かわからだ

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抽象ちゅうしょうだい数学すうがくにおいてかわからだ(かかんたい、ふつ: corps commutatif)あるいはたんからだ(たい、えい: field[ちゅう 1]とは、れいでないかわじょたまき、あるいはおなじことだがれいげん全体ぜんたい乗法じょうほうしたかわぐんをなすようなたまきのことである。そのようなものとしてからだは、適当てきとうなアーベルぐん公理こうり分配ぶんぱいそくたすような加法かほう減法げんぽう乗法じょうほう除法じょほう概念がいねんそなえた代数だいすうてき構造こうぞうである。もっともよく使つかわれるからだは、実数じっすうからだ複素数ふくそすうからだ有理数ゆうりすうからだであるが、ほかにも有限ゆうげんたい関数かんすうからだ代数だいすうたいp すすむすうたいなどがある。

任意にんいからだは、線型せんけい代数だいすう標準ひょうじゅんてきかつ一般いっぱんてき対象たいしょうであるベクトル空間くうかんスカラーとして使つかうことができる。(ガロア理論りろんふくむ)からだ拡大かくだい理論りろんは、あるからだ係数けいすう多項式たこうしき関係かんけいする。結果けっかとして、この理論りろんにより、古典こてんてき問題もんだいである定規じょうぎとコンパスをもちいたかくさん等分とうぶん問題もんだい英語えいごばんえんせき問題もんだい不可能ふかのうであることの証明しょうめい方程式ほうていしき代数だいすうてきけないというアーベル-ルフィニの定理ていり証明しょうめいられる。現代げんだい数学すうがくにおいて、からだろんかずろん代数だいすう幾何きかにおいて必要ひつよう不可欠ふかけつ役割やくわりたしている。

代数だいすうてき構造こうぞうとして、すべてのからだたまきであるが、すべてのたまきからだであるわけではない。もっと重要じゅうようちがいは、からだは(ゼロ除算じょざんのぞいて)除算じょざんができるが、たまき乗法じょうほうぎゃくもとがなくてもよいということである。たとえば、整数せいすう全体ぜんたいたまきをなすが、2x = 1 は整数せいすうにおいてかいたない。また、からだにおける乗法じょうほう演算えんざんかわでなければならない。かわせい仮定かていしない除法じょほう可能かのうたまきじょたまき斜体しゃたい、あるいはからだ[ちゅう 1]ばれる。

たまきとして、からだせいいき特別とくべつなタイプとして分類ぶんるいでき、以下いかのようなクラス包含ほうがんくさりがある。

かわたまきせいいきせい閉整いき一意いちい分解ぶんかいたまき単項たんこうイデアルせいいきユークリッドたまきからだ有限ゆうげんたい

からだをアルファベットであらわすときは、Kつづいて L, M ひとし)をもちいる慣例かんれいがある。これはからだドイツ"Körper" だからである。英語えいご"field"頭文字かしらもじをとって Fもちいられることもある。Fつぎ文字もじ Gぐんまぎらわしいから、まえ文字もじ Eもちいられる。

定義ていぎ[編集へんしゅう]

からだとは、以下いか条件じょうけんたす加法かほう乗法じょうほうばれる 2 つのこう演算えんざんによってさだまる代数だいすうてき構造こうぞうのことである。以下いかたい集合しゅうごう K加法かほう "+" と乗法じょうほう "×" がさだめられているとし、乗法じょうほう結果けっかせきa × bab略記りゃっきする。

  • K加法かほうかんしてアーベルぐんである:
    • a, b, cK任意にんいもととするとき、結合けつごう法則ほうそく a + (b + c) = (a + b) + cつ。
    • a + 0K = 0K + a = aKもと aかたらずにたされるれいげんばれる特別とくべつもと 0K存在そんざいする。
    • aKもとならばそれにたいして a + (−a) = (−a) + a = 0Kたす、マイナスもとばれるもとaつね存在そんざいする。
    • 交換こうかん法則ほうそくつ。つまり K のどんなもと a, b についても、 a + b = b + a となる。
  • K乗法じょうほうかんしてモノイドであって、0 以外いがいもとかわぐんをなす:
    • a, b, cK任意にんいもととするとき、結合けつごう法則ほうそく a(bc) = (ab)cつ。
    • a1K = 1Ka = aKれいげん 0K でないもと aかたらずにたされる単位たんいもとばれる特別とくべつもと 1K存在そんざいする。
    • aれいげん 0K でない Kもとならばそれにたいして aa−1 = a−1a = 1Kたす、ぎゃくもとばれるもと a−1つね存在そんざいする。
    • 交換こうかん法則ほうそくつ。つまり K任意にんいれいげん a, bたいab = baつ。
  • 乗法じょうほう加法かほうたいして分配ぶんぱいてきである:a, b, cK任意にんいもととするとき、a(b + c) = ab + ac, (a + b)c = ac + bcつ。

また、この条件じょうけんたす代数だいすうてき構造こうぞうそなえた代数だいすうけい (K, +, 0K, ×, 1K) あるいは省略しょうりゃくしてたん集合しゅうごう K は「からだす」という。れいげんのみからなる集合しゅうごう {0} は 1 = 0 とれば上記じょうき条件じょうけんたし、自明じめいからだばれるが往々おうおう理論りろんてき障害しょうがいとなるため通常つうじょう除外じょがいしてかんがえる。つまり、からだ定義ていぎ通常つうじょう

  • 1 ≠ 0, すなわち乗法じょうほうれいげんでない単位たんいもとつ。

なる条件じょうけんくわえる。

れい[編集へんしゅう]

F2 = {0,1} 演算えんざんひょう
加法かほう
+ 0 1
0 0 1
1 1 0
乗法じょうほう
× 0 1
0 0 0
1 0 1

しょ概念がいねん[編集へんしゅう]

からだ Kあたえられたとき、その乗法じょうほう構造こうぞうわすれて加法かほうかんするアーベルぐんたときの代数だいすうけい (K, +) をからだ K加法かほうぐんぶ。加法かほうぐんK+Ga(K) としる場合ばあいもある。また乗法じょうほう構造こうぞうのみに注目ちゅうもくして、0 をのぞKもと全体ぜんたい K*乗法じょうほうあたえてられる代数だいすうけい (K*, ×) はぐんであり、乗法じょうほうぐんばれる。K乗法じょうほうぐんをしばしば K× ともしるし、Gm(K) としるされることもある。からだ K乗法じょうほうぐん任意にんい有限ゆうげん部分ぶぶんぐん巡回じゅんかいぐんである。

からだもと濃度のうどすうといい、有限ゆうげんすうからだ有限ゆうげんたいび、そうでないからだ無限むげんたいぶ。有限ゆうげん斜体しゃたいつねかわからだである(ウェダバーンのしょう定理ていり)。

n1 で単位たんいもと 1 を n かいしたものをあらわすとき、n1 = 0 となるようなせい整数せいすう n のうちもっとちいさなものをそのからだしるべすうという。ただし、そのような n存在そんざいしないときしるべすうは 0 であるとめる。からだしるべすうは 0 または素数そすうである。

からだは 0 以外いがいもとすべ可逆かぎゃくとなる単位たんいてきたまきである。したがって、そのイデアル部分ぶぶんたまき概念がいねんかんがえることができるが、からだ自明じめいでないイデアルをたない(これをからだ単純たんじゅんたまきであるという)。からだ単位たんいてきたまきとしての部分ぶぶんたまきふたたからだをなすとき、部分ぶぶんたいという。

からだ K, L とそのあいだ写像しゃぞう f: KLあたえられたとき、fからだじゅん同型どうけいであるとは、単位たんいてきたまきとしてのじゅん同型どうけいであることをいう。つまり、からだじゅん同型どうけい fK任意にんいもと a, b および、K, L それぞれの単位たんいもと 1K, 1Lたいして

すべたす。また、そのぞう Im(f) = {f(x) | xK} は L部分ぶぶんたいとなり、かく Ker(f) = {xK | f(x) = 0L} は K のイデアルとなるが、からだ単純たんじゅんたまきであることと単位たんいもとれいげんうつることはないことから、からだじゅん同型どうけいかならたんになる。したがって、からだじゅん同型どうけい f: KLぞう Im(f) は Kからだとして同型どうけいである。これをなかへの同型どうけいび、さらに fぜんであるときうえへの同型どうけいであるという。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ a b ほん記事きじにおいてたんからだった場合ばあいかわからだ意味いみするものとする。

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]

  • Weisstein, Eric W. "Field". mathworld.wolfram.com (英語えいご).
  • Kuz'min, L.V. (2001), “Field”, in Hazewinkel, Michiel, Encyclopedia of Mathematics, Springer, ISBN 978-1-55608-010-4, https://www.encyclopediaofmath.org/index.php?title=Field&oldid=29756