんノ債権さいけん者しゃト為ためリタル者しゃハ其取消とりけしニ因いんリテ戸主こしゅタル者しゃニ対たいシテ弁済べんさいノ請求せいきゅうヲ為ためスコトヲ得どく但ただし家督かとく相続そうぞく人じんニ対たいスル請求せいきゅうヲ妨さまたげケス
2. 債権さいけん者しゃカ債権さいけん取得しゅとくノ当時とうじ隠居いんきょ取消とりけしノ原因げんいんノ存そんスルコトヲ知ちリタルトキハ家督かとく相続そうぞく人じんニ対たいシテノミ弁済べんさいノ請求せいきゅうヲ為ためスコトヲ得とく家督かとく相続そうぞく人じんカ家督かとく相続そうぞく前ぜんヨリ負担ふたんセル債務さいむ及ヒ其一身いっしんニ専属せんぞくスル債務さいむニ付づけキ亦また同どうシ

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前条ぜんじょう: 民法みんぽう第だい759条じょう （財産ざいさんの管理かんり者しゃの変更へんこう及および共有きょうゆう財産ざいさんの分割ぶんかつの対抗たいこう要件ようけん）

民法みんぽう 第だい4編へん 親族しんぞく 第だい2章しょう 婚姻こんいん 第だい2節せつ 婚姻こんいんの効力こうりょく

次つぎ条じょう: 民法みんぽう第だい761条じょう （日常にちじょうの家事かじに関かんする債務さいむの連帯れんたい責任せきにん）

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