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古代インドにおける愛と太陽の神ラーガが仏教に包括された愛染明王は、弘法大師空海によって信じざる者を信じさせる立場である明王の中でもひと際異彩を放つ仏である。
宗盲の衆生が仏を信じない原因の一つに「煩悩・愛欲により浮世のかりそめの楽に心惹かれている」があるが、愛染明王は「煩悩と愛欲は人間の本能であり、これを断ずることは出来ない。むしろこの本能そのものを、向上心のエネルギーに変換して仏道を歩ませよう」とする功徳を持っている。
愛染明王は1面6臂の身体で他の明王と同じく憤怒相であり、頭にはどのような苦難にも挫折しない強さを象徴する獅子の冠をかぶり、叡知を収めた宝瓶(宝の壺)の上に咲いた蓮の華の上に結跏趺坐で座るという、大変特徴ある姿をしている。
もともと愛と太陽を表現した神であるため、その身体は真っ赤であり、後背に日輪を背負って表現されることが多い。
また天に向かって弓を引く容姿で描かれた掛軸も現存している。
愛染明王信仰はその名が示すとおり「恋愛・縁結び・家庭円満」などをつかさどる仏として古くから行われており、また「愛染=藍染」と解釈し、染物・織物職人の守護神としても信仰されている。
愛染明王を奉戴する寺院
愛染院(東京都練馬区/眷属として祀られることの多い愛染明王だが、この寺院では本尊。全国的にも珍しい。)