(Translated by https://www.hiragana.jp/)
力 (物理学) - Wikipedia コンテンツにスキップ

ちから (物理ぶつりがく)

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

物理ぶつりがくにおけるちからちからえい: force)とは、物体ぶったい状態じょうたい変化へんかさせる原因げんいんとなる作用さようであり[1]、その作用さようおおきさをあらわ物理ぶつりりょうである。とく質点しつてん動力どうりょくがくにおいては、質点しつてん運動うんどう変化へんかさせる状態じょうたいりょうのことをいう[2]ひろがりを物体ぶったい場合ばあいは、運動うんどう状態じょうたいとともにその形状けいじょう変化へんかさせる。

ほんこうではまず、古代こだい自然しぜん哲学てつがくにおけるちからあつかいからはじ近世きんせい確立かくりつされた「ニュートン力学りきがく」や、古典こてん物理ぶつりがくにおける力学りきがく、すなわち古典こてん力学りきがく発展はってんといった歴史れきしについてべる。

つぎ歴史れきしからはなれ、現在げんざい一般いっぱんてき視点してんから古典こてん力学りきがくにおけるちからについて説明せつめいし、その古典こてん力学りきがく対置たいちされる量子力学りょうしりきがくについてすこれる。

最後さいごに、ちから概念がいねんについて時折ときおりなされてきた、「形而上学けいじじょうがくてきである」といったような批判ひはんなどについて、その重要じゅうようさもあり、こうあらためてあつかう。

歴史れきし

[編集へんしゅう]

自然しぜん哲学てつがくにおいて、ちからという概念がいねんは、なにかに内在ないざいすると想定そうていされている場合ばあいと、そとから影響えいきょうおよぼすと想定そうていされている場合ばあいがある。古代こだいより思索しさくかさねられてきた。

古代こだい

[編集へんしゅう]

プラトン物質ぶっしつプシュケー運動うんどうこすとかんがえ、デュナミスという言葉ことば他者たしゃはたらきかけるちから他者たしゃからなにかをちからという意味いみたせた。

アリストテレスは『自然しぜんがく』というしょあらわしたが、物質ぶっしつ本性ほんしょういんとする自然しぜん運動うんどうと、物質ぶっしつそとから強制きょうせいてきちからはたら運動うんどう区別くべつした。

6世紀せいきヨハネス・ピロポノスは、物質ぶっしつそのものにちからがあるとかんがえた。

アラビア半島はんとう自然しぜん哲学てつがくしゃら(イスラム科学かがく)のなかにはピロポノスのかんがえを継承けいしょうするものもいた。

ルネサンス以降いこう

[編集へんしゅう]

14世紀せいきジャン・ビュリダンは、もの自体じたいimpetus(インペトゥス、いきおい)がめられているとして、それによってもの運動うんどう説明せつめいした。これをインペトゥス理論りろんう。

ステヴィンの機械きかい斜面しゃめんじょう等間隔とうかんかくおもさのひとしいたま配置はいちする。それぞれのたまなわつなくさりつくる。このときくさり斜面しゃめんうえ一方いっぽうへと回転かいてんするなら、これは永久えいきゅう機関きかんとして利用りようできる。

ベルギー出身しゅっしんオランダじん工学こうがくしゃシモン・ステヴィン (Simon Stevin、1548 — 1620) はちから合成ごうせい分解ぶんかいまさしくあつかった人物じんぶつとして有名ゆうめいである。1586ねん出版しゅっぱんした著書ちょしょ "De Beghinselen Der Weeghconst " のなかでステヴィンは斜面しゃめん問題もんだいについて考察こうさつし、「ステヴィンの機械きかい」とばれる架空かくう永久えいきゅう機関きかん実際じっさいには動作どうさしないことをしめした[ちゅう 1]。つまり、どのような斜面しゃめんたいしても斜面しゃめん頂点ちょうてんにおいてちからいがたもたれるにはちから平行四辺形へいこうしへんけいっていなければならないことを見出みいだしたのである。

ちから合成ごうせい分解ぶんかい規則きそくは、ステヴィンが最初さいしょ発見はっけんしたものではなく、それ以前いぜんにもそれ以後いごにも様々さまざま状況じょうきょう立場たちばろんじられている。どう時代じだい発見はっけんとして有名ゆうめいなものとしてガリレオ・ガリレイ理論りろんがある。ガリレオは斜面しゃめん問題もんだいてこなどのほか機械きかい問題もんだいえられることを見出みいだした。

その、フランスの数学すうがくしゃ天文学てんもんがくしゃであるフィリップ・ド・ラ・イール (1640 — 1718) は数学すうがくてき形式けいしきととのえ、ちから空間くうかんベクトルとしてあらわすようになった[ちゅう 2]

ルネ・デカルト渦動かどうせつ (Cartesian Vortex) をとなえ、「空間くうかんには隙間すきまなくえないなにかがちており、もの移動いどうするとうずしょうじている 」とし、物体ぶったいエーテルうずによってうごかされていると説明せつめいした[4][5]

ニュートン力学りきがく

[編集へんしゅう]

現代げんだい力学りきがくつうじるかんがかた体系たいけいした人物じんぶつとして、しばしばアイザック・ニュートンげられる。ニュートンはガリレオ・ガリレイ動力どうりょくがくまなんでいた。またデカルトの著書ちょしょみ、その渦動かどうせつについてもっていた(ただしこの渦動かどうせつ内容ないようについては批判ひはんてきていた)。

ニュートンは1665ねんから1666ねんにかけて数学すうがく自然しぜん科学かがくについておおくの結果けっかた。とく物体ぶったい運動うんどうについて、ちから平行四辺形へいこうしへんけい法則ほうそく発見はっけんしている。この結果けっかのちに『自然しぜん哲学てつがく数学すうがくてきしょ原理げんり』(プリンキピア、1687年刊ねんかん)のなか運動うんどうだい2法則ほうそくもちいて説明せつめいされている[6]

ニュートンはその著書ちょしょ自然しぜん哲学てつがく数学すうがくてきしょ原理げんり』において、運動うんどうりょう (quantity of motion) を物体ぶったい速度そくど質量しつりょう (quantity of matter) のせきとして定義ていぎし、運動うんどう法則ほうそくについてべている。ニュートンの運動うんどうだい2法則ほうそくは「運動うんどう変化へんか物体ぶったいあたえられたちから比例ひれいし、その方向ほうこうあたえられたちからきにしょうじる 」というもので、これは現代げんだいてきには以下いかのように定式ていしきされる。

[ちゅう 3]

ここで dp/dt物体ぶったい運動うんどうりょう p時間じかん微分びぶんF物体ぶったいにかかるちからあらわす。このニュートンのだい2法則ほうそくは、運動うんどうだい1法則ほうそく慣性かんせいけいにおいてつ。

ニュートン自身じしんだい2法則ほうそく微分びぶんもちいた形式けいしきではべていない。運動うんどう変化へんか (alteration of motion) を運動うんどうりょう変化へんか解釈かいしゃくするなら、それはちからせき相当そうとうする。

ねつ力学りきがく

[編集へんしゅう]

エネルギーとちから

[編集へんしゅう]

ねつ力学りきがく形成けいせいされる19世紀せいき前半ぜんはんまでは、現在げんざいエネルギー相当そうとうする概念がいねんちから: vis, えい: force, どく: Kraft)とばれていた。 たとえば、ルドルフ・クラウジウスは1850ねん論文ろんぶん ,,Über die bewegende Kraft der Wärme "[7]ねつ力学りきがくだいいち法則ほうそくについてべているが、Kraft というかたりもちいているし、その英訳えいやくでも Forceもちいられている。

現在げんざい運動うんどうエネルギー対応たいおうする概念がいねんについて、1676ねんから1689ねんころゴットフリート・ライプニッツvis viva名付なづけた。これは当時とうじ運動うんどうかんする保存ほぞんそく議論ぎろんなかで、保存ほぞんりょうとして提案ていあんされたものである。

1807ねんに、トマス・ヤングvis viva にあたる概念がいねんエネルギー名付なづけたが、さまそれが一般いっぱんもちいられることはなかった。力学りきがく言葉ことばとして運動うんどうエネルギー位置いちエネルギー定義ていぎされるのは1850ねん以降いこうのことで、運動うんどうエネルギーは1850ねんごろウィリアム・トムソンによって、位置いちエネルギーは1853ねんウィリアム・ランキンによってそれぞれ定義ていぎされている[8]

古典こてん力学りきがく

[編集へんしゅう]
古典こてん力学りきがく

運動うんどうだい2法則ほうそく
歴史れきし英語えいごばん
ちから (物理ぶつりがく)
force
りょう記号きごう F
次元じげん M L T −2
種類しゅるい ベクトル
SI単位たんい ニュートン (N)
CGS単位たんい ダイン (dyn)
FPS単位たんい パウンダル (pdl)
MKS重力じゅうりょく単位たんい 重量じゅうりょうキログラム (kgf)
CGS重力じゅうりょく単位たんい 重量じゅうりょうグラム (gf)
FPS重力じゅうりょく単位たんい 重量じゅうりょうポンド (lbf)
テンプレートを表示ひょうじ

定義ていぎ

[編集へんしゅう]

古典こてん力学りきがくにおけるちから英語えいご: force)の、もっと初等しょとうてき定義ていぎ質量しつりょう加速度かそくどせきちからとするものである。

[ちゅう 3]

ここで F物体ぶったいはたらちからm物体ぶったい質量しつりょうa物体ぶったい加速度かそくどあらわ[ちゅう 4]ちからきとおおきさによって特徴とくちょうづけられ、一般いっぱんにはベクトルりょうとして表現ひょうげんされる。この定義ていぎニュートン力学りきがく[ちゅう 5]における運動うんどうりょう定義ていぎ運動うんどうだい2法則ほうそくからみちびかれる。上述じょうじゅつF = ma はしばしばニュートンの運動うんどう方程式ほうていしき(あるいは短縮たんしゅくして運動うんどう方程式ほうていしき)とばれる。

一般いっぱんちから運動うんどうだい2法則ほうそくたし、物体ぶったいはたらちから総和そうわ合力ごうりょく)は運動うんどうりょう時間じかん変化へんかひとしい。

ここで F物体ぶったいはたらちからp物体ぶったい運動うんどうりょうt慣性かんせいけい時刻じこくあらわす。ニュートン力学りきがくにおいて運動うんどうりょう速度そくど v慣性かんせい質量しつりょう mせきあらわされ、

また速度そくど v時間じかん微分びぶん加速度かそくど a であることから、物体ぶったい慣性かんせい質量しつりょう一定いっていである場合ばあいについて、つぎ関係かんけいつ。

以上いじょう相対そうたいろんかんがえにれない場合ばあいである。そのため実際じっさいには、慣性かんせいけいから対象たいしょうの(相対そうたい速度そくど光速こうそくちかくなると近似きんじではなくなる。特殊とくしゅ相対性理論そうたいせいりろんでは慣性かんせいけい定義ていぎのほか、運動うんどうりょう定義ていぎもまたニュートン力学りきがくことなる。相対そうたいろんてき粒子りゅうし運動うんどうりょうをニュートン力学りきがくわせて表現ひょうげんすると、運動うんどうりょう以下いかのように修正しゅうせいされる。

[ちゅう 6]

ここで c光速こうそくであり、m不変ふへん質量しつりょう静止せいし質量しつりょう)である。したがって、運動うんどう方程式ほうていしき以下いかのようになる。

光速こうそくたいして速度そくどおおきさ vきわめてちいさければ、相対そうたいろんてき運動うんどうりょうはニュートン力学りきがくにおける定義ていぎとほとんど一致いっちする。たとえば音速おんそく光速こうそくの 0.0001% 程度ていどであり、地球ちきゅうじょうこる大抵たいてい運動うんどうかんしてはニュートン力学りきがく適用てきようすることができる。

運動うんどうだい2法則ほうそく慣性かんせいけいにおいてのみち、慣性かんせいけい運動うんどうだい1法則ほうそくによって定義ていぎされる。一般いっぱんあつかわれるけい完全かんぜん意味いみ慣性かんせいけいであることはなく、たとえば地上ちじょう運動うんどうすくなからず地球ちきゅう自転じてん影響えいきょうけるが、自転じてんによってしょうじる慣性かんせいりょく運動うんどう方程式ほうていしきくわえることで、慣性かんせいけい運動うんどう慣性かんせいけい場合ばあいおなじようにあつかうことができる。

ニュートン力学りきがくでは、運動うんどうだい3法則ほうそくつ。運動うんどうだい3法則ほうそくは「作用さよう反作用はんさよう法則ほうそく」ともばれ、作用さようちから)にたいしてそのたいとなる反作用はんさようかなら存在そんざいすることをべる。たとえば物体ぶったいAから物体ぶったいBにおよぼされるちから FA → B存在そんざいするとき、それをちから FB → A物体ぶったいBから物体ぶったいAへおよぼされる。両者りょうしゃかんがえるとこれはつねに 0 にひとしくなる。

作用さよう反作用はんさよう法則ほうそく慣性かんせいりょくたいしてはりたず、この意味いみ慣性かんせいりょくかけのちから (fictitious force) であるということができる。慣性かんせいりょく慣性かんせいけいから慣性かんせいけい視点してんうつしたさいあらわれるちからであり、その反作用はんさよう存在そんざいしない。ニュートン力学りきがくにおいては慣性かんせいりょくのぞくすべてのちから物体ぶったいあいだ相互そうご作用さようとして理解りかいされるが、電磁場でんじばのようなとの相互そうご作用さようふくめる場合ばあい物体ぶったいあいだだけで相互そうご作用さようじるという前提ぜんてい破綻はたんし、その結果けっかとして上述じょうじゅつ作用さよう反作用はんさよう法則ほうそくりたなくなる。そのため、電磁場でんじばふく力学りきがくにおいては、作用さよう反作用はんさよう法則ほうそく電磁気でんじきがく適合てきごうするように修正しゅうせいされる。

作用さよう反作用はんさよう法則ほうそくはより一般いっぱんされ運動うんどうりょう保存ほぞんそくとしてべれられることがある。運動うんどうりょう保存ほぞんそくそくした立場たちばでは、ちから物体ぶったいあいだ(あるいは物体ぶったいあいだ)でおこなわれる相互そうご運動うんどうりょう授受じゅじゅしめすものと理解りかいできる。ある時間じかん物体ぶったいおよぼされるちから総和そうわ時間じかんせき、すなわちちから時間じかんかんする積分せきぶんは、その時間じかんにおける物体ぶったい運動うんどうりょう変化へんかりょうひとしい。この運動うんどうりょう変化へんかりょうちからせきばれる。

古典こてん力学りきがく採用さいようされる運動うんどうしょ法則ほうそくによってさだめられる範囲はんいでは、ちから定義ていぎ速度そくど加速度かそくどのような運動うんどうがくてきりょうくらべて抽象ちゅうしょうてきである。より具体ぐたいてき定義ていぎ個々ここ現象げんしょうろんによってあたえられる。おおくの場合ばあい地球ちきゅう重力じゅうりょくばね復元ふくげんりょくのようになんらかのポテンシャル最小さいしょうしようとするはたらきとしてあらわされる。

通常つうじょうちからはそれがはたら物体ぶったい付随ふずいするものとしてかんがえられるため、ちから個々ここ作用さようてんして特別とくべつ注意ちゅういはらうことはない。しかしながらより一般いっぱんてきに、あるてんたいしてそのてん作用さようてんとするちからあたえる関数かんすうもちいて運動うんどうとらえることもできる。そのような関数かんすうちから (field of force) とかちからじょうばれる[9][10]ちからは、空間くうかんてんたいしてそのてん束縛そくばくされたベクトルをあたえる関数かんすうであり、このような関数かんすうベクトルじょう総称そうしょうされる。ちからは、文脈ぶんみゃくおうじていくつかことなる定義ていぎあたえられる。ひとつの定義ていぎでは、単位たんい質量しつりょう試験しけん物体ぶったいくわえられるちからあたえるをいい、べつ定義ていぎではたんにある物体ぶったいはたらちからあたえるとされる[11]前者ぜんしゃ定義ていぎでは、なんらかの単位たんいけい質量しつりょうが 1 となる[ちゅう 7]物体ぶったいはたらちからあたえる。したがってそのりょう次元じげんちから/質量しつりょう となる。後者こうしゃ定義ていぎ前者ぜんしゃ F(·)適当てきとう質量しつりょう mじょうじた mF(·)相当そうとうする。この場合ばあい、あるてん x物体ぶったいはたらちからmF(x)あらわされる。具体ぐたいてきちからなんらかのポテンシャルによってあたえられる。れいとして、重力じゅうりょくポテンシャルや電磁でんじポテンシャルなどがげられる。

ちから文脈ぶんみゃくによって、相互そうご作用さよう (interaction)、作用さよう (action) などともばれる。ただし、相互そうご作用さようは(本質ほんしつてきにはからだあいだの)ポテンシャルすこともあり、また作用さよう解析かいせき力学りきがくにおいてはちからことなる概念がいねんとして定義ていぎされている。

次元じげん単位たんい

[編集へんしゅう]

ちからりょう次元じげんは MLT−2([質量しつりょう]×[ながさ]×[時間じかん]−2)である[ちゅう 8]ちから次元じげんりょう次元じげんによっててられることは、ニュートン力学りきがくにおいてちから F質量しつりょう m加速度かそくど aせきとしてあたえられること、

加速度かそくど a が、減速げんそくされる時間じかんたいする速度そくど v変化へんか割合わりあい、すなわち速度そくど時間じかん微分びぶんとして定義ていぎされること、

速度そくど v もまた、運動うんどうする時間じかんたいする位置いち x変化へんか割合わりあいとして定義ていぎされること、

からみちびかれる。位置いち、あるいは変位へんい基準きじゅんてんたいする距離きょりはかることによって決定けっていでき、位置いち変化へんかりょう dxながさの次元じげん (L) をつ。速度そくど位置いち変化へんかりょう dx時間じかん dtなので、次元じげんながさ (L) に時間じかん (T) の逆数ぎゃくすうじょうじた LT−1 となる。加速度かそくどについても同様どうよう手続てつづきからりょう次元じげんさだまり、加速度かそくどりょう次元じげんは LT−2 である。ちから加速度かそくど質量しつりょうじょうじたものなので、りょう次元じげん加速度かそくどりょう次元じげん質量しつりょう次元じげん (M) をけた MLT−2 となる。

ちから単位たんいもまた、それぞれの基本きほんりょう対応たいおうする基本きほん単位たんいからてられる。国際こくさいりょう体系たいけいでは基本きほんりょうとして質量しつりょう時間じかんながさをり、国際こくさい単位たんいけいでは国際こくさいりょう体系たいけい対応たいおうして質量しつりょう単位たんいキログラム (kg)、時間じかん単位たんいびょう (s)、ながさの単位たんいメートル (m) としてこれらを基本きほん単位たんいとしている。国際こくさい単位たんいけいしたがえば、ちから単位たんいは kg·m·s−2あらわすことができる。また国際こくさい単位たんいけいでは、目的もくてきおうじて組立くみたて単位たんい定義ていぎされており、ちから単位たんいとしてニュートン (N) がさだめられている。ニュートンなどの組立くみたて単位たんいはすべて基本きほん単位たんい代数だいすう操作そうさによって定義ていぎされており、ニュートンの場合ばあい、N = kg·m·s−2定義ていぎされている。

せい力学りきがく

[編集へんしゅう]

せい力学りきがくではちから基本きほんてき状態じょうたいりょうになる。ちから構成こうせいする要素ようそは、ちからおおきさ (magnitude)、ちから (direction)、作用さようせん方向ほうこう作用さようせん位置いちである[12]ちからおよぼされるてん作用さようてん[ちゅう 9](point of action) と[13]作用さようせん (line of action) とは作用さようてんとおり、ちからきにたいして平行へいこう直線ちょくせんのことである[14]。また、ちからが2体力たいりょくである場合ばあいには、ちからおよぼすものとちからおよぼされるものとのくみかんがえることができる。すべてのちからが2体力たいりょくであるなら、それぞれのちからたがいに独立どくりつであり、物体ぶったいにかかる正味しょうみちから (net force) はそれぞれの独立どくりつちから単純たんじゅんとしてあらわされる[12]

たとえば、物体ぶったい A物体ぶったい B, Cちからおよぼしている場合ばあい物体ぶったい Aはたら正味しょうみちからは、

分解ぶんかいすることができる。ここで F A物体ぶったい Aはたら正味しょうみちからF B → A, F C → A はそれぞれ物体ぶったい B, C物体ぶったい Aおよぼしているちからあらわす。このことは Aちからおよぼす物体ぶったいえても同様どうようつ。

解析かいせき力学りきがく

[編集へんしゅう]

解析かいせき力学りきがくにおけるちからは、ニュートン力学りきがく定義ていぎことなり、オイラー=ラグランジュ方程式ほうていしきつうじて一般いっぱん運動うんどうりょう (generalized momentum)時間じかん微分びぶんひとしくなる関数かんすうとしてあたえられる。一般いっぱん運動うんどうりょう時間じかん微分びぶんという意味いみでのちからは、一般いっぱんりょく (generalized force) あるいは広義こうぎちからばれ、ニュートン力学りきがくにおけるちからとは区別くべつされる。

一般いっぱん運動うんどうりょうラグランジアン一般いっぱん速度そくどによるへん微分びぶんとして定義ていぎされる[15]一般いっぱん運動うんどうりょうP、ラグランジアンを L一般いっぱん座標ざひょうけいくみq一般いっぱん速度そくどくみ·qあらわせば、一般いっぱん運動うんどうりょう以下いかのように定義ていぎされる。

[ちゅう 10]

オイラー=ラグランジュ方程式ほうていしき

[ちゅう 11]

一般いっぱん運動うんどうりょう Pえると、以下いかのようにける。

上記じょうきのオイラー=ラグランジュ方程式ほうていしき右辺うへんから、一般いっぱんりょく Ψぷさい[ちゅう 12]つぎのように定義ていぎされる[16]

オイラー=ラグランジュ方程式ほうていしき

ニュートンの運動うんどう方程式ほうていしき

見比みくらべれば、左辺さへん一般いっぱんりょく Ψぷさいちから相当そうとうするりょうであることがかる。

ちから

[編集へんしゅう]

その物体ぶったい速度そくど変化へんかしないとき、ちからっているう。たとえば、自動車じどうしゃ時速じそく 40 km/h のまま直進ちょくしんしているとき、車体しゃたいにかかるちからっている。このとき、エンジンとうによってうごかされた車輪しゃりん加速かそくしようとするちから車軸しゃじく摩擦まさつ空気くうき抵抗ていこうによって減速げんそくしようとするちからっている、とかんがえるのである。

ちから合成ごうせい分解ぶんかい

[編集へんしゅう]
ちから合成ごうせい ちから dTちから dN合成ごうせいしたちから dF平行四辺形へいこうしへんけい法則ほうそくによって対角線たいかくせんとして計算けいさんできる。

ちから合成ごうせいとは、あるてんはたら複数ふくすうちからを 1 つの等価とうかちからとしてあらわすことをう。またそのぎゃく操作そうさちから分解ぶんかい (decomposition of force) と[17]合成ごうせいされたちからのことを合力ごうりょく (resultant force) という[18]ちからベクトルとして定義ていぎされているので[19]ベクトル空間くうかんにおける加法かほう規則きそくしたが合成ごうせい分解ぶんかいおこなうことができる[20]ちから運動うんどうりょうがベクトルであることにより、運動うんどう方程式ほうていしき任意にんい成分せいぶん分解ぶんかいすることができる。この原理げんり運動うんどう独立どくりつせい (independence of motions) という[19]

分解ぶんかいされたちからもとちから、あるいは合成ごうせいされるちからとそれらの合力ごうりょく関係かんけい図形ずけいてきあらわすものとして、ちから平行四辺形へいこうしへんけいがしばしばもちいられる。ちから分解ぶんかいかんして、2 成分せいぶん分解ぶんかいされたちから平行四辺形へいこうしへんけいあたりをなし、その対角線たいかくせんもとちからとなる。同様どうように、2つのちからおなてんはたらくと、それらは平行四辺形へいこうしへんけいあたりをなす。2つのちから合力ごうりょくは2つのちからのなす平行四辺形へいこうしへんけい対角線たいかくせんとして図示ずしされる[20]ちから分解ぶんかい合成ごうせい平行四辺形へいこうしへんけいわせによってあらわすことができる、という法則ほうそく平行四辺形へいこうしへんけい法則ほうそく (parallelogram law) と[14]平行四辺形へいこうしへんけい法則ほうそくはまた、ニュートンのだい4法則ほうそく (Newton's fourth law) とかちから重畳ちょうじょう原理げんり (superposition principle of force) ともばれる[14]

分類ぶんるい

[編集へんしゅう]

連続れんぞく体力たいりょくがくなどの分野ぶんやでは、ちからつぎの 2 つに分類ぶんるいされる。

面積めんせきりょく
めんとおして作用さようし、そのおおきさが面積めんせき比例ひれいするちから[21]表面ひょうめん横切よこぎ微視的びしてき運動うんどうりょうながれたばとも[22]表面ひょうめんりょくともばれる。物体ぶったいめんかいして作用さようするので近接きんせつ作用さようちからである[23]れいとしては圧力あつりょく応力おうりょく表面張力ひょうめんちょうりょくなどがげられる。
体積たいせきりょく
物体ぶったい体積たいせき比例ひれいするちから[24]物体ぶったいりょくともばれる。物体ぶったいには直接ちょくせつれずに作用さようするちからなので遠隔えんかく作用さようちからである[23]れいとして重力じゅうりょく遠心えんしんりょくコリオリのちから電力でんりょくなどがある。

量子力学りょうしりきがく

[編集へんしゅう]

量子力学りょうしりきがくでは、量子りょうしろんにより、宇宙うちゅうにおけるちからみなもと基本きほん相互そうご作用さようによる、電磁でんじ相互そうご作用さようよわ相互そうご作用さようつよ相互そうご作用さよう重力じゅうりょく相互そうご作用さようの 4つに整理せいりされた。ただし、重力じゅうりょく古典こてん物理ぶつりがくぞくする一般いっぱん相対性理論そうたいせいりろん関係かんけいし、また、重力じゅうりょく量子りょうし量子りょうし重力じゅうりょく理論りろん)は研究けんきゅう途上とじょうである。一方いっぽう電磁でんじ相互そうご作用さようよわ相互そうご作用さようとを統一とういつてき記述きじゅつするでんじゃく統一とういつ理論りろんワインバーグ=サラム理論りろんによって完成かんせいした。そのつぎえるつよ相互そうご作用さよう統一とういつだい統一とういつ理論りろんとして研究けんきゅうちゅうである。

そのおも解決かいけつ問題もんだいについての概観がいかん標準ひょうじゅん模型もけい参照さんしょうのこと。

批判ひはん

[編集へんしゅう]

古典こてん力学りきがくの)りょく物理ぶつりがく根幹こんかんにかかわるものであるが、ちから定義ていぎづけは自明じめいではないともいわれる[1]。アイザック・ニュートンは『自然しぜん哲学てつがく数学すうがくてきしょ原理げんり』においてちから質量しつりょうについて明確めいかく定義ていぎあたえていない。現代げんだいてき視点してんでは、ニュートン力学りきがくにおけるちから運動うんどうだい2法則ほうそく F = ma によって定義ていぎされるものと解釈かいしゃくされるが、この解釈かいしゃくのもとでは、比例ひれい定数ていすう慣性かんせい質量しつりょう m未定義みていぎりょうであるため、ちから慣性かんせい質量しつりょう定義ていぎ独立どくりつしておらず、不満ふまんである。そのため、ちから質量しつりょう定義ていぎ分離ぶんりすべきという批判ひはんがなされている[1]

アメリカ航空こうくう宇宙うちゅうきょくのサイトでは「自由じゆう物体ぶったいうごきに変化へんかこしたり、あるいは固定こてい物体ぶったい応力おうりょくあたえるもととなる agent(エージェント)[25]」といった説明せつめいになっている。

脚注きゃくちゅう

[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく

[編集へんしゅう]
  1. ^ ステヴィンによるこの問題もんだい証明しょうめいEpitaph of Stevinus (ステウィヌスのいしぶみ)とばれる。Stevinus はステヴィンのラテン語らてんごめい
  2. ^ ただし現在げんざいもちいられるベクトルの記法きほう発達はったつしたのは19世紀せいき以降いこうである[3]
  3. ^ a b 太字ふとじ変数へんすうベクトルりょうあらわす。
  4. ^ ちから質量しつりょう加速度かそくど順序じゅんじょ記号きごうたん慣習かんしゅうてきなものであり、文献ぶんけんによって様々さまざま表現ひょうげんがある。たとえば ma = F のようにかれている文献ぶんけん数多かずおおくある。いずれにせよ、数学すうがくじょうあるいは物理ぶつりがくじょう意味いみおなじである。
  5. ^ 古典こてん力学りきがくのうち、相対そうたいろんてき力学りきがくをニュートン力学りきがくぶ。ただし文献ぶんけんによっては古典こてん力学りきがく相対そうたいろんふくめないものもある。
  6. ^ この運動うんどうりょう四元よつもと運動うんどうりょう空間くうかん成分せいぶんである。
  7. ^ 科学かがく技術ぎじゅつ分野ぶんや一般いっぱんてき国際こくさい単位たんいけいでは質量しつりょう基本きほん単位たんいキログラムである。したがってこの場合ばあい単位たんい質量しつりょう1 kg となる。ヤード・ポンドほうでは質量しつりょう基本きほん単位たんいポンドとなるため、単位たんい質量しつりょう1 lb となる。
  8. ^ 記号きごうたいするうえきの添字そえじはそのりょうベキあらわす。たとえば A2A × A意味いみする。負数ふすうのベキは逆数ぎゃくすうのベキをあらわし、たとえば B−21/B × 1/B、つまり 1/B×B意味いみする。折衷せっちゅうてき表現ひょうげんとして B−21/B2あらわすこともしばしばある。
  9. ^ 作用さようてんはまた力点りきてんともばれる[13]
  10. ^ 関数かんすう f(u) のベクトル u による微分びぶんは、ベクトル uかく成分せいぶん ui, i = 1, 2, ..., dたいするへんしるべ関数かんすう f/ui成分せいぶんつベクトル (f/u1, f/u2, ..., f/ud)、つまり勾配こうばいあたえる。
  11. ^ ここで ·q(t)関数かんすう q(t)t による微分びぶんあらわす。この微分びぶん記法きほうニュートンの記法きほうばれる。
  12. ^ この記法きほうはあまり一般いっぱんてきではない。一般いっぱんりょくあらわ記号きごうとしてはしばしば Qもちいられる。

出典しゅってん

[編集へんしゅう]

参考さんこう文献ぶんけん

[編集へんしゅう]

関連かんれん項目こうもく

[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク

[編集へんしゅう]