補題 ― K を Rn の空でない閉凸部分集合とする。集合K について、K上の最小ノルムを持つベクトルが一意に存在する。
補題の証明:
K上のベクトル x のノルムの下限を δ = inf{|x| | x ∈ K} とする。|xj| → δ となるような K上の数列xj について、K の凸性より |xi + xj|/2 ∈ K が成り立つ。また、
であることから
が得られる。上記の関係について極限を取れば右辺は 0 となり、従って
を満たす。すなわち xi はコーシー列であり、Kは完備であるからその極限値は K に含まれるので、δ はベクトル x ∈ K の最小ノルムとなる。最小ノルムを持つベクトルの一意性について、ベクトル y ∈ K が最小ノルム δ を持つならば、
となるから x = y である。□
定理の証明:
互いに素な空でない凸集合A, B が与えられるとして、次のようなミンコフスキー和(英語版)を考える。
B は凸なので −B もまた凸である。A と −Bの(したがって B の)凸性から上記のミンコフスキー和K は凸である。
K の閉包K は凸なので、先に示した補題より K について最小ノルムを持つベクトル v が一意に定まる。K の凸性から、任意のベクトル u ∈ K について、線分
上の点はすべて K に含まれるため、閉包K のベクトルのノルムについて以下の関係が成り立つ。
この関係より直ちに次の結果が得られる:
更に、t について t → 0 の極限を取れば上記の関係は
と書き換えられる。従って、任意の x ∈ A および y ∈ B について、
が成り立つ。
ベクトル v が零ベクトルでないならば、この関係より
を得て証明を終わる。
反例と一意性
定理の適用できないケース:一方(または両方)の集合が凸でない
A または B の一方が凸集合でない場合、「分離定理」に対しては様々な反例が挙げられる。例えば A と B は同心円状にとることができる。
より微妙な反例として、A と B の両方が閉凸集合だがいずれもコンパクトでない場合が挙げられる。例として、A が閉半平面で B が双曲線の分枝の一方であるとすれば、この場合には分離超平面は厳密には存在しない(しかしながら、開凸集合に関する分離定理があるために A および B の内部を分離する超平面が 1 つ存在する):
他のタイプの反例として A がコンパクトな閉凸集合であり B が開凸集合である場合がある。例えば、A を正方形の閉集合、B を正方形の開集合として A と B が接している状況がこれに当てはまる。
Golshtein, E. G.; Tretyakov, N.V. (1996). Modified Lagrangians and monotone maps in optimization. New York: Wiley. p. 6. ISBN0-471-54821-9
Shimizu, Kiyotaka; Ishizuka, Yo; Bard, Jonathan F. (1997). Nondifferentiable and two-level mathematical programming. Boston: Kluwer Academic Publishers. p. 19. ISBN0-7923-9821-1