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ルベーグ積分せきぶん

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
せい関数かんすう積分せきぶん曲線きょくせん下部かぶじくかこまれた部分ぶぶんあおられた部分ぶぶん)の面積めんせき解釈かいしゃくできる。

数学すうがくにおいて、一変いっぺんすう非負ひふ関数かんすう積分せきぶんは、もっと単純たんじゅん場合ばあいには、その関数かんすうのグラフx じくあいだ面積めんせきなすことができる。ルベーグ積分せきぶん(ルベーグせきぶん、えい: Lebesgue integral)は、積分せきぶんをよりおおくの関数かんすう拡張かくちょうしたものである。ルベーグ積分せきぶんにおいては、積分せきぶん関数かんすう連続れんぞくである必要ひつようはなく、いたるところ不連続ふれんぞくでもよいし、関数かんすうとして無限むげんだいをとることがあってもよい。さらに、関数かんすう定義ていぎいき拡張かくちょうされ、測度そくど空間くうかんばれる空間くうかん定義ていぎされた関数かんすう積分せきぶん関数かんすうとすることもできる。

数学すうがくしゃながあいだ十分じゅうぶんなめらかなグラフを非負ひふ関数かんすうたとえば有界ゆうかい区間くかんうえ連続れんぞく関数かんすう、にたいしては、「曲線きょくせん下部かぶ面積めんせき」を積分せきぶん定義ていぎできると理解りかいしており、多角たかくがたによって領域りょういき近似きんじする手法しゅほうによってそれを計算けいさんした。しかし、より不規則ふきそく関数かんすうかんがえる必要ひつようが、たとえば解析かいせきがく確率かくりつろんにおいて極限きょくげんかんがえるときにしょうじたため、より注意深ちゅういぶか近似きんじ手法しゅほう適切てきせつ積分せきぶん定義ていぎするために必要ひつようなことがあきらかとなった。また、局所きょくしょコンパクトぐんのような、実数じっすう直線ちょくせんよりも一般いっぱん空間くうかんじょう積分せきぶんをしたいことがある。ルベーグ積分せきぶんはこの重要じゅうよう仕事しごとをするために必要ひつようただしい抽象ちゅうしょうあたえる。たとえば、フーリエ級数きゅうすうなどの関数かんすうれつ極限きょくげんとしてあらわされる関数かんすうたいして、積分せきぶん極限きょくげん操作そうさかわとなるかどうかをリーマン積分せきぶんかんがえると非常ひじょう繊細せんさい議論ぎろん必要ひつようだが、ルベーグ積分せきぶんでは、積分せきぶん極限きょくげん操作そうさ交換こうかん可能かのうであるための簡単かんたんじゅうふん条件じょうけんかっている。

ルベーグ積分せきぶんじつ解析かいせきばれる数学すうがく分野ぶんやぞくする確率かくりつろんや、おおくの数理すうり科学かがく分野ぶんやにおいて、重要じゅうよう役割やくわりたす。ルベーグ積分せきぶんという名前なまえは、その積分せきぶん導入どうにゅうした数学すうがくしゃアンリ・ルベーグ[1][2] (Henri Lebesgue, 1875–1941) に由来ゆらいしている。それはまた公理こうりてき確率かくりつろん英語えいごばん中枢ちゅうすうでもある。

「ルベーグ積分せきぶん」(Lebesgue integration) という用語ようごは、カラテオドリはじまる一般いっぱん測度そくどかんする関数かんすう積分せきぶん一般いっぱんろん意味いみすることもあるし、ルベーグ測度そくどかんして実数じっすう直線ちょくせん(あるいは n-次元じげんユークリッド空間くうかん)の特定とくてい部分ぶぶん集合しゅうごうとくルベーグはか集合しゅうごうじょう定義ていぎされたルベーグはか関数かんすう積分せきぶんするという特定とくてい場合ばあい意味いみすることもある[3]

導入どうにゅう

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積分せきぶん厳密げんみつなものにしようといううごきは、19世紀せいきからである。ベルンハルト・リーマン提案ていあんしたリーマンの積分せきぶんはこの目的もくてきけておおきな前進ぜんしんであった。リーマンは関数かんすう積分せきぶんを「簡単かんたん計算けいさんできる積分せきぶん」で近似きんじすることによって定義ていぎした。この定義ていぎによる積分せきぶんは、それまで解答かいとうられていた問題もんだいたいしてそのままの結果けっかをもたらしたし、問題もんだいたいしてはあたらしい結果けっかあたえることになった。しかし、リーマン積分せきぶん関数かんすうれつ極限きょくげん相性あいしょうわるく、積分せきぶん極限きょくげん同時どうじあらわれるような場面ばめんでは解析かいせき困難こんなん場合ばあいがある。それにたいして、ルベーグ積分せきぶんは、積分せきぶん記号きごうしたでの極限きょくげんがよりあつかいやすくなっている。ルベーグ積分せきぶんは、リーマン積分せきぶんことなるかたちの「簡単かんたん計算けいさんできる積分せきぶん」をかんがえており、このことがルベーグ積分せきぶんがリーマン積分せきぶんよりよく振舞ふるま理由りゆうとなっている。さらに、ルベーグ積分せきぶんではリーマン積分せきぶんよりひろ種類しゅるい関数かんすうたいして積分せきぶん定義ていぎすることが可能かのうになっている。たとえば、無理むりすうで 0 を有理数ゆうりすうで 1 をとる関数かんすうディリクレの関数かんすう)を閉区あいだ [0, 1] じょうかんがえると、リーマン積分せきぶんでは積分せきぶん定義ていぎされないが、ルベーグ積分せきぶんでは積分せきぶんできる。

直感ちょっかんてき解釈かいしゃく

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リーマン積分せきぶんあお)とルベーグ積分せきぶん(あか)

積分せきぶん定義ていぎ方法ほうほうちがいを直感ちょっかんてき理解りかいできるように、やまの(海抜かいばつよりうえ部分ぶぶんの)体積たいせき計算けいさんするれいかんがえよう。このやま境界きょうかいははっきりとさだまっているとする(これが積分せきぶん範囲はんいである)。

リーマン積分せきぶんによる方法ほうほう
ケーキをるときのように、やまたて方向ほうこうけて細分さいぶんする。このとき、かくパーツの底面ていめん長方形ちょうほうけいになるようにする。つぎに、かくパーツでもっと標高ひょうこうたかいところを調しらべ、底面ていめん面積めんせきとその標高ひょうこうわせる。かくパーツごとに計算けいさんしたそのしたものを、うえリーマンぶことにする。同様どうようのことを、もっと標高ひょうこうひくいところにたいしておこない、しもリーマンぶことにする。分割ぶんかつこまかくしていったときに、うえしたのリーマンおな収束しゅうそくするときに、リーマン積分せきぶん可能かのうであるといい、その極限きょくげんやま体積たいせきになる。
ルベーグ積分せきぶんによる方法ほうほう
やま等高線とうこうせん地図ちずにする。等高線とうこうせんにそって地図ちず裁断さいだんして、地図ちずをいくつかのパーツに分解ぶんかいする。かくパーツは面積めんせき計算けいさんできる平面へいめん図形ずけいなので(測度そくどかっているので)、パーツの面積めんせきとそのパーツのもっとひくてん標高ひょうこうわせる。かくパーツのこのしたものを「ルベーグ」とぶことにする。この「ルベーグ」はルベーグ積分せきぶん構成こうせいにあった、たん関数かんすう積分せきぶん相当そうとうする。等高線とうこうせん間隔かんかく半分はんぶんにしていったときの「ルベーグ」の極限きょくげんやま体積たいせきになる。

有理数ゆうりすうたい 定義ていぎ関数かんすう ディリクレの関数かんすう)をかんがえる。この関数かんすういたるところ不連続ふれんぞくである。

  • [0, 1] うえでリーマン積分せきぶんではない:[0, 1] をどのように区間くかん分割ぶんかつしても、かく区間くかんには有理数ゆうりすう無理むりすう両方りょうほうすくなくとも1つははいっている。よって、上積うわづみぶんつねに 1 であり、しも積分せきぶんつねに 0 になり、リーマン積分せきぶんではない。
  • [0, 1] うえでルベーグ積分せきぶんである集合しゅうごう定義ていぎ関数かんすう積分せきぶん定義ていぎより

定義ていぎのための準備じゅんび

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ルベーグ積分せきぶん定義ていぎするためには、測度そくど概念がいねん必要ひつようになる(これはってみれば、実数じっすうからなる集合しゅうごう Aたいし、集合しゅうごう A の「おおきさ」となる非負ひふ実数じっすう μみゅー(A)てるものである)。ここでいう「おおきさ」というのは、区間くかん区間くかん交和にたいしてはそれらの通常つうじょう意味いみでの「ながさ」に一致いっちするべきものである。さて函数かんすう 非負ひふじつ数値すうち函数かんすうであるものとして、「f値域ちいき分割ぶんかつする」というかんがえのもと、f積分せきぶんy = ty = t + dtあいだにある水平すいへいほそ帯状おびじょう領域りょういきめる基本きほん面積めんせきtかんしてくわえた総和そうわとなるものである。このような基本きほん面積めんせきはちょうど ひとしい。ここに けば、f のルベーグ積分せきぶん定義ていぎされる[4](ただし、右辺うへん積分せきぶん広義こうぎリーマン積分せきぶん意味いみでとる。f*非負ひふ単調たんちょう増大ぞうだい函数かんすうであり、したがって区間くかん []をとる広義こうぎリーマン積分せきぶんさだまることに注意ちゅういする)[4]はか函数かんすうのクラスにぞくする函数かんすうたいして、これはルベーグ積分せきぶん定義ていぎする。

一般いっぱんの(非負ひふとはかぎらない)はか函数かんすう f がルベーグ積分せきぶんとなるのは、f のグラフと x-じくかこまれた領域りょういき面積めんせき有限ゆうげん、つまり となるときである。この場合ばあい積分せきぶんは(リーマン積分せきぶんのときと同様どうように)x-じくよりうえにある面積めんせきから x-じくよりしたにある面積めんせきいた あたえられる。ここで、fふたつの非負ひふ函数かんすうへの分解ぶんかいであり、各々おのおのあたえられる。

構成こうせいほう

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ルベーグ積分せきぶんろんは、はか集合しゅうごうとそのうえ測度そくどかんする理論りろん測度そくどろん)とはか函数かんすうとその積分せきぶんかんする理論りろん積分せきぶんろん)のだんかまえになっている。

測度そくどろん

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当初とうしょ測度そくどろん線分せんぶん平面へいめん図形ずけい立体りったいなどのなが面積めんせき体積たいせきなどの精密せいみつ解析かいせきのためにかんがされたものである (Lebesgue 1902)。とく実数じっすう全体ぜんたい集合しゅうごう 部分ぶぶん集合しゅうごうについて、その部分ぶぶん集合しゅうごうながさとはなにか、といういにたいして整然せいぜんとした解答かいとうあたえるものであった。

集合しゅうごうろん発展はってんによって、自然しぜん加法かほうせいち、平行へいこう移動いどう不変ふへんになるように、実数じっすうたい のすべての部分ぶぶん集合しゅうごうながさを定義ていぎすることが不可能ふかのうであることがわかった。このことにより、はか集合しゅうごうばれる種類しゅるい部分ぶぶん集合しゅうごうにのみながさを定義ていぎする必要ひつようまれた。測度そくどたすべき適当てきとう条件じょうけんについては測度そくどろん参照さんしょうされたい。

現代げんだいでは測度そくど積分せきぶん公理こうりてき定義ていぎされる。測度そくどというのは、集合しゅうごう X適当てきとう条件じょうけんたす部分ぶぶん集合しゅうごうぞく Σしぐま うえ定義ていぎされた適当てきとう条件じょうけんたす関数かんすう μみゅー であればなんでもよく、Xユークリッド空間くうかんであったり、Σしぐまもと面積めんせき計算けいさんしたい図形ずけいであったりする必要ひつようはないし、μみゅー面積めんせきとかけはなれたものでもよい。そこで、ユークリッド空間くうかん図形ずけい面積めんせきあたえる測度そくど特別とくべつルベーグ測度そくどという名前なまえがついている。

リーマン積分せきぶんでは長方形ちょうほうけい [a, b] × [c, d] の面積めんせきが (ba)(dc) で計算けいさんできることを基礎きそとしている。リーマン積分せきぶん積分せきぶん近似きんじするための「簡単かんたん計算けいさんできる積分せきぶん」として、長方形ちょうほうけいならべたものを使つかっており、測度そくどかんするよりふか議論ぎろん必要ひつようとしなかったのである。

はか函数かんすう

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測度そくど空間くうかんとして (X, M, μみゅー) があたえられたとする。たとえば、X としてユークリッド空間くうかんM をルベーグはか集合しゅうごう全体ぜんたいμみゅー としてルベーグ測度そくどなどがかんがえられる。確率かくりつろんにおいては測度そくど空間くうかんとして μみゅー(X) = 1 であるような測度そくど空間くうかんかくりつ空間くうかん)を使つかう。

ルベーグ積分せきぶんにおいて、積分せきぶん関数かんすうになる関数かんすうはか関数かんすうばれる関数かんすうである。X うえ定義ていぎされた実数じっすうまたはをとる関数かんすう fはか関数かんすうあるいは M-はか関数かんすうであるとは、任意にんい実数じっすう についてf によるぎゃくぞうMぞくすること:

つことである。複素数ふくそすう関数かんすうは、そのきょともはか関数かんすうのとき、はか関数かんすうあるいは M-はか関数かんすうであるという。このように関数かんすうはかせいさだめれば、はか関数かんすう全体ぜんたいからなる集合しゅうごう代数だいすうてき操作そうさせきしょうじつすうばいまたは複素ふくそすうばい)にかんしてじていることがかる。はか関数かんすう全体ぜんたい集合しゅうごうは、実数じっすうからだまたは複素数ふくそすうたいうえ線型せんけい空間くうかんすこともかる。また、完全かんぜん加法かほうぞく M性質せいしつから、 任意にんい部分ぶぶん集合しゅうごう Iはか関数かんすう f によるぎゃくぞう f−1(I) も Mぞくすることもかる。重要じゅうようなことは、おおくの関数かんすうれつ極限きょくげんかんしてじていることである。たとえば、はか関数かんすうれつ fkたいして

あたえられる関数かんすうもまたはか関数かんすうになる。したがって、はか関数かんすうれつかくてん収束しゅうそくしていれば極限きょくげん関数かんすうもまたはか関数かんすうである。

X部分ぶぶん集合しゅうごう E うえ定義ていぎされたじつ数値すうちはか函数かんすう fたいする積分せきぶん 定義ていぎするにはいくつか方法ほうほうがある。

積分せきぶん構成こうせい

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たん函数かんすうによる近似きんじ

ルベーグ積分せきぶん定式ていしきひとつの方法ほうほうとして、たん函数かんすう有限ゆうげん指示しじ函数かんすうじつ係数けいすう線型せんけい結合けつごう)をもちいるものがある。たん函数かんすうは、はか函数かんすう値域ちいき帯状おびじょう分割ぶんかつすることにより、はか函数かんすう近似きんじすることができる。たん函数かんすう積分せきぶんかく帯状おびじょう領域りょういき測度そくどにそのたかさをけたものにひとしい。非負ひふをとる一般いっぱんはか函数かんすう積分せきぶんはその函数かんすうたん函数かんすうによる近似きんじ上限じょうげんとして定義ていぎされ、非負ひふかぎらない場合ばあいには函数かんすうせい成分せいぶん成分せいぶんふたつの非負ひふ函数かんすう分解ぶんかいしてそれらの積分せきぶんとしてはか函数かんすう積分せきぶん定義ていぎする。

集合しゅうごう定義ていぎ関数かんすう場合ばあい

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あたえられた測度そくど μみゅーかんするはか集合しゅうごう Sたいして、S定義ていぎ関数かんすう 積分せきぶん とする。測度そくど μみゅー有限ゆうげん測度そくどでないかぎり、この積分せきぶん となる場合ばあいがあることに注意ちゅういする。以下いか積分せきぶん となる場合ばあいゆるして、「積分せきぶん存在そんざいする」とうことにする。

たん関数かんすう場合ばあい

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実数じっすう定数ていすうれつ akμみゅー-はか集合しゅうごうれつ Sk からつくられる、有限ゆうげん線型せんけい結合けつごう はかたん函数かんすうぶ。はかたん函数かんすう積分せきぶんは、指示しじ函数かんすう積分せきぶん線型せんけい拡張かくちょうしたものであたえられる。よりくわしくけば、非負ひふはかたん函数かんすう(すなわち ak > 0 (∀k)場合ばあい)にたいする積分せきぶんさだめる。ここで、定形ていけいしょうじる場合ばあい想定そうていできるが、規約きやくとしてもちいるものとする。またぜんおなじく積分せきぶん となりる。

あたえられたたん函数かんすう指示しじ函数かんすう線型せんけい結合けつごうとしてあらわ方法ほうほう複数ふくすうあったとしても、上記じょうきのように定義ていぎした積分せきぶんつねおなとなることに留意りゅういする。これは測度そくど加法かほうせいからくるものである。

非負ひふとはかぎらない一般いっぱんじつ数値すうちたん函数かんすう場合ばあい同様どうようなのであるが、定形ていけい は「定義ていぎしない」(あるいは「無意味むいみ」)としてあつかうので、それがあらわれることはけなければならない。よって、非負ひふとはかぎらない f であってもそれを あらわしたとき「ak ≠ 0 となる場合ばあいにはかなら」とできるという仮定かていたすものであれば、うえべた積分せきぶん定義ていぎしき意味いみし、非負ひふ場合ばあい同様どうようあらわかたらずさだまる。

Xはか部分ぶぶん集合しゅうごう Bはかたん函数かんすう sたいして、積分せきぶん領域りょういき B うえs積分せきぶんあたえられる。

非負ひふ場合ばあい

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非負ひふはか関数かんすうとしてゆるす) f積分せきぶん
さだめる。

不定ふてい符号ふごう場合ばあい

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拡張かくちょう実数じっすう実数じっすう以外いがいとしてゆるす)はか函数かんすう f積分せきぶんfせい成分せいぶん f+成分せいぶん f 分解ぶんかいする(ここに f+(x) = max{f(x), 0}, f(x) = −min{0, f(x)} であり、これらおよび 非負ひふはか函数かんすうとなることに注意ちゅういする)ことで定義ていぎされる。左辺さへん積分せきぶんが(±∞場合ばあいゆるして)存在そんざいするためには、右辺うへんふたつの積分せきぶんのうちいずれかひとつでも有限ゆうげんでありさえすればよいことに留意りゅういすべきである。しかし、fルベーグ積分せきぶんであるというときには、左辺さへんが(存在そんざいするだけでなく)有限ゆうげん確定かくていであることを要求ようきゅうする。非負ひふとはかぎらない(拡張かくちょうじつ数値すうちはか函数かんすう f がルベーグ積分せきぶんとなるための必要ひつようじゅうふん条件じょうけんとなることである。絶対ぜったい積分せきぶん有限ゆうげん確定かくていであるという意味いみ絶対ぜったい積分せきぶんともいう。

複素数ふくそすう場合ばあい

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複素ふくそ数値すうちはか函数かんすう場合ばあい同様どうようで、積分せきぶん函数かんすうきょ分解ぶんかいすることで定義ていぎできる。複素ふくそ数値すうちはか函数かんすう hじつ数値すうちルベーグ積分せきぶん函数かんすう f, gもちいて h = f + igけるならば、h積分せきぶん定義ていぎされる。

複素ふくそ数値すうちはか函数かんすうがルベーグ積分せきぶんとなるための必要ひつようじゅうふん条件じょうけんは、その絶対ぜったいがルベーグ積分せきぶんとなることである。

積分せきぶん領域りょういき

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ルベーグ積分せきぶんにおける技術ぎじゅつてき目的もくてきのために、その積分せきぶん領域りょういきは(はか空間くうかん適当てきとう部分ぶぶん集合しゅうごうという)「集合しゅうごう」であり、そのために積分せきぶん領域りょういきたないことに留意りゅういすべきである。初等しょとうてき微分びぶん積分せきぶんがくでは、積分せきぶんするきを反映はんえいして 定義ていぎするし、さらにこれを高階たかしな微分びぶん形式けいしき積分せきぶん場合ばあいにまで一般いっぱんするのであった。これと対照たいしょうに、ルベーグ積分せきぶんは「部分ぶぶん集合しゅうごう測度そくどかんして積分せきぶんする」というべつ方向ほうこうへの一般いっぱんあたえるのである。一次元いちじげん積分せきぶん区間くかんA = [a, b] であるとき、 のようにくことで、それが部分ぶぶん集合しゅうごう [a, b] での積分せきぶんであるということを示唆しさすることは可能かのうである。a > b のとき閉区あいだ Aそら集合しゅうごうであるから、その場合ばあい積分せきぶん0 である。

ルベーグ積分せきぶんにおける定理ていり

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ルベーグ積分せきぶんにおいてはれい集合しゅうごううえでのみことなるをとる関数かんすう区別くべつしない。 正確せいかくうと、関数かんすう fgほとんどいたるところひとしいとは

をみたすことであり、

く。

  • 非負ひふはか関数かんすう (関数かんすうとしてゆるす) fg がほとんどいたるところひとしいならば
  • はか関数かんすう (関数かんすうとしてゆるす) fg がほとんどいたるところひとしいならば、f積分せきぶんであることと g積分せきぶんであることは同値どうちであり、積分せきぶんひとしい。

ルベーグ積分せきぶん以下いか性質せいしつっている。

線型せんけいせい: 積分せきぶん関数かんすう f, g実数じっすう a, bたいして、af + bg積分せきぶんになり

単調たんちょうせい: 0 ≤ fg ならば

単調たんちょう収束しゅうそく定理ていり: {fk}kN非負ひふはか関数かんすう増大ぞうだいれつとする。つまり

このとき

成立せいりつする。

注意ちゅうい: 左辺さへんまたは右辺うへん一方いっぽうせい無限むげんだい発散はっさんすれば、もう一方いっぽうあたり同様どうようである。

ファトゥーの補題ほだい: {fk}kN非負ひふはか関数かんすうれつとする。このとき

成立せいりつする。

この定理ていりにおいては左辺さへんせい無限むげんだい発散はっさんすれば、右辺うへんせい無限むげんだい発散はっさんする。

ルベーグの収束しゅうそく定理ていり: {fk}kNはか関数かんすうれつfがい収束しゅうそくするとし、積分せきぶん関数かんすう g によって、 E のほとんどいたるところで任意にんいkたいして |fk | ≤ g上下じょうげからさえられているとする。このとき、極限きょくげん関数かんすう f積分せきぶんであり

成立せいりつする。

定式ていしき

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測度そくどろんまった使つかわない方法ほうほうとしては、リーマン積分せきぶんコンパクトだい任意にんい連続れんぞく関数かんすうたいしてさだまっているので、関数かんすう解析かいせき手法しゅほうもちいることでより一般いっぱん関数かんすうにこの積分せきぶん拡張かくちょうする方法ほうほうがある。CcR うえ定義ていぎされたじつ数値すうち関数かんすうでコンパクトだいつもの全体ぜんたいとする。ノルムをリーマン積分せきぶんもちいて

によりさだめる。

これにより Cc線形せんけいノルム空間くうかんとなる。距離きょり空間くうかん完備かんび (Hausdorff completion) によって完備かんび空間くうかん拡張かくちょうしたものを L1 とする。この空間くうかんはルベーグ積分せきぶん関数かんすうからなる空間くうかんと(ほとんどいたるところひとしい関数かんすう同一どういつしたとして)同型どうけいとなる。さらに、リーマン積分せきぶんCc うえ連続れんぞく線形せんけいひろし関数かんすうであり、CcL1稠密ちゅうみつ部分ぶぶん空間くうかんであるから、L1 うえ線形せんけいひろし関数かんすうにただいちとおりに拡張かくちょうできる。この拡張かくちょうは、ルベーグ積分せきぶん一致いっちする。

この方法ほうほう問題もんだいてん関数かんすう空間くうかんてんとしてさだめていることであり、この抽象ちゅうしょうてきてん関数かんすうとして表現ひょうげんする方法ほうほう自明じめいではないことである。とりわけ、関数かんすうれつかくてん収束しゅうそく積分せきぶんとの関係かんけいしめすことは非常ひじょうむずかしい。このアプローチを一般いっぱんして局所きょくしょコンパクト空間くうかんうえラドン測度そくどかんする積分せきぶん理論りろん構築こうちくすることができる。これは Bourbaki (2004) によって採用さいようされたアプローチである。詳細しょうさい局所きょくしょコンパクト空間くうかんじょうのラドン測度そくど参照さんしょう

脚注きゃくちゅう

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出典しゅってん

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  1. ^ Lebesgue 1904.
  2. ^ H. Lebesgue (1902), Intégrale, longueur, aire, Ann. Mat. Pura Appl., (3) 7, 231–359. doi:10.1007/BF02420592
  3. ^ 伊藤いとう 1963, p. 78—「なお,はじめにべた一般いっぱん測度そくど空間くうかんでの積分せきぶんを Lebesgue しき積分せきぶんまたはたんに Lebesgue 積分せきぶんということもある」
  4. ^ a b Lieb & Loss 2001, p. 14.

参考さんこう文献ぶんけん

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  • Bourbaki, Nicolas (2004). Integration. I. Chapters 1–6. Translated from the 1959, 1965 and 1967 French originals by Sterling K. Berberian. Elements of Mathematics (Berlin). Berlin: Springer-Verlag. xvi+472. ISBN 3-540-41129-1. MR2018901 
  • 伊藤いとう清三せいぞう『ルベーグ積分せきぶん入門にゅうもんはなぼう、1963ねん 
  • Lebesgue, Henri (1904), Leçons sur l'intégration et la recherche des fonctions primitives, Paris: Gauthier-Villars 
  • Lieb, Elliott; Loss, Michael (2001). Analysis. Graduate Studies in Mathematics. 14 (2nd ed.). American Mathematical Society. ISBN 978-0821827833 

関連かんれん文献ぶんけん

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  1. ^ Very thorough treatment, particularly for probabilists with good notes and historical references.
  2. ^ A classic, though somewhat dated presentation.
  3. ^ Includes a presentation of the Daniell integral.
  4. ^ Good treatment of the theory of outer measures.
  5. ^ Known as Little Rudin, contains the basics of the Lebesgue theory, but does not treat material such as Fubini's theorem.
  6. ^ Known as Big Rudin. A complete and careful presentation of the theory. Good presentation of the Riesz extension theorems. However, there is a minor flaw (in the first edition) in the proof of one of the extension theorems, the discovery of which constitutes exercise 21 of Chapter 2.

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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