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べきじょう

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べきから転送てんそう

数学すうがくにおけるべきじょう(べきじょう、べきじょうえい: ふつ: どく: exponentiation)またはべき演算えんざん(べきえんざん)は、そこ (てい、えい: base) およびべき指数しすう (べきしすう、えい: exponent) とばれるふたつのかずたいしてさだまる数学すうがくてき算法さんぽうである。その結果けっかべき (べき、えい: power) とばれる。表現ひょうげんれによりおな概念がいねん日本語にほんごで「累乗るいじょう」とも表現ひょうげんされており、初等しょとう教育きょういくではこちらの表現ひょうげんのほうがおおくなっている(本文ほんぶん参照さんしょう)。

概要がいよう

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そこ英語えいごばん b およびべき指数しすう e をもつべきは、そこ右肩みぎかたべき指数しすうせて be のようにかれる。

であり、bnbn-じょうや、n-つぎb-べきなどとばれる。

特定とくていべき指数しすうたいして、固有こゆう名前なまえけられている。たとえば、べき指数しすう2 であるべき(2 じょうb2 は「b平方へいほう (square of b)」または「b-自乗じじょう (b-squared)」とばれ、べき指数しすう3 であるべき(3 じょうb3 は「b立方りっぽう (cube of b, b-cubed)」とばれる。それ以降いこうは 4 じょう、5 じょう、… というように「n 」といういいかた一般いっぱんてきである。

べき指数しすう−1 であるべき b−11/b であり、「b逆数ぎゃくすう」(または乗法じょうほうぎゃくもと)とばれる。一般いっぱんべき指数しすうまけ整数せいすう n であるべき bn は、bn × bm = bn + m という性質せいしつたもつように、そこ b が 0 でないとき bn := 1/bn定義ていぎされる。

べきじょうは、任意にんい実数じっすうまたは複素数ふくそすうべき指数しすうとするように定義ていぎ拡張かくちょうすることができる。そこおよびべき指数しすう実数じっすうであるべきにおいて、そこ固定こていしてべき指数しすう変数へんすうなせば指数しすう函数かんすうであり、べき指数しすう固定こていしてそこ変数へんすうなせばべき函数かんすうである。整数せいすうじょうべきかぎれば、行列ぎょうれつなどをふくめた多種たしゅ多様たよう代数だいすうてき対象たいしょうたいしてもそれをそことするべき定義ていぎすることができる。べき指数しすうまで同種どうしゅ対象たいしょう拡張かくちょうすると、そのうえ定義ていぎされた自然しぜん指数しすう函数かんすう自然しぜん対数たいすう函数かんすうをもつ完備かんびノルムたまきたとえば実数じっすう全体ぜんたい R複素数ふくそすう全体ぜんたい C など)を想定そうていするのが自然しぜんである。

歴史れきし

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歴史れきしじょうべきあらわれたのは非常ひじょうふるく、B.C.16世紀せいきごろに作成さくせいされた粘土ねんどばんには平方へいほうすうひょう平方根へいほうこんひょう立方根りっぽうこんひょうさん平方へいほう定理ていりについてかれており[1]、エジプト、インド、ギリシアなどでもべき概念がいねん明示めいじされている。一方いっぽうで、指数しすう法則ほうそく言明げんめいする文献ぶんけん見当みあたらず「指数しすう概念がいねん」にはいま到達とうたつしていないとかんがえるべきであるが、べき意味いみする英単語えいたんご "power" はギリシアの数学すうがくしゃエウクレイデス(ユークリッド)が直線ちょくせん平方へいほうあらわすのにもちいたかたり起源きげんがある[2]。また、「原論げんろん」において指数しすう法則ほうそく am × an = am+n相当そうとうする命題めいだい言及げんきゅうしている[1]が、この時代じだいには算式さんしき発明はつめいされておらず、すべて言葉ことば表現ひょうげんしていた[1]

記法きほう

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アルキメデス10べきあつかうために必要ひつようとなる指数しすう法則ほうそく 10a • 10b = 10a + b発見はっけんし、証明しょうめいした(『砂粒さりゅうかぞえるもの』を参照さんしょう)。9世紀せいきに、ペルシアの数学すうがくしゃアル゠フワーリズミ平方へいほうmal, 立方りっぽうkabあらわした。これをのち中世ちゅうせいイスラム数学すうがくしゃがそれぞれ m, kあらわ記法きほうとしてもちいていることが、15世紀せいきごろのアル゠カラサディ英語えいごばん仕事しごとることができる[3]

16世紀せいき後半こうはんヨスト・ビュルギべき指数しすうをローマ数字すうじもちいてあらわした[4]

17世紀せいき初頭しょとう今日きょうもちいられる現代げんだいてきべき記法きほう最初さいしょかたちは、ルネ・デカルト著書ちょしょ La Géométrieいちかんにおいて導入どうにゅうした[5]

アイザック・ニュートンなど一部いちぶ数学すうがくしゃべき指数しすうは 2 じょうよりもおおきなべきたいしてだけもちい、平方へいほう反復はんぷくせきとしてあらわした。たとえば、多項式たこうしきax + bxx + cx3 + d のようにいた。

用語ようご

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15世紀せいきニコラ・ショケ英語えいごばんべき記法きほう一種いっしゅもちい、それはの16世紀せいきハインリヒ・シュライベル英語えいごばんおよびミハエル・スティーフェル英語えいごばんもちいている。

16世紀せいきロバート・レコードは、square(), cube(さん), zenzizenzic(よん), sursolid(), zenzicube(ろく), second sursolid(なな), zenzizenzizenzic(はち英語えいごばん)のかたりもちいた[6]。4 じょうについては biquadrate(ふく)のかたりもちいられた。

歴史れきしてきには "involution" がべき同義語どうぎごとしてもちいられていた[7]現在げんざいではまれであり、べつ意味いみたいごう)でもちいられているので混同こんどうすべきではない。

べき指数しすう

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べきかたかれるかずのことをべき指数しすう[8]が、べき指数しすう意味いみする用語ようごとして、英語えいごではしばしば exponent と index が同義どうぎとしてもちいられる。この用語ようご選定せんていは18世紀せいき、19世紀せいきつうじてきわめて曖昧あいまい個人こじん嗜好しこうゆだねられていた[9]。しかし、ガウスは、その著書ちょしょ Disquisitiones Arithmeticae において通常つうじょうべき指数しすうかずろんてき指数しすう峻別しゅんべつする必要ひつようせいから exponens は通常つうじょうべき指数しすう、index はかずろんてき指数しすうあらわすものとして明確めいかく区別くべつ使つかけて解説かいせつ使用しようしており、この使つかけはディリクレ、デデキント、ヒルベルトをつうじてすうろん世界せかいでの標準ひょうじゅんとなった[9]

もとをたどれば、1544ねんにミハエル・スティーフェルがラテン語らてんご: "exponens"造語ぞうご[10][11]たいして1586ねんにラザルス・シェーナーが数学すうがくしゃペトルス・ラムスの書籍しょせきへの補注ほちゅうとしてラテン語らてんご: "index" を(スティーフェルが exponens とんだものとおなじものを意味いみで)もちいた[12]のがそれぞれの語源ごげんかんがえられる。exponent と index はこれらの英語えいご翻訳ほんやくであり、たとえば index はサミュエル・ジーク英語えいごばんが1696ねん導入どうにゅうした[2]

exponentindex微妙びみょう使つかけと併用へいよう時代じだいはここからはじまり、その併用へいようのされかたくに時代じだいだけでなく個人こじんによってもことなった。イギリスは当初とうしょ index優勢ゆうせいであり、これはせいバーソロミューのだい虐殺ぎゃくさつ殉死じゅんししたラムスの著作ちょさくがプロテスタント諸国しょこく非常ひじょう人気にんきあつめたからだとの指摘してきがある[13]

日本語にほんごべき

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べき』の字義じぎは「おおう、おおうもの」であって、『』と同音どうおん同義どうぎである。江戸えど時代じだい和算わさんいえは「べき」の略字りゃくじとして「はば」をもちいていた[14]

だい世界せかい大戦たいせん漢字かんじ制限せいげん政策せいさくのもと、これらの常用漢字じょうようかんじ当用漢字とうようかんじふくまれず、1950年代ねんだい以降いこう学習がくしゅう参考さんこうしょなどの出版しゅっぱんぶつでは仮名かめいきで「べきじょう」または「累乗るいじょう」へのえがすすめられ、結果けっかとして初等しょとう数学すうがく教科書きょうかしょではもっぱら「累乗るいじょう」がもちいられた。

べき集合しゅうごう」、「べき級数きゅうすう」などの高等こうとう学校がっこう以下いかあつかわれないおおくの概念がいねんたいしては、「べき」の部分ぶぶんえられることはなく、たとえば「べきじょう集合しゅうごう」や「累乗るいじょう集合しゅうごう」などといった表現ひょうげんはあまりしょうじていない。

定義ていぎ

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自然しぜんすうじょうべき

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実数じっすう(またはせき 定義ていぎされたぐん、より一般いっぱんにははんぐん)において、もと x自然しぜんすう nたいして xn

定義ていぎする(厳密げんみつには再帰さいきてき定義ていぎする)。 うえnけない場合ばあいには、 x^n という表記ひょうきもちいることがおおい。

この操作そうさを「xn じょうる」などといい、とくn固定こていして x入力にゅうりょくとする関数かんすうとく実数じっすう x函数かんすう)とるときは、べき関数かんすうという。 x の 2じょう、3じょうとくに、それぞれ x平方へいほう (へいほう、 えい: square)、立方りっぽう (りっぽう、 えい: cube) とばれ、2じょうとく自乗じじょうという場合ばあいもある。

べき xn において、xそこ(てい、えい: base基数きすう)とび、nべきすうべき指数しすうまたはたん指数しすう(しすう、 えい: exponent) と[注釈ちゅうしゃく 1]かならずしもべき指数しすうとはかぎらない添字そえじ n をその基準きじゅんとなる文字もじ x右肩みぎかたせる添字そえじ記法きほう指数しすう表記ひょうきべき記法きほうなどとよぶ場合ばあいもある。

厳密げんみつには、xn べき

  1. x1 = x,
  2. xn+1 = xn × x   (n ≥ 1)

によって再帰さいきてき定義ていぎされる。

まけ整数せいすうじょうべき

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帰納的きのうてき定義ていぎればしたのように拡張かくちょうするのが自然しぜんである。

有理数ゆうりすう範囲はんい2のべきれいると:

ただし、そこが 0 の場合ばあいは「0 でれない」などの理由りゆうから定義ていぎしないか、または 00 については 1 と定義ていぎするのが一般いっぱんてきである。

有理ゆうりすうじょうべき

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自然しぜんすう mたいし、xm すなわち m じょうして x になるようなかず y がただひとつあるならば、その yx1/m とし、自然しぜんすうまたは整数せいすう nたい

xn/m = (x1/m)n

さだめることによって、xそことするべきじょう指数しすう有理数ゆうりすう範囲はんいまで拡張かくちょうすることができる。 このとき、指数しすう法則ほうそくばれるした関係かんけいしきつ。

  • xr+s = xr × xs
  • xr×s = (xr)s

ここで、rs は、べき定義ていぎできる範囲はんい有理数ゆうりすうである。つまり、xぎゃくもとをもたないなら自然しぜんすうぎゃくもとはもつがべきをもたないなら整数せいすうm をもつがぎゃくもとをもたないならば m分母ぶんぼとするせい有理数ゆうりすうぎゃくもとm ももつならば m分母ぶんぼとする有理数ゆうりすうである。

じつすうじょうべき

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xせい実数じっすうならば、うえ制限せいげんされていた指数しすうへの条件じょうけんはずれる。 正数せいすうならば任意にんい自然しぜんすう mたいするせいm がただひと存在そんざいするので、せい有理数ゆうりすう たい

さだめることができる。さらに、x が 0 でなければぎゃくもと存在そんざいするので、指数しすう有理数ゆうりすう全体ぜんたいまで拡張かくちょうされる。

x (>0) のべきは、その指数しすうかんして極限きょくげんることによって実数じっすうじょう関数かんすう拡張かくちょうされ、連続れんぞく関数かんすうになる。連続れんぞく拡張かくちょう一意いちいであり、これを xそことする指数しすう関数かんすうぶ。

複素ふくそすうじょうべき

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複素数ふくそすう zたいして、函数かんすう exp級数きゅうすう

定義ていぎする。この級数きゅうすう任意にんい複素数ふくそすう zたいして収束しゅうそくする。とくexp(1) ≕ e自然しぜん対数たいすうそこひとしく、任意にんい実数じっすう xたいして exp(x) = ex右辺うへん実数じっすう e実数じっすう x じょう)である(したがって任意にんい複素数ふくそすうたいして ez ≔ exp(z) ともかれる[注釈ちゅうしゃく 2])。zx + iyx, y実数じっすう)とあらわすと、

つ(cisじゅんきょ指数しすう函数かんすう)。とくeiy = cos(y) + i⋅sin(y)オイラーの公式こうしきばれる関係かんけいしきである。

さらに、この関数かんすうの「ぎゃく関数かんすう」を logけば、一般いっぱん複素数ふくそすう w ≠ 0 にたいして

定義ていぎされる。logあたい関数かんすうなので、一般いっぱんにはが 1 つにはさだまらない。ただし、w = e場合ばあいには、うえべき級数きゅうすう定義ていぎしたほうの意味いみもちいるのが普通ふつうである。

性質せいしつ

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  • べき演算えんざんかわでない(たとえば 23 = 8 , 32 = 9 , 8≠9.)。また結合けつごうてきでない(たとえば (23)2 = 64 , 512 = 2(32) , 64≠512.)。
  • 括弧かっこもちいずに abcいたときには、これはふつう a(bc)意味いみする。すなわちべき演算えんざんみぎ結合けつごうてきである(これは優先ゆうせん順位じゅんい(precedence, 演算えんざん優先ゆうせん順位じゅんい)ではなく演算えんざん結合けつごうせい(associativity, en:Operator associativity)のことである)。

指数しすう法則ほうそく

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以下いか一覧いちらんひょうにおいて多重たじゅう定義ていぎおそれのぞくため、そこれい実数じっすうであるようなべきのみをかんがえる。ただし、せいべきのみをかんがえるならば、そこ0 でもかく法則ほうそくつ。また以下いか一覧いちらんにおいて、有理数ゆうりすうについて分母ぶんぼ奇数きすうあるいは偶数ぐうすうであるというときは、つねにその有理数ゆうりすうすんで約分やくぶん数表示すうひょうじにおける分母ぶんぼのことをっているものとする。

指数しすう法則ほうそく
規則きそく 条件じょうけん
a ≠ 0任意にんい
  • a > 0 ならば r任意にんい実数じっすう
  • a < 0 ならば r分母ぶんぼ奇数きすう任意にんい有理数ゆうりすう
  • a > 0 ならば n任意にんい自然しぜんすうm任意にんい整数せいすう
  • a < 0 ならば n任意にんい奇数きすうm任意にんい整数せいすう
  • a > 0 ならば r, s任意にんい実数じっすう
  • a < 0 ならば r, s分母ぶんぼ奇数きすう任意にんい有理数ゆうりすう
  • a > 0 ならば r, s任意にんい実数じっすう
  • a < 0 ならば r, s分母ぶんぼ奇数きすう任意にんい有理数ゆうりすう
  • a  • b ≠ 0 ならば r任意にんい自然しぜんすう、あるいは任意にんい整数せいすう
  • a > 0, b > 0 ならば r任意にんい実数じっすう
  • a, bすくなくとも一方いっぽうまけならば r分母ぶんぼ奇数きすう任意にんい有理数ゆうりすう
  • 整数せいすう rたいして、[r ≥ 0 かつ b ≠ 0] または [r ≤ 0 かつ a ≠ 0] のとき
  • a > 0, b > 0 ならば r任意にんい実数じっすう
  • a, bすくなくとも一方いっぽうまけならば r分母ぶんぼ奇数きすう任意にんい有理数ゆうりすう
  • a ≠ 0 ならば r, s任意にんい整数せいすう
  • a > 0 ならば r, s任意にんい実数じっすう
  • a < 0 ならば r, s分母ぶんぼ奇数きすう任意にんい有理数ゆうりすう
a < 0 かつ有理数ゆうりすう r, sたいして、r および r  • s分母ぶんぼ奇数きすう、かつ r  • s分子ぶんし奇数きすうのとき
(ar)s = ±ar • sかんして
  • べき指数しすう r, sすくなくとも一方いっぽう無理むりすうであるとき、あるいはこれらの双方そうほう有理数ゆうりすうだが r または r  • sすくなくとも一方いっぽう分母ぶんぼ偶数ぐうすうとなるときには、a < 0たいする (ar)s または ar • s定義ていぎされない。それ以外いがいのとき、この両者りょうしゃ定義ていぎされて符号ふごうちがいをのぞいて一致いっちする。とく両者りょうしゃa > 0 ならば任意にんい実数じっすう r, sたいして一致いっちし、また a ≠ 0 ならば任意にんい整数せいすう r, sたいして一致いっちする。
  • a < 0 かつ r, s整数せいすうでない有理数ゆうりすうであるときには可能かのうせいとおかんがえられ、どちらになるかは r分子ぶんしs分母ぶんぼ素因数そいんすう分解ぶんかい関係かんけいする。しき (ar)s = ±ar • s右辺うへん符号ふごういずれがただしいのかをるには a = −1 のときをれば十分じゅうぶんである(あたえられた r, sたいして a = −1 のときまさしくなるほう符号ふごうをとれば、任意にんいa < 0 についてもつ)。
  • a < 0たいして (ar)s = −ar • s適用てきようされるならば、a ≠ 0たいして (ar)s = |a|r • sつ(べき指数しすうせいならば a = 0 のときもつ)。

たとえば、((−1)2)12 = 1 および (−1)2 • 12 = −1 であるから、a < 0たいして a2 = (a2)12 = −a2 • 12 = −a, したがって任意にんい実数じっすう aたいして a2 = |a|つ。

指数しすう対数たいすう法則ほうそく不成立ふせいりつ

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せい実数じっすうたいするべきおよび対数たいすうかんする等式とうしきのいくつかは、複素数ふくそすうべき複素ふくそ対数たいすうがどのように一価いっか函数かんすうとして定義ていぎされようとも、複素数ふくそすうたいしてはりたないことがこる。

  1. 等式とうしき log(bx) = x⋅log(b)bせい実数じっすうx実数じっすうのときにはいつでもつ。しかし、複素ふくそ対数たいすうしゅえだ英語えいごばんたいして

    反例はんれいになる。複素ふくそ対数たいすうのどのえだもちいたかにかかわらず、この等式とうしきには同様どうよう反例はんれい存在そんざいする。(この結果けっかのみを使つかうものとすれば)

    であるとまでしかえない。

    この等式とうしきlogあたい函数かんすうかんがえるときでさえりたない。log(wz)z⋅log(w)部分ぶぶん集合しゅうごうとしてふくむ。log(w)おもLog(w) とし、m, n任意にんい整数せいすうとすると、両辺りょうへん

    である。
  2. 等式とうしき (bc)x = bx⋅cx および (b/c)x = bx/cxx実数じっすうでさらに bcせい実数じっすうならばつ。しかししゅえだもちいた計算けいさん
    および
    反例はんれいとしてしめされる。 他方たほうx整数せいすうのときには任意にんいれい複素数ふくそすうたいしてつ。 複素数ふくそすうべきあたい函数かんすうとしてかんがえれば、((−1)(−1))1/2{1, −1} で、等式とうしきつが {1} = {((−1)(−1))1/2}うことは間違まちがっている。
  3. 等式とうしき (ex)y = exyxy実数じっすうであるときにはつが、任意にんい複素数ふくそすうたいしてただしいと仮定かていすると、Clausen et al. (1827)[15]発見はっけんした
    任意にんい整数せいすう nたいして、
    るが、これは n0 でないときあやまりである。

    という合理ごうりしょうじる。この推論すいろんにはいくつも問題もんだいがある:

    • おもあやまりは、ぎょうからさんぎょうくときにべき順番じゅんばんえることでえらばれるおもわることである。
    • あたい函数かんすう視点してんからると、最初さいしょあやまりはさらはやきている。一行いっこうあんe実数じっすうとしているにもかかわらず、e1+2πぱいin結果けっか複素数ふくそすうであり、e + 0iいたほうがよい。ぎょう実数じっすうではなくこの複素数ふくそすうえることで、そこでのべきれる複数ふくすうつようになる。ぎょうからさんぎょう指数しすう順番じゅんばんえたことも、りうるかず影響えいきょうおよぼす。(ez)wezw だが、整数せいすう n にわたってあたい意味いみ(ez)w = e(z+2πぱいin)w としたほうがよい。

一般いっぱん

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モノイドにおけるべき

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べき演算えんざん任意にんいモノイドにおいて定義ていぎできる[16]。モノイドは単位たんいもとはんぐん、すなわち適当てきとう集合しゅうごう Xだいとして合成ごうせいあるいは乗法じょうほうばれるこう演算えんざん定義ていぎされる代数だいすうけいであって、その乗法じょうほう結合けつごう法則ほうそく満足まんぞくし、かつ乗法じょうほう単位たんいもと 1Xつものをう。モノイドにおける自然しぜんすうべき

として帰納的きのうてき定義ていぎすることができる(さきしき右辺うへん(の 1)は X単位たんいもとしき左辺さへんの 1 は自然しぜんすう1 で、当然とうぜんだがこれらはたがいにべつのものである)。とくさきしきれいじょうすること)は「単位たんいもとつ」ことによってはじめて意味いみ規約きやくであることに注意ちゅういすべきである(そらせき参照さんしょうのこと)。

モノイドのれいにはぐんたまき(の乗法じょうほうモノイド)のような数学すうがくてき重要じゅうようおおくの構造こうぞうふくまれ、またより特定とくていれいとして行列ぎょうれつたまきからだ場合ばあいについて後述こうじゅつする。

行列ぎょうれつおよび線型せんけい作用素さようそべき

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正方まさかた行列ぎょうれつ Aたいして A 自身じしんn せき行列ぎょうれつべきぶ。また A0単位たんい行列ぎょうれつひとしいものと定義ていぎされ[17]、さらに A可逆かぎゃくならば An ≔ (A−1)n定義ていぎする。

行列ぎょうれつべき離散りさん力学りきがくけい英語えいごばん文脈ぶんみゃくでしばしばあらわれる。そこでは行列ぎょうれつ A適当てきとうけい状態じょうたいベクトル xつぎ状態じょうたい Ax遷移せんいさせることをあらわ[18]。これはたとえばマルコフ連鎖れんさ標準ひょうじゅんてき解釈かいしゃくである。これにより、A2x段階だんかいけい状態じょうたいであり、以下いか同様どうようAnxn 段階だんかいけい状態じょうたい理解りかいされる。つまり行列ぎょうれつべき An現在げんざいn 段階だんかい状態じょうたいあいだ遷移せんい行列ぎょうれつであって、行列ぎょうれつべき計算けいさんすることはこの力学りきがくけい発展はってんくことにひとしい。便宜上べんぎじょうおおくの場合ばあいにおいて行列ぎょうれつべき固有値こゆうち固有こゆうベクトルをもちいて計算けいさんすることができる。

行列ぎょうれつはなれてより一般いっぱん線型せんけい作用素さようそにもべき演算えんざんさだめられる。たとえば微分びぶん積分せきぶんがくにおける微分びぶん演算えんざん d / dx函数かんすう f作用さようしてべつ函数かんすう df / dx = f'あたえる線型せんけい作用素さようそであり、この作用素さようそn-じょうn-かい微分びぶん

である。これは線型せんけい作用素さようそ離散りさんてきべきれいであるが、作用素さようそ連続れんぞくてきべき定義ていぎできたほうがよい場面ばめんおお存在そんざいする。C0-はんぐん数学すうがくてき理論りろんはこのような事情じじょう出発しゅっぱつてんとしている[19]離散りさんべき指数しすうたいする行列ぎょうれつべき計算けいさん離散りさん力学りきがくけいくことであったのと同様どうように、連続れんぞくべき指数しすうたいする作用素さようそべき計算けいさん連続れんぞく力学りきがくけいくことにひとしい。そういったれいとしてねつ方程式ほうていしきシュレーディンガー方程式ほうていしき波動はどう方程式ほうていしきあるいはもっとほかの時間じかん発展はってんふくへん微分びぶん方程式ほうていしきげることができる。このようなべき演算えんざん特別とくべつ場合ばあいとして、微分びぶん演算えんざん整数せいすうじょう分数ぶんすうかい微分びぶんばれ、分数ぶんすうかい積分せきぶんとともに、分数ぶんすうかい微分びぶん積分せきぶんがく基本きほん演算えんざんひとつとなっている。

有限ゆうげんたいにおけるべき

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からだは、四則しそく演算えんざん矛盾むじゅんなく定義ていぎされそれらの馴染なじふか性質せいしつ満足まんぞくされるような代数だいすうてき構造こうぞうである。たとえば実数じっすう全体ぜんたいからだす。複素数ふくそすう全体ぜんたい有理数ゆうりすう全体ぜんたいなどもそうである。これら馴染なじふかれいすべ無限むげん集合しゅうごうであるのとことなり、有限ゆうげんもとしかたないからだ存在そんざいする。そのもっとも簡単かんたんれいげんたい F2 = {0,1} で、加法かほう 0 + 1 = 1 + 0 = 1, 0 + 0 = 1 + 1 = 0 および乗法じょうほう0  • 0 = 1  • 0 = 0  • 1 = 0, 1  • 1 = 1あたえられる。

有限ゆうげんたいにおけるべき演算えんざん公開こうかいかぎ暗号あんごう応用おうようつ。たとえばディフィー・ヘルマンかぎ交換こうかんは、有限ゆうげんたいにおけるべき計算けいさん量的りょうてきにコストがからないのにたいし、べきぎゃくである離散りさん対数たいすう計算けいさん量的りょうてきにコストがかるという事実じじつもちいている。

任意にんい有限ゆうげんたい F は、素数そすう p がただひと存在そんざいして、任意にんいxFたいして px = 0つ(xp くわえればれいになる)という性質せいしつつ。たとえばげんたい F2 では p = 2 である。この素数そすう p はそのからだしるべすうばれる。Fしるべすう pからだとして Fかくもとp-じょうする写像しゃぞう f(x) = xpかんがえる。これは Fフロベニュース自己じこじゅん同型どうけいばれる。新入生しんにゅうせいゆめ英語えいごばん幼稚ようちこう定理ていり)ともばれる等式とうしき (x + y)p = xp + yp がこのからだにおいてはつため、フロベニュース自己じこじゅん同型どうけい実際じっさいからだ自己じこじゅん同型どうけいあたえるものであることが確認かくにんできる。フロベニュース自己じこじゅん同型どうけいFもとたいじょうガロワぐん生成せいせいもとであるためかずろんにおいて重要じゅうようである。

抽象ちゅうしょう代数だいすうがくにおけるべき

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べき指数しすう整数せいすうであるようなべき演算えんざん抽象ちゅうしょうだい数学すうがくにおけるきわめて一般いっぱん構造こうぞうたいして定義ていぎすることができる。

集合しゅうごう X乗法じょうほうてきかれたべき結合けつごうてき英語えいごばんこう演算えんざんつもの:

とするとき、任意にんいxX任意にんい自然しぜんすう nたいしてべき xn は、xn のコピーのせきあらわすものとして

のように帰納的きのうてき定義ていぎされる。これは以下いかのような性質せいしつ

満足まんぞくする。さらに、かんがえている演算えんざん両側りょうがわ単位たんいもと 1つ:

ならば x0任意にんいxたいして 1ひとしいものと定義ていぎする。[よう出典しゅってん]

さらにまた演算えんざん両側りょうがわぎゃくもとち、なおかつ結合けつごうてき

ならばマグマ Xぐんす。このとき xぎゃくもとx−1けば、べき演算えんざんかんする通常つうじょう規則きそく

はすべて満足まんぞくされる。また(たとえばアーベルぐんのように)乗法じょうほう演算えんざんかわならば

満足まんぞくされる。(アーベルぐん通常つうじょうそうであるように)こう演算えんざん加法かほうてきくならば、「べき演算えんざん累乗るいじょう反復はんぷく乗法じょうほう)である」という主張しゅちょうは「乗法じょうほう累加るいか反復はんぷく加法かほう)である」という主張しゅちょううつされ、かく指数しすう法則ほうそく対応たいおうする乗法じょうほう法則ほうそくうつされる。

ひとつの集合しゅうごうじょう複数ふくすうべき結合けつごうてきこう演算えんざん定義ていぎされるときには、かく演算えんざんかんして反復はんぷくによるべき演算えんざんかんがえることができるから、どれにかんするべきかを明示めいじするためにうえ添字そえじ反復はんぷくしたい演算えんざんあらわ記号きごう併置へいちする方法ほうほうがよくもちいられる。つまり演算えんざん および #定義ていぎされるとき、xnけば x ∗ ⋯ ∗ x意味いみし、x#nけば x # ⋯ # x意味いみするという具合ぐあいである。

うえ添字そえじ記法きほうは、とく群論ぐんろんにおいて、共軛きょうやく変換へんかんあらわすのにももちいられる(すなわち、g, h適当てきとうぐんもととして gh = h−1gh)。この共軛きょうやく変換へんかん指数しすう法則ほうそく同様どうよう性質せいしつ一部いちぶ満足まんぞくするけれども、これはいかなる意味いみにおいても反復はんぷく乗法じょうほうとしてのべき演算えんざんれいではない。カンドルはこれら共軛きょうやく変換へんかん性質せいしつ中心ちゅうしんてき役割やくわりたす代数だいすうてき構造こうぞうである。

集合しゅうごうべき

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デカルトべき

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自然しぜんすう n任意にんい集合しゅうごう Aたいして、しき An はしばしば Aもとからなる順序じゅんじょ n-くみ全体ぜんたい集合しゅうごうあらわすのにもちいられる。これは An集合しゅうごう {0, 1, 2, …, n−1} から集合しゅうごう A への写像しゃぞう全体ぜんたい集合しゅうごうであるとってもおなじことである(n-ぐみ (a0, a1, a2, …, an−1)iaiおく写像しゃぞうあらわす)。

無限むげん基数きすう κかっぱ集合しゅうごう Aたいしても、記号きごう Aκかっぱ濃度のうど κかっぱ集合しゅうごうから A への写像しゃぞう全体ぜんたい集合しゅうごうあらわすのにもちいられる。基数きすうべきとの区別くべつのために κかっぱAくこともある。

反復はんぷく直和なおかず

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一般いっぱんされたべきは、複数ふくすう集合しゅうごうじょう定義ていぎされる演算えんざん追加ついか構造こうぞう集合しゅうごうたいしても定義ていぎすることができる。たとえば、線型せんけい代数だいすうがくにおいて勝手かって添字そえじ集合しゅうごうじょうでのベクトル空間くうかん直和なおかずかんがえることができる。つまり Vi をベクトル空間くうかんとして

かんがえるとき、任意にんいi について Vi = V とすればられる直和なおかずべき記法きほうもちいて VN あるいは直和なおかず意味いみであることがあきらかならばたんVN のようにくことができる。ここでふたた集合しゅうごう N基数きすう nえれば Vnる(濃度のうど n特定とくてい標準ひょうじゅんてき集合しゅうごうえらぶことなしに、これは同型どうけいのぞいてのみ定義ていぎされる)。V として実数じっすうたい R を(それ自身じしんうえのベクトル空間くうかんて)とれば、n適当てきとう自然しぜんすうとして線型せんけい代数だいすうがくでもっともよく調しらべられるじつベクトル空間くうかん Rnる。

配置はいち集合しゅうごう

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べき演算えんざんそこ集合しゅうごうとするとき、なにことわりがなければべき演算えんざんデカルトつもるである。複数ふくすう集合しゅうごうのデカルトつもるn-ぐみあたえ、n-ぐみ適当てきとう濃度のうど集合しゅうごうじょう定義ていぎされた写像しゃぞうとしてあらわすことができるのだから、この場合ばあいべき SNたんN から S への写像しゃぞう全体ぜんたい集合しゅうごう

である。この定義ていぎ|SN| = |S||N|たされるという意味いみ基数きすうべき整合せいごうする。ただし |X|X濃度のうどあらわす。"2" を集合しゅうごう {0, 1} として定義ていぎすれば |2X| = 2|X|られる。ここに 2XXべき集合しゅうごうであり、普通ふつう𝒫(X) などであらわされる。

けんろんにおけるべき対象たいしょう

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デカルト閉圏において、任意にんい対象たいしょうたいしてべつ任意にんい対象たいしょうべき指数しすうとするべき演算えんざんべき対象たいしょうによってあたえることができる。集合しゅうごうけんにおけるべき対象たいしょう配置はいち集合しゅうごうであるから、これはその一般いっぱんになっている。かんがえているけんはじめ対象たいしょう 0存在そんざいするならば、べき対象たいしょう 00任意にんいおわり対象たいしょう 1同型どうけいである。

順序じゅんじょすう基数きすうべき

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集合しゅうごうろんでは基数きすう順序じゅんじょすうべき演算えんざん定義ていぎされる。

基数きすう κかっぱ, λらむだたいしてべき κかっぱλらむだ基数きすう λらむだ任意にんい集合しゅうごうから基数きすう κかっぱ任意にんい集合しゅうごうへの写像しゃぞう全体ぜんたい集合しゅうごう基数きすうあらわ[20]κかっぱ, λらむだ がともに有限ゆうげんならばこれは通常つうじょう算術さんじゅつてきな(つまり自然しぜんすうの)べき演算えんざん一致いっちする(たとえば、二元にげん集合しゅうごうからもとってられるぐみ全体ぜんたい集合しゅうごう基数きすう8 = 23あたえられる)。基数きすう算術さんじゅつにおいて κかっぱ0つねに(とくκかっぱ無限むげん基数きすう0 であるときでさえ)1 である。

基数きすうべき順序じゅんじょすうべきとはことなる。後者こうしゃちょうきり帰納きのうほうふく過程かてい極限きょくげんとして定義ていぎされる。

反復はんぷくべき

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自然しぜんすうべき乗法じょうほう反復はんぷくとしてかんがえられたことと同様どうように、べき演算えんざんかえ演算えんざんというものを定義ていぎすることもできる。それをまた反復はんぷくすればべつ演算えんざん定義ていぎされ、同様どうようかえしてハイパー演算えんざん概念がいねんる。このようにしてられるハイパー演算えんざんれつにおいて、つぎ演算えんざんまえ演算えんざんたいして急速きゅうそく増大ぞうだいする。

写像しゃぞうべき記法きほうかんする注意ちゅうい

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合成ごうせいべき

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写像しゃぞうべきじょうとなるべきものとして、写像しゃぞうあらわ符牒ふちょう直後ちょくご整数せいすううえ添字そえじえたとき、それは(反復はんぷく乗法じょうほうではなくて)反復はんぷく合成ごうせいべき意味いみもちいることがよくおこなわれる。つまりたとえば f3(x)f(f(f(x)))意味いみであり、またとくf−1(x)fぎゃく写像しゃぞう意味いみするのが普通ふつうである。反復はんぷく合成ごうせい写像しゃぞうフラクタル力学りきがくけい研究けんきゅうにおいて興味きょうみたれる。チャールズ・バベッジ写像しゃぞう平方根へいほうこん f 1/2(x)もとめる問題もんだい研究けんきゅうした最初さいしょひとであった。

ごとのべき

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しかし歴史れきしてき経緯けいいにより、三角さんかく函数かんすう場合ばあいには、函数かんすう略号りゃくごうせいべき指数しすうえたときは函数かんすうたいしてべきることを意味いみする一方いっぽうで、−1べき指数しすうとしたときはぎゃく函数かんすう意味いみするという特別とくべつ文法ぶんぽう適用てきようされる。つまり、 sin2x(sin x)2括弧かっこもちいずに略記りゃっきする方法ほうほうぎない一方いっぽうsin−1xぎゃく正弦せいげん函数かんすう arcsin x意味いみするのである。三角さんかく函数かんすう逆数ぎゃくすう函数かんすうは(たとえば 1/(sin x) = (sin x)−1 = csc x のように)それぞれ固有こゆう名前なまえ略号りゃくごうあたえられているから、三角さんかく函数かんすう逆数ぎゃくすう略記りゃっきほう無用むようである。同様どうよう規約きやく対数たいすう函数かんすうにも適用てきようされ、log2x はふつう (log x)2意味いみであって log log x意味いみでない。

うえ添字そえじ

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添字そえじけられた変数へんすうかんがえるとき、その変数へんすう添字そえじうえにする場合ばあいがあり、それはあたかもべきであるかのような印象いんしょうけるかもしれないが混同こんどうするべきではない。これはとくテンソル解析かいせきにおいてベクトルじょう座標ざひょう表示ひょうじなどであらわれる。あるいはまた数列すうれつれつのような、すでにそれ自身じしん添字そえじけられているようなりょうたいしてさらに添字そえじけをおこな場合ばあいにもしばしばもちいられる。

高階たかしなしるべ函数かんすう

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函数かんすう fn-かいしるべ函数かんすうはふつう f(n)かれるように、べき記法きほうべき指数しすう括弧かっこかこんでくこともある。

効率こうりつてき演算えんざんほう

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コンピュータじょう指数しすう自然しぜんすうとするべきじょう累乗るいじょう)を効率こうりつよくおこな演算えんざん方法ほうほうとしてバイナリほう進数しんすうほう; en:exponentiation by squaring) ともばれる演算えんざん方法ほうほうしめす。

RSA暗号あんごうかくりつてき素数そすう判定はんていほうであるフェルマーテストなどでは、巨大きょだい自然しぜんすう指数しすうとする累乗るいじょうおこなう。この方法ほうほう使つかうと、指数しすうがいかに巨大きょだいであっても高々たかだかそのビットかずの2ばい回数かいすう乗算じょうざん算出さんしゅつすることが可能かのうになり、かえけるよりも大幅おおはば効率こうりつがよくなる。とくにRSA暗号あんごうやフェルマーテストなどにおいてかく演算えんざん必要ひつようとなる剰余じょうよ演算えんざん一般いっぱんもっと計算けいさん時間じかんがかかる)の回数かいすうらす効果こうかがある。

一般いっぱんに、コンピュータにとって標準ひょうじゅんてきな(32ビットコンピュータならばやく4おくまでの)自然しぜんすう浮動ふどう小数点しょうすうてんすうそことする場合ばあい下位かいけたから計算けいさんする方式ほうしきを、前述ぜんじゅつのような巨大きょだい自然しぜんすうそことする場合ばあいには上位じょういけたから計算けいさんする方式ほうしきもちいると効率こうりつい。

下位かいけたから計算けいさんする方式ほうしき

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バイナリほうでは、つぎ性質せいしつ利用りようする。

たとえば (a8)2 = a16 である。したがって、a(すなわち a1)からはじめて2じょうかえすとつぎぎょうのとおりになる。

これらのかずのうち、適切てきせつなものをえらんでわせれば、任意にんい累乗るいじょうはやく(すなわちすくない乗算じょうざん回数かいすうで)計算けいさんすることができる[21]たとえば a43 は、指数しすう法則ほうそくによって、

として計算けいさんすることができる。乗算じょうざん回数かいすうは 8 かい[注釈ちゅうしゃく 3]むので、a を 42 かいかえわせるのにくらべて効率こうりつい。(下図したずで「→」は乗算じょうざんあらわし、「⇒」は2じょうあらわす。)

じゅうしん表記ひょうき):   a1 a2 a4 a8 a16 a32
2じょう繰返くりかえし(しん表記ひょうき):   a1 a10 a100 a1000 a10000 a100000
       
累乗るいじょう計算けいさんしん表記ひょうき):   a1 a11 ── a1011 ─── a101011
じゅうしん表記ひょうき): a1 a3 a11 a43

コンピュータアルゴリズムとしてくとこうなる。

  1. 指数しすうを n とし、2じょうしていく p := a結果けっか v := 1 とする。
  2. n が 0 なら、v を出力しゅつりょくして終了しゅうりょうする。
  3. n の最下位さいかいけたが 1 なら、v := v * p とする。
  4. n := [n/2] とし(はしすう切捨きりすて)、 p := p * p として、2. にもどる。

整数せいすう内部ないぶ表現ひょうげん二進法にしんほうであるコンピュータなら、4. では除算じょざんわりにシフト演算えんざんもちいることができる。

この方式ほうしきa浮動ふどう小数点しょうすうてんすうである場合ばあいや、最終さいしゅう結果けっかがレジスタにおさまることがわかっている場合ばあい効率こうりつい。また乗算じょうざんモンゴメリ乗算じょうざんなどをもちいてべき剰余じょうよ計算けいさんする場合ばあいも、この方式ほうしき充分じゅうぶん効率こうりつられる。

上位じょういけたから計算けいさんする方式ほうしき

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うえ方式ほうしき同様どうように、つぎ性質せいしつ使つかう。

これに性質せいしつ わせると、つぎ関係かんけいつ。

指数しすう偶数ぐうすう奇数きすうかによってこれらふたつのしき使つかけ、指数しすう順次じゅんじやく1/2にしていくことができる。たとえば は、

である。そして 同様どうように、

である。 はこうなる。

以下いか同様どうように、こうなる。

これを逆順ぎゃくじゅんにたどり、

として算出さんしゅつできる[注釈ちゅうしゃく 4]。(下図したずで「→」は乗算じょうざんあらわし、「⇒」は2じょうあらわす。)

a a a
しん表記ひょうき   a1 a10 a100 a101 a1010 a10100 a10101 a101010 a101011
じゅうしん表記ひょうき   a1 a2 a4 a5 a10 a20 a21 a42 a43

2じょうしたのちa乗算じょうざんするかかは、指数しすう nしん表記ひょうきしたときのかくビットが1であるかかと一致いっちする。

コンピュータのアルゴリズムとしてくとこうなる。

指数しすう nしん表記ひょうきを n とし、n の最下位さいかいけたを n[0]、さい上位じょういけたを n[m]、最下位さいかいからかぞえて k けたを n[k] と表記ひょうきする。
  1. 結果けっか v := 1 とし、
  2. k := m とする(さい上位じょうい)。
  3. v := v * v
  4. n[k] が 1 ならば v := v * a とする。
  5. k := k − 1
  6. k ≧ 0 なら 3. にもどる。

この方式ほうしきでは、4. における乗数じょうすうつねa なので、下位かいけたから計算けいさんする方式ほうしきくらべて乗数じょうすう桁数けたすうちいさくなり、計算けいさん時間じかんがかからない。これはとくに、レジスタにはいりきらないような巨大きょだい自然しぜんすうあつか場合ばあい顕著けんちょとなる。ただし(RSA暗号あんごうのように)べきじょう剰余じょうよ計算けいさんする場合ばあいであってほうおおきさが aどう程度ていどならば、この効果こうかはない。

また 4. における乗数じょうすうつねa なので、あらかじめ a定数ていすう(2 や 10 など、またはディフィー・ヘルマンかぎ共有きょうゆう生成せいせいもと g など)であることがわかっている場合ばあいには、4. の乗算じょうざん最適さいてきをすることができる。

巨大きょだい自然しぜんすう汎用はんようてきべきさんルーチン(aちいさい可能かのうせいたかい)や、aちいさかったり定数ていすうであることがわかっている場合ばあいべきじょう剰余じょうよ計算けいさんする場合ばあいであってモンゴメリー演算えんざんもちいず別途べっと剰余じょうよ計算けいさんする場合ばあいかず保持ほじするコストがたか場合ばあいなど、指数しすうしん表記ひょうきするコスト以上いじょう効率こうりつられる場合ばあい選択せんたくされる。

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ たんに「指数しすう」と場合ばあい、"exponent" にかぎらず、(数学すうがくかぎっても)種々しゅじゅの index を意味いみする場合ばあいおおく、文脈ぶんみゃく注意ちゅういようする(たとえば部分ぶぶんぐん指数しすう)。また、(かならずしもべき指数しすうのことでない)"exponent" のわけとしてべきすうもちいられることもある(たとえばぐんべきすう)。
  2. ^ このようなじつ函数かんすう複素ふくそ解析かいせきてき延長えんちょう一意いちいさだまる。
  3. ^ 乗算じょうざん回数かいすうは、 計算けいさんするのに 5 かい に 3 かいの、合計ごうけい 8 かいかかる。
  4. ^ この場合ばあい乗算じょうざん回数かいすうも、下位かいけたから計算けいさんするのとおなじく合計ごうけい 8 かいかかる。

出典しゅってん

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  1. ^ a b c 鈴木すずき 2013, p. 319, (PDF p. 5).
  2. ^ a b O'Connor, John J.; Robertson, Edmund F., “Etymology of some common mathematical terms”, MacTutor History of Mathematics archive, University of St Andrews, https://mathshistory.st-andrews.ac.uk/Miscellaneous/Mathematical_notation/ .
  3. ^ O'Connor, John J.; Robertson, Edmund F., “Abu'l Hasan ibn Ali al Qalasadi”, MacTutor History of Mathematics archive, University of St Andrews, https://mathshistory.st-andrews.ac.uk/Biographies/Al-Qalasadi/ .
  4. ^ Cajori, Florian (2007). A History of Mathematical Notations, Vol I. Cosimo Classics. Pg 344. ISBN 1602066841
  5. ^ René Descartes, Discourse de la Méthode ... (Leiden, (Netherlands): Jan Maire, 1637), appended book: La Géométrie, book one, page 299. From page 299: " ... Et aa, ou a2, pour multiplier a par soy mesme; Et a3, pour le multiplier encore une fois par a, & ainsi a l'infini ; ... " ( ... and aa, or a2, in order to multiply a by itself; and a3, in order to multiply it once more by a, and thus to infinity ; ... )
  6. ^ Quinion, Michael. “Zenzizenzizenzic - the eighth power of a number”. World Wide Words. 2010ねん3がつ19にち閲覧えつらん
  7. ^ This definition of "involution" appears in the OED second edition, 1989, and Merriam-Webster online dictionary [1]. The most recent usage in this sense cited by the OED is from 1806.
  8. ^ 小学館しょうがくかんデジタル大辞泉だいじせんべき指数しすう[2]
  9. ^ a b 鈴木すずき 2013, p. 372, (PDF p. 58).
  10. ^ See:
    • Earliest Known Uses of Some of the Words of Mathematics
    • Michael Stifel, Arithmetica integra (Nuremberg ("Norimberga"), (Germany): Johannes Petreius, 1544), Liber III (Book 3), Caput III (Chapter 3): De Algorithmo numerorum Cossicorum. (On algorithms of algebra.), page 236. Stifel was trying to conveniently represent the terms of geometric progressions. He devised a cumbersome notation for doing that. On page 236, he presented the notation for the first eight terms of a geometric progression (using 1 as a base) and then he wrote: "Quemadmodum autem hic vides, quemlibet terminum progressionis cossicæ, suum habere exponentem in suo ordine (ut 1ze habet 1. 1ʓ habet 2 &c.) sic quilibet numerus cossicus, servat exponentem suæ denominationis implicite, qui ei serviat & utilis sit, potissimus in multiplicatione & divisione, ut paulo inferius dicam." (However, you see how each term of the progression has its exponent in its order (as 1ze has a 1, 1ʓ has a 2, etc.), so each number is implicitly subject to the exponent of its denomination, which [in turn] is subject to it and is useful mainly in multiplication and division, as I will mention just below.) [Note: Most of Stifel's cumbersome symbols were taken from Christoff Rudolff, who in turn took them from Leonardo Fibonacci's Liber Abaci (1202), where they served as shorthand symbols for the Latin words res/radix (x), census/zensus (x2), and cubus (x3).]
  11. ^ 鈴木すずき 2013, p. 337, (PDF p. 23).
  12. ^ 鈴木すずき 2013, p. 348, (PDF p. 34).
  13. ^ 鈴木すずき 2013, p. 350, (PDF p. 36).
  14. ^ おうあおしょう『「算木さんぎ」をえたおとこ東洋とうよう書店しょてん東京とうきょう、1999ねんISBN 4-88595-226-3 
  15. ^ Steiner, J.; Clausen, T.; Abel, N. H. (January 1827). “Aufgaben und Lehrsatze, erstere aufzulosen, letztere zu beweisen [Problems and propositions, the former to solve, the later to prove]”. Journal für die reine und angewandte Mathematik (Berlin: Walter de Gruyter) 2: 286-287. doi:10.1515/crll.1827.2.96. ISSN 0075-4102. OCLC 1782270. http://gdz.sub.uni-goettingen.de/no_cache/dms/load/img/?IDDOC=270662. 
  16. ^ Nicolas Bourbaki (1970). Algèbre. Springer , I.2
  17. ^ Chapter 1, Elementary Linear Algebra, 8E, Howard Anton
  18. ^ Strang, Gilbert (1988), Linear algebra and its applications (3rd ed.), Brooks-Cole , Chapter 5.
  19. ^ E Hille, R S Phillips: Functional Analysis and Semi-Groups. American Mathematical Society, 1975.
  20. ^ N. Bourbaki, Elements of Mathematics, Theory of Sets, Springer-Verlag, 2004, III.§3.5.
  21. ^ 奥村おくむら晴彦はるひこ『C言語げんごによる最新さいしんアルゴリズム事典じてん技術評論社ぎじゅつひょうろんしゃ、1991ねん、304ぺーじISBN 4-87408-414-1 

参考さんこう文献ぶんけん

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関連かんれん文献ぶんけん

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  • 高木たかぎ貞治さだはる、1904、「だいじゅういちしょう べき及對すう」、『新式しんしき算術さんじゅつ講義こうぎ

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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