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無限むげん

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
無限むげんしめ記号きごうである

無限むげん(むげん、infinity、∞)とは、かぎりのいことである。

限界げんかいたない」というだけの単純たんじゅん理解りかいできそうな概念がいねんである一方いっぽうで、有限ゆうげん世界せかいしかりえないとおもわれる人間にんげんにとって、無限むげんというものが一体いったいどういうことであるのかを厳密げんみつ理解りかいすることは非常ひじょうむずかしい問題もんだいふくんでいる。このことから、しばしば哲学てつがく数学すうがく論理ろんりがく自然しぜん科学かがくなどの一部いちぶ分野ぶんやにおいて考察こうさつ対象たいしょうとして無限むげんという概念がいねんげられ、そしてふか考察こうさつられている。

ほんこうでは、数学すうがくなどの学問がくもん分野ぶんやにおいて、無限むげんがどのようにとらえられ、どのようにあつかわれるのかを記述きじゅつする。

無限むげんかんする様々さまざま数学すうがくてき概念がいねん

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ペアノ曲線きょくせん構成こうせいさんかい反復はんぷくしたもの。無限むげん反復はんぷくした極限きょくげん空間くうかん充填じゅうてん曲線きょくせんとなる。
無限むげんだい
記号きごう∞ (アーベルなどはこれを 1 / 0 のように表記ひょうきしていた)であらわす。
大雑把おおざっぱえば、いかなるかずよりもおおきいさまをあらわすものであるが、より明確めいかく意味いみけは文脈ぶんみゃくにより様々さまざまである。たとえば、どの実数じっすうよりもおおきな(実数じっすう範疇はんちゅうからはずれた)ある特定とくていの“かず”ととらえられることもある(ちょうじゅん解析かいせき集合しゅうごう基数きすうなど)し、ある変量へんりょうがどの実数じっすうよりもおおきくなるということをあらわすのにもちいられることもある(極限きょくげんなど)。無限むげんだいをあるしゅすうとらえる場合ばあいでも、それに適用てきようされる計算けいさん規則きそく体系たいけいは1つだけではない。実数じっすう拡張かくちょうとしての無限むげんだいには ∞ (+∞) と −∞ がある。大小だいしょう関係かんけい定義ていぎできない複素数ふくそすうには無限むげんだい概念がいねんはないが、類似るいじ概念がいねんとして無限むげんとおてんかんがえることができる。また、計算けいさん機上きじょうでは(本来ほんらいならかんがえないかずだが)たとえば「∞+i」のようなかずあつかえるものもおおい。
無限むげんしょう(infinitesimal)
0のぞく)いかなるかずよりも(その絶対ぜったいが)ちいさなかずととられることもある記号きごうあるいは拡張かくちょうされたかず無限むげんだいおなじく、これは1つのかずあらわすものではなく、かぎりなくちいさくなりうる変数へんすうかんがえる。微分びぶん積分せきぶんがくにおける dx などの記号きごうは、これが無限むげんしょうであるとするかんがかたは、19世紀せいきつうじて否定ひていされるようになったが、20世紀せいき後半こうはんからは、ちょうじゅん解析かいせき立場たちばから見直みなおされるようになった。
感覚かんかくてきにはかりやすいとおもわれる直観ちょっかんてき無限むげんだい無限むげんしょう概念がいねんではあるが、現代げんだいてき実数じっすうろんには直接的ちょくせつてきには存在そんざいしない(いわゆる εいぷしろん-δでるた 論法ろんぽうによって量的りょうてきあつかわれる)。一方いっぽうで、ちょうじゅん解析かいせきなどにおいては数学すうがくてき定式ていしきされ、その存在そんざい肯定こうていされる。
無限むげんとおてん
複素数ふくそすう Aリーマン球面きゅうめんうえいちてん αあるふぁうつ立体りったい射影しゃえいきょうかたち同値どうち
ユークリッド空間くうかん平行へいこうはしせんが、交差こうさするとされる空間くうかんがいてんあるいは拡張かくちょうされた空間くうかんにおける無限むげんとおてん平行へいこう直線ちょくせんのクラスごとに1つの無限むげんとおてんがあるとする場合ばあい射影しゃえい空間くうかんられる。この場合ばあい無限むげんとおてん全体ぜんたいは1つのちょう平面へいめん無限むげんとお直線ちょくせん無限むげんとお平面ひらおもて etc.)を構成こうせいする。また全体ぜんたいでただ1つの無限むげんとおてんがあるとする場合ばあいは(ちょう球面きゅうめんられる。複素ふくそ平面へいめんに1つの無限むげんとおてん ∞ を追加ついかしてられるリーマン球面きゅうめん理論りろんじょうきわめて重要じゅうようである。無限むげんとおてんをつけくわえてえられる射影しゃえい空間くうかんちょう球面きゅうめんはいずれもコンパクトになる。
無限むげん集合しゅうごう
有限ゆうげん集合しゅうごう(その要素ようそかず自然しぜんすうあらわせる集合しゅうごう)でない集合しゅうごう
可算かさん無限むげん集合しゅうごう
自然しぜんすう全体ぜんたい N からのぜんたんしゃ存在そんざいする、すなわちかぞ可能かのう無限むげん集合しゅうごう整数せいすう全体ぜんたい有理数ゆうりすう全体ぜんたい代数だいすうてきすう全体ぜんたいなどはそうである。
可算かさん集合しゅうごう
自然しぜんすう全体ぜんたい N からのぜんたんしゃ存在そんざいしない、すなわちかぞ不可能ふかのう無限むげん集合しゅうごう実数じっすう全体ぜんたい複素数ふくそすう全体ぜんたいなどはそうである。
無限むげん小数しょうすう
その小数しょうすう表示ひょうじ有限ゆうげんけたではないかず
無限むげんれつ
かず(あるいはてんなどの要素ようそ)に番号ばんごうけて無限むげんならべたもの、つまりながさが無限むげん数列すうれつてんれつなど。より厳密げんみつには自然しぜんすう全体ぜんたい集合しゅうごう N うえ定義ていぎされる写像しゃぞう

歴史れきし

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紀元前きげんぜん400ねんから西暦せいれき200ねんごろにかけてのインド数学すうがくでは、膨大ぼうだいかず概念がいねんあつかっていたジャイナきょう学者がくしゃたちがはやくから無限むげん関心かんしんをもった。教典きょうてんひとつである「スーリヤ・プラジュニャプティ」(Surya Prajnapti)では、すべてのかず可算かさん可算かさん無限むげんの3種類しゅるい分類ぶんるいできるとしている。さらに無限むげんには、1方向ほうこう無限むげん、2方向ほうこう無限むげん平面へいめん無限むげん、あらゆる方向ほうこう無限むげん永遠えいえん無限むげんの5種類しゅるいがあるとした。これにより、ジャイナ教徒きょうと数学すうがくしゃ現在げんざいでいうところの集合しゅうごうろんちょうきりすう概念がいねん研究けんきゅうした。

無限むげんだい記号きごう由来ゆらい

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ウロボロス由来ゆらいとなっている。」や、「ジョン・ウォリス無限むげんだい記号きごうとして採用さいようしたのが最初さいしょである[1]。」などのせつ存在そんざいするが、「ローマ数字すうじのↀ(CIƆ)が変化へんかしたものである。」というせつ有力ゆうりょくとされている。

ちょうきりすう

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ドイツ数学すうがくしゃゲオルク・カントールは、無限むげんにはことなる種類しゅるいがあることを見出みいだし、これをちょうきりすう名付なづけた。現代げんだい数学すうがくでは濃度のうど概念がいねんとらえられる。

ちょうきりすう(アレフ)記号きごうもちいて表記ひょうきされ、もっと濃度のうどちいさいものは (アレフ・ヌル、またはアレフ・ゼロ)であらわされる。つぎおおきい濃度のうど集合しゅうごう濃度のうどあらわされ、以後いご同様どうよう ひとし定義ていぎされる。一方いっぽう濃度のうど 集合しゅうごうべき集合しゅうごう濃度のうどあらわされるが、この濃度のうどつね よりしんおおきくなることがカントールにより証明しょうめいされている。

自然しぜんすう全体ぜんたい集合しゅうごう N濃度のうど である。整数せいすう全体ぜんたい集合しゅうごう Z有理数ゆうりすう全体ぜんたい集合しゅうごう Q濃度のうど であり、この無限むげん可算かさん無限むげんぶ。濃度のうど集合しゅうごうとしては実数じっすう全体ぜんたい集合しゅうごう R がある。

カントールは、 より濃度のうどおおきく より濃度のうどちいさい無限むげん存在そんざいしない、つまり、つという仮説かせつ連続れんぞくたい仮説かせつ)をてたが、これを証明しょうめいすることはできなかった。連続れんぞくたい仮説かせつは、現在げんざいでは通常つうじょう数学すうがく体系たいけいからは「証明しょうめい反証はんしょうもできない」ことが証明しょうめいされている。

デデキント無限むげん

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ある集合しゅうごう自身じしん対等たいとうな(すなわちおな濃度のうどつ)部分ぶぶん集合しゅうごう存在そんざいするとき、その集合しゅうごうはデデキント無限むげんであるという。デデキント無限むげんでない集合しゅうごうはデデキント有限ゆうげんであるという。デデキント無限むげん集合しゅうごうつね無限むげん集合しゅうごうであるが、そのぎゃく証明しょうめいするにはよわかたち選択せんたく公理こうり必要ひつようである。無限むげん集合しゅうごうが、デデキント無限むげん集合しゅうごうであるということと、可算かさん無限むげん部分ぶぶん集合しゅうごうつことは同値どうちである。

符号ふごう位置いち

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記号きごう Unicode JIS X 0213 文字もじ参照さんしょう 名称めいしょう
U+221E 1-1-71 ∞
∞
∞
無限むげんだい

出典しゅってん

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  1. ^ YEO・エイドリアン 『πぱいとeのはなし すう不思議ふしぎ』 p.63、青土おうづちしゃ、2008ねん

参考さんこう文献ぶんけん

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関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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