(Translated by https://www.hiragana.jp/)
キロノヴァ - Wikipedia コンテンツにスキップ

キロノヴァ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

キロノヴァ[1]えい: kilonova, macronova)は、高密度こうみつど天体てんたい融合ゆうごうするさいこるだい規模きぼ爆発ばくはつ現象げんしょうである。その電磁でんじ放射ほうしゃは、r過程かていによってしょうじた元素げんそ放射ほうしゃせい崩壊ほうかいこすことによってしょうじる。キロノバとも表記ひょうきされる[2]

概略がいりゃく

[編集へんしゅう]

白色はくしょく矮星の爆発ばくはつによってしょうじる新星しんせい(nova)のやく1,000ばいあかるさにたっすることからキロノヴァ(kilonova)とばれる。超新星ちょうしんせい(supernova)とくらべると10ぶんの1から100ぶんの1程度ていどあかるさである[3]

キロノヴァは、中性子星ちゅうせいしせいれんぼしまたは中性子星ちゅうせいしせいブラックホールれんぼし融合ゆうごうすることによって発生はっせいするとかんがえられている[4]

2つのコンパクトぼし融合ゆうごうするさい質量しつりょうかるほう天体てんたいおもほう天体てんたい潮汐ちょうせきりょくにより破壊はかいされる。破壊はかいされた天体てんたいのほとんどの物質ぶっしつおも天体てんたい降着こうちゃく円盤えんばんとなるが、太陽たいよう質量しつりょうの0.001ばいから0.1ばい程度ていど質量しつりょうは、光速こうそくの0.1ばいから0.2ばいというはやさでひとしかたてき放出ほうしゅつされる。このさいr過程かていまれた中性子ちゅうせいし過剰かじょうかくは、ほんのすうびょうあいだ核分裂かくぶんれつベータ崩壊ほうかい元素げんそへと変換へんかんされる。このあらたに合成ごうせいされた放射ほうしゃせい元素げんそ崩壊ほうかいとそれによって発生はっせいする放射線ほうしゃせんが、1034J/sから1035.5J/sの光度こうどともなって半日はんにちから10日とおかわたってつづ爆発ばくはつ維持いじしている[5]

r過程かてい生成せいせいされる原子げんしりょう130以上いじょう元素げんそ一部いちぶは、超新星ちょうしんせい爆発ばくはつ生成せいせいされるりょうではほしあいだ物質ぶっしつちゅう観測かんそく説明せつめいできないほど不足ふそくしており、キロノヴァはそれらの物質ぶっしつ生成せいせいげんとして有力ゆうりょくされている[6]

発見はっけん

[編集へんしゅう]

2013ねん6がつから7がつにかけてのハッブル宇宙うちゅう望遠鏡ぼうえんきょうガンマ線がんません監視かんし衛星えいせいスウィフトによる観測かんそくによって、はじめてキロノヴァのものとかんがえられるガンマ線がんませんバースト発見はっけんされた。2013ねん6がつ13にち、スウィフトが発見はっけんしたガンマ線がんませんバーストの発生はっせいげん GRB 130603B で、ハッブルのこう視野しやカメラが近赤外線きんせきがいせんかがやきを確認かくにんした[7]。7月3にち観測かんそくではそのかがやきがおとろえており、この現象げんしょうが「キロノヴァ」であった証拠しょうこ示唆しさしている[7]

重力じゅうりょく検出けんしゅつ

[編集へんしゅう]

2017ねん10がつ16にち、アメリカの重力じゅうりょく望遠鏡ぼうえんきょうLIGO欧州おうしゅう重力じゅうりょく望遠鏡ぼうえんきょうVirgo共同きょうどう観測かんそくチームは、中性子星ちゅうせいしせいれんぼし合体がったいによる重力じゅうりょく発見はっけんしたと発表はっぴょうした[8]。「GW170817」と命名めいめいされたこの重力じゅうりょくなみげん天体てんたい波形はけい分析ぶんせきした結果けっか中性子星ちゅうせいしせい同士どうし合体がったい発生はっせいしたものとかんがえられる波形はけいであるとしている[8]

共同きょうどう実験じっけんチームは、世界中せかいじゅう研究けんきゅうチームに警報けいほうおくり、70以上いじょう観測かんそく施設しせつ重力じゅうりょく検出けんしゅつされた領域りょういき観測かんそくした。その結果けっか、11あいだ複数ふくすう観測かんそく施設しせつがこの重力じゅうりょくなみげん天体てんたい対応たいおうするとかんがえられる天体てんたい発見はっけんした[8]日本にっぽん重力じゅうりょく追跡ついせき観測かんそくチームJ-GEMは、すばる望遠鏡ぼうえんきょうちょうこう視野しやぬし焦点しょうてんカメラ HSC (Hyper Suprime-Cam) をはじめ、国内外こくないがい望遠鏡ぼうえんきょうISS搭載とうさいされているぜんてんXせん監視かんし装置そうち (MAXI) とカロリメータがた宇宙うちゅう電子でんしせん望遠鏡ぼうえんきょう (CALET) も動員どういんして、可視かしこうからXせんガンマ線がんませんいたひろ波長はちょういき重力じゅうりょくなみげん天体てんたい探索たんさくした[8]。その結果けっかうみへび銀河ぎんがNGC 4993に、可視かしこうから近赤外線きんせきがいせん領域りょういきひか天体てんたい姿すがたとらえることに成功せいこうした[8]。これはすでにGW170817に対応たいおうする天体てんたいとして報告ほうこくされていたものと一致いっちしており、今回こんかい発見はっけんつよ裏付うらづけをあたえるものとなった[8]

GW170817で観測かんそくされた現象げんしょうは、中性子星ちゅうせいしせいれんぼし合体がったいによってこるとされる重力じゅうりょくガンマ線がんませんバーストr過程かてい生成せいせいされた放射ほうしゃせい物質ぶっしつ崩壊ほうかい発生はっせいする電磁波でんじはといった理論りろんじょう予測よそくされていたキロノヴァの特徴とくちょうがそれぞれ検出けんしゅつされたものとなった[8]

出典しゅってん

[編集へんしゅう]
  1. ^ 中性子星ちゅうせいしせい合体がったいからのひかりかたよりがこるあたらしいメカニズムを提唱ていしょう - かくけん”. 素粒子そりゅうし原子核げんしかく研究所けんきゅうじょ (2018ねん11月20にち). 2019ねん9がつ26にち閲覧えつらん
  2. ^ 天文学てんもんがく辞典じてん » キロノバ”. 天文学てんもんがく辞典じてん. 日本にっぽん天文てんもん学会がっかい. 2019ねん9がつ26にち閲覧えつらん
  3. ^ Nuttall, L. K.; White, D. J.; Sutton, P. J.; Daw, E. J.; Dhillon, V. S.; Zheng, W.; Akerlof, C. (2013). “LARGE-SCALE IMAGE PROCESSING WITH THE ROTSE PIPELINE FOR FOLLOW-UP OF GRAVITATIONAL WAVE EVENTS”. The Astrophysical Journal Supplement Series 209 (2): 24. arXiv:1211.6713v2. Bibcode2013ApJS..209...24N. doi:10.1088/0067-0049/209/2/24. ISSN 0067-0049. 
  4. ^ Tanvir, N. R.; Levan, A. J.; Fruchter, A. S.; Hjorth, J.; Hounsell, R. A.; Wiersema, K.; Tunnicliffe, R. L. (2013). “A ‘kilonova’ associated with the short-duration γがんま-ray burst GRB 130603B”. Nature 500 (7464): 547-549. arXiv:arXiv:1306.4971v2. Bibcode2013Natur.500..547T. doi:10.1038/nature12505. ISSN 0028-0836. 
  5. ^ Metzger, B. D.; Berger, E. (2012). “WHAT IS THE MOST PROMISING ELECTROMAGNETIC COUNTERPART OF A NEUTRON STAR BINARY MERGER?”. The Astrophysical Journal 746 (1): 48. doi:10.1088/0004-637X/746/1/48. ISSN 0004-637X. 
  6. ^ Rosswog, S.; Korobkin, O.; Arcones, A.; Thielemann, F.- K.; Piran, T. (2014). “The long-term evolution of neutron star merger remnants - I. The impact of r-process nucleosynthesis”. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 439 (1): 744-756. doi:10.1093/mnras/stt2502. ISSN 0035-8711. 
  7. ^ a b ハッブル、「キロノヴァ」の存在そんざい確認かくにん”. National Geographic (2013ねん8がつ8にち). 2016ねん6がつ12にち閲覧えつらん
  8. ^ a b c d e f g 鳥嶋とりしま也 (2017ねん10がつ16にち). べいおう中性子星ちゅうせいしせい合体がったいによる重力じゅうりょくはつ観測かんそく成功せいこう - 日本にっぽん追跡ついせき観測かんそく成果せいか. マイナビニュース (マイナビ). https://news.mynavi.jp/techplus/article/20171016-a274/ 2017ねん10がつ17にち閲覧えつらん 

関連かんれん項目こうもく

[編集へんしゅう]