アンゼルム・フォイエルバッハ

アンゼルム・フォイエルバッハ

パウル・ヨハン・アンゼルム・フォン・フォイエルバッハ（Paul Johann Anselm von Feuerbach, 1775年ねん11月14日にち - 1833年ねん5月29日にち）は、ドイツの刑法けいほう学者がくしゃ。名前なまえはフォイエルバハとも表記ひょうきされる。

人物じんぶつ

イェーナ近郊きんこうのハイニヒェン生うまれ。父ちちヨハン・アンゼルム・フォイエルバッハは当時とうじ20歳さいのイェーナ大学だいがく法学ほうがく生せいで、のちギーセン大学だいがくを経へてフランクフルト・アム・マインで弁護士べんごしを開業かいぎょうした。母ははゾフィー・ジビュレ・クリスティーナ・クラウゼ (Sophie Sibylle Christina Krause) はイェーナ領主りょうしゅ領りょう参事官さんじかんの娘むすめで、法ほう史し学者がくしゃヨハン・ザロモン・ブルンクヴェル (Johann Salomon Brunnquell) の孫まごに当あたり、当時とうじ24歳さいであった。

1792年ねん10月、フランクフルト在住ざいじゅう時じに父親ちちおやの浮気うわき相手あいてを殴なぐって家出いえでし、イェーナにある母方ははかたの叔母おばを頼たよりイェーナ大学だいがく法学部ほうがくぶに同年どうねん12月がつに入学にゅうがく。その後ご、病やまいを得えたことを機きに哲学てつがく部ぶに転てん部ぶしてカール・レオンハルト・ラインホルトの指導しどうを受うけ、カント哲学てつがくを学まなび、またジャン・ジャック・ルソーに感化かんかされた。博士はかせ号ごうを取得しゅとくした後のち、ドルンベルク城しろ管理人かんりにんの娘むすめでザクセン＝ヴァイマル公国こうこくのエルンスト・アウグスト1世せいの非ひ嫡出ちゃくしゅつ孫まごに当あたるヴィルヘルミーネ・トレスター (Wilhelmine Tröster) と結婚けっこん。妻子さいしを扶養ふようするために法学ほうがくを学まなび、1799年ねんに法学ほうがく博士はかせ号ごう取得しゅとく。法学部ほうがくぶの私わたし講師こうしとなり、1801年ねんにはレーン法ほうの無給むきゅう教授きょうじゅとなった。1799年ねん - 1800年ねんに著あらわした『実定じってい刑法けいほうにおける原理げんりおよび根本こんぽん概念がいねんの省察せいさつ』は彼かれの自由じゆう主義しゅぎ的てき刑法けいほう観かんを示しめしている。「市民しみん的てき刑罰けいばつ」および「確定かくてい刑罰けいばつ法規ほうき」の概念がいねんを確立かくりつし、「刑罰けいばつ法規ほうき」絶対ぜったいの思想しそう、法律ほうりつ絶対ぜったいの思想しそうを樹立じゅりつした。これは刑法けいほう思想しそうの近代きんだい化かを推進すいしんする歴史れきし創造そうぞう的てき理論りろんを確たしかなものにした。

その後ごはキール大学だいがくやバイエルンのランツフート大学だいがくで研究けんきゅうを続つづけた。バイエルンではバイエルン刑けい法典ほうてん草案そうあんを起草きそうし、1813年ねんにこの草案そうあんを基もとにした刑法けいほう典てんが公布こうふされた。カスパー・ハウザーの事件じけんでは、事ことの顛末てんまつ一切いっさいの記録きろくを本ほんに著あらわした（日本語にほんご訳やく『カスパー・ハウザー』、西村にしむら克彦かつひこ訳やく、福武ふくたけ文庫ぶんこ）。これにはハウザー死後しごの解剖かいぼう報告ほうこく書しょも添付てんぷされている。

1814年ねんにバンベルク控訴こうそ裁判所さいばんしょ第だい二に所長しょちょう、1817年ねんにアンスバッハ控訴こうそ裁判所さいばんしょ第だい一いち所長しょちょうとなった。1833年ねんに卒中そっちゅうを起おこし死去しきょ。

5人にんの息子むすこと3人にんの娘むすめを儲もうけ、うち四よん男なんのルートヴィヒ・アンドレアス・フォイエルバッハはヘーゲル左派さはの哲学てつがく者しゃとなった。画家がかのアンゼルム・フォイエルバッハは孫まご（長男ちょうなんで文献ぶんけん学者がくしゃ・考古こうこ学者がくしゃのヨーゼフ・アンゼルムの息子むすこ）である。

刑法けいほうに関かんする考かんがえ方かた

フォイエルバッハは自由じゆう主義しゅぎ的てき発想はっそうに基もとづき、従来じゅうらいの罪つみ刑けい専断せんだん主義しゅぎを排はいして罪刑法定ざいけいほうてい主義しゅぎを打うち出だした先駆さきがけとなった。その内容ないようは以下いかのようなものであった。

• 刑法けいほうは「人権じんけん保護ほご」のためにあるとして、「道徳どうとく保護ほご」を刑法けいほうの役割やくわりとしない
• 犯罪はんざいと法定ほうてい刑けいを成文法せいぶんほうで明示めいじすることで、裁判官さいばんかんを成文法せいぶんほうに拘束こうそくさせる（裁判さいばん規範きはんとしての刑法けいほう）と同時どうじに国民こくみんに知しらせて犯罪はんざいの禁止きんしを求もとめる（行為こうい規範きはんとしての刑法けいほう）。ただし、決けっして刑法けいほうの機能きのうを裁判さいばん規範きはんに限定げんていするものではない
• 罪つみ刑けい均衡きんこうの観点かんてんから犯罪はんざいと法定ほうてい刑けいを設定せっていすることで、「権利けんりの価値かち」に応おうじた法定ほうてい刑けい並ならびに「権利けんり侵害しんがい行為こういの程度ていど」に応おうじた法定ほうてい刑けいが決きまって裁判官さいばんかんの量刑りょうけい裁量さいりょうを制限せいげんする
• 裁判官さいばんかんによる刑法けいほう規定きていの類推るいすい解釈かいしゃくを禁止きんしする

脚注きゃくちゅう

ウィキメディア・コモンズには、アンゼルム・フォイエルバッハに関かんするカテゴリがあります。