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イアン・スティーヴンソン

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イアン・スティーヴンソンIan Stevenson1918ねん10月31にち - 2007ねん2がつ3にち[1])は、「まれわり現象げんしょう」の研究けんきゅうしゃである。「こころ搬体」(psychophore)という用語ようご創出そうしゅつし、記憶きおく感情かんじょうからだ外傷がいしょう来世らいせされる媒体ばいたい存在そんざい提唱ていしょうした[2]

イアン・スティーヴンソン
Ian Stevenson
生誕せいたん (1918-10-31) 1918ねん10月31にち
カナダの旗 カナダモントリオール
死没しぼつ (2007-02-08) 2007ねん2がつ8にち(88さいぼつ
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくバージニアしゅう シャーロッツビル
肺炎はいえん
市民しみんけん カナダの旗 カナダ
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく帰化きか(1949ねん
研究けんきゅう機関きかん バージニア大学だいがく医学部いがくぶ 知覚ちかく研究けんきゅうしつ 室長しつちょう
出身しゅっしんこう セント・アンドルーズ大学だいがく(1937–1939)
マギル大学だいがく 学士がくしごう(1942)
マギル大学だいがく 医学部いがくぶ 医学いがく博士はかせごう(1943)
おも業績ぎょうせき 転生てんせい研究けんきゅう
臨死りんし研究けんきゅう
病歴びょうれき聴取ちょうしゅ
影響えいきょう
あたえた人物じんぶつ
ジム・タッカー
大門だいもん正幸まさゆき
配偶はいぐうしゃ オクタビア・レイノルズ (1947-1983ねん)
マーガレット・パーツォフ(1985-2007ねん)
プロジェクト:人物じんぶつでん
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略歴りゃくれき

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1918ねんカナダ モントリオールにて生誕せいたんオタワにて少年しょうねん時代じだいごす[3]幼少ようしょうより気管支炎きかんしえんわずらい、生涯しょうがいそれになやまされていた。1939ねんマギル大学だいがく医学部いがくぶ首席しゅせきにて卒業そつぎょう生化学せいかがく心身しんしん医学いがく研究けんきゅうて、精神せいしん医学いがくこころざす。1949ねんよりルイジアナ州立しゅうりつ大学だいがくにて助手じょしゅじょきょう教授きょうじゅつとめ、1950年代ねんだいにはオルダス・ハクスリーらとLSDメスカリン研究けんきゅうたずさわっていた[4]1957ねんバージニア大学だいがく精神せいしん主任しゅにん教授きょうじゅ着任ちゃくにん。1960ねんには「前世ぜんせい記憶きおくとされるものによる死後しご生存せいぞん証拠しょうこ」を発表はっぴょうし、閲読えつどくしたチェスター・カールソン資金しきん援助えんじょける[2]

まれわり研究けんきゅうをライフワークとしたその契機けいきとなる論拠ろんきょのなかには、江戸えど時代じだい当時とうじ8さい少年しょうねん小谷田こやた勝五郎かつごろうのケースもふくまれていた。勝五郎かつごろう疱瘡ほうそうによって6さい急死きゅうしした、隣村りんそん藤蔵とうぞうという少年しょうねんまれわりであると自称じしょうし、一躍いちやく騒動そうどうとなった[5]。その顛末てんまつ平田ひらた篤胤あつたね池田いけだ冠山かんざんによって編纂へんさんされ、小泉こいずみ八雲やくもによって『Rebirth of Katsugoro勝五郎かつごろう転生てんせい)』として英訳えいやくされたことから、るところとなった[2]

スティーヴンソンは、 インドでのフィールドワークおこなった結果けっか短期間たんきかんのうちにじゅうすうれい発見はっけんする。1966ねん1974ねん著書ちょしょ前世ぜんせい記憶きおくする20にん子供こども』を出版しゅっぱん反響はんきょうる。現在げんざいまでにスティーヴンソンとかれひきいる研究けんきゅうグループは、東南とうなんアジア中心ちゅうしんに、前世ぜんせい記憶きおくつとされるどもたちの事例じれいを2300れいほどあつめている。

スティーヴンソンの研究けんきゅうは、月刊げっかん科学かがく雑誌ざっしとして最古さいこ歴史れきしほこる『神経しんけい精神病せいしんびょうがく雑誌ざっし Journal of Nervous and Mental Disease』に掲載けいさいされ、特集とくしゅうまれた。その反応はんのうとして、スティーヴンソンあて世界中せかいじゅう科学かがくしゃから論文ろんぶん別刷べつづりを請求せいきゅうする手紙てがみやく1000つうとどいたとされる[6]当時とうじ編集へんしゅうちょうであったユージン・B・ブローディ教授きょうじゅは、以下いかのコメントをのこしている。

このような特集とくしゅうんだ理由りゆうは、執筆しっぴつしゃが、科学かがくてきにも個人こじんてきにも信頼しんらい人物じんぶつであること、正当せいとう研究けんきゅうほうをとっていること、合理ごうりてき思考しこうをしていること、といったてんにある。以上いじょう条件じょうけんたされるなら、人間にんげん行動こうどうかんする知識ちしき増進ぞうしんをめざす雑誌ざっしが、このようなテーマの論文ろんぶん自動的じどうてき採用さいようにすべきではないし、そうしてはならない義務ぎむがあるとおも[6]


2002ねん研究所けんきゅうじょ所長しょちょう退職たいしょく。その個人こじん調査ちょうさ研究けんきゅう継続けいぞくし、259の論文ろんぶんと15の著作ちょさく膨大ぼうだいな「まれわり」事例じれいのファイルをのこし、2007ねん肺炎はいえんにて逝去せいきょ享年きょうねん88さい[2]。ヴァージニア大学だいがくかれ研究けんきゅうグループは現在げんざいジム・タッカーかたちとなっている。

まれわり」現象げんしょう研究けんきゅう

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研究けんきゅう方法ほうほう

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スティーヴンソンがった研究けんきゅう方法ほうほう面接めんせつ調査ちょうさであり、しゅとして2さいから5さいまでのあいだに「前世ぜんせい記憶きおくをよみがえらせた」子供こどもとその関係かんけいしゃ研究けんきゅう対象たいしょうとしてえらばれた。面接めんせつ調査ちょうさにより、子供こどもがもつ記憶きおくゆがみ、証言しょうげんしゃたちの相互そうご証言しょうげんちがいがないかを調査ちょうさし、「前世ぜんせい家族かぞく」の調査ちょうさおこなった[7]

前世ぜんせい記憶きおく」を子供こども特徴とくちょう

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  • 子供こどもたちが自発じはつてきに「前世ぜんせい」をかたはじめるのは、発話はつわ可能かのうになる2さいから5さいまでのあいだであり、おおくのケースでは5さいから8さいまでには子供こどもたちはかたるのをやめてしまい成長せいちょうするにつれ本人ほんにん記憶きおくからもわすられることになる。
  • 子供こどもたちがかた内容ないようは、前世ぜんせい」の人物じんぶつ死亡しぼうしたとき様子ようす居合いあわせたひとぶつ描写びょうしゃ死亡しぼうしてからまれわるまでの様子ようすなどである。わずかな記憶きおくのみをもつ子供こどももいれば、膨大ぼうだい記憶きおくものもいる。
  • そうした子供こどもたちがしめ行動こうどうには、まず「前世ぜんせい」の家族かぞくたいする親近しんきんかん表明ひょうめいがある。子供こどもたちはときに「現世げんせい」への違和感いわかん表明ひょうめいし、「本当ほんとうおやのところへれてって」などとうったえることがある。子供こどもたちが前世ぜんせい居住きょじゅう環境かんきょう親族しんぞくかたり、その証言しょうげん事実じじつ符合ふごうしたれいおおい。
  • 死亡しぼう状況じょうきょう(やそれと類似るいじした状況じょうきょう)への恐怖きょうふがあり、特定とくていものみず銃火じゅうかなどへの恐怖きょうふられる。
  • 前世ぜんせい」の人物じんぶつ同様どうようもの衣服いふくきらい、前世ぜんせいおなじような発話はつわ動作どうさ前世ぜんせいかた関連かんれんした先天せんてんせい欠損けっそんや、あざははまだら)などがられることもある。スティーヴンソンは先天せんてんせい欠損けっそんははむらについてはまれわり事例じれいの「さい有力ゆうりょく証拠しょうこ」となるとなしている。(→#先天せんてんせい刻印こくいん)
  • そうした子供こどもたちの割合わりあいは、いずれの文化ぶんかけんでも男児だんじがかなりおおという特徴とくちょうげられる。つぎに、前世ぜんせい記憶きおくでは子供こどもたちの圧倒的あっとうてき多数たすうが、自然しぜんではなく(事故じこにあったりころされたりなど)非業ひごう突然とつぜん人生じんせい終止符しゅうしふたれているという特徴とくちょうがある。
  • 前世ぜんせい」と「現世げんせい」の性別せいべつことなっている場合ばあいには、せい違和感いわかんられる場合ばあいもある。また「前世ぜんせい」で成人せいじんしていた場合ばあい、その記憶きおくかた子供こどもたちの物腰ものごし大人おとなびたものであることがおおい。早熟そうじゅく性的せいてき行動こうどうや、さけ・タバコといった大人おとな愛用あいようひんへの嗜好しこうられる。
  • 死亡しぼうした前世ぜんせい人物じんぶつ母親ははおやが、予告よこくゆめていたというケースもおおい。「つぎまれる子供こどもは、死者ししゃまれわりである」と直観ちょっかんするにいたゆめている事例じれいである。またまれではあるが、死者ししゃ自然しぜんまれわる場所ばしょ正確せいかく指摘してきしていたケースもある。

真性しんせいげん

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きわめてまれではあるが、前世ぜんせいかたものなかには、その前世ぜんせいかたっていた言語げんごあやつ能力のうりょく(真性しんせいげん)のあるものがいる。スティーヴンソンが収集しゅうしゅうした2000れいなかのわずか3れいがこれにたる。そうした事例じれいでは、催眠さいみんちゅう前世ぜんせい人格じんかく出現しゅつげんし、スウェーデンドイツなどにより文章ぶんしょう意思いし疎通そつうができるほか、前世ぜんせい言語げんごでのうたうた能力のうりょくなどが確認かくにんされている [8]

先天せんてんせい刻印こくいん

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子供こどもたちがかたる「前世ぜんせい記憶きおく」と符合ふごうする場所ばしょははまだら先天せんてんせい欠損けっそんあらわれるケースがある。「前世ぜんせい人格じんかく」が死亡しぼうしたさいったきず、あるいは前世ぜんせい人格じんかくっていたあざ傷跡きずあと、ほくろや手術しゅじゅつこんなどが、現世げんせい人格じんかくにおいておな場所ばしょ再現さいげんされるケースである。なかには、ころされるさいゆび切断せつだんされたために、その部分ぶぶん欠損けっそんするかたちあらわれたれいもある。スティーヴンソンはこうしたケースを112れいほど収集しゅうしゅうしている。なかには、「前世ぜんせい人格じんかく」がくなったときの状態じょうたい医者いしゃ記録きろくしたカルテ入手にゅうしゅできたケースもある[9]

まれわり」現象げんしょう解釈かいしゃく

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スティーヴンソンは「まれわり事例じれい」について以下いか解釈かいしゃく検討けんとうした[7]。またスティーヴンソンは「まれわりというかんがかた最後さいごれるべき解釈かいしゃくなので、これにわる説明せつめいがすべて棄却ききゃくできたのちはじめて採用さいようすべきである」とした[2]

さくはなしせつ

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どもとその家族かぞくうそをついているというせつである。うそをつく動機どうきとしては有名ゆうめいになりたいという名声めいせいよくや、金銭きんせんよくかんがえられる。

しかし、スティーヴンソンが調査ちょうさした事例じれいではほとんどの家族かぞく子供こどもけん名前なまえられることをいやがっており、両親りょうしん子供こども前世ぜんせいについての記憶きおく他人たにんはなすことをかたきんじているケースがおおい。また子供こども自身じしんも、他人たにん前世ぜんせいことはなすことで嘲笑ちょうしょういじめ対象たいしょうになり、家族かぞく関係かんけいにもみぞしょうじるため、みずかくちざすケースもおおい。また前世ぜんせいについてのつくばなしをしたところで、それほどの名声めいせい金銭きんせんられるわけではない。(単純たんじゅんかんがえて、自分じぶん子供こどもを、たとえば「殺人さつじん被害ひがいしゃまれわりだ」とすることに利点りてん見当みあたらない。)またアジア一部いちぶアフリカ家族かぞくは、面接めんせつ時間じかんすらろくにれないほどいそがしく、そうした利益りえきにもならないくわだてに時間じかん余裕よゆうがないことがおおい。こうした理由りゆうからスティーヴンソンはさくはなしせつ却下きゃっかしている。

自己じこ欺瞞ぎまんせつ

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前世ぜんせいがある」と子供こども自分じぶん自身じしんつよくいいきかせることで、自分じぶん自身じしんをだましているのではないかというせつである。しかし、そうした事例じれいでは子供こども世界せかいてき有名ゆうめい人物じんぶつ過去かこつと主張しゅちょうする場合ばあいおおく、その「前世ぜんせい」についての証言しょうげんあやまりも容易よういにわかることおおい。前世ぜんせいかた子供こどもたちが暗示あんじせいたかいという事実じじつもない。スティーヴンソンはこのせつ却下きゃっかしている。

偶然ぐうぜんせつ

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すべてをたんなる偶然ぐうぜん一致いっち片付かたづけるせつである。しかし、ははむら身体しんたい欠損けっそん医学いがくてき発生はっせいかくりつ推定すいていされているため、きわめてまれな「複数ふくすうの」身体しんたい欠損けっそんははまだらが、「前世ぜんせい」の人物じんぶつ傷跡きずあとなどと一致いっちする場合ばあいには、偶然ぐうぜんせつ無理むりてくる。スティーヴンソンはこのせつ採用さいようしていない。

潜在せんざい意識いしきせつ

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どもが、前世ぜんせい人物じんぶつかんする情報じょうほうテレビ新聞しんぶんなどのマスコミなどから見聞みききしたことがある(あるいは前世ぜんせい人物じんぶつ家族かぞくったことがある)が、それを1わすれてしまい、のちになってから記憶きおく脚色きゃくしょくしておもしたのではないかとするせつである。たとえば「前世ぜんせい人物じんぶつ」が事件じけん事故じこくなったというはなしをしているところをどもがよこいていたという可能かのうせいげられる。

しかし、スティーブンソンが調しらべたケースでは、「前世ぜんせい家族かぞく」と「こん家族かぞく」のあいだ交流こうりゅうがあることをたしかめられたケースはまれであり、ほとんどの場合ばあい、そうした家族かぞくあいだむす情報じょうほうルートはつかっていない。また、調査ちょうさした地域ちいきおおくは、ラジオ、テレビなどのマスコミが存在そんざいせず「過去かこ人物じんぶつ」について情報じょうほう手段しゅだんがない。そして前世ぜんせい記憶きおくしているどものおおくが3さい以下いか年齢ねんれい発言はつげんはじめることをかんがえると、それ以前いぜん年齢ねんれいどもが大人おとなたちの会話かいわとく殺人さつじん事件じけんについての会話かいわなど)やマスコミからの情報じょうほういちかいいたくらいでおぼえられるとはかんがえにくい。なかには「前世ぜんせい人物じんぶつ」やその家族かぞくまわりにはせていた秘密ひみつ事柄ことがらかんする情報じょうほう子供こどもっていたというケースも多数たすう存在そんざいする。また、どもと「前世ぜんせい人物じんぶつ」のものこのみやクセが一致いっちするという事実じじつは、たん言葉ことばつうじてられた知識ちしきだけではあらわれにくい。以上いじょう理由りゆうから「潜在せんざい意識いしきせつ」も却下きゃっかされる。

記憶きおく錯誤さくごせつ

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子供こども断片だんぺんてきはなした内容ないようを、両親りょうしんなどの証言しょうげんしゃ不正確ふせいかく記憶きおくし、「まれわり」の証言しょうげんつくしたのではないかとするせつである。実際じっさいには、子供こどもはなす「前世ぜんせい」の証言しょうげんは、両親りょうしんによって無視むしされたり、否定ひていてき解釈かいしゃくされるケースがほとんどである。一般いっぱんてきって、子供こども証言しょうげん両親りょうしんによって「誇張こちょう」されることはすくなく、ぎゃくに「過小かしょう評価ひょうか」される傾向けいこうがある。よってこのせつてはまらない。

遺伝いでん記憶きおくせつ

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前世ぜんせい人物じんぶつ」がおな家族かぞく子供こどもとしてあらたにまれわった、とされるケースでは、子供こども遺伝いでん影響えいきょうによりなんらかの記憶きおくいだのではないか、という解釈かいしゃくつようにおもえる。しかし、子供こどもつ「前世ぜんせい」の記憶きおく詳細しょうさいは、遺伝いでんもとづくとされる記憶きおくをはるかに上回うわまわっているため、このせつには説得せっとくりょくがない。

⑦ESP仮説かせつ (ちょう感覚かんかくてき知覚ちかくせつ)

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通常つうじょうではるすべのない出来事できごと子供こどもっているのは「ちょう能力のうりょく」によるものであり、そうした能力のうりょくによってられた情報じょうほうを「前世ぜんせい情報じょうほう」としてまとめあげたのではないか、とするせつである。

しかし、このせつにも問題もんだいてんがある。調査ちょうさされたどもには、ちょう能力のうりょくをもっているという証拠しょうこあたらなかった。子供こどもたちには、「前世ぜんせい」をかた以外いがいにPSIを発揮はっきしたらしい事実じじつられていない。また、遠方えんぽうにいる人物じんぶつかんする知識ちしきちょう感覚かんかくてき知覚ちかくによってたとしても、どもがそうした人物じんぶつおなじような特徴とくちょうをもつようになる理由りゆう説明せつめいできない。そうした人物じんぶつ行動こうどう真似まねることは、家族かぞくとの対立たいりつむので子供こどもたちにはそれをする動機どうきがない。またESPは情報じょうほう発信はっしんしゃ受信じゅしんしゃあいだ愛情あいじょう信頼しんらいなどつよ感情かんじょうむすびつきがあるときに発生はっせいしやすいことがわかっているが、まれわり事例じれいでは子供こどもと「前世ぜんせい人格じんかく」とのあいだ心理しんりてきつながりはない。そしてESP仮説かせつでは真性しんせいげん先天せんてんせい刻印こくいんなどの現象げんしょう説明せつめいできない。したがって「ESP仮説かせつ」は十分じゅうぶん説得せっとくりょくをもたない。

憑依ひょういせつ

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このせつでは「肉体にくたいたない人格じんかく」という実体じったいみとめて、それが肉体にくたいにとりいて子供こどもたちを支配しはいしているとかんがえる。

しかし、子供こどもたちに憑依ひょういしたのならば、支配しはい成功せいこうした人格じんかくが、子供こどもたちが4~8さいになるあいだ一様いちよう憑依ひょういをやめてしまうのは疑問ぎもんのこる。また、憑依ひょうい人格じんかく成長せいちょうする人格じんかくとがたたかっているような、人格じんかく分裂ぶんれつ傾向けいこう子供こどもたちにはられていない。子供こどもたちは、とく人格じんかく変化へんかしめさずにそうした記憶きおくはなすことから、人格じんかく変化へんか意識いしき変化へんかともなうことのおお憑依ひょういとはちが現象げんしょうである。また、この仮説かせつでも、前世ぜんせい人物じんぶつきずあとやあざがそのままははまだらとなっているようにえる現象げんしょうについては説明せつめいできない。したがって憑依ひょういせつ却下きゃっかされることとなる。  

まれわりせつ

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先述せんじゅつのように、ステイーヴンソンによれば、すべての仮説かせつ検討けんとうした結果けっか最終さいしゅうてきもっと妥当だとう解釈かいしゃくとしてのこるのが「まれわりせつ」である。

スティーヴンソンは、人間にんげん発達はったつは、遺伝いでん要因よういん環境かんきょう要因よういんくわえて「まれわり」というだい3の要因よういん影響えいきょうけるのではないか、と推測すいそくしている。まれわりせつ採用さいようすることで、「乳幼児にゅうようじ恐怖症きょうふしょう」「幼児ようじられるわった興味きょうみあそび」「(酒類しゅるいやタバコなど)大人おとな嗜好しこうひんへの愛好あいこう」「早熟そうじゅく性的せいてき行動こうどう」「せい同一どういつせい障害しょうがい」「一卵性双生児いちらんせいそうせいじられる相違そういてん」「子供こども理不尽りふじん攻撃こうげきせい」「左利ひだりき」「ははまだら」「先天的せんてんてき欠損けっそん」などの広範こうはん現象げんしょう容易ようい説明せつめいできるという利点りてんがある。

子供こどもたちのなかには、自殺じさつ生涯しょうがいえた前世ぜんせいかたものもいた。こうした事例じれいは「自殺じさつしてもくるしみはわらない」ことを自殺じさつ願望がんぼうしゃ気付きづかせるきっかけとなるのではないか、とスティーヴンソンは期待きたいしていた。

結論けつろん

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スティーヴンソンは「事例じれい報告ほうこくをつぶさにんだうえで、各自かくじ自分じぶんなりの結論けつろんるべきであるから、わたし解釈かいしゃく重要じゅうようでない」としながらも、最終さいしゅうてきに、あるしゅの「まれわりせつ」をれていた[7]

著作ちょさく

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  • 前世ぜんせい記憶きおくする20にん子供こども じょう (1977ねん) 今村いまむら光一こういち やくくさむらぶんしゃ
前世ぜんせい記憶きおくする20にん子供こども ちゅう (1978ねん) 今村いまむら光一こういち やくくさむらぶんしゃ
前世ぜんせい記憶きおくする20にん子供こども (1978ねん) 今村いまむら光一こういち やくくさむらぶんしゃ
前世ぜんせい記憶きおくする20にん子供こども (1980ねん合本がっぽんばん) 今村いまむら光一こういち やくくさむらぶんしゃ
Twenty Cases Suggestive of Reincarnation (1966)
Twenty Cases Suggestive of Reincarnation (1974) 改訂かいてい増補ぞうほばん
  • むしらせの科学かがく (1981ねん) 笠原かさはら敏雄としお やくくさむらぶんしゃ ISBN 978-4794700292
むしらせの科学かがく (1992ねん新装しんそうばん) 笠原かさはら敏雄としお やくくさむらぶんしゃ ISBN 978-4794700292
Telepathic Impressions: A Review and Report of 35 New Cases (1970)
  • 前世ぜんせい記憶きおくするどもたち (1990ねん) 笠原かさはら敏雄としお やく日本教文社にっぽんきょうぶんしゃ ISBN 978-4531080618
前世ぜんせい記憶きおくするどもたち (2021ねん文庫ぶんこばん) 笠原かさはら敏雄としお やく、KADOKAWA ISBN 978-4041114179
Children Who Remember Previous Lives: A Question of Reincarnation (1987)
Children Who Remember Previous Lives: A Question of Reincarnation (2000) 改訂かいていばん
  • 前世ぜんせい言葉ことばはな人々ひとびと (1995ねん) 笠原かさはら敏雄としお やく春秋しゅんじゅうしゃ ISBN 978-4393361092
Unlearned Language: New Studies in Xenoglossy (1984)
  • まれわりの刻印こくいん (1998ねん) 笠原かさはら敏雄としお やく春秋しゅんじゅうしゃ ISBN 978-4393361146
Where Reincarnation and Biology Intersect (1997) Reincarnation and Biology Volume 1 & 2 短縮たんしゅくばん
  • 前世ぜんせい記憶きおくするどもたち 2:ヨーロッパの事例じれいから (2005ねん) 笠原かさはら敏雄としお やく日本教文社にっぽんきょうぶんしゃ ISBN 978-4531081493
European Cases of the Reincarnation Type (2003)

邦訳ほうやく刊行かんこう

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  • Medical History-Taking (1960)
  • The Psychiatric Examination (1969)
  • The Diagnostic Interview (1971) Medical History-Taking 改訂かいてい増補ぞうほばん
  • Xenoglossy: A Review and Report of A Case (1974)
  • Cases of the Reincarnation Type Vol. I: Ten Cases in India (1975)
  • Cases of the Reincarnation Type Vol. II: Ten Cases in Sri Lanka (1978)
  • Cases of the Reincarnation Type Vol. III: Twelve Cases in Lebanon and Turkey (1980)
  • Cases of the Reincarnation Type Vol. IV: Twelve Cases in Thailand and Burma (1983)
  • Reincarnation and Biology: A Contribution to the Etiology of Birthmarks and Birth Defects Volume 1: Birthmarks (1997)
  • Reincarnation and Biology: A Contribution to the Etiology of Birthmarks and Birth Defects Volume 2: Birth Defects and Other Anomalies (1997)
  • Handbook of Psychiatry volume Five (2019) ジャバド・ヌルバフシュ、ハミデ・ジャハンギリ共著きょうちょ
  • Psychological Treatment Techniques For Social Anxiety Disorder (2020) アリクバル・ショリネジャード、ハミデ・ジャハンギリ共著きょうちょ

関連かんれん項目こうもく

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脚注きゃくちゅう

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  1. ^ Kelly 2007.
  2. ^ a b c d e 勝五郎かつごろう学者がくしゃ文人ぶんじんたち”. 日野ひの郷土きょうど資料しりょうかん. 2023ねん5がつ2にち閲覧えつらん
  3. ^ Fox, Margalit (February 18, 2007). "Ian Stevenson Dies at 88; Studied Claims of Past Lives". The New York Times.
  4. ^ Ian Stevenson, MD. Comments on the Psychological Effects of Mescaline and Allied Drugs. Round Table: Annual Meeting American Psychiatric Association. pp. 438–442.
  5. ^ 勝五郎かつごろうまれわり物語ものがたり”. 勝五郎かつごろうまれわり物語ものがたり探求たんきゅう調査ちょうさだん. 2023ねん5がつ3にち閲覧えつらん
  6. ^ a b http://www.02.246.ne.jp/~kasahara/psycho/discussion_of_reviews2.html
  7. ^ a b c 前世ぜんせい記憶きおくするどもたち』日本教文社にっぽんきょうぶんしゃ
  8. ^ 前世ぜんせい言葉ことばはな人々ひとびと春秋しゅんじゅうしゃ
  9. ^ まれわりの刻印こくいん日本教文社にっぽんきょうぶんしゃ

外部がいぶリンク

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