クインテッセンス (宇宙うちゅうろん)

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物理ぶつりがくにおけるクインテッセンスとは、観測かんそくされている膨張ぼうちょうする宇宙うちゅう加速かそくがどの程度ていど説明せつめいするために仮定かていされたダークエネルギーいち形式けいしき。1998ねんに、物理ぶつり学者がくしゃたちによって重力じゅうりょく電磁気でんじきりょくよわちからつよちから以外いがい基本きほんてきだい5のちからとして提案ていあんされた。クインテッセンスは、時間じかん経過けいか関係かんけいなく一定いっていである宇宙うちゅう定数ていすうとはことなり、それ自身じしんがダイナミックであり時間じかん経過けいかとともに変化へんかする。

クインテッセンスは、運動うんどうエネルギーとポテンシャルエネルギーのによって求心きゅうしんてきはたらいたり(=引力いんりょく)、反発はんぱつてきはたらいたり(=斥力せきりょく)することができるとされる。具体ぐたいてきには、クインテッセンスはおよそ10おくねんまえ宇宙うちゅう年齢ねんれいはおよそ138おくねんである)に反発はんぱつてきになり、その結果けっか宇宙うちゅう膨張ぼうちょう加速かそくしたとかんがえられている[1]


スカラーじょう[編集へんしゅう]

クインテッセンスは wq状態じょうたい方程式ほうていしきったスカラーじょうであり、この圧力あつりょく pq密度みつど qはポテンシャルエネルギー 運動うんどうエネルギーのこうによって下記かきのようにあらわされる;

すなわち、クインテッセンスは一般いっぱんには密度みつどをもつため、wq時間じかん関数かんすうとなり動的どうてきである。たいして、宇宙うちゅう定数ていすうは エネルギー密度みつど固定こていされ、wq = −1 となり静的せいてきである。

”トラッカー”の挙動きょどう[編集へんしゅう]

クインテッセンスのモデルのおおくがトラッカーばれるいをする。ポール・スタインハート et al.(1999ねん)は、これにより宇宙うちゅう定数ていすう問題もんだい部分ぶぶんてき説明せつめいした[2]

これらのモデルでは、クインテッセンスじょう密度みつどは、物質ぶっしつ放射ほうしゃひとしくなる放射ほうしゃ密度みつど(あるいはそれ以下いか)までちかづいていく。すると、今度こんどはこれをトリガーとしてダークエネルギーのような特徴とくちょうはじめ、ついにはこれが宇宙うちゅうでの主要しゅよう特徴とくちょうとなる。当然とうぜんながらこれはダークエネルギーのスケールをちいさくする[3]

宇宙うちゅうろんてきデータで”トラッカー”の方法ほうほう予測よそくする宇宙うちゅう拡大かくだいりつ比較ひかくすると、”トラッカー”が状態じょうたい方程式ほうていしきいを適切てきせつ説明せつめいするには4つのパラメータが必要ひつようというのがおおきな特徴とくちょうとなる。[4][5]

ところが、最大さいだいでも2でよいモデルがちか将来しょうらい(2015ねんはじめから2020ねんころまで)にられるデータによって最適さいてきとされるだろうということがしめされている[6]

具体ぐたいてきなモデル[編集へんしゅう]

ある特別とくべつ場合ばあいwq < −1 ではクインテッセンスはファントムエネルギーあらわす。[7]

ここで、”k-エッセンス”(運動うんどうエネルギーてきクインテッセンスをりゃくしたもの)という運動うんどうエネルギーの標準ひょうじゅんかたちかんがえると、これが存在そんざいする場合ばあいはダークエネルギーのエネルギー密度みつどおおきくなっていくために宇宙うちゅうビッグリップこす要因よういんとなる。それは宇宙うちゅう膨張ぼうちょうりつ指数しすう関数かんすう以上いじょう高速こうそく増大ぞうだいしていくからである。

Quintom シナリオ[編集へんしゅう]

用語ようご[編集へんしゅう]

この宇宙うちゅうろん用語ようご古代こだいギリシャにおける古典こてんてき要素ようそ分類ぶんるいちなんでいる。当時とうじ、”純粋じゅんすいな”だい5の物質ぶっしつ: quinta essentia、”クインタ・エッセンシア”)”であるエーテルが、地球ちきゅうこうのはるか宇宙うちゅうたしているとかんがえた。これと類似るいじさせて、現代げんだいの”クインテッセンス”はぜん宇宙うちゅうふくまれるすべての物質ぶっしつとエネルギーをあらわすための5番目ばんめられたものである。(現代げんだい解釈かいしゃくにおけるの4つは、古代こだい思想しそうとはことなっている。)


参照さんしょう[編集へんしゅう]

  1. ^ Christopher Wanjek; "Quintessence, accelerating the Universe?" ;http://www.astronomytoday.com/cosmology/quintessence.html
  2. ^ Zlatev, I.; Wang, L.; Steinhardt, P. (1999). “Quintessence, Cosmic Coincidence, and the Cosmological Constant”. Physical Review Letters 82 (5): 896–899. arXiv:astro-ph/9807002. Bibcode1999PhRvL..82..896Z. doi:10.1103/PhysRevLett.82.896. 
  3. ^ Steinhardt, P.; Wang, L.; Zlatev, I. (1999). “Cosmological tracking solutions”. Physical Review D 59 (12): 123504. arXiv:astro-ph/9812313. Bibcode1999PhRvD..59l3504S. doi:10.1103/PhysRevD.59.123504. 
  4. ^ Linden, Sebastian; Virey, Jean-Marc (2008). “Test of the Chevallier-Polarski-Linder parametrization for rapid dark energy equation of state transitions”. Physical Review D 78 (2): 023526. arXiv:0804.0389. Bibcode2008PhRvD..78b3526L. doi:10.1103/PhysRevD.78.023526. 
  5. ^ Ferramacho, L.; Blanchard, A.; Zolnierowsky, Y.; Riazuelo, A. (2010). “Constraints on dark energy evolution”. A&A 514: A20. arXiv:0909.1703. Bibcode2010A&A...514A..20F. doi:10.1051/0004-6361/200913271. 
  6. ^ Linder, Eric V.; Huterer, Dragan (2005). “How many cosmological parameters”. Physical Review D 72 (4): 043509. arXiv:astro-ph/0505330. Bibcode2005PhRvD..72d3509L. doi:10.1103/PhysRevD.72.043509. 
  7. ^ Caldwell, R. R. (2002). “A phantom menace? Cosmological consequences of a dark energy component with super-negative equation of state”. Physics Letters B 545 (1-2): 23–29. arXiv:astro-ph/9908168. Bibcode2002PhLB..545...23C. doi:10.1016/S0370-2693(02)02589-3. 

もっとむには[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]