加法かほう

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3 りんご2 のりんごをくわえるとりんごはわせて 5 になる。3+2=5

加法かほう(かほう、えい: addition, summation)とは、かずわせることを意味いみするこう演算えんざんあるいは多項たこう演算えんざんで、四則しそく演算えんざんのひとつ。ざん(たしざん)、加算かさん(かさん)、あるいはさん(よせざん)ともばれる。また、加法かほう演算えんざん結果けっか(わ、sum)という。記号きごうは「+」。

自然しぜんすう加法かほうは、しばしばもの個数こすうくわわせることにたとられる。またすう概念がいねん拡張かくちょうにしたがい、べつ意味いみ加法かほうかんがえられる。たとえば実数じっすう加法かほうは、もはや自然しぜんすう加法かほうのようにもの個数こすうたとえにすことは出来できないが、曲線きょくせんながさなどべつ対象たいしょうぶつ見出みだせられる。

減法げんぽうとはたがいにぎゃく関係かんけいにあり、またたとえば、まけかず加法かほうとして減法げんぽうとらえられるなど、加法かほう減法げんぽう関連かんれんふかい。これは代数だいすうがくにおいて加法かほうぐん概念がいねんとして抽象ちゅうしょうされる。

無限むげんかずくわえること(総和そうわほう)については総和そうわ級数きゅうすう極限きょくげんεいぷしろんδでるた 論法ろんぽうなど参照さんしょう

記法きほう[編集へんしゅう]

それぞれのこうかっていてすべてをあらわせられるとき、それらの記号きごう "+" を使つかあらわす。たとえば中置ちゅうち記法きほう場合ばあい1, 2

2 + 1

しるされる。これは 3ひとしい。このことは等式とうしきとして

2 + 1 = 3

あらわされる。

3 こう以上いじょうざんについても、たとえばつぎのようにける。

7 + 3 + 1

これは、7 + 3結果けっか1あいだ加法かほうあらわす。

(7 + 3) + 1

また、すべてのこうあらわせられないときあんなんらかの規則きそくせいがある場合ばあいにはあいだ記号きごう "…" で省略しょうりゃくしてあらわすことがある。たとえば1~10までの自然しぜんすうは、

1 + 2 + … + 10 = 55

のようにあらわす。ただしこのような場合ばあいは、記号きごう もちいてあらわすほうが規則きそくせいあらわすことができて便利べんりでありまぎれがない(総和そうわこう参照さんしょう)。

注意ちゅういすべきてんとして、2 つのかずたいする加法かほうL + Rあらわしたときにひだりこう Lみぎこう R が「もとかず」と「くわえるかず」のいずれであるかは加法かほう定義ていぎふくまれない。

性質せいしつ[編集へんしゅう]

かず加法かほうのみに注目ちゅうもくしてその性質せいしつげると以下いかのようなものがある。

  • 対称たいしょうせい交換こうかん法則ほうそく): n + m = m + n
    有限ゆうげんかずすときは、順番じゅんばんえて計算けいさんしてもわらない(ただし、無限むげんかず場合ばあいこたえがわってしまう場合ばあいがあるため、順番じゅんばんえてはならない)。
    れい
    1 + 3 + 9 = 1 + 9 + 3 = 13
  • 推移すいいせい結合けつごう法則ほうそく): (n + m) + k = n + (m + k) = n + m + k
    有限ゆうげんかずすためには、どこからくわえていっても結果けっかおなじである。

これらは抽象ちゅうしょう代数だいすうがくにおいては "加法かほう" とぶべきもののたすべき公理こうりてき性質せいしつなされる。ほかにも

  • 単位たんいもと存在そんざい : あるかず0くわえてもかずわらない。
n + 0 = n
(−n) + n = 0
などが加法かほうかんする性質せいしつとしてげられる。

素朴そぼく定義ていぎ[編集へんしゅう]

2つのりょうがあり、その2つのりょうを「わせたりょう」をもとめるとき演算えんざん加法かほう定義ていぎすればおおくの場合ばあい適用てきようできる。たんに「かずおおきくなる演算えんざん加法かほう」とすれば、せいかずでしかその定義ていぎりたないが、「わせたりょう」で定義ていぎすると、まけかずでも分数ぶんすう小数しょうすうでも定義ていぎできる。

またくわえる順番じゅんばん結果けっかには関係かんけいなく、くわえる順番じゅんばん自由じゆうえたとしても、られる結果けっかつねひとしくなる。このことは 2 つのコップにみずはいっていたとして、どちらのみずをどちらがわそそいでもみずりょうわらないことなどから類推るいすいできる。

加法かほうぎゃく操作そうさとして減法げんぽうかんがえたときに、減法げんぽう結果けっかとしてせいかずからまけかずられることがある。減法げんぽうによってあたらしいかずつくったとき、

ab = c

ここでられたかず c減法げんぽう性質せいしつから、つぎのような関係かんけいつ。

c + b = a

つまり、はじめに ab というざんによってられたあたらしいかず c は、bくわえた結果けっかaひとしくなる性質せいしつつ。 具体ぐたいてき2 から 5いたかずc としたとき、5cしたかず2 になる。25 よりちいさいので、これは加法かほう結果けっかがよりちいさなかずあたえることをしめしている。

うえしきa0 としたとき、cb との0 となるかずである。この c(−b)くことにする。(−b)ざんbざんおな結果けっかつねあたえる。したがって、せいかず減法げんぽうまけかず加法かほうえられる。

ab = a + (−b)

さらに、スカラーりょうだけでなく、ベクトル行列ぎょうれつにも加法かほう定義ていぎされるようになるが、いずれも交換こうかん法則ほうそく結合けつごう法則ほうそくたすものである。

ペアノによる定義ていぎ[編集へんしゅう]

ジュゼッペ・ペアノ自然しぜんすう同士どうし加法かほう以下いかのように形式けいしきてき定義ていぎした。[1]

ただし、 a + 1a後者こうしゃとして定義ていぎされている。後者こうしゃ関数かんすう Sもちいて表現ひょうげんすると以下いかのようにける。

正負せいふかず計算けいさん方法ほうほう[編集へんしゅう]

2 すう a, b符号ふごう絶対ぜったい注目ちゅうもくすると、 (a + b)つぎのように計算けいさんできる。

2 すう a, b (a + b)計算けいさん結果けっか
符号ふごう |a| > |b| |a| < |b| |a| = |b|
a ≥ 0, b ≥ 0 |a| + |b|
a < 0, b < 0 −(|a| + |b|)
a ≥ 0, b < 0 |a| − |b| −(|b| − |a|) 0
a < 0, b ≥ 0 −(|a| − |b|) |b| − |a| 0
2 すう符号ふごうおな場合ばあい
  • a, bともせいかずのとき
    • a絶対ぜったい |a|b絶対ぜったい |b|し、せい符号ふごうける。
  • a, bともまけかずのとき
    • a絶対ぜったい |a|b絶対ぜったい |b|し、まけ符号ふごうける。
2 すう符号ふごうことなる場合ばあい
  • a絶対ぜったい |a|b絶対ぜったい |b| よりおおきい場合ばあい
    • aせいかずのとき
    • bまけかずのとき
      • a絶対ぜったい |a| から b絶対ぜったい |b|き、せい符号ふごうける。
    • aまけかずのとき
    • bせいかずのとき
      • a絶対ぜったい |a| から b絶対ぜったい |b|き、まけ符号ふごうける。
  • a絶対ぜったい |a|b絶対ぜったい |b| よりちいさい場合ばあい
    • bまけかずのとき
    • aせいかずのとき
      • b絶対ぜったい |b| から a絶対ぜったい |a|き、まけ符号ふごうける。
    • bせいかずのとき
    • aまけかずのとき
      • b絶対ぜったい |b| から a絶対ぜったい |a|き、せい符号ふごうける。
  • a, b絶対ぜったいひとしい場合ばあい
    • 0 である。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ ジュゼッペ・ペアノ (1889), Arithmetices principia: nova methodo, pp. 1-2, https://archive.org/details/arithmeticespri00peangoog 

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]