カーボ・ローディング

カーボ・ローディング（Carbohydrate Loading）とは、スポーツなどの場面ばめんで、運動うんどうエネルギーとなるグリコーゲンを通常つうじょうより多おおく体からだに貯蔵ちょぞうするための運動うんどう量りょうの調節ちょうせつおよび栄養えいよう摂取せっしゅ法ほうである。グリコーゲン・ローディングとも呼よばれる。

目的もくてき[編集へんしゅう]

カーボ・ローディングは、持久じきゅう力りょくを必要ひつようとするスポーツなどの場面ばめんで用もちいられるほか、結腸けっちょうの手術しゅじゅつを行おこなう患者かんじゃへの体調たいちょう管理かんりにも利用りようされる^[1]。

人間にんげんが体からだに蓄たくわえられるエネルギーの代表だいひょうとして脂肪しぼうがあるが、脂肪しぼうはたくさんの貯蔵ちょぞうが出来できる利点りてんがある反面はんめん、即効そっこう的てきな利用りように乏とぼしく、多おおくのスポーツではエネルギー源げんとして期待きたいしにくい。それに対たいし、グリコーゲンはエネルギーとしての分解ぶんかいが容易よういで即効そっこう性せいがあり、スポーツにおいて大変たいへん有効ゆうこうなエネルギーであるが、貯蔵ちょぞうできるのは主おもに肝臓かんぞうと骨格こっかく筋すじなどに僅わずかである。

カーボ・ローディングはグリコーゲンを最大限さいだいげん、体からだに貯蔵ちょぞうして高たかい運動うんどう能力のうりょくを得える事ことを目的もくてきに行おこなわれる。

効果こうか[編集へんしゅう]

通常つうじょうよりグリコーゲンを多おおく保持ほじするため、運動うんどうに必要ひつようなエネルギーの枯渇こかつを起おこしにくく、運動うんどう出来できる回数かいすうや連続れんぞくして運動うんどうし続つづける時間じかんを増大ぞうだいさせる事ことが出来できる。とりわけマラソンや自転車じてんしゃロードレース、スキーのクロスカントリーなどの高たかい持久じきゅう運動うんどうを継続けいぞくするスポーツでは、エネルギーを大量たいりょうに消費しょうひするため、グリコーゲンの貯蔵ちょぞう量りょうは成績せいせきに大おおきな影響えいきょうを及およぼす。

例たとえばマラソンなどで、大会たいかいの数日すうじつ前まえからトレーニングの強度きょうどを落おとし、休息きゅうそく日びも設もうけるなどして十分じゅうぶんに体力たいりょくを回復かいふくさせると大会たいかいで疲つかれが出でにくくなり、日頃ひごろとは比くらべ物ものにならないほど好成績こうせいせきとなる場合ばあいがある。これは休息きゅうそくによって、日頃ひごろのトレーニングで痛いたんだ筋繊維きんせんいが修復しゅうふくされるとともに、体内たいないで枯渇こかつ気味ぎみになっていたグリコーゲンが十分じゅうぶんに蓄積ちくせきされるため、身体しんたいが本来ほんらいの能力のうりょくを発揮はっき出来できるようになるからである。大会たいかい前まえにおける体内たいないのエネルギー調節ちょうせつを「カーボ調整ちょうせい」ともいう。

体内たいないでの蓄積ちくせき量りょう以上いじょうにグリコーゲンを消費しょうひし枯渇こかつした場合ばあいには、通常つうじょう、1日にち程度ていどでは十分じゅうぶんに回復かいふくが出来できない。グリコーゲンが十分じゅうぶん回復かいふくするまでには数すう日間にちかん（3日にち程度ていど）かかるのでこの間あいだは著いちじるしいパワー・持久じきゅう力りょくの不足ふそくに陥おちいる。体内たいないグリコーゲンの消費しょうひと貯蔵ちょぞうといったエネルギー収支しゅうしについての管理かんりをせず、大会たいかい直前ちょくぜんまで通常つうじょうのトレーニングを行おこなったり、休息きゅうそく期間きかんを設もうけないなどの誤あやまった調整ちょうせいを行おこなうと、試合しあい時じのパフォーマンスを低下ていかさせることになる。なお、カーボ・ローディングはスポーツ試合しあい時じの対応たいおうのみでなく、疲労ひろう回復かいふくや身体しんたい能力のうりょくの維持いじ・向上こうじょうなどといった日常にちじょう生活せいかつにおける身体しんたいコンデションの管理かんり法ほうとしても有効ゆうこうな概念がいねんである。

方法ほうほう[編集へんしゅう]

古典こてん的てき方法ほうほう[編集へんしゅう]

古典こてん的てきな例れいとしては、体からだにあるグリコーゲンを一度いちど枯渇こかつさせ、それによってグリコーゲンを早急そうきゅうに回復かいふく・貯蔵ちょぞうする反応はんのう（リバウンド）を利用りようして大量たいりょうの炭水化物たんすいかぶつを摂取せっしゅし、効率こうりつよくグリコーゲンを貯ため込こむ方法ほうほうである。

大会たいかい（試合しあい）など運動うんどう能力のうりょくを最大限さいだいげんに発揮はっきしたい日ひの約やく1週間しゅうかん前まえから4日にち程度ていど前まえまで、ごはんや麺類めんるい、パンなどの炭水化物たんすいかぶつの摂取せっしゅを制限せいげんする。代かわりにステーキやフライドチキンなど、タンパク質たんぱくしつと脂質ししつによって必要ひつようエネルギーを確保かくほしながら、無理むりの無ない程度ていどに運動うんどうを行おこない、一旦いったん、体からだのグリコーゲンを消費しょうひし枯渇こかつさせる。そして、3日にち前まえからは逆ぎゃくに控ひかえていた炭水化物たんすいかぶつ（スパゲッティ、うどんなど）を大量たいりょうに摂取せっしゅし、運動うんどうを控ひかえつつ最大限さいだいげんにエネルギーを貯ため込こむ。ただし、この方法ほうほうは、疲労ひろうが残のこったり、3日にち前まえからの高こう炭水化物たんすいかぶつの摂取せっしゅ期きにおいて体調たいちょうを崩くずした場合ばあい（特とくに消化しょうか器官きかんの不調ふちょうなど）にはグリコーゲンの蓄積ちくせきが目的もくてき通どおり出来できなくなる等とうのリスクもある。

**古典こてん的てきなカーボ・ローディングの例れい**
大会たいかい（試合しあい）日びを基準きじゅんとした時期じき	運動うんどう量りょう	食事しょくじ	備考びこう
約やく1週間しゅうかん前まえ〜4日にち前まえ	増ふやす（または通常つうじょう）	高こうタンパク質たんぱくしつ・低てい炭水化物たんすいかぶつ	体内たいないグリコーゲンを枯渇こかつさせる
3日にち前まえ	減へらす	高こう炭水化物たんすいかぶつ	リバウンド効果こうかによりグリコーゲン蓄積ちくせき
2日にち前まえ〜前日ぜんじつ	減へらす・休やすむ	高こう炭水化物たんすいかぶつ	リバウンド効果こうかによりグリコーゲン蓄積ちくせき

現在げんざいの方法ほうほう[編集へんしゅう]

現在げんざいでは炭水化物たんすいかぶつの制限せいげんを行おこなわず、大会たいかい（試合しあい）の約やく1週間しゅうかん前まえから運動うんどう量りょうを減へらしてグリコーゲンの消費しょうひを抑おさえつつ、3日にち前まえから大量たいりょうの炭水化物たんすいかぶつを摂取せっしゅして、グリコーゲンを体内たいないに蓄たくわえる方法ほうほうが推奨すいしょうされている^[2]。こちらの方ほうが体からだに掛かかる負担ふたんが少すくなく、調整ちょうせいリスクも少すくない。この方法ほうほうは西にしオーストラリア大学だいがくの科学かがく者しゃが開発かいはつした方法ほうほうであり、古典こてん的てき方法ほうほうと比くらべても90%近ちかくのグリコーゲンを蓄積ちくせきできる。

**現在げんざいのカーボ・ローディングの例れい**
大会たいかい（試合しあい）日びを基準きじゅんとした時期じき	運動うんどう量りょう	食事しょくじ	備考びこう
約やく1週間しゅうかん前まえ〜4日にち前まえ	減へらす	通常つうじょう（混合こんごう食しょく）	体内たいないグリコーゲンを維持いじ
3日にち前まえ	減へらす	高こう炭水化物たんすいかぶつ	体内たいないグリコーゲンを蓄積ちくせき
2日にち前まえ〜前日ぜんじつ	減へらす・休やすむ	高こう炭水化物たんすいかぶつ	体内たいないグリコーゲンを蓄積ちくせき

単たんに大会たいかい（試合しあい）前まえに炭水化物たんすいかぶつを多おおめに摂とるだけでも1.1〜1.2倍ばい程度ていどのグリコーゲン貯蔵ちょぞう量りょう増大ぞうだいは見込みこめるとされるが、カーボローディングを行おこなうことによって、筋肉きんにく、肝臓かんぞう中ちゅうのグリコーゲン量りょうをおよそ2〜3倍ばいに増加ぞうかさせることが可能かのうである。いずれにせよ、大会たいかい前まえ数すう日間にちかんは運動うんどう量りょうを減へらすか、休やすまなければ効果こうかは見込みこめない。

一時いちじ的てきに血糖けっとう値ちを下さげる方法ほうほう[編集へんしゅう]

試合しあいの2時じ間あいだ前まえまでに有ゆう酸素さんそ運動うんどうを行おこなうことで血ち中ちゅうのインスリン濃度のうどが上昇じょうしょうし、血清けっせい中ちゅうのグルコース濃度のうどが著いちじるしく下さがる。これによって60分ふん以上いじょう続つづく試合しあいなどで高たかいパフォーマンスを発揮はっきできる。これは一時いちじ的てきな反作用はんさよう的てき低てい血糖けっとう（英語えいご版ばん）の状態じょうたいになることで起おこることが知しられており、好成績こうせいせきを残のこしているアスリートの多おおくが行おこなっている。ただしこの方法ほうほうでは一時いちじ的てきな低てい血糖けっとう（英語えいご版ばん）からくるインスリン反応はんのう（英語えいご版ばん）によってしばらくの間あいだパフォーマンスが低下ていかする。

食事しょくじ内容ないよう[編集へんしゅう]

カーボ・ローディング期間きかん中ちゅうの食事しょくじの内容ないようは摂取せっしゅしたカロリーと同様どうように重要じゅうようである。食事しょくじは2つの単たん糖とう、グルコースとフルクトースを中心ちゅうしんに構成こうせいされる。フルクトースは肝臓かんぞうで代謝たいしゃされてグリコーゲンになるが、カーボ・ローディングの目的もくてきである筋肉きんにく中ちゅうへのグリコーゲンの貯蓄ちょちくには効果こうかがない。結果けっか、フルクトースを多おおく含ふくむお菓子かしや果物くだものなどは期間きかん中ちゅうに食たべる最適さいてきな食物しょくもつとはいえない。古典こてん的てきカーボ・ローディングではグルコースの多量たりょう体たいであるデンプンを主おも栄養えいようとするパスタが主おもな食事しょくじになる。他たのグルコースを豊富ほうふに含ふくむ食たべ物ものにはご飯はん、パン、ジャガイモなどがある。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]

^ Noblett, S. E.; Watson, D. S.; Huong, H.; Davison, B.; Hainsworth, P. J.; Horgan, A. F. (2006). “Pre-operative oral carbohydrate loading in colorectal surgery: A randomized controlled trial”. Colorectal Disease 8 (7): 563–9. doi:10.1111/j.1463-1318.2006.00965.x. PMID 16919107.
^ パスタ・カーボローディング講座こうざ・理論りろん編へん（管理かんり栄養士えいようし）