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へんぶんほう

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解析かいせきがくいち分野ぶんやへんぶんほう(へんぶんほう、えい: calculus of variations, variational calculus; へんぶん解析かいせきがく)は、ひろし函数かんすう函数かんすう集合しゅうごうから実数じっすうへの写像しゃぞう)の最大さいだい最小さいしょうあつかう。ひろし函数かんすうはしばしば函数かんすうとそのしるべ函数かんすうふくてい積分せきぶんとしてあらわされる。この分野ぶんやおも興味きょうみ対象たいしょうは、あたえられたひろし函数かんすう最大さいだい最小さいしょうとするような「きょく函数かんすう、あるいはひろし函数かんすう変化へんかりつれいとする「停留ていりゅう函数かんすうである。

そのような問題もんだいのもっとも単純たんじゅんれいは、てんむす最短さいたん曲線きょくせんもとめる問題もんだいである。なん制約せいやくければてんむす直線ちょくせんあきらかにそのかいあたえるが、たとえば空間くうかんじょう特定とくてい曲面きょくめんじょうにある曲線きょくせんという制約せいやくあたえられていれば、かいはそれほどあきらかではないし、複数ふくすうかい存在そんざいる。この問題もんだいかい測地そくちせん総称そうしょうされる。関連かんれんする話題わだいとしてフェルマーの原理げんりは「こうてんむす最短さいたん光学こうがくてきながさを経路けいろとおる。ただし光学こうがくてきながさはあいだにある物質ぶっしつによってまる」ことをべる。これは力学りきがくにおける最小さいしょう作用さよう原理げんり対応たいおうする。

重要じゅうよう問題もんだいおおくが変数へんすう函数かんすうふくむ。ラプラス方程式ほうていしき境界きょうかい問題もんだいかいディリクレの原理げんり満足まんぞくする。 プラトーの問題もんだい英語えいごばん空間くうかんないあたえられた周回しゅうかい面積めんせき最小さいしょう曲面きょくめん極小きょくしょう曲面きょくめん)をもとめる問題もんだいであり、しばしばそのかい石鹸せっけんすいひたしたわく石鹸せっけんまくとしてつけるデモンストレーションをにする。こうした経験けいけん比較的ひかくてき容易ようい実験じっけんできるけれども、その数学すうがくてき解釈かいしゃく簡単かんたんとはほどとおい(局所きょくしょてき最小さいしょうする曲面きょくめん複数ふくすう存在そんざいるし、自明じめい位相いそうる)。

歴史れきし[編集へんしゅう]

へんぶんほうヨハン・ベルヌーイ (1696) のとりげた最速さいそく降下こうか曲線きょくせん問題もんだいはじまるといわれる[1] それはすぐにヤコブ・ベルヌーイおよびギヨーム・ド・ロピタルまるが、この主題しゅだいについてはじめてくわしくべたのはレオンハルト・オイラーであった。オイラーの成果せいかは1733ねんはじまり、著書ちょしょ Elementa Calculi Variationum はこの分野ぶんや由来ゆらいとなった。ジョゼフ=ルイ・ラグランジュはこの理論りろん拡張かくちょう貢献こうけんし、アドリアン=マリ・ルジャンドル (1786) は最大さいだいおよび最小さいしょう判別はんべつする方法ほうほうを(十分じゅうぶんとまではいかなくとも)確立かくりつした。アイザック・ニュートンゴットフリート・ライプニッツもまたこの主題しゅだいたいして先駆せんくてき注目ちゅうもくあたえている[2]。この判別はんべつほうたいして、Brunacci英語えいごばん (1810), カール・フリードリヒ・ガウス (1829), シメオン・ポワソン (1831), ミハイル・オストログラツキー (1834), カール・グスタフ・ヤコブ・ヤコビ (1837) などおおくの貢献こうけんがある。重要じゅうよう一般いっぱんろんピエール・フレデリック・サラス (1842) によるものを オーギュスタン=ルイ・コーシー (1844) が精密せいみつおよび改善かいぜんした。そのにも重要じゅうよう研究けんきゅう論文ろんぶん回顧かいころくStrauch英語えいごばん (1849), Jellett英語えいごばん (1850), ルートヴィヒ・オットー・ヘッセ (1857), Clebsch英語えいごばん (1858), Carll (1885) などかれているが、19世紀せいきのおそらくもっとも重要じゅうよう成果せいかカール・ヴァイヤストラスによる。その高名こうみょう講座こうざ画期的かっきてきなものであり、それにより確固かっこたるうたがいようのない基礎きそうえ第一人者だいいちにんしゃであったとえるだろう。1900ねんされたヒルベルトの23の問題もんだい20番目ばんめ英語えいごばん23番目ばんめ英語えいごばんはこの分野ぶんやさらなる発展はってんうながした[2]。20世紀せいきにはダフィット・ヒルベルトエミー・ネーターレオニダ・トネリ英語えいごばんアンリ・ルベーグジャック・アダマールらのいちじるしい貢献こうけんされた[2]マーストン・モース英語えいごばんへんぶんほう今日きょうモース理論りろんばれるものに応用おうようした[3]レフ・ポントリャーギンラルフ・ロッカフェラー英語えいごばんおよび F. H. Clarke は最適さいてき制御せいぎょ理論りろんにおいてへんぶんほうたいするあたらしい数学すうがくてき道具どうぐ開発かいはつした[3]リチャード・ベルマン動的どうてき計画けいかくほうへんぶんほう代替だいたいとなるもののひとつである[4][5][6]

きょく[編集へんしゅう]

へんぶんほうひろし函数かんすう極大きょくだい極小きょくしょう総称そうしょうして「きょく」とばれる)に注目ちゅうもくする。函数かんすう数値すうちてき変数へんすう依存いぞんしてまるのとある意味いみおなじように、ひろし函数かんすう函数かんすう依存いぞんしてまり、またその意味いみ函数かんすう函数かんすうとしても記述きじゅつされる。 固定こていされた定義ていぎいきうえ定義ていぎされた函数かんすうからなる函数かんすう空間くうかんあたえられたとき、そのもとうご函数かんすう変数へんすう yかんしてひろし函数かんすうきょくつ。ひろし函数かんすう J[ y ]函数かんすう f においてきょくつとは、増分ぞうぶん ΔでるたJ = J[y] - J[f]f任意にんいちいさな近傍きんぼうぞくする任意にんいyたいしておな符号ふごうつときに[Note 1]。このとき函数かんすう fきょく函数かんすうあるいはきょくてん (extremal) とばれる。きょく J[f]極大きょくだいであるとは f任意にんいちいさな近傍きんぼうかくてんにおいて ΔでるたJ ≤ 0たすときにう。また極小きょくしょうであるとは同様どうようΔでるたJ ≥ 0 であるときにう。連続れんぞく函数かんすう空間くうかんたいして、対応たいおうするひろし函数かんすうきょくは、連続れんぞく函数かんすういちかいしるべ函数かんすうすべ連続れんぞくとなるかまたはかにしたがって、それぞれじゃくきょく (weak extrema) またはつよごく (strong extrema) とばれる[8]

ひろし函数かんすうつよごくじゃくきょくはともに連続れんぞく函数かんすう空間くうかんたいするものだが、じゃくきょくはその空間くうかんぞくする函数かんすういちかいしるべ函数かんすう連続れんぞくという追加ついか要件ようけんつ。つよごくじゃくきょくでもあるが、ぎゃくしんではない。つよごくもとめることはじゃくきょくもとめることよりも困難こんなんである[9]じゃくきょくもとめるためにもちいる必要ひつよう条件じょうけんひとつのれいとして、オイラー=ラグランジュ方程式ほうていしきがある[10] [Note 2]

へんぶんおよび極小きょくしょうかんするある十分じゅうぶん条件じょうけん[編集へんしゅう]

へんぶんほうは、ひろし函数かんすう引数ひきすうである函数かんすうのわずかな変化へんかによってしょうじるちいさな変動へんどうとしてのひろし函数かんすうへんぶん注目ちゅうもくする。いちへんぶん[Note 3]ひろし函数かんすう増分ぞうぶんいち成分せいぶん線型せんけい部分ぶぶん)として定義ていぎされ、へんぶん[Note 4]ひろし函数かんすう増分ぞうぶん成分せいぶんとして定義ていぎされる[11]

たとえば J[y]函数かんすう y = y(x)引数ひきすうとするひろし函数かんすうとし、h = h(x)yおな函数かんすう空間くうかんぞくする函数かんすうとして引数ひきすうy から y + h へわずかに変化へんかさせるとき、対応たいおうするひろし函数かんすう増分ぞうぶんΔでるたJ[h] = J[y + h] − J[y]あたえられる[Note 5]

ひろし函数かんすう J[y]微分びぶん可能かのうであるとは、線型せんけいひろし函数かんすう φふぁい[h]存在そんざいして[Note 6] ΔでるたJ[h] = φふぁい[h] + εいぷしろん‖ h ‖ とできるときにう。ただし、‖ h ‖hノルム[Note 7]であり、εいぷしろん‖ h ‖ → 0 のとき εいぷしろん → 0たすものとする。このとき、線型せんけいひろし函数かんすう φふぁいJ[y]いちへんぶん英語えいごばんとよび δでるたJあらわ[15]:

またひろし函数かんすう J[y]かい微分びぶん可能かのうとは、いちへんぶん φふぁい1[h] およびひろし函数かんすう[Note 8] φふぁい2[h]存在そんざいして ΔでるたJ[h] = φふぁい1[h] + φふぁい2[h] + εいぷしろん‖ h ‖2 とできるときにう。ただし、εいぷしろん‖ h ‖ → 0 のとき εいぷしろん → 0 である。ひろし函数かんすう φふぁい2J[y]へんぶんび、 δでるた2J[17]:

へんぶん δでるた2J[h]つよただし (strongly positive) であるとは、適当てきとう定数ていすう k > 0存在そんざいして、任意にんいhたいδでるた2J[h] ≥ k‖ h ‖2たすときに[18]

極小きょくしょう十分じゅうぶん条件じょうけん
ひろし函数かんすう J[y]y = ŷ において極小きょくしょうとなるには、y = ŷ においていちへんぶんδでるたJ[h] = 0 かつへんぶん δでるた2J[h]つよせいとなることが十分じゅうぶんである[19] [Note 9]

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ f近傍きんぼうとは、あたえられた函数かんすう空間くうかんもと y定義ていぎいき全体ぜんたいにおいて |y - f| < hたすもの全体ぜんたい部分ぶぶん集合しゅうごうう。ここでせいかず h近傍きんぼうおおきさをめる定数ていすうである[7]
  2. ^ 十分じゅうぶん条件じょうけん後述こうじゅつ
  3. ^ いちへんぶん (first variation) は、へんぶん微分びぶんいち微分びぶんなどともばれる。
  4. ^ へんぶんもまた微分びぶんなどともばれる。
  5. ^ 増分ぞうぶん ΔでるたJ[h] および以下いかあらわれるへんぶんy および h双方そうほう依存いぞんすることに注意ちゅういせよ。記述きじゅつ簡素かんそのために、引数ひきすう y省略しょうりゃくされているが、たとえば ΔでるたJ[h]ΔでるたJ[y; h] のようにくのが意味いみうえでは自然しぜんである[12]
  6. ^ ひろし函数かんすう φふぁい[h]線型せんけいとは、函数かんすう h, h1, h2実数じっすう αあるふぁかんして、φふぁい[αあるふぁh] = αあるふぁφふぁい[h] および φふぁい[h1 +h2] = φふぁい[h1] + φふぁい[h2]たすことを[13]
  7. ^ 函数かんすう h = h(x)実数じっすう a, bたいして区間くかん axb うえ定義ていぎされているものとすると、h のノルムはその最大さいだい絶対ぜったい ‖ h ‖ = max{|h(x)| : axb}[14]
  8. ^ ひろし函数かんすう (quadratic) であるとは、それがそう線型せんけいひろし函数かんすうふたつの引数ひきすうひとしいといてられることをいう。そう線型せんけいひろし函数かんすう一方いっぽう変数へんすうについて(他方たほう変数へんすう固定こていして)それぞれ線型せんけいであることをいう[16]
  9. ^ 十分じゅうぶん条件じょうけんについては Gelfand & Fomin 2000参照さんしょうじゃく極小きょくしょうたいする十分じゅうぶん条件じょうけんChapter 5: "The Second Variation. Sufficient Conditions for a Weak Extremum". p. 116. の定理ていりつよ極小きょくしょうたいする十分じゅうぶん条件じょうけんChapter 6: "Fields. Sufficient Conditions for a Strong Extremum". p. 148. の定理ていりあたえられている。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ Gelfand, I. M.; Fomin, S. V. (2000). Silverman, Richard A.. ed. Calculus of variations (Unabridged repr. ed.). Mineola, New York: Dover Publications. p. 3. ISBN 978-0486414485. http://store.doverpublications.com/0486414485.html 
  2. ^ a b c van Brunt, Bruce (2004). The Calculus of Variations. Springer. ISBN 0-387-40247-0 
  3. ^ a b Ferguson, James (2004). "Brief Survey of the History of the Calculus of Variations and its Applications". arXiv:math/0402357
  4. ^ Dimitri Bertsekas. Dynamic programming and optimal control. Athena Scientific, 2005.
  5. ^ Bellman, Richard E. (1954). “Dynamic Programming and a new formalism in the calculus of variations”. Proc. Nat. Acad. Sci. 40 (4): 231–235. PMC 527981. PMID 16589462. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC527981/pdf/pnas00731-0009.pdf. 
  6. ^ Kushner, Harold J. (2004ねん). “Richard E. Bellman Control Heritage Award”. American Automatic Control Council. http://a2c2.org/awards/richard-e-bellman-control-heritage-award 2013ねん7がつ28にち閲覧えつらん  See 2004: Harold J. Kushner: regarding Dynamic Programming, "The calculus of variations had related ideas (e.g., the work of Caratheodory, the Hamilton-Jacobi equation). This led to conflicts with the calculus of variations community."
  7. ^ Courant, R; Hilbert, D (1953). Methods of Mathematical Physics. Vol. I (First English ed.). New York: Interscience Publishers, Inc. p. 169. ISBN 978-0471504474 
  8. ^ Gelfand & Fomin 2000, pp. 12–13
  9. ^ Gelfand & Fomin 2000, p. 13
  10. ^ Gelfand & Fomin 2000, pp. 14–15
  11. ^ Gelfand & Fomin 2000, pp. 11–12, 99
  12. ^ Gelfand & Fomin 2000, p. 12, footnote 6
  13. ^ Gelfand & Fomin 2000, p. 8
  14. ^ Gelfand & Fomin 2000, p. 6
  15. ^ Gelfand & Fomin 2000, pp. 11–12
  16. ^ Gelfand & Fomin 2000, pp. 97–98
  17. ^ Gelfand & Fomin 2000, p. 99
  18. ^ Gelfand & Fomin 2000, p. 100
  19. ^ Gelfand & Fomin 2000, p. 100, Theorem 2

関連かんれん文献ぶんけん[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]