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野湯(やとう)とは、自然の中に存在する温泉が自噴しており、かつその源泉を利用した商業施設が存在しない場所のこと。その形態は複数存在する。また、一部の野湯には硫化水素ガス発生地帯のため入浴に生命の危険を伴う場所や、自然保護の観点、所有者の許可が必要などの理由により立ち入り禁止となっている場所がある。
形態
代表的な野湯の形態は以下のとおりである。
自然界で源泉が自噴
野湯で一番多い形態である。川沿い、山肌などから温泉が湧出している。
山肌から源泉が自噴
山肌から源泉が染み出してきていたり、または地獄地帯のように地面のあちこちから源泉が自噴しているばあいなどである。湯船はない場合が多く、地面を掘ったり持参したビニールプールやビニールシートなどで即席の湯船を作って入浴する。有志により湯船が整備されていることもあるが、一部には土地の所有者に無断で作られたものも存在する。湯温の調整が難しい。
河原に源泉が湧出
川原を掘ると温泉が湧く。湯船を作成しやすく、また川の水を使って温度調整を行うのが容易なのが特徴。
代表的な温泉としては
などが有名。それ以外にもこの形態は数多く存在する。
河川、湖沼自体が温泉
基本的には上記形態に属する。川底や湖低に源泉があり、かつ高温または湧出量豊富で入浴に適した温度になっている場合がこれに該当する。
代表的な温泉としては、
などが有名。
古くは温泉地であった場所
江戸時代などには温泉地として知られていたが、山奥などにあって交通の便が悪かったり、温泉地として整備利用するものがいなかったために、いつしか放置されてしまった温泉。
代表的な温泉としては、
などがこれにあたる。
整備された源泉を利用
整備された源泉から、利用されないで捨てられているものを集めて入浴する。有志により入浴施設が整備されているケースが多い。和歌山県の湯の谷温泉や、かつて松崎温泉の源泉井の下に存在した湯船、伊豆の河津浜温泉などにこれに当てはまるものが存在する
利用後の廃湯を集めている場合も存在する。
また、廃業した旅館などの湯船を利用して入浴する行為もこれに含まれる。但し、所有者が入浴を許可している場合以外は、不法侵入などの法的な問題点が生じる行為である。写真の大塩温泉は、かつて共同浴場として利用されていた湯船であり、春先にのみ温泉が湧出する。利用は開放されているが、テレビなどで取り上げられることもあり、ゴミの放置などマナーの問題が時として発生する。