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ノルム

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解析かいせきがくにおいて、ノルム (えい: norm[1], どく: Norm) は、平面へいめんあるいは空間くうかんにおける幾何きかがくてきベクトルの "ながさ" の概念がいねん一般いっぱんであり、ベクトル空間くうかんたいして「距離きょり」をあたえるための数学すうがく道具どうぐである。ノルムの定義ていぎされたベクトル空間くうかん線型せんけいノルム空間くうかんまたはたんノルム空間くうかんという。

ものによっては絶対ぜったい付値つけね)とばれることもある。また、からだ拡大かくだいにおけるノルムや、多元たげんたまきたいするやくノルム本質ほんしつてきおなじものである。

定義ていぎ[編集へんしゅう]

K実数じっすうたい R または複素数ふくそすうたい C(あるいは絶対ぜったいそなえた任意にんい位相いそうたい)とし、K うえのベクトル空間くうかん Vかんがえる。このとき任意にんいaK任意にんいu, vVたいして、

  1. 独立どくりつせい‖ v ‖ = 0 ⇔ v = o
  2. ひとしつぎせい‖ av ‖ = |a|‖ v ‖
  3. れつ加法かほうせい‖ u + v ‖ ≤ ‖ u ‖ + ‖ v ‖三角さんかく不等式ふとうしき

たす関数かんすう ‖ • ‖: VR; x ↦ ‖ x ‖Vノルムぶ。ベクトル空間くうかん VV うえのノルム ‖ • ‖ とのくみ (V, ‖ • ‖) を、ノルム ‖ • ‖そなえたベクトル空間くうかんあるいは簡単かんたんにノルムきの線型せんけい空間くうかんノルム空間くうかんなどとび、まぎれのおそれの場合ばあいはノルムを省略しょうりゃくしてたんVあらわす。なお、‖ v ‖ ≥ 0はんせい定値ていちせい)を定義ていぎうちふくめることがおおいが、この性質せいしつ以下いかのように定理ていりとしてみちびくことができる。ひだりからじゅんに、独立どくりつせいれつ加法かほうせいひとしつぎせいもちいている。

ノルムのとる集合しゅうごうとしては R を、同様どうよう条件じょうけん議論ぎろんしうるもうすこ一般いっぱん順序じゅんじょたい順序じゅんじょぐんえることもある。離散りさんなどは有理ゆうり整数せいすうたまき Z加法かほうぐん(に同型どうけいなアーベルぐん)をぐんとするようなノルムである。

ノルムの定義ていぎから独立どくりつせいのぞいたものを満足まんぞくする函数かんすう p: VRはんノルム (semi-norm)ぶ。

種々しゅじゅのノルム[編集へんしゅう]

有限ゆうげん次元じげんベクトルのノルム[編集へんしゅう]

成分せいぶん実数じっすうあるいは複素数ふくそすうであるベクトル x = (x1, x2, …, xn)かんがえる。いま |•|実数じっすうあるいは複素数ふくそすう絶対ぜったいとすると、

ユークリッドノルム
最大さいだいノルム(あるいは無限むげんだいノルム、一様いちようノルムともばれる)

などはノルムの条件じょうけんたす。 一般いっぱん1 ≤ p < ∞たいして

p平均へいきんノルムまたは p-ノルムぶ。この呼称こしょうもちいるならば、ユークリッドノルムは 2-ノルムである。また最大さいだいノルムはこの p-ノルムの p → ∞ としたときの自然しぜん極限きょくげんであるとなされるので、∞ノルム無限むげんだいノルム)ともばれる。

またとく次元じげんn = 1 のときをかんがえれば、任意にんい1 ≤ p < ∞ について

であり、絶対ぜったい |•| 自身じしん実数じっすうあるいは複素数ふくそすうの1次元じげんベクトルにおけるノルムのれいになっている。

なお、p が 1 未満みまんたいしては、p-ノルム定義ていぎしない。

無限むげん次元じげんベクトル空間くうかんのノルム[編集へんしゅう]

数列すうれつ可算かさん無限むげん次元じげんのベクトル)x = (xn)n=1,2,…たいしても、p-ノルムあるいは lp-ノルムlp-ノルム

や、上限じょうげんノルム、∞-ノルムl-ノルムl-ノルム

などが定義ていぎされる。また、関数かんすう連続れんぞくてき添字そえじをもつ可算かさん無限むげん次元じげんのベクトルとなせば、積分せきぶんえて、高々たかだか可算かさん場合ばあい同様どうようp-ノルムなどをかんがえることができる。集合しゅうごう X うえ定義ていぎされる関数かんすう f(x) にたいして p-ノルムLp-ノルム)は

定義ていぎされる。また ∞-ノルムL-ノルム)が

によって定義ていぎされる。ただし、ルベーグ積分せきぶんあつかっている文脈ぶんみゃくでは

とするほう自然しぜんである。ess sup は本質ほんしつてき上限じょうげんばれるである(測度そくどれい集合しゅうごうにおける例外れいがいのぞいてうえかいとなる下限かげん)。関数かんすう解析かいせきがくなどでは、有界ゆうかい線型せんけい作用素さようそ連続れんぞく線型せんけい写像しゃぞう)の作用素さようそノルム (operator norm) とばれるノルム

重要じゅうようである。

ノルムの構成こうせい[編集へんしゅう]

ふたつのノルム空間くうかん (X, ‖•‖X), (Y, ‖•‖Y) があたえられたとき、直積ちょくせき空間くうかん X × Y には

でノルムがさだまる。

ノルム空間くうかん (Z, ‖•‖Z) があたえられたとき、ベクトル空間くうかん Wたん線型せんけい作用素さようそ f: WZたいして

W のノルムとなる。

ベクトル空間くうかん Vはんノルム pつとき、部分ぶぶん空間くうかん V := {vV | p(v) = 0} によるしょう空間くうかん V := V/V は、πぱい: VV自然しぜん射影しゃえいとして

となるようなノルムをそなえる。

性質せいしつ[編集へんしゅう]

平面へいめん R2 うえことなるノルムにかんする単位たんいえん様子ようす

幾何きかがくてき性質せいしつ[編集へんしゅう]

ノルム空間くうかん V のノルム p = ‖•‖たいし、2変数へんすうじつ数値すうち関数かんすう dp : V × VR

さだめて、dp をノルム ‖•‖ のさだめるまたは誘導ゆうどうする距離きょりという。dpV距離きょり函数かんすうさだめることはノルムの定義ていぎからただちにかる。距離きょり空間くうかん (V, dp) の位相いそうをノルム ‖•‖ のさだめるまたは誘導ゆうどうする位相いそうという。

空間くうかん X にノルムがあたえられたとき、ノルムが 1 であるもと全体ぜんたいをしばしば単位たんい球面きゅうめん (unit sphere) または次元じげん場合ばあいとく単位たんいえん (unit circle)ぶ。ノルムのさだめる位相いそうとはノルムにかんするひらく単位たんい球面きゅうめんあらわされる集合しゅうごうひらけ集合しゅうごうとするような位相いそうのことである。

ノルム空間くうかん V における線型せんけい演算えんざんはノルムが V誘導ゆうどうする位相いそうかんして連続れんぞくであり、ノルム空間くうかん V位相いそう線型せんけい空間くうかんす。位相いそう線型せんけい空間くうかん (V, T)たいし、V適当てきとうなノルム p存在そんざいして p から誘導ゆうどうされる位相いそう Tp がもとの位相いそう Tひとしいとき、位相いそう線型せんけい空間くうかん Vノルム可能かのうまたはノルム可能かのう (normable) であるという。

ノルムの同値どうちせい[編集へんしゅう]

空間くうかん Xあたえられたふたつのノルム‖•‖, ‖•‖′ にたいし、これらノルムがそれぞれさだめる X位相いそうそうひとしいとき、これらのノルムはたがいに同値どうちであるという。これは適当てきとう定数ていすう C1, C2 > 0 で

となるようなものがれることと同値どうちである。

V有限ゆうげん次元じげんノルム空間くうかんならば、V うえのノルムの同値どうちるいただひとつである。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ 標準ひょうじゅん」「水準すいじゅん」「ノルマ」といった一般いっぱん名詞めいし語源ごげんラテン語らてんごで「(大工だいくの)物差ものさし」の意味いみ形容詞けいようしnormal。

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]

  • Weisstein, Eric W. "Norm". mathworld.wolfram.com (英語えいご).
  • Gorin, E.A. (2001), “Norm”, in Hazewinkel, Michiel, Encyclopedia of Mathematics, Springer, ISBN 978-1-55608-010-4, https://www.encyclopediaofmath.org/index.php?title=Norm 
  • norm in nLab