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付値つけね

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

付値つけね(ふち、えい: valuationとも)とは、単位たんいもと 1 をたまき R順序じゅんじょぐん英語えいごばん Gたいして、以下いかの3条件じょうけんたす写像しゃぞう v: RG ∪ {∞} である。

  1. v(1) = 0, v(0) = ∞ である。
  2. 任意にんいRもと x, yたいして、v(xy) = v(x) + v(y) がつ。
  3. 任意にんいRもと x, yたいして、v(x + y) ≥ min(v(x), v(y)) がつ。

ただし、∞ は G にはぞくさないもとで、G任意にんいもと aたいして

たすものとする。上記じょうき定義ていぎたす付値つけねのことを R加法かほう付値つけねまたは一般いっぱん付値つけねともいう。さらに G実数じっすうからだ加法かほう部分ぶぶんぐんであるとき指数しすう付値つけねという。

とくRからだであるとき、G加法かほう部分ぶぶんぐんとなり、これを vぐんという。

加法かほう付値つけね

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  1. 1 をふくたまき Rたいして、 を 1 をふくまない Rイデアルとする。Rもと aたいして
    さだめれば、R加法かほう付値つけねとなる。したがって、1 をふく任意にんいたまきたいして、加法かほう付値つけねひと以上いじょう存在そんざいする。
  2. からだ Kたいして、上記じょうきれい適用てきようすることにより
    K加法かほう付値つけねとなる。これを K自明じめい加法かほう付値つけねという。
  3. 素数そすう p と 0 ではない有理数ゆうりすう aたいして、
    あらわしたとき、
    定義ていぎすると、v有理数ゆうりすうたい加法かほう付値つけねとなる。これを p-すすむ加法かほう付値つけねという。
  4. より一般いっぱんに、代数だいすうたい Kイデアルとする。K の 0 でないもと αあるふぁたがいに分数ぶんすうイデアル、μみゅー有理ゆうり整数せいすう)のかたち一意的いちいてきあらわせるが、このとき
    さだめると、v代数だいすうたい K加法かほう付値つけねとなる。これを -すすむ加法かほう付値つけね という。
  5. 複素ふくそ平面へいめんから複素ふくそ平面へいめんへの有理ゆうりがた関数かんすう全体ぜんたいK とする。複素ふくそ平面へいめんじょうてん Pひと固定こていする。0 でない 有理ゆうりがた関数かんすう fたいして、てん Pn-くらいれいてんであるとき v(f) = n, れいてんでもごくでもないとき v(f) = 0, n-くらいきょくであるとき v(f) = −nさだめると、vK加法かほう付値つけねとなる。
  6. からだ K の 1-変数へんすう有理ゆうり関数かんすうからだ K(x) の 0 でないもと f(x) にたいして
    あらわしたとき、v(f) = deg h − deg g定義ていぎすると、vK(x) の加法かほう付値つけねとなる。
  7. αあるふぁ無理むりすうとし、からだ K 係数けいすうの 0 でない多項式たこうしき
    たいして、v(p) = min{j + (mj)αあるふぁ | aj ≠ 0, 0 ≤ jm} とし、K うえの 2-変数へんすう有理ゆうり関数かんすうたい K(x, y) の 0 でないもと f(x, y) にたいして
    あらわしたとき、v(f) = v(g) − v(h) と定義ていぎすると、vK(x, y) の加法かほう付値つけねとなる。
  8. からだ K の 0 でない n-変数へんすう多項式たこうしき
    たいして、Zn辞書じしょしき順序じゅんじょかんして
    とするとき、K うえn-変数へんすう有理ゆうり関数かんすうたい K(x1, ..., xn) の 0 でないもと
    たいし、v(f) = v(g) − v(h) と定義ていぎすると、vK(x1, ..., xn) の加法かほう付値つけねとなる。
  9. からだKたいして、からだ L
    とし、ひとじょうげた加法かほう付値つけねvn としたとき、0 でない Lもと fたいして
    さだめれば、vL加法かほう付値つけねとなる。

性質せいしつ

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たまき R うえ加法かほう付値つけね vたいして、以下いか成立せいりつする。

  • Rからだであるならば、v(x) = ∞ である必要ひつようじゅうふん条件じょうけんx = 0 である。
  • 任意にんいRもと x, yたいして、v(xy) = v(yx) である。
  • 任意にんいRもと aたいし、v(−a) = v(a) である。
  • ぎゃくもとをもつ Rもと aたいし、v(a−1) = −v(a) である。
  • v(x) ≠ v(y) である Rもと x, yたいして、v(x + y) = min(v(x), v(y)) がつ。
  • x1 + … + xn = 0 である Rもと x1, ..., xnたいして、v(xi) = v(xj) をたす i, j (ij) が存在そんざいする。

付値つけねたまき

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からだ K加法かほう付値つけね vたいして、Rv = {aK | v(a) ≥ 0} は vたいする付値つけねたまきばれるたまきす。このとき、 は、Rv のイデアルであり、 vたいする付値つけねイデアルばれる。[1] 付値つけねイデアルは付値つけねたまきふくまれる唯一ゆいいつ極大きょくだいイデアルであるので、からだとなる。このからだのことを vかんする剰余じょうよたいまたは剰余じょうよるいからだという。さらに、{aK | v(a) = 0} は乗法じょうほうぐんとなり、これをたまき単数たんすうぐんという。

付値つけねたまき性質せいしつ

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  1. 付値つけねたまき局所きょくしょたまきである。
  2. 付値つけねたまきせいである。
  3. からだ K付値つけねたまきしょうたいK である。
  4. 付値つけねたまきじょう有限ゆうげん生成せいせいイデアル単項たんこうイデアルである。
  5. からだ K の 0 でないもと aたいし、a または a−1付値つけねたまきもととなる。
  6. 付値つけねたまきのイデアル全体ぜんたいからなる集合しゅうごうは、包含ほうがん関係かんけいぜん順序じゅんじょ集合しゅうごうとなる。つまり、付値つけねたまきのイデアルとしたとき、 または 成立せいりつする。
  7. Rからだ K部分ぶぶんたまきとし、Rイデアル とすれば、K加法かほう付値つけね v存在そんざいして、RRv および 成立せいりつする。
  8. Rからだ K部分ぶぶんたまきとし、SRK におけるせい閉包へいほうとすれば、あらわせる。ただし、v付値つけねたまきSふくよう加法かほう付値つけねすべてをうごくものとする。

うえ性質せいしつの 4, 5, 6 は、たまき付値つけねたまきとなる条件じょうけんあたえている。つまり、しょうたいK となる、K部分ぶぶんたまき R下記かきのいずれかが(したがってすべてが)たされるとき、K加法かほう付値つけね存在そんざいして、R はその加法かほう付値つけね付値つけねたまきとなる。

  • R局所きょくしょたまきであり、R うえ有限ゆうげん生成せいせいのイデアルは単項たんこうイデアルである。
  • 0 でない K任意にんいもと aたいして、a または Rもととなる。
  • R のイデアル全体ぜんたいからなる集合しゅうごうは、包含ほうがん関係かんけいぜん順序じゅんじょ集合しゅうごうとなる。

このことより、付値つけねたまき付値つけねもちいずに定義ていぎすることができる。

階数かいすう

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加法かほう付値つけね v付値つけねたまき Krull-次元じげんv階数かいすうという。 つまり、加法かほう付値つけね v付値つけねたまき Rv うえイデアル 存在そんざいして

成立せいりつするような n最大さいだい階数かいすうという。階数かいすうかならずしも有限ゆうげんとはかぎらない。たとえば、さきげた加法かほう付値つけねれい9. の階数かいすうは ∞ である。また、任意にんいせい整数せいすう nたいして、れい8. の階数かいすうn であり、自明じめい加法かほう付値つけねは 0 である。

自明じめいではない加法かほう付値つけね階数かいすうは 1 以上いじょうであり、とく指数しすう付値つけね階数かいすうは 1 である。より一般いっぱんに、ぐん実数じっすうの 0 ではない加法かほう部分ぶぶんぐん順序じゅんじょ同型どうけいであるならば、階数かいすうは 1 であり、ぎゃく階数かいすうが 1 である加法かほう付値つけねぐん実数じっすう加法かほう部分ぶぶんぐん順序じゅんじょ同型どうけいである。

からだ K加法かほう付値つけね v階数かいすうつぎようにいいかえることができる。

  • 階数かいすうとは、v付値つけねたまきふくKことなる K部分ぶぶんたまき個数こすうである。
  • 階数かいすうとは、vぐんG とし、G部分ぶぶんぐん H
    0 ≤ yxたす Gもと x, yたいし、xHもとであれば、yHもとである
    という条件じょうけんたすもの[2]個数こすうである。

離散りさん付値つけね

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からだ K加法かほう付値つけね vぐん v(K×) が、辞書じしょしき順序じゅんじょZn[3]順序じゅんじょ同型どうけいであるとき離散りさんてきであるといい、このよう加法かほう付値つけね離散りさんてき加法かほう付値つけねまたは離散りさんてき一般いっぱん付値つけねという。 とくに、上記じょうき n が 1 である離散りさんてき加法かほう付値つけねのことを離散りさん付値つけねという。[4] さらに、ぐんZ となる離散りさん付値つけね正規せいき離散りさん付値つけねまたは正規せいき指数しすう付値つけねという。

たとえば、さきげた加法かほう付値つけねれいの 2., 3., 4., 5., 6. は正規せいき離散りさん付値つけねであり、n ≥ 2 にたいして、れい8. は離散りさん付値つけねではない離散りさんてき加法かほう付値つけねである。れい7. のよう離散りさん付値つけねにならない加法かほう付値つけね存在そんざいする。

からだ K正規せいき離散りさん付値つけね vたいして、v(πぱい) = 1 をたす Kもと πぱいvもともとという。すると、K×もと αあるふぁ は、もともとK単元たんげんもちいて、αあるふぁ = εいぷしろんπぱいn一意的いちいてき表現ひょうげんされる。ただし、εいぷしろんK単元たんげんであり、n整数せいすうである。

離散りさん付値つけね vかんして、以下いかのことがつ。ただし、付値つけねイデアルを とする。

  • 付値つけねたまきネーターたまきである。[5]
  • 任意にんい付値つけねたまきのイデアル たいして、ある非負ひふ整数せいすう n存在そんざいして、あらわされる。つまり、付値つけねたまき単項たんこうイデアルたまきである。

とくに、v正規せいき離散りさん付値つけねであるならば、0 ではないイデアルは、n ≥ 0 にたいして {xK | v(x) ≥ n} のかたちにあらわされる。

  • 成立せいりつする。
  • 任意にんい付値つけねたまきもと a と 0 でない Kもと bたいして、あるせい整数せいすう n存在そんざいして、nv(a) ≥ v(b) が成立せいりつする。

付値つけね合成ごうせい

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からだ K加法かほう付値つけね vたいして、v剰余じょうよたい 加法かほう付値つけねv′ とする。このとき

は、K付値つけねたまきとなる。そこで、K加法かほう付値つけね v′′ を Rv′′ = R′′ をたすようったとき、v′′ を vv′ との合成ごうせいという。(v′′ の階数かいすう) = (v階数かいすう) + (v′ の階数かいすう) がつ。

加法かほう付値つけね合成ごうせいもちいて、からだ K加法かほう付値つけねwK拡大かくだいたいL とし、 L加法かほう付値つけね v を、剰余じょうよたいK同型どうけいになるようにとれば、L加法かほう付値つけね v′ として

つものをることができる。

乗法じょうほう付値つけね

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からだ Kたいして、以下いかの3条件じょうけんたす |•|: KR を、乗法じょうほう付値つけねという。[6]

  1. K任意にんいもと xたいして |x| ≥ 0 であり、|x| = 0 であるための必要ひつようじゅうふん条件じょうけんx = 0 である。
  2. K任意にんいもと x, yたいして、|xy| = |x||y| がつ。
  3. ある正数せいすう c存在そんざいして、K任意にんいもと x, yたいして、|x + y| ≤ c max(|x|, |y|) がつ。

上記じょうき条件じょうけん3 のわりに、下記かき条件じょうけん

  • K任意にんいもと x, yたいして、|x + y| ≤ |x| + |y| が成立せいりつする。

たすものも(このとき c = 2 とおけば条件じょうけん3 をたすので)乗法じょうほう付値つけねとなるが、これを三角さんかく不等式ふとうしきたす乗法じょうほう付値つけねという。

乗法じょうほう付値つけねれい

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  1. からだ Kたいして
    さだめれば、乗法じょうほう付値つけねとなる。これを自明じめい付値つけねという。つまり、任意にんいからだ Kたいして、乗法じょうほう付値つけねはひとつ以上いじょう存在そんざいする。
  2. 実数じっすうからだまたは複素数ふくそすうたいじょう絶対ぜったい乗法じょうほう付値つけねである。絶対ぜったいのことを乗法じょうほう付値つけね区別くべつするために |•|かれることもある。
  3. 素数そすう p と 0 ではない有理数ゆうりすう
    たいして、|a|p = pfeあたえられる |•|p: QR は、有理数ゆうりすうたいじょう乗法じょうほう付値つけねとなる。これを p-すすむ付値つけねという。これは上記じょうきp-すすむ加法かほう付値つけね使つかって、|a|p = pv( a) とあらわすことができる。
  4. より一般いっぱんに、上記じょうき-すすむ加法かほう付値つけね vたいして、|a| = N v ( a )あたえられる|•|: KR は、代数だいすうたい K うえ乗法じょうほう付値つけねとなる。ここで Nもとイデアル ノルムである。これを -すすむ付値つけねという。


乗法じょうほう付値つけね性質せいしつ

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からだ K うえ乗法じょうほう付値つけね |•| にたいして、以下いか成立せいりつする。

  • |1| = 1 である。
  • 任意にんいKもと aたいし、|−a| = |a| である。
  • 0 でない任意にんいKもと aたいし、|a−1| = |a|−1 である。
  • Kもと a を |a| ≤ 1 となるようにとれば、|1 + a| ≤ c である。[7]
  • 離散りさん付値つけねではない乗法じょうほう付値つけね

アルキメデス付値つけね

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乗法じょうほう付値つけね定義ていぎにおいて、条件じょうけん3 の定数ていすう c は、つねc ≥ 1 であるが、c = 1 とえらぶことができるとき、アルキメデス付値つけねまたはアルキメデスてき付値つけねという。アルキメデス付値つけねでない乗法じょうほう付値つけねのことをアルキメデス付値つけねまたはアルキメデスてき付値つけねという。

自明じめい付値つけねや、任意にんい素数そすう pたいする有理数ゆうりすうたいじょうp-すすむ付値つけねアルキメデス付値つけねである。 また、実数じっすうからだまたは複素数ふくそすうたいじょう絶対ぜったいはアルキメデス付値つけねである。

任意にんいアルキメデス付値つけね |•| は、任意にんいせい整数せいすう nたいして、|n 1| ≤ 1 をたす。ぎゃくに、任意にんいせい整数せいすう nたいして、|n 1| ≤ c となる n無関係むかんけい定数ていすう c存在そんざいする乗法じょうほう付値つけねアルキメデス付値つけねである。

このことから、アルキメデス付値つけねからだしるべすうは 0 である。したがって、有限ゆうげんたい乗法じょうほう付値つけねすべアルキメデス付値つけねである。より正確せいかくには、有限ゆうげんたい乗法じょうほう付値つけね自明じめい付値つけねだけである。

しかし、しるべすうが 0 であっても、アルキメデス付値つけねたない場合ばあいがある。からだの(集合しゅうごうろんてき濃度のうど連続れんぞくたい濃度のうどよりもしんおおきいからだは、アルキメデス付値つけねたない。このことはつぎ定理ていりからの帰結きけつである。

オストロフスキーの定理ていり
かならずしもかわとはかぎらないからだ K がアルキメデス付値つけね |•| をつとする。このとき、K から複素数ふくそすうたいKかわからだであるとき)またはよんげんすうたいK斜体しゃたいのとき)のなかへの同型どうけい写像しゃぞう φふぁい正数せいすう ρろー存在そんざいして、
成立せいりつする。ここで |•|複素数ふくそすうからだまたはよんげんすうたい絶対ぜったいである。したがって、よんげんすうたい部分ぶぶんたい同型どうけいからだはアルキメデス付値つけねつ。

アルキメデス付値つけね指数しすう付値つけね

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q > 1 をひと固定こていする。|•| をからだ Kアルキメデス付値つけねとしたとき v: KR ∪ {∞} を

さだめると、vK指数しすう付値つけねとなる。

ぎゃくに、K指数しすう付値つけね vたいして |•|v: KR

さだめると、|•|vKアルキメデス付値つけねとなる。

したがって q固定こていするとき、アルキメデス付値つけね指数しすう付値つけねあいだには一対一いちたいいち対応たいおうけることができる。しかし、アルキメデス付値つけねたいしては、うえようv定義ていぎしても加法かほう付値つけねにはならない。

さらに、うえ定義ていぎされたアルキメデス付値つけね |•| にたいする加法かほう付値つけね vたいして、v付値つけねたまき付値つけねイデアルを Rv, とし、

とおくと、Rv = R|•|, ち、R|•|, はそれぞれ K部分ぶぶんたまきR|•| のイデアルになる。このとき、R|•|, アルキメデス付値つけね |•| にたいする付値つけねたまき付値つけねイデアル剰余じょうよたいという。

このようられた付値つけねたまき付値つけねイデアルにたいしても、さきげた加法かほう付値つけねたいする付値つけねたまき付値つけねイデアルとおな性質せいしつつ。

また、v離散りさん付値つけねであるとき、|•| を離散りさん付値つけねという。このとき、うまく qえらべば v正規せいき離散りさん付値つけねとなるので、v(πぱい) = 1 となる Kもと πぱい存在そんざいする。この πぱい のことを |•| にかんするもともとという。

なお、アルキメデス付値つけねたいしては、アルキメデス付値つけね同様どうようにして R|•|, 定義ていぎすることができるが、R|•|K部分ぶぶんたまきにはならず、 もイデアルにはならない。[8]

しかし、{xK | |x| = 1} はアルキメデス付値つけねアルキメデス付値つけねかかわらず乗法じょうほうぐんとなる。これを乗法じょうほう付値つけね |•| にたいする単数たんすうぐんという。

付値つけね同値どうちせい

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からだ K うえふたつの加法かほう付値つけね v, v′ にたいして両者りょうしゃ付値つけねたまきひとしいとき、すなわち

すべての Kもと aたいしてつとき vv′ は同値どうちであるという。

また、乗法じょうほう付値つけね v, v′ が同値どうちであるとは、正数せいすう r > 0 が存在そんざいして、K任意にんいもと aたいして

つときにいう。これは

任意にんいKもと aたいしてつときといいかえることもできる。したがって、v, v′ がアルキメデス付値つけねであるならば、両者りょうしゃ付値つけねたまき一致いっちする。

付値つけね同値どうちについて、以下いかのことが成立せいりつする。

  • 付値つけね同値どうちは、加法かほう付値つけねもしくは乗法じょうほう付値つけね同値どうち関係かんけいとなる。
  • 自明じめいな(加法かほう付値つけねは、自明じめいではない(加法かほう付値つけねとは同値どうちにはならない。
  • 任意にんい乗法じょうほう付値つけねは、三角さんかく不等式ふとうしき |x + y| ≤ |x| + |y| をたす乗法じょうほう付値つけね |•| に同値どうちである。
  • ふたつの乗法じょうほう付値つけね同値どうちであれば、ともにアルキメデス付値つけねであるか、もしくはともアルキメデス付値つけねであるかのどちらか一方いっぽう成立せいりつする
オストロフスキーの定理ていり
有理数ゆうりすうたいじょう乗法じょうほう付値つけねは、以下いかのいずれかと同値どうちである。
  • 自明じめい付値つけね
  • 素数そすう pたいする p-すすむ付値つけね
  • 絶対ぜったい

付値つけね延長えんちょう

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からだ L部分ぶぶんたい同型どうけいとなるからだK とする。K付値つけね[9] vKたいして、L付値つけね vL存在そんざいして

たすとき、 vL vKL への延長えんちょうまたは拡張かくちょうであるといい、vKvLK への縮小しゅくしょうまたは制限せいげんであるという。

付値つけね延長えんちょう存在そんざいせいについて、加法かほう付値つけねたいしては、からだ K任意にんい拡大かくだいたい LK加法かほう付値つけね vたいして、vL への延長えんちょうとなる、階数かいすうv階数かいすうひとしい付値つけね vL存在そんざいする。 また、乗法じょうほう付値つけねかんしては、アルキメデス付値つけねは(階数かいすうが 1 以下いか加法かほう付値つけねである)指数しすう付値つけね一対一いちたいいち対応たいおうけられるので、上記じょうきのことから、任意にんい拡大かくだいたいたいしてあたえられたアルキメデス付値つけねの(アルキメデス付値つけねである)延長えんちょう存在そんざいする。 アルキメデス付値つけねかんしては、任意にんい代数だいすう拡大かくだいたいたいして、あたえられたアルキメデス付値つけねの(アルキメデス付値つけねである)延長えんちょう存在そんざいするが、アルキメデス付値つけね場合ばあいことなり、代数だいすう拡大かくだいではない拡大かくだいたいたいしてあたえられたアルキメデス付値つけね延長えんちょう存在そんざいするとはかぎらない。

たとえば、複素数ふくそすうたいじょう絶対ぜったいを、複素数ふくそすうたいじょうの 1-変数へんすう有理ゆうり関数かんすうたい C(t) に延長えんちょうすることはできない[10]。しかし、有理数ゆうりすうたいじょう絶対ぜったい実数じっすうたいじょう延長えんちょうできるので、代数だいすう拡大かくだい以外いがい拡大かくだいたいへの延長えんちょうまった存在そんざいしないというわけではない。

からだ L付値つけね v部分ぶぶんたい K への縮小しゅくしょうられる付値つけね vK は、vたいして一意的いちいてきまるが、付値つけね vKL への延長えんちょうられる付値つけねv だけとはかぎらない。LK有限ゆうげん拡大かくだいたいであるとき、最大さいだい [L : K] たがいに同値どうちではない vK延長えんちょうとなる付値つけね存在そんざいする。より正確せいかくにはつぎ成立せいりつする。

からだ Kたいする加法かほう付値つけねv とする。LK有限ゆうげん次代じだいすう拡大かくだいたいとし、w1, ... , wnvL へのたがいに同値どうちではない延長えんちょう全体ぜんたいとする。v, wi それぞれの剰余じょうよたいぐんをそれぞれ F, Fi, G, Gi とし、ei = #(Gi/G), fi = [Fi  : F] とおくと、

成立せいりつする。 なおうえしきにおいて、たとえば v離散りさん付値つけねであり LK うえ分離ぶんり拡大かくだいであるならば、等号とうごう成立せいりつする。

この定理ていりあらわれる ei, fiwivたいする分岐ぶんき指数しすう剰余じょうよ次数じすう(または相対そうたい次数じすう)という。

ある iたいして ei = 1 となるとき、wi分岐ぶんきであるといい、ei > 1 であるとき分岐ぶんきするという。さらに fi = 1 となるとき、wi完全かんぜん分岐ぶんきであるという。 とくg = 1 つまり、v延長えんちょう同値どうちなものをのぞいて w しか存在そんざいしないとき、wvたいする分岐ぶんき指数しすう e および剰余じょうよ次数じすう f を、LKたいする分岐ぶんき指数しすうおよび剰余じょうよ次数じすう(または相対そうたい次数じすう)という。さらに L剰余じょうよたいK剰余じょうよたい分離ぶんり拡大かくだいであるとき、e = 1, f = [L : K] であるならば拡大かくだい L/K分岐ぶんきe = [L : K], f = 1 であるならば拡大かくだい L/K完全かんぜん分岐ぶんきであるという。

近似きんじ定理ていり

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どのふたつもたがいに同値どうちではない、からだ K自明じめい乗法じょうほう付値つけね |•|1, ... , |•|n[11]たいし、K任意にんいもと a1, ... , an正数せいすう εいぷしろん1, ... , εいぷしろんnたいして、Kもと b存在そんざいして

すべての iたいして成立せいりつする。これを乗法じょうほう付値つけねたいする近似きんじ定理ていりという。

上記じょうき乗法じょうほう付値つけねくみあいことなる素数そすう p からなる p-すすむ付値つけねとすれば、この定理ていりは、中国ちゅうごく剰余じょうよ定理ていりあらわしている。

独立どくりつせい定理ていり

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どのふたつもたがいに同値どうちではない、からだ K自明じめい乗法じょうほう |•|1, ... , |•|n にたいし、実数じっすう c1, ... ,cn存在そんざいして、K の 0 でない任意にんいもと aたい

成立せいりつするならば、c1 = … = cn = 0 である。これを乗法じょうほう付値つけねたいする独立どくりつせい定理ていりという。

せき公式こうしき

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Vからだ K自明じめい付値つけね以外いがいたがいに同値どうちではない乗法じょうほう付値つけねからなる集合しゅうごうとする。上述じょうじゅつ独立どくりつせい定理ていりにより、V有限ゆうげん集合しゅうごうであれば、

となる Kもと aかなら存在そんざいする。そこで、V無限むげん集合しゅうごうとし、Kもと a ごとに、せきをとる乗法じょうほう付値つけねV からうまくえらぶことにすれば

が 0 でないすべてのもと aたいしてようにできる可能かのうせいがある。もし、このようなことができる場合ばあいKVたいして、せき公式こうしきつという。

たとえば K有理数ゆうりすうたいとし、Vすべての素数そすうたいする p-すすむ付値つけねと、絶対ぜったいからなる集合しゅうごうとすれば、せき公式こうしきつ。

もとてん

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からだ K自明じめいではない乗法じょうほう付値つけね全体ぜんたい集合しゅうごう付値つけね同値どうち類別るいべつした集合しゅうごうV としたとき、VもとKもとてんもしくは因子いんしという。もとてんもとにアルキメデス付値つけねふくまれている場合ばあい、そのもとてんふくまれている乗法じょうほう付値つけねはすべてアルキメデス付値つけねであり、そのようもとてん無限むげんもとてんもしくは無限むげんもと因子いんしという。 オストロフスキーの定理ていりより、アルキメデス付値つけねからだ実数じっすうからだもしくは複素数ふくそすうたいまれ、どちらのからだまれるかはアルキメデス付値つけねによってまる。このことから無限むげんもとてん代表だいひょうもと実数じっすうたいなかへの同型どうけい写像しゃぞうによってられるとき、この無限むげんもとてんじつ無限むげんもとてんもしくはじつ無限むげんもと因子いんしといい、実数じっすうたいではなく、複素数ふくそすうたいなかへの同型どうけい写像しゃぞうによってられるとき、複素ふくそ無限むげんもとてんもしくは複素ふくそ無限むげんもと因子いんしという。じつ無限むげんもとてんとなるか複素ふくそ無限むげんもとてんとなるかは、無限むげんもとてん代表だいひょうもとによらない。 また、もとてんアルキメデス付値つけねふく場合ばあい、そのもとてんふくまれている乗法じょうほう付値つけねはすべてアルキメデス付値つけねであり、そのようもとてん有限ゆうげんもとてんもしくは有限ゆうげんもと因子いんしという。 もとてんれいとしては、たとえば代数だいすうたいもとてん参照さんしょうのこと。

からだ K拡大かくだいたいL とする。Kもとてん ふくまれる付値つけね vたいして、vL への延長えんちょう存在そんざいし、そのうちのひとつを wとし、wふくLもとてん とすれば、もとてん もとてん L への延長えんちょうといい、縮小しゅくしょうという。

任意にんいからだおよびもとてんたいして、部分ぶぶんたいへのもとてん縮小しゅくしょうかなら存在そんざいして、もとてん代表だいひょうもとによらず一意的いちいてきまるが、もとてん延長えんちょうたいしては存在そんざいしたとしても一般いっぱんてきには複数ふくすう存在そんざいする。しかし、あるもとてんたいするもとてん延長えんちょう集合しゅうごうは、もともとてん代表だいひょうもとによらず一意的いちいてきまる。

注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ 一般いっぱんに 1 をふく任意にんいたまき R加法かほう付値つけねたいして、Rv, 定義ていぎされ、それぞれ R部分ぶぶんたまきRv のイデアルとなるが、Rからだ以外いがい場合ばあい一般いっぱんには付値つけねたまきおおくの性質せいしつゆうしないので、付値つけねたまきからだじょう加法かほう付値つけねした定義ていぎする。
  2. ^ 一般いっぱんに、順序じゅんじょぐん Gたいして、このよう性質せいしつたす部分ぶぶんぐん孤立こりつ部分ぶぶんぐんという
  3. ^ この n加法かほう付値つけね階数かいすうひとしい。
  4. ^ 文献ぶんけんによっては、ぐんZ部分ぶぶんぐんとなるとき離散りさん付値つけねという場合ばあいがある。
  5. ^ 離散りさん付値つけねではない加法かほう付値つけねたいする付値つけねたまきは、ネーターたまきにはならない。
  6. ^ 乗法じょうほう付値つけねのことをたん付値つけねという場合ばあいがある。また、加法かほう付値つけねのことを付値つけね乗法じょうほう付値つけねのことを絶対ぜったい場合ばあいもある。
  7. ^ このことは乗法じょうほう付値つけね条件じょうけん3 と同値どうちである。
  8. ^ アルキメデス付値つけね |•| および r ≥ 0 にたいして、Rr = {αあるふぁK | |αあるふぁ| ≤ r} とおくと、Rrたまきになるのは、Rr = {0} の場合ばあいかぎる。
  9. ^ たんに「付値つけね」といった場合ばあい加法かほう付値つけね乗法じょうほう付値つけねかはわないものとする。
  10. ^ しかしながら、C(t) にはアルキメデス付値つけね存在そんざいする。
  11. ^ 添字そえじの 1, ... , nたん区別くべつのためのものであり、p-すすむ付値つけねしているわけではない。後述こうじゅつ独立どくりつせい定理ていりせき公式こうしきおなじ。

参考さんこう文献ぶんけん

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  • ニコラ・ブルバキ しる中沢なかざわ英昭ひであき わけ『ブルバキ数学すうがく原論げんろん かわ代数だいすう3』東京とうきょう図書としょ東京とうきょう、1971ねん 
  • 藤崎ふじさきみなもと二郎じろうからだとガロア理論りろん岩波書店いわなみしょてん東京とうきょう岩波いわなみ基礎きそ数学すうがく選書せんしょ〉、1991ねん 
  • 松村まつむら英之ひでゆきかわたまきろん共立きょうりつ出版しゅっぱん東京とうきょう、1980ねん 
  • 永田ながたみやびよろしかわたまきろん紀伊國屋きのくにや書店しょてん東京とうきょう、1985ねん 
  • 永田ながたみやびむべかわからだろん新版しんぱん)』はなぼう東京とうきょう、1985ねん 
  • 斎藤さいとう秀司しゅうじ整数せいすうろん共立きょうりつ出版しゅっぱん共立きょうりつ講座こうざ21世紀せいき数学すうがく(20)〉、1997ねんISBN 978-4320015722 
  • ユルゲン・ノイキルヒ代数だいすうてき整数せいすうろん梅垣うめがきあつしやく足立あだち恒雄つねお監修かんしゅうシュプリンガーフェアラーク東京とうきょう、2003ねん 

関連かんれん項目こうもく

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