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区間くかん (数学すうがく)

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
閉区あいだ [a, b] = {xR | axb}
ひらき区間くかん (a, b) = {xR | a < x < b}

数学すうがくにおける(区間くかん(じつくかん、えい: (real) interval)は、実数じっすう全体ぜんたい R部分ぶぶん集合しゅうごう I であって任意にんい実数じっすう x, yIzR について x < z < y ならば zI という条件じょうけんたすものである[1][2]たとえば、区間くかん [a, b] は axbたす実数じっすう x 全体ぜんたいからなる集合しゅうごうであり、この場合ばあいab両方りょうほうふく区間くかんである。れいとして、実数じっすう全体ぜんたい集合しゅうごう R, まけ実数じっすう全体ぜんたい集合しゅうごう, そら集合しゅうごうなども区間くかんといえる。

実数じっすうかぎらず、勝手かってぜん順序じゅんじょ集合しゅうごうたとえば整数せいすう集合しゅうごう有理数ゆうりすう集合しゅうごうじょうでも区間くかん概念がいねん定義ていぎできる[2]

じつ区間くかん積分せきぶんおよび測度そくどろんにおいて、「おおきさ」「測度そくど」「ながさ」などとばれるりょう容易ようい定義ていぎできるもっとも単純たんじゅん集合しゅうごうとして重要じゅうよう役割やくわりがある。測度そくど概念がいねん実数じっすうからなるより複雑ふくざつ集合しゅうごうたいして拡張かくちょうされ、ボレル測度そくどルベーグ測度そくどといったような概念がいねんまでにつながっていく。

確定かくていせい数学すうがくてき近似きんじおよび算術さんじゅつてきまるがあっても勝手かって公式こうしきたいする保証ほしょうされた一定いってい範囲はんい自動的じどうてきあたえる一般いっぱん数値すうち計算けいさん英語えいごばんほうとしての区間くかん演算えんざんかんがえるにあたって、区間くかんはその中核ちゅうかく概念がいねんす。

用語ようご表記ひょうき[編集へんしゅう]

はしてん (endpoints)
区間くかん最小さいしょう最大さいだいしめす2つので、 [a, b] などのようにコンマ区切くぎりで表記ひょうきする。小数点しょうすうてんにコンマをもちいるくにけた区切くぎりにコンマをもちいるような場合ばあいなどでは、まぎれのいよう端点たんてん区切くぎりにセミコロンもちいることもある。
ひらく/閉
  • 端点たんてんふくまないことをひらけふくむことを閉とする様々さまざま表現ひょうげんがある。りょうはしともじて(ひらいて)いる区間くかんを閉区あいだひらき区間くかん)といい、片側かたがわだけひらいていれば半開はんかい区間くかん、より具体ぐたいてきひだりひらくみぎなどといいあらわすこともある。これらは実数じっすう直線ちょくせんにおける通常つうじょう位相いそうかんするひらけ集合しゅうごうけい集合しゅうごうけいとちょうど一致いっちする。
  • 区間くかん開閉かいへい表記ひょうきするさいじているがわかく括弧かっこもちいる。ひらいているがわまる括弧かっこえる記法きほうかく括弧かっこぎゃくきにする記法きほう国際こくさい規格きかくISO 31-11記載きさいされている(以下いか集合しゅうごう内包ないほうてき記法きほう英語えいごばんもとづく)。
閉区あいだ
ひらき区間くかん
 べつ表記ひょうき→ 
半開はんかい区間くかんひだりひらくみぎ閉)
 べつ表記ひょうき→ 
半開はんかい区間くかんひだり閉右ひらく
 べつ表記ひょうき→ 
なお、a = b のとき、(a, b), [a, b), (a, b]いずれもそら集合しゅうごうあらわし、[a, b]いちてん集合しゅうごう {a}あらわす。また a > b のときは、よん種類しゅるいともそら集合しゅうごうになる。

注意ちゅうい[編集へんしゅう]

  • 数学すうがくにおいてまる括弧かっこかく括弧かっこくく記法きほう遍在へんざいしているから、区間くかん記法きほうがそれらと衝突しょうとつすることは注意ちゅういすべきてんである。たとえば、(a, b) は、集合しゅうごうろんにおいて順序じゅんじょたいあらわしたり、解析かいせき幾何きかがく線型せんけい代数だいすうがくにおいててんベクトル座標ざひょう記述きじゅつするのにもちいたり、ときに代数だいすうがく複素数ふくそすうあらわすのにもちいることもある。それゆえ、ブルバキひらけ区間くかんあらわすのに ]a, b[ なる記法きほう導入どうにゅうした[3]計算けいさん科学かがくなどにおいては [a, b]順序じゅんじょたいあらわすのにもちいられたりもする。
  • 文献ぶんけんによっては ]a, b[区間くかん (a, b)集合しゅうごう(つまり a 以下いか実数じっすうb 以上いじょう実数じっすうすべてからなる集合しゅうごう)の意味いみもちいられる。
  • 区間くかんのいずれかの方向ほうこう限界げんかいがないことをしめすために、無限むげんだい端点たんてんもちいることができる。具体ぐたいてきには、 a = −∞b = +∞いて、たとえば (0, +∞)せい実数じっすう英語えいごばん全体ぜんたい集合しゅうごう+ ともく)の意味いみであり、また (−∞, +∞)実数じっすう直線ちょくせん ひとしい。
  • 文脈ぶんみゃくによっては補完ほかんすう直線ちょくせん部分ぶぶん集合しゅうごうとしての区間くかん定義ていぎすることもできる。補完ほかんすう直線ちょくせんではすべての実数じっすうくわえてふたつの無限むげんとおてん −∞ および +∞もととしてふくまれるから、その文脈ぶんみゃくでは [−∞, b], [−∞, b), [a, +∞], (a, +∞] などの記法きほう使用しようできる。たとえば (−∞, +∞]−∞のぞ拡大かくだい実数じっすうすべてからなる集合しゅうごうあらわす。その解釈かいしゃくのもとでは、[−∞, b], (−∞, b], [a, +∞], [a, +∞) はすべて意味いみし、かついずれもあいことなる。とく(−∞, +∞)通常つうじょう実数じっすう全体ぜんたい集合しゅうごうで、[−∞, +∞]拡大かくだい実数じっすう全体ぜんたい集合しゅうごうになる。拡大かくだい実数じっすうかんがえる場合ばあい通常つうじょう実数じっすうなかかんがえる場合ばあいくらべて定義ていぎ語法ごほうなどが影響えいきょうけるかもしれないことに注意ちゅういすべきである。たとえば、区間くかん (−∞, +∞) = R通常つうじょう実数じっすう範囲はんいでは閉集合しゅうごうだが、拡大かくだい実数じっすう範囲はんいかんがえるならばそうではない。

その用語ようご[編集へんしゅう]

  • 退化たいか区間くかん: 区間くかん退化たいかしているとはただひとつのもとからなる集合しゅうごうとなっているときにう。文献ぶんけんによっては、さらにそら集合しゅうごう退化たいか区間くかん一種いっしゅとしてふくめることもある。
  • しん区間くかん: そらでなく退化たいかもしていない(=ふた以上いじょうもとふくむ)じつ区間くかんしんの (proper; 通常つうじょうの) 区間くかんい、無限むげんもとふくむ。
  • 区間くかん I内部ないぶとは Iふくまれる最大さいだいひらき区間くかんい、それはまた Iりょう端点たんてんのぞIもとすべてからなる集合しゅうごうでもある。
  • 区間くかん I閉包へいほうとは Iふく最小さいしょうの閉区あいだい、それはまた集合しゅうごうとしての I有限ゆうげん端点たんてんくわえてられる集合しゅうごうでもある。
  • 実数じっすうからなる任意にんい集合しゅうごう Xたいして、X区間くかん包絡ほうらく (interval enclosure) または 区間くかんつつみ (interval span) とは、Xふく区間くかんであって、なおかつその区間くかんには Xふくむほかのどの区間くかんしんふくまれることがないという条件じょうけんたす唯一ゆいいつ区間くかんう。
  • 有界ゆうかい区間くかん有界ゆうかい区間くかん: その区間くかん包含ほうがんする上位じょうい集合しゅうごうに、区間くかんないのすべてのもとがそれ以上いじょうとなるようなかず存在そんざいするとき、そのかず下界げかいといい、その区間くかんひだり有界ゆうかいであるという。ぎゃくにすべてのもとがそれ以下いかとなるようなかずうえかいといいみぎ有界ゆうかいとなる(→順序じゅんじょ集合しゅうごう#うえかい)。
  • 有界ゆうかい区間くかんはそのみち(この場合ばあい両端りょうたんてん絶対ぜったい |a − b|)が有限ゆうげんであるという意味いみにおいて有界ゆうかい集合しゅうごうである。このみちのことを、区間くかんながはば測度そくどおおきさなどのようにぶ。有界ゆうかい区間くかんながさはふつう +∞定義ていぎされる。そら区間くかんながさは 0定義ていぎしたり、あるいは定義ていぎしない。
  • 有界ゆうかい区間くかん中心ちゅうしんまたは中点ちゅうてんとは、りょう端点たんてんab のとき (a + b)/2 のことをい、区間くかん半径はんけいとはながさの半分はんぶん |a − b|/2う。中心ちゅうしん半径はんけい有界ゆうかい区間くかんそら区間くかんでは定義ていぎしない。

性質せいしつ[編集へんしゅう]

  • 実数じっすう直線ちょくせん R うち区間くかん概念がいねんは、R連結れんけつ部分ぶぶん集合しゅうごう概念がいねんにちょうど一致いっちする。したがって、任意にんい区間くかん任意にんいじつ数値すうち連続れんぞく函数かんすううつしたぞうもまた区間くかんとなることがわかる。これはちゅうあいだ定理ていりひとつの定式ていしきである。
  • 区間くかん概念がいねんはまた R うちとつ部分ぶぶん集合しゅうごう概念がいねんとも一致いっちする。ゆえに部分ぶぶん集合しゅうごう X区間くかんつつみXとつつつみである。
  • 区間くかんからなる任意にんいぞくまじわりはかならひとつの区間くかんである。ふたつの区間くかん合併がっぺいがふたたび区間くかんとなるための必要ひつようじゅうふん条件じょうけんは、りょう区間くかんまじわりがそらでないか、一方いっぽう区間くかんひらき端点たんてん他方たほうの閉端てん一致いっちすることである。後者こうしゃたとえば、(a, b)[b, c] = (a, c] のようなことをっている。
  • R距離きょり空間くうかんるとき、そのひらき球体きゅうたいとは有界ゆうかいひらき区間くかん (c + r, c − r) のことであり、その球体きゅうたいとは有界ゆうかい閉区あいだ [c + r, c − r] のことをう。ここで中心ちゅうしんc, 半径はんけいr であることに注意ちゅういせよ。
  • 区間くかん I任意にんいもと xIまじわりのみっつの区間くかん I1, I2, I3 への分割ぶんかつ定義ていぎする。これらみっつはじゅんに、Ix よりちいさいもと全体ぜんたいいちてん集合しゅうごう [x, x] = {x}x よりおおきいもと全体ぜんたいである。分割ぶんかつへん I1, I3 がともにそらでない(とく内部ないぶそらでない)ための必要ひつようじゅうふん条件じょうけんxI内部ないぶぞくすることである。これを区間くかんたいするさんふん原理げんり英語えいごばんう。

一般いっぱん[編集へんしゅう]

高次こうじもと区間くかん[編集へんしゅう]

おおくの文脈ぶんみゃくにおいて、n-次元じげん区間くかんは、かく座標ざひょうじくじょう各々おのおのひとつった n 区間くかん直積ちょくせき集合しゅうごう I = I1 × I2 × ⋯ × In としてける Rn部分ぶぶん集合しゅうごうとして定義ていぎされる。

n = 2 のとき、これはかくあたり座標軸ざひょうじく平行へいこう矩形くけい領域りょういきかく区間くかんながさがひとしければ正方形せいほうけい領域りょういき)としてることができ、同様どうようn = 3 のとき、じく平行へいこう直方体ちょくほうたい領域りょういき同様どうよう立方体りっぽうたい領域りょういき)となる。こう次元じげん場合ばあいにも、n 区間くかん直積ちょくせき有界ゆうかいn-次元じげんちょう立方体りっぽうたいまたはちょう矩形くけいである。

いま定義ていぎした意味いみ区間くかん Iファセット (facet) は、I定義ていぎする直積ちょくせき因子いんしのうち任意にんい退化たいか区間くかん IkIk有限ゆうげん端点たんてんのみからなる退化たいか区間くかんえてられる区間くかんう。Iめん集合しゅうごうとは、I 自身じしんおよび I任意にんいのファセットのめんとなるものすべてからなる集合しゅうごうである。I頂点ちょうてん集合しゅうごうとは、Rnいちてんのみからなるめん全体ぜんたい集合しゅうごうう。

いくつかの場合ばあいには、いち次元じげん場合ばあい記法きほう流用りゅうようした記法きほうもちいられる。a, bRn成分せいぶん表示ひょうじしたものが a = (a1, …, an) および b = (b1, …, bn) であるとき、

閉区あいだ
ひらき区間くかん
半開はんかい区間くかんひだり閉右ひらく
半開はんかい区間くかんひだりひらくみぎ閉)

複素ふくそ区間くかん[編集へんしゅう]

複素数ふくそすう区間くかん複素数ふくそすう平面へいめんうち矩形くけい領域りょういきもしくは円形えんけい領域りょういきいずれかとして定義ていぎすることができる[4]

区間くかん位相いそうたまき[編集へんしゅう]

区間くかんりょう端点たんてん座標ざひょうとする平面へいめんじょうてん対応付たいおうづけることができ、したがって区間くかんからなる集合しゅうごう平面へいめんじょう領域りょういき対応付たいおうづけることができる。一般いっぱんに、区間くかん実数じっすう直線ちょくせん直積ちょくせき集合しゅうごう R × Rぞくする順序じゅんじょたい (x, y)対応付たいおうづけるとき、y > x はしばしば暗黙あんもく仮定かていとしてあるが、数学すうがくてき構造こうぞう目的もくてきでこの制約せいやくさず[5]yx < 0 なる「ぎゃく区間くかん」("reversed intervals") もゆるすことにする。そうすると、区間くかん [x, y] 全体ぜんたい集合しゅうごうは、R 同士どうし直和なおかず成分せいぶんごとのせきれた位相いそうたまきどういちできる。

この直和なおかずたまき (RR, +, ×)ふたつのイデアル {[x, 0]  |  xR} および {[0, y]  |  yR}つ。このたまき乗法じょうほう単位たんいもと退化たいか区間くかん [1, 1] である。ふたつのイデアルにはいらない区間くかん [x, y] 乗法じょうほうぎゃくもと [1/x, 1/y]つ。通常つうじょう位相いそうのもと、この区間くかんからなる代数だいすうけい位相いそうたまきす。このたまき単元たんげんぐんかく座標軸ざひょうじく(これはいまこのたまきのイデアルとしてあたえられているのであった)でけられるよっつのよんふん象限しょうげんからなる。単元たんげんぐん単位たんい成分せいぶん英語えいごばんだいいち象限しょうげんである。

任意にんい区間くかんは、その中点ちゅうてん中心ちゅうしんとする対称たいしょう区間くかんかんがえることができる。M Warmus が1956ねん出版しゅっぱんしたさい構成こうせいでは、「均衡きんこう区間くかん」("balanced interval") [x, −x]じくてん退化たいかした区間くかん [x, x]じく沿ってもちいている。 区間くかんたまきを、直和なおかずたまき RR ではなくて、分解ぶんかいがた複素数ふくそすう平面へいめんどういち[6]したのは M. Warmus と D. H. Lehmer である。どういち

z = (x + y)/2 + j(xy)/2

とおしてられる。この平面へいめんじょう線型せんけいかつかん同型どうけい写像しゃぞうは、平面へいめんじょう乗法じょうほう構造こうぞうあたえ、そこでは通常つうじょう複素数ふくそすう算術さんじゅつにあるようなごく分解ぶんかい英語えいごばんなどの類似るいじぶつかんがえることができるようになる。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ H. J. キースラー ちょ斎藤さいとう正彦まさひこ わけ無限むげんしょう解析かいせき基礎きそ東京とうきょう図書としょ、1986ねん、27ぺーじNDLJP:12623317 
  2. ^ a b Kuratowski, K.; Mostowski, A. (1976). Set Theory (Second ed.). North-Holland. p. 204. ISBN 0-7204-0470-3. MR485384. Zbl 0337.02034 
  3. ^ http://hsm.stackexchange.com/a/193
  4. ^ Complex interval arithmetic and its applications, Miodrag Petković, Ljiljana Petković, Wiley-VCH, 1998, ISBN 978-3-527-40134-5
  5. ^ Kaj Madsen (1979) Review of "Interval analysis in the extended interval space" by Edgar Kaucher(よう登録とうろく) from Mathematical Reviews
  6. ^ D. H. Lehmer (1956) Review of "Calculus of Approximations"(よう登録とうろく) from Mathematical Reviews

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]