数学 すうがく における用語 ようご のより広 ひろ い使用 しよう については「直和 なおかず 」をご覧 らん ください。
抽象 ちゅうしょう 代 だい 数学 すうがく における直和 なおかず (ちょくわ、英 えい : direct sum )は、いくつかの加 か 群 ぐん を一 ひと つにまとめて新 あたら しい大 おお きな加 か 群 ぐん にする構成 こうせい である。加 か 群 ぐん の直和 なおかず は、与 あた えられた加 か 群 ぐん を「不 ふ 必要 ひつよう な」制約 せいやく なしに部分 ぶぶん 加 か 群 ぐん として含 ふく む最小 さいしょう の加 か 群 ぐん であり、余 よ 積 せき の例 れい である。双対 そうつい 概念 がいねん である直積 ちょくせき (英語 えいご 版 ばん ) と対照 たいしょう をなす。
この構成 こうせい の最 もっと もよく知 し られた例 れい はベクトル空間 くうかん (体 からだ 上 うえ の加 か 群 ぐん )やアーベル群 ぐん (整数 せいすう 環 たまき Z 上 うえ の加 か 群 ぐん )を考 かんが えるときに起 お こる。構成 こうせい はバナッハ空間 くうかん やヒルベルト空間 くうかん をカバーするように拡張 かくちょう することもできる。
ベクトル空間 くうかん とアーベル群 ぐん に対 たい する構成 こうせい [ 編集 へんしゅう ]
まずこれら二 ふた つについて、対象 たいしょう が二 ふた つだけの場合 ばあい と仮定 かてい して構成 こうせい を与 あた え、それからそれらを任意 にんい の加 か 群 ぐん の任意 にんい の族 ぞく に一般 いっぱん 化 か する。一般 いっぱん 的 てき な構成 こうせい の重要 じゅうよう な部分 ぶぶん は、これら二 ふた つのケースを深 ふか く考 かんが えることによって、よりはっきり浮 う かび上 あ がってくるだろう。
2つのベクトル空間 くうかん に対 たい する構成 こうせい [ 編集 へんしゅう ]
V と W を体 からだ K 上 うえ のベクトル空間 くうかん とする。カルテジアン積 せき V × W に K 上 うえ のベクトル空間 くうかん の構造 こうぞう を成分 せいぶん ごとに演算 えんざん を定義 ていぎ することによって与 あた えることができる (Halmos 1974 , §18): v , v 1 , v 2 ∈ V , w , w 1 , w 2 ∈ W , α あるふぁ ∈ K に対 たい して、
(v 1 , w 1 ) + (v 2 , w 2 ) = (v 1 + v 2 , w 1 + w 2 )
α あるふぁ (v , w ) = (α あるふぁ v , α あるふぁ w )
得 え られるベクトル空間 くうかん は V と W の直和 なおかず (direct sum) と呼 よ ばれ、通常 つうじょう 円 えん の中 なか にプラスの記号 きごう で表記 ひょうき される:
V
⊕
W
{\displaystyle V\oplus W}
順序付 じゅんじょづ けられた和 わ の元 もと を順序 じゅんじょ 対 たい (v , w ) ではなく和 わ v + w として書 か くのが慣習 かんしゅう である。
V ⊕ W の部分 ぶぶん 空間 くうかん V × {0} は V に同型 どうけい でありしばしば V と同一 どういつ 視 し される。{0} × W と W に対 たい しても同様 どうよう 。(以下 いか の内部 ないぶ 直和 なおかず を見 み よ。)この同 どう 一 いち 視 し をして、V ⊕ W のすべての元 もと は1つ、そしてただ1つの方法 ほうほう で V の元 もと と W の元 もと の和 わ として書 か くことができる。V ⊕ W の次元 じげん は V と W の次元 じげん の和 わ に等 ひと しい。
この構成 こうせい はただちに任意 にんい の有限 ゆうげん 個 こ のベクトル空間 くうかん に一般 いっぱん 化 か する。
2つのアーベル群 ぐん に対 たい する構成 こうせい [ 編集 へんしゅう ]
加法 かほう 的 てき に書 か かれるアーベル群 ぐん G と H に対 たい して、G と H の直積 ちょくせき (direct product) はまた直和 なおかず (direct sum) とも呼 よ ばれる (Mac Lane & Birkhoff 1999 , §V.6)。したがってカルテジアン積 せき G × H は成分 せいぶん ごとに演算 えんざん を定義 ていぎ することによってアーベル群 ぐん の構造 こうぞう が入 はい る: g 1 , g 2 ∈ G , h 1 , h 2 ∈ H に対 たい して、
(g 1 , h 1 ) + (g 2 , h 2 ) = (g 1 + g 2 , h 1 + h 2 )
整数 せいすう を掛 か けることは成分 せいぶん ごとに次 つぎ のように同様 どうよう に定義 ていぎ される。g ∈ G , h ∈ H と、整数 せいすう n に対 たい して、
これはベクトル空間 くうかん の直和 なおかず に対 たい するスカラー倍 ばい と同様 どうよう の定義 ていぎ である。
得 え られるアーベル群 ぐん は G と H の直和 なおかず (direct sum) と呼 よ ばれ、通常 つうじょう 円 えん の中 なか にプラスの記号 きごう で表記 ひょうき される:
G
⊕
H
{\displaystyle G\oplus H}
順序付 じゅんじょづ けられた和 わ の元 もと を順序 じゅんじょ 対 たい (g , h ) ではなく和 わ g + h として書 か くのが慣習 かんしゅう である。
G ⊕ H の部分 ぶぶん 群 ぐん G × {0} は G に同型 どうけい でありしばしば G と同一 どういつ 視 し される。{0} × H と H に対 たい しても同様 どうよう 。(以下 いか の「内部 ないぶ 直和 なおかず 」を参照 さんしょう 。)この同 どう 一 いち 視 し をして、G ⊕ H のすべての元 もと は1つ、ただ1つの方法 ほうほう でG の元 もと と H の元 もと の和 わ として書 か けるということが正 ただ しい。G ⊕ H のランク は G と H のランクの和 わ に等 ひと しい。
この構成 こうせい は直 ただ ちに有限 ゆうげん 個 こ のアーベル群 ぐん に一般 いっぱん 化 か する。
加 か 群 ぐん の任意 にんい の族 ぞく に対 たい する構成 こうせい [ 編集 へんしゅう ]
2つのベクトル空間 くうかん の直和 なおかず と2つのアーベル群 ぐん の直和 なおかず の定義 ていぎ の間 あいだ の明 あき らかな同様 どうよう 性 せい に気付 きづ くべきである。実際 じっさい 、それぞれは2つの加 か 群 ぐん の直和 なおかず の構成 こうせい の特別 とくべつ な場合 ばあい である。さらに、定義 ていぎ を修正 しゅうせい することによって加 か 群 ぐん の無限 むげん 族 ぞく の直和 なおかず に適用 てきよう することもできる。正確 せいかく な定義 ていぎ は以下 いか のようである (Bourbaki 1989 , §II.1.6)。
R を環 たまき とし {M i : i ∈ I } を集合 しゅうごう I で添 そ え字 じ づけられた左 ひだり R -加 か 群 ぐん の族 ぞく とする。すると {M i } の直和 なおかず (direct sum) はすべての列 れつ
(
α あるふぁ
i
)
{\displaystyle (\alpha _{i})}
の集合 しゅうごう 、ただし
α あるふぁ
i
∈
M
i
{\displaystyle \alpha _{i}\in M_{i}}
であり有限 ゆうげん 個 こ を除 のぞ くすべての添 そ え字 じ i にたいして
α あるふぁ
i
=
0
{\displaystyle \alpha _{i}=0}
、と定義 ていぎ される。(直積 ちょくせき (英語 えいご 版 ばん ) (direct product ) は類似 るいじ だが添 そ え字 じ は有限 ゆうげん 個 こ を除 のぞ くすべてで消 き える必要 ひつよう はない。)
それはまた次 つぎ のようにも定義 ていぎ できる。I から加 か 群 ぐん M i の非 ひ 交和 への関数 かんすう α あるふぁ であって、すべての i ∈ I に対 たい して α あるふぁ (i ) ∈ M i であり有限 ゆうげん 個 こ を除 のぞ くすべての添 そ え字 じ i に対 たい して α あるふぁ (i ) = 0 であるようなもの。これらの関数 かんすう は
i
∈
I
{\displaystyle i\in I}
上 うえ のファイバーを
M
i
{\displaystyle M_{i}}
として添 そ え字 じ 集合 しゅうごう I 上 うえ のファイバー束 たば の有限 ゆうげん 台 だい 断面 だんめん として同値 どうち に見 み なすことができる。
この集合 しゅうごう は成分 せいぶん ごとの和 わ とスカラー倍 ばい を経由 けいゆ して加 か 群 ぐん の構造 こうぞう を引 ひ き継 つ ぐ。具体 ぐたい 的 てき には、2つのそのような列 れつ (あるいは関数 かんすう ) α あるふぁ と β べーた はすべての i に対 たい して
(
α あるふぁ
+
β べーた
)
i
=
α あるふぁ
i
+
β べーた
i
{\displaystyle (\alpha +\beta )_{i}=\alpha _{i}+\beta _{i}}
(これは再 ふたた び有限 ゆうげん 個 こ を除 のぞ くすべての添 そ え字 じ に対 たい して 0 であることに注意 ちゅうい する)と書 か くことによって足 た すことができ、そのような関数 かんすう は R の元 もと r によってすべての i に対 たい して
r
(
α あるふぁ
)
i
=
(
r
α あるふぁ
)
i
{\displaystyle r(\alpha )_{i}=(r\alpha )_{i}}
と定義 ていぎ することによって掛 か けることができる。このようにして、直和 なおかず は左 ひだり R -加 か 群 ぐん になり、それは
⨁
i
∈
I
M
i
.
{\displaystyle \bigoplus _{i\in I}M_{i}.}
と表記 ひょうき される。列 れつ
(
α あるふぁ
i
)
{\displaystyle (\alpha _{i})}
を和 わ
∑
α あるふぁ
i
{\displaystyle \textstyle \sum \alpha _{i}}
として書 か くのが慣習 かんしゅう である。ときどき有限 ゆうげん 個 こ を除 のぞ くすべての項 こう が 0 であることを示 しめ すためにプライム付 づけ 総和 そうわ
∑
′
α あるふぁ
i
{\displaystyle \textstyle \sum '\alpha _{i}}
が使 つか われる。
直和 なおかず は加 か 群 ぐん M i の直積 ちょくせき (英語 えいご 版 ばん ) の部分 ぶぶん 加 か 群 ぐん である(Bourbaki 1989 , §II.1.7)。直積 ちょくせき は I から加 か 群 ぐん M i の非 ひ 交和へのすべての関数 かんすう α あるふぁ で α あるふぁ (i )∈M i となるものの集合 しゅうごう であるが、有限 ゆうげん 個 こ を除 のぞ くすべての i で消 き える必要 ひつよう はない。添 そ え字 じ 集合 しゅうごう I が有限 ゆうげん であれば、直和 なおかず と直積 ちょくせき は等 ひと しい。
加 か 群 ぐん の各 かく M i は i とは異 こと なるすべての添 そ え字 じ 上 じょう で消 き える関数 かんすう からなる直和 なおかず の部分 ぶぶん 加 か 群 ぐん と同一 どういつ 視 し できる。これらの同 どう 一 いち 視 し をして、直和 なおかず のすべての元 もと x は1つ、そしてただ1つの方法 ほうほう で加 か 群 ぐん M i たちの有限 ゆうげん 個 こ の元 もと の和 わ として書 か ける。
M i が実 じつ はベクトル空間 くうかん であれば、直和 なおかず の次元 じげん は M i の次元 じげん の和 わ に等 ひと しい。同 おな じことはアーベル群 ぐん のランク と加 か 群 ぐん の長 なが さ に対 たい しても正 ただ しい。
体 からだ K 上 うえ のすべてのベクトル空間 くうかん は十 じゅう 分 ふん たくさんの K のコピーの直和 なおかず に同型 どうけい であり、したがってある意味 いみ 考 かんが えられなければならないのはこれらの直 ちょく 和 わ だけである。これは任意 にんい の環 たまき 上 じょう の加 か 群 ぐん に対 たい しては正 ただ しくない。
テンソル積 せき は次 つぎ の意味 いみ で直 ちょく 和上 わじょう 分配 ぶんぱい する: N が右 みぎ R -加 か 群 ぐん であれば、N の M i とのテンソル積 せき (これはアーベル群 ぐん )の直和 なおかず は自然 しぜん に N の M i の直和 なおかず とのテンソル積 せき と同型 どうけい である。
直和 なおかず はまた(同型 どうけい を除 のぞ いて)可 か 換 かわ であり結合 けつごう 的 てき である、つまりどんな順番 じゅんばん で直和 なおかず を作 つく ろうが関係 かんけい ない。
直和 なおかず からある左 ひだり R -加 か 群 ぐん L への R -線型 せんけい 準 じゅん 同型 どうけい の群 ぐん は自然 しぜん に M i から L への R -線型 せんけい 準 じゅん 同型 どうけい の群 ぐん の直積 ちょくせき に同型 どうけい である:
Hom
R
(
⨁
i
∈
I
M
i
,
L
)
≅
∏
i
∈
I
Hom
R
(
M
i
,
L
)
.
{\displaystyle \operatorname {Hom} _{R}\!{\bigg (}\bigoplus _{i\in I}M_{i},L{\biggr )}\cong \prod _{i\in I}\operatorname {Hom} _{R}(M_{i},L).}
実際 じっさい 、明 あき らかに左辺 さへん から右辺 うへん への準 じゅん 同型 どうけい τ たう が存在 そんざい する、ただし τ たう (θ しーた )(i) は(M i の直 ちょく 和 わ への自然 しぜん な包含 ほうがん を使 つか って) x ∈M i を θ しーた (x ) に送 おく る R -線型 せんけい 準 じゅん 同型 どうけい である。準 じゅん 同型 どうけい τ たう の逆 ぎゃく は加 か 群 ぐん M i の直和 なおかず の任意 にんい の α あるふぁ に対 たい して
τ たう
−
1
(
β べーた
)
(
α あるふぁ
)
=
∑
i
∈
I
β べーた
(
i
)
(
α あるふぁ
(
i
)
)
{\displaystyle \tau ^{-1}(\beta )(\alpha )=\sum _{i\in I}\beta (i)(\alpha (i))}
で定義 ていぎ される。重要 じゅうよう な点 てん は α あるふぁ (i ) が有限 ゆうげん 個 こ を除 のぞ くすべての i に対 たい して 0 でありしたがって和 わ が有限 ゆうげん であるから τ たう −1 の定義 ていぎ は意味 いみ をなすということである。
とくに、ベクトル空間 くうかん の直和 なおかず の双対 そうつい ベクトル空間 くうかん はそれらの空間 くうかん の双対 そうつい の直積 ちょくせき に同型 どうけい である。
加 か 群 ぐん の有限 ゆうげん 直和 なおかず は双 そう 積 せき (英語 えいご 版 ばん ) である:
p
k
:
A
1
⊕
⋯
⊕
A
n
→
A
k
{\displaystyle p_{k}:A_{1}\oplus \cdots \oplus A_{n}\to A_{k}}
が自然 しぜん な射影 しゃえい 写像 しゃぞう であり
i
k
:
A
k
↦
A
1
⊕
⋯
⊕
A
n
{\displaystyle i_{k}:A_{k}\mapsto A_{1}\oplus \cdots \oplus A_{n}}
が包含 ほうがん 写像 しゃぞう であれば、
i
1
∘
p
1
+
⋯
+
i
n
∘
p
n
{\displaystyle i_{1}\circ p_{1}+\cdots +i_{n}\circ p_{n}}
は A 1 ⊕ ··· ⊕ A n の恒等 こうとう 射 しゃ に等 ひと しく、
p
k
∘
i
l
{\displaystyle p_{k}\circ i_{l}}
は l=k のとき A k の恒等 こうとう 射 しゃ でありそれ以外 いがい では零 れい 写像 しゃぞう である。
M を R -加 か 群 ぐん とし、Mi (i ∈ I ) はすべて M の部分 ぶぶん 加 か 群 ぐん とする。すべての x ∈ M が Mi の有限 ゆうげん 個 こ の元 もと の和 わ として一 いち 通 とお り、かつ一 いち 通 とお りに限 かぎ り書 か くことができるならば、M は部分 ぶぶん 加 か 群 ぐん の族 ぞく Mi の内部 ないぶ 直和 なおかず (internal direct sum) であると言 い う (Halmos 1974 , §18)。この場合 ばあい 、M は、上 うえ で定義 ていぎ された Mi たちの(外部 がいぶ )直和 なおかず と自然 しぜん 同型 どうけい である (Adamson 1972 , p.61)。
M の部分 ぶぶん 加 か 群 ぐん N が M の直和 なおかず 成分 せいぶん または直和 なおかず 因子 いんし (direct summand ) であるとは、M の別 べつ の部分 ぶぶん 加 か 群 ぐん N′ が存在 そんざい して M は N と N′ の内部 ないぶ 直和 なおかず となるときにいう。このとき、N と N′ は互 たが いに補 ほ (complementary submodule ; 相補 そうほ 部分 ぶぶん 加 か 群 ぐん 、ベクトル空間 くうかん の場合 ばあい 相補 そうほ 部分 ぶぶん 空間 くうかん )であるという。
圏 けん 論 ろん の言葉 ことば では、直和 なおかず は余 よ 積 せき でありしたがって左 ひだり R -加 か 群 ぐん の圏 けん の余 よ 極限 きょくげん である、つまりそれは以下 いか の普遍 ふへん 性 せい によって特徴 とくちょう づけられる。すべての i ∈ I に対 たい して、 M i の元 もと を i を除 のぞ くすべての変数 へんすう に対 たい して 0 である関数 かんすう に送 おく る自然 しぜん な埋 う め込 こ み
j
i
:
M
i
→
⨁
k
∈
I
M
k
{\displaystyle j_{i}\colon M_{i}\to \bigoplus _{k\in I}M_{k}}
を考 かんが えよ。f i : M i → M がすべての i に対 たい して任意 にんい の R -線型 せんけい 写像 しゃぞう であれば、ちょうど1つの R -線型 せんけい 写像 しゃぞう
f
:
⨁
i
∈
I
M
i
→
M
{\displaystyle f\colon \bigoplus _{i\in I}M_{i}\to M}
が存在 そんざい して、すべての i に対 たい して f o ji = f i である。
双対 そうつい 的 てき に、直積 ちょくせき は積 せき である。
直和 なおかず は対象 たいしょう の集合 しゅうごう に可 か 換 かわ モノイド の構造 こうぞう を対象 たいしょう の和 わ は定義 ていぎ されるが差 さ はされないという意味 いみ で与 あた える。実 じつ は、差 さ を定義 ていぎ することができ、すべての可 か 換 かわ モノイドはアーベル群 ぐん に拡張 かくちょう することができる。この拡張 かくちょう はグロタンディーク群 ぐん として知 し られている。拡張 かくちょう は対象 たいしょう のペアの同値 どうち 類 るい を定義 ていぎ することによってされる、これによってあるペアを逆 ぎゃく 元 もと として扱 あつか うことができる。この構成 こうせい (詳細 しょうさい はグロタンディーク群 ぐん の項 こう を見 み よ)は、一意 いちい であるという普遍 ふへん 性 せい をもつ点 てん で「普遍 ふへん 的 てき 」であり、アーベルモノイドのアーベル群 ぐん への任意 にんい の他 ほか の埋 う め込 こ みに準 じゅん 同型 どうけい である。
付加 ふか 的 てき な構造 こうぞう をもった加 か 群 ぐん の直和 なおかず [ 編集 へんしゅう ]
考 かんが えている加 か 群 ぐん が付加 ふか 的 てき な構造 こうぞう (例 たと えばノルム や内積 ないせき )をもっていれば、加 か 群 ぐん の直和 なおかず もしばしばこの付加 ふか 的 てき な構造 こうぞう をもつようにできる。この場合 ばあい 、付加 ふか 的 てき な構造 こうぞう をもっているすべての対象 たいしょう の適切 てきせつ な圏 けん における余 よ 積 せき を得 え る。2つの顕著 けんちょ な例 れい はバナッハ空間 くうかん とヒルベルト空間 くうかん に対 たい して起 お こる。
古典 こてん 的 てき なテクストには、さらに体 からだ 上 じょう の多元 たげん 環 たまき の直和 なおかず の概念 がいねん を導入 どうにゅう するものもある。しかしながらその構成 こうせい は、多元 たげん 環 たまき の圏 けん における余 よ 積 せき ではなくて直積 ちょくせき を与 あた えるものになる(次 つぎ の節 ふし の注意 ちゅうい を参照 さんしょう 、あるいは自明 じめい でない単位 たんい 的 てき 環 たまき の無限 むげん 族 ぞく に加法 かほう 群 ぐん としての直 ちょく 和 わ をとり成分 せいぶん ごとの積 せき を入 い れたものは単位 たんい 元 もと を持 も たないことを想起 そうき せよ)。
多元 たげん 環 たまき の直和 なおかず [ 編集 へんしゅう ]
多元 たげん 環 たまき X と Y の直和 なおかず とは、ベクトル空間 くうかん の直和 なおかず に積 せき を
(
x
1
+
y
1
)
(
x
2
+
y
2
)
=
(
x
1
x
2
+
y
1
y
2
)
{\displaystyle (x_{1}+y_{1})(x_{2}+y_{2})=(x_{1}x_{2}+y_{1}y_{2})}
で入 い れたものをいう。これらの古典 こてん 的 てき な例 れい を考 かんが えよう:
ジョゼフ・ウェダーバーン (英語 えいご 版 ばん ) は、自身 じしん の超 ちょう 複素数 ふくそすう の分類 ぶんるい において、多元 たげん 環 たまき の直和 なおかず の概念 がいねん を利用 りよう した (Wedderburn, Lectures on Matrices (1934), page 151)。ウェダーバーンは多元 たげん 環 たまき の直和 なおかず と直積 ちょくせき の違 ちが いを以下 いか のように明 あき らかにしている。すなわち、直和 なおかず に対 たい して係数 けいすう 体 たい は両方 りょうほう の成分 せいぶん に同時 どうじ に作用 さよう する (
λ らむだ
(
x
⊕
y
)
=
λ らむだ
x
⊕
λ らむだ
y
{\displaystyle \lambda (x\oplus y)=\lambda x\oplus \lambda y}
) が、一方 いっぽう で直積 ちょくせき に対 たい しては両方 りょうほう ではなく一方 いっぽう のみがスカラー倍 ばい される (
λ らむだ
(
x
,
y
)
=
(
λ らむだ
x
,
y
)
=
(
x
,
λ らむだ
y
)
{\displaystyle \lambda (x,y)=(\lambda x,y)=(x,\lambda y)}
).
Ian R. Porteous は上記 じょうき の直和 なおかず 三 みっ つをそれぞれ
2
R
,
2
C
,
2
H
{\displaystyle {}^{2\!}{\boldsymbol {R}},\,{}^{2\!}{\boldsymbol {C}},\,{}^{2\!}{\boldsymbol {H}}}
と書 か いて、自身 じしん の Clifford Algebras and the Classical Groups (1995) で係数 けいすう 体 たい として用 もち いた。
注意 ちゅうい
上記 じょうき の構成 こうせい は、ウェダーバーンの用 もち いた直和 なおかず と直積 ちょくせき の語法 ごほう に従 したが ったものだが、これは圏 けん 論 ろん で用 もち いる直和 なおかず と直積 ちょくせき の慣習 かんしゅう とは異 こと なる。圏 けん 論 ろん 的 てき な用語 ようご では、ウェダーバーンの意味 いみ での直和 なおかず は圏 けん 論 ろん 的 てき 直積 ちょくせき であり、一方 いっぽう ウェダーバーンの意味 いみ での直積 ちょくせき は余 よ 積 せき (圏 けん 論 ろん 的 てき 直和 なおかず )である(実 じつ はこれは(可 か 換 かわ 多元 たげん 環 たまき に対 たい して)多元 たげん 環 たまき のテンソル積 せき に対応 たいおう する)。
合成 ごうせい 代数 だいすう (A , ∗, N ) は体 からだ 上 じょう の多元 たげん 環 たまき A , 対 たい 合 ごう ∗ および「ノルム」N (x ) = xx * からなる。任意 にんい の体 からだ K に対 たい して、K と自明 じめい なノルム(つまり N (x ) = x 2 )から始 はじ まる合成 ごうせい 代数 だいすう の系列 けいれつ が生 しょう じてくる。この系列 けいれつ は、多元 たげん 環 たまき の直和 なおかず A ⊕ A を作 つく って新 あら たな対 たい 合 ごう (x , y )* = x * − y を入 い れるという帰納的 きのうてき な手続 てつづ きによって得 え られる。
レオナード・E・ディクソン が四 よん 元 げん 数 すう を二重化 にじゅうか して八 はち 元 げん 数 すう を得 え るためにこの構成 こうせい を発明 はつめい しており、直和 なおかず A ⊕ A を利用 りよう するこの二重化 にじゅうか 法 ほう はケイリー–ディクソン構成 こうせい と呼 よ ばれる。実例 じつれい として、K = ℝ (実数 じっすう 体 からだ )から始 はじ めれば、系列 けいれつ として複素数 ふくそすう 、四 よん 元 げん 数 すう 、八 はち 元 げん 数 すう 、十 じゅう 六 ろく 元 げん 数 すう が生成 せいせい される。また K = ℂ (複素数 ふくそすう 体 からだ )と自明 じめい なノルム N (z ) = z 2 から始 はじ めれば、以下 いか 双 そう 複素数 ふくそすう 、双 そう 四 よん 元 げん 数 すう (英語 えいご 版 ばん ) 、双 そう 八 はち 元 げん 数 すう と続 つづ く。
マックス・ツォルン は、古典 こてん 的 てき なケイリー–ディクソン構成 こうせい では先 さき の (ℂ, z 2 ) の系列 けいれつ に属 ぞく する代数 だいすう の部分 ぶぶん 多元 たげん 環 たまき として生 しょう じるいくつかの合成 ごうせい 代数 だいすう (特 とく に分解 ぶんかい 型 がた 八 はち 元 げん 数 すう )を取 と りこぼしてしまうことに気 き が付 つ いた。そのために修正 しゅうせい されたケイリー–ディクソン構成 こうせい (これもまたもとの多元 たげん 環 たまき A から直和 なおかず A ⊕ A を作 つく る方法 ほうほう に基 もと づく)は、実数 じっすう 、分解 ぶんかい 型 がた 複素数 ふくそすう 、分解 ぶんかい 型 がた 四 よん 元 げん 数 すう (英語 えいご 版 ばん ) 、分解 ぶんかい 型 がた 八 はち 元 げん 数 すう の系列 けいれつ を作 つく るのに利用 りよう される。
バナッハ空間 くうかん の直和 なおかず [ 編集 へんしゅう ]
二 ふた つのバナッハ空間 くうかん X, Y の直和 なおかず とは、X と Y を単 たん にベクトル空間 くうかん と見 み なしてとった直和 なおかず に、ノルムを
‖
(
x
,
y
)
‖
:=
‖
x
‖
X
+
‖
y
‖
Y
(
∀
x
∈
X
,
∀
y
∈
Y
)
{\displaystyle \|(x,y)\|:=\|x\|_{X}+\|y\|_{Y}\quad (\forall x\in X,\forall y\in Y)}
によって定 さだ めたものをいう。
一般 いっぱん に、バナッハ空間 くうかん の族 ぞく Xi で、添字 そえじ i は添字 そえじ 集合 しゅうごう I をわたるものとするとき、直和 なおかず
⨁
i
∈
I
X
i
{\displaystyle \textstyle \bigoplus _{i\in I}X_{i}}
は、I 上 うえ で定義 ていぎ された函数 かんすう x であって、x (i ) ∈ Xi (∀i ∈ I ) かつ
‖
x
‖
:=
∑
i
∈
I
‖
x
(
i
)
‖
X
i
<
∞
{\displaystyle \|x\|:=\sum _{i\in I}\|x(i)\|_{X_{i}}<\infty }
を満 み たすものすべてからなる加 か 群 ぐん である。ノルム ‖ x ‖ は上記 じょうき の和 わ で与 あた えるものとすれば、このノルムを伴 ともな った直和 なおかず は再 ふたた びバナッハ空間 くうかん となる。
例 たと えば、添字 そえじ 集合 しゅうごう を I = N にとり X i = R であれば、直和 なおかず ⊕ i ∈N X i はノルム ‖ a ‖ ≔ ∑i |a i | が有限 ゆうげん となる実 じつ 数列 すうれつ (a i ) 全体 ぜんたい の成 な す数列 すうれつ 空間 くうかん l 1 である。
バナッハ空間 くうかん X の閉部分 ぶぶん 空間 くうかん A が補 ほ 空間 くうかん を持 も つ (complemented ) とは、X の別 べつ の閉部分 ぶぶん 空間 くうかん B が存在 そんざい して X は内部 ないぶ 直和 なおかず A ⊕ B に等 ひと しいことをいう。必 かなら ずしもすべての閉部分 ぶぶん 空間 くうかん が補 ほ 空間 くうかん を持 も つわけでないことに注意 ちゅうい しよう、例 たと えば零 れい 列 れつ の空間 くうかん c 0 は有界 ゆうかい 数列 すうれつ の空間 くうかん l∞ において補 ほ 空間 くうかん を持 も たない。
双 そう 線型 せんけい 形式 けいしき 付 つ き加 か 群 ぐん の直和 なおかず [ 編集 へんしゅう ]
I を添字 そえじ 集合 しゅうごう とする、双 そう 線型 せんけい 形式 けいしき を備 そな えた加 か 群 ぐん の族 ぞく {(Mi , bi ) : i ∈ I } に対 たい し、それらの直交 ちょっこう 直和 なおかず (orthogonal direct sum ) とは、単 たん に加 か 群 ぐん としてのそれらの直和 なおかず であって、
B
(
(
x
i
)
,
(
y
i
)
)
=
∑
i
∈
I
b
i
(
x
i
,
y
i
)
{\displaystyle B((x_{i}),(y_{i}))=\sum _{i\in I}b_{i}(x_{i},y_{i})}
で定義 ていぎ される双 そう 線型 せんけい 形式 けいしき B をもったものを言 い う[1] 。
ここで、上記 じょうき の和 わ に非 ひ 零 れい の項 こう は有限 ゆうげん 個 こ しか現 あらわ れないから、この和 わ は添字 そえじ 集合 しゅうごう I が無限 むげん 集合 しゅうごう であっても意味 いみ を成 な す。また、複素 ふくそ 係数 けいすう の場合 ばあい には双 そう 線型 せんけい を半双 はんそう 線型 せんけい に置 お き換 か えて同様 どうよう のことができる。
ヒルベルト空間 くうかん の直和 なおかず [ 編集 へんしゅう ]
前節 ぜんせつ と同様 どうよう の仕方 しかた で、有限 ゆうげん 個 こ のヒルベルト空間 くうかん H 1 , …, H n が与 あた えられたとき、
⟨
(
x
1
,
.
.
.
,
x
n
)
,
(
y
1
,
.
.
.
,
y
n
)
⟩
=
⟨
x
1
,
y
1
⟩
+
.
.
.
+
⟨
x
n
,
y
n
⟩
{\displaystyle \langle (x_{1},...,x_{n}),(y_{1},...,y_{n})\rangle =\langle x_{1},y_{1}\rangle +...+\langle x_{n},y_{n}\rangle }
を内積 ないせき として直交 ちょっこう 直和 なおかず が定義 ていぎ できる。
得 え られる直和 なおかず は与 あた えられたヒルベルト空間 くうかん を互 たが いに直交 ちょっこう する部分 ぶぶん 空間 くうかん として含 ふく むヒルベルト空間 くうかん である。
無限 むげん 個 こ のヒルベルト空間 くうかん Hi (i ∈ I ) が与 あた えられたときにも、同 おな じ構成 こうせい を行 おこな うことができる(内積 ないせき の定義 ていぎ に際 さい して、非 ひ 零 れい な成分 せいぶん は有限 ゆうげん 個 こ ゆえ実質 じっしつ 有限 ゆうげん 和 わ となることに注意 ちゅうい する)。ただし得 え られるのは内積 ないせき 空間 くうかん にはなるけれども、必 かなら ずしも完備 かんび にならない。そこで、この内積 ないせき 空間 くうかん の完備 かんび 化 か をヒルベルト空間 くうかん Hi のヒルベルト空間 くうかん としての直和 なおかず と定義 ていぎ する。
あるいは同 おな じことだが、I 上 うえ 定義 ていぎ された函数 かんすう α あるふぁ で
α あるふぁ
i
:=
α あるふぁ
(
i
)
∈
H
i
(
∀
i
∈
I
)
and
∑
i
‖
α あるふぁ
i
‖
2
<
∞
{\displaystyle \alpha _{i}:=\alpha (i)\in H_{i}\quad (\forall i\in I)\quad {\text{ and }}\quad \sum _{i}\left\|\alpha _{i}\right\|^{2}<\infty }
を満 み たすもの全体 ぜんたい の成 な す空間 くうかん として Hi たちのヒルベルト空間 くうかん の直 ちょく 和 わ を定義 ていぎ することもできる。このとき、そのような函数 かんすう α あるふぁ と β べーた の内積 ないせき は
⟨
α あるふぁ
,
β べーた
⟩
=
∑
i
⟨
α あるふぁ
i
,
β べーた
i
⟩
{\displaystyle \langle \alpha ,\beta \rangle =\sum _{i}\langle \alpha _{i},\beta _{i}\rangle }
で与 あた えられる。この空間 くうかん は完備 かんび であり、確 たし かにヒルベルト空間 くうかん が得 え られている。
例 たと えば、添字 そえじ 集合 しゅうごう を I = N にとり X i = R とすれば、直和 なおかず
⨁
i
∈
N
X
i
{\displaystyle \textstyle \bigoplus _{i\in \mathbf {N} }X_{i}}
はノルム ‖ a ‖ ≔ √ ∑i |ai | が有限 ゆうげん となる実 じつ 数列 すうれつ (ai ) 全体 ぜんたい の成 な す空間 くうかん l 2 である。これをバナッハ空間 くうかん の例 れい と比 くら べると、バナッハ空間 くうかん の直和 なおかず とヒルベルト空間 くうかん の直和 なおかず は必 かなら ずしも同 おな じではないことがわかる。しかし有限 ゆうげん 個 こ の成分 せいぶん しかないならば、バナッハ空間 くうかん の直和 なおかず はヒルベルト空間 くうかん の直和 なおかず と同型 どうけい である(ノルムは異 こと なるかもしれないが)。
すべてのヒルベルト空間 くうかん は基礎 きそ 体 たい (R か C )の十 じゅう 分 ふん たくさんのコピーの直和 なおかず に同型 どうけい である。これはすべてのヒルベルト空間 くうかん は正規 せいき 直交 ちょっこう 基底 きてい をもつという主張 しゅちょう と同値 どうち である。より一般 いっぱん に、ヒルベルト空間 くうかん の任意 にんい の閉部分 ぶぶん 空間 くうかん は補 ほ 空間 くうかん をもつ(とくに直交 ちょっこう 補 ほ 空間 くうかん がとれる)。逆 ぎゃく に、リンデンシュトラウス–ツァフリーリの定理 ていり (英語 えいご 版 ばん ) の述 の べるとおり、与 あた えられたバナッハ空間 くうかん の任意 にんい の閉部分 ぶぶん 空間 くうかん が補 ほ 空間 くうかん を持 も つならば、そのバナッハ空間 くうかん は(位相 いそう 的 てき に)ヒルベルト空間 くうかん に同型 どうけい である。
Iain T. Adamson (1972), Elementary rings and modules , University Mathematical Texts, Oliver and Boyd, ISBN 0-05-002192-3
Bourbaki, Nicolas (1989), Elements of mathematics, Algebra I , Springer-Verlag, ISBN 3-540-64243-9 .
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Halmos, Paul (1974), Finite dimensional vector spaces , Springer, ISBN 0-387-90093-4
Mac Lane, S. ; Birkhoff, G. (1999), Algebra , AMS Chelsea, ISBN 0-8218-1646-2 .