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随伴ずいはん作用素さようそ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

数学すうがくとく函数かんすう解析かいせきがくにおいて、ヒルベルト空間くうかんうえかく有界ゆうかい線型せんけい作用素さようそは、対応たいおうする随伴ずいはん作用素さようそ(ずいはんさようそ、えい: adjoint operator)をつ。作用素さようそ随伴ずいはん正方まさかた行列ぎょうれつ随伴ずいはん行列ぎょうれつ概念がいねん無限むげん次元じげん場合ばあいをもゆるすような一般いっぱんである。ヒルベルト空間くうかんじょう作用素さようそを「一般いっぱんされた複素数ふくそすう」とかんがえれば、作用素さようそ随伴ずいはん複素数ふくそすうたいする複素ふくそ共軛きょうやく役割やくわりたすものである。

作用素さようそ A随伴ずいはんは、シャルル・エルミートちなんでエルミート共軛きょうやく (Hermitian conjugate) ともばれ、A* あるいは A、またまれA+ などであらわされる(“†”とくブラケット記法きほうとともにもちいられる)。

有界ゆうかい作用素さようそたいする定義ていぎ[編集へんしゅう]

H内積ないせき ⟨,⟩そなえるヒルベルト空間くうかんとし、連続れんぞく線型せんけい作用素さようそ A: HH線型せんけい作用素さようそたいして、連続れんぞくせいはそれが有界ゆうかい作用素さようそであることと同値どうち)をかんがえるとき、A随伴ずいはん作用素さようそ A: HH は、

たす線型せんけい作用素さようそである。随伴ずいはん作用素さようそ存在そんざい一意いちいせいリースの表現ひょうげん定理ていりからしたが[1]

これは(標準ひょうじゅん複素ふくそ内積ないせきかんして同様どうよう性質せいしつをもつ)複素ふくそ正方せいほう行列ぎょうれつ随伴ずいはん行列ぎょうれつ一般いっぱんることができる。

性質せいしつ[編集へんしゅう]

有界ゆうかい作用素さようそのエルミート随伴ずいはん以下いか性質せいしつたす[1]:

  1. たい合性あいしょう: A** = A
  2. A可逆かぎゃくならば A*可逆かぎゃくであり、かつ (A*)−1 = (A−1)*
  3. 加法かほうせい: (A + B)* = A* + B*
  4. はんひとしせい: (λらむだA)* = λらむだA*, ただし λらむだ複素数ふくそすう λらむだ複素ふくそ共軛きょうやく
  5. 逆転ぎゃくてんせい: (AB)* = B*A*

加法かほうせいはんひとしつぎせいわせてはん線型せんけいせい英語えいごばん逆転ぎゃくてんせいたい合性あいしょうわせて *-たまきとしてのたい合性あいしょうあらわす。

A作用素さようそノルム

定義ていぎするならば、

[1]

および、さらに

[1]

つ。この性質せいしつ満足まんぞくするノルムは、自己じこ随伴ずいはん作用素さようそ場合ばあいからの類推るいすいで、「最大さいだい」のようにうということができる。

ヒルベルト空間くうかん H うえ有界ゆうかい線型せんけい作用素さようそ全体ぜんたい集合しゅうごうは、随伴ずいはんをとる操作そうさ作用素さようそノルムにかんして C* たまき原型げんけいてきれいである。

みつ定義ていぎ作用素さようそ随伴ずいはん[編集へんしゅう]

ヒルベルト空間くうかん H うえみつ定義ていぎ作用素さようそ A は、その定義ていぎいき D(A)H において稠密ちゅうみつで、かつそのおわりいきH であるようなものを[2]。 その随伴ずいはん A* はその定義ていぎいき D(A*)

たす zH存在そんざいするような yH 全体ぜんたい集合しゅうごうあたえられ、かつ A*(y) = z となるものとして定義ていぎされる[3]

上記じょうき性質せいしつ 1.–5. は(定義ていぎいきおわりいき適当てきとう条件じょうけんたせば)成立せいりつする。たとえば最後さいご性質せいしつについて、随伴ずいはん作用素さようそ (AB)* は(A, B, ABみつ定義ていぎ作用素さようそならば)作用素さようそB*A*延長えんちょうあたえられる[4]

作用素さようそ Aぞうとその随伴ずいはん A*かくとのあいだ関係かんけいせいは、

あたえられる(ここでうえよこぼう集合しゅうごう閉包へいほうあらわす。直交ちょっこう空間くうかん参照さんしょう)。ひとしき証明しょうめい[5]

で、ふたつのしきひとしき両辺りょうへん直交ちょっこう空間くうかんをとることでわかる。一般いっぱんに、ぞうは閉とはかぎらないが連続れんぞく線型せんけい作用素さようそかくつねに閉である[6]

エルミート作用素さようそ[編集へんしゅう]

有界ゆうかい作用素さようそ A: HH自己じこ随伴ずいはんであるとは

あるいはおなじことだが

たすことを[7]

適当てきとう意味いみにおいて、エルミート作用素さようそ実数じっすう自身じしんとその複素ふくそ共軛きょうやくひとしい複素数ふくそすう)の役割やくわりたし、みのるベクトル空間くうかんす。エルミート作用素さようそ量子力学りょうしりきがくにおいて観測かんそく可能かのうりょうのモデルを提供ていきょうする。エルミート作用素さようそかんする詳細しょうさい自己じこ随伴ずいはん作用素さようそこう参照さんしょうせよ。

はん線型せんけい作用素さようそ随伴ずいはん[編集へんしゅう]

はん線型せんけい作用素さようそ英語えいごばんたいする随伴ずいはん定義ていぎは、複素ふくそ共軛きょうやく相殺そうさいするために調整ちょうせい必要ひつようである。ヒルベルト空間くうかん H うえはん線型せんけい作用素さようそ A随伴ずいはんは、はん線型せんけい作用素さようそ A: HH

たすものをう(うえよこぼう複素ふくそ共軛きょうやく意味いみする)。

その随伴ずいはん[編集へんしゅう]

等式とうしき

がたうえではけんろんにおける随伴ずいはんたい定義ていぎする性質せいしつおながたをしている。そしてこれは随伴ずいはんはこしゅ由来ゆらいでもある。

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ a b c d Reed & Simon 2003, pp. 186­­–187; Rudin 1991, §12.9
  2. ^ 詳細しょうさい有界ゆうかい作用素さようそ参照さんしょう
  3. ^ Reed & Simon 2003, pp. 252; Rudin 1991, §13.1
  4. ^ Rudin 1991, Thm 13.2
  5. ^ 有界ゆうかい作用素さようそ場合ばあいRudin 1991, Thm 12.10 をよ。
  6. ^ 有界ゆうかい作用素さようそ場合ばあいおなじ。
  7. ^ Reed & Simon 2003, pp. 187; Rudin 1991, §12.11

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • Reed, Michael; Simon, Barry (2003), Functional Analysis, Elsevier, ISBN 981-4141-65-8 .
  • Rudin, Walter (1991), Functional Analysis (second ed.), McGraw-Hill, ISBN 0-07-054236-8 .

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]