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部分ぶぶん積分せきぶん

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部分ぶぶん積分せきぶん(ぶぶんせきぶん、えい: Integration by parts)とは、微分びぶん積分せきぶんがく解析かいせきがくにおける関数かんすうせき積分せきぶんほうかんする定理ていりであり、せき積分せきぶんをより計算けいさん容易ようい積分せきぶん変形へんけいするために頻繁ひんぱん使つかわれる手法しゅほうである。

具体ぐたいてきには、2つの微分びぶん可能かのう関数かんすう 区間くかん たいして以下いかのような関係かんけいしき[1]

不定ふてい積分せきぶん場合ばあいであれば、同様どうよう以下いか関係かんけいしきつ。

またはより簡潔かんけつ

表記ひょうきされる。ここで 関数かんすう 微分びぶんすなわ

である。

導出どうしゅつ[編集へんしゅう]

上記じょうき定理ていり以下いかのように導出みちびきだされる。

がともに微分びぶん可能かのう関数かんすうであるとき、せき微分びぶん法則ほうそく(ライプニッツそく)より

両辺りょうへん区間くかん かんして積分せきぶんして

ここで微分びぶん積分せきぶんがく基本きほん定理ていりより、

であるから、

すなわ以下いか部分ぶぶん積分せきぶん公式こうしきる。

不定ふてい積分せきぶん場合ばあい同様どうよう導出どうしゅつ出来できる。

ここで左辺さへん (しるべ関数かんすう) をふくんでいるから、まず 原始げんし関数かんすう)をつける必要ひつようがあり、いで部分ぶぶん積分せきぶん公式こうしき適用てきようし、積分せきぶん 計算けいさんする。

具体ぐたいてき計算けいさんれい後述こうじゅつ

視覚しかくてき解釈かいしゃく[編集へんしゅう]

部分ぶぶん積分せきぶん定理ていりのグラフによる解釈かいしゃく図示ずしされた曲線きょくせん媒介ばいかい変数へんすう t の関数かんすうである。

パラメーター t によって あらわされた曲線きょくせん定義ていぎする。この曲線きょくせん局所きょくしょてきぜんたんしゃであると仮定かていすると、

青色あおいろ領域りょういき面積めんせきは、

同様どうよう赤色あかいろ領域りょういき面積めんせきは、

にそれぞれ対応たいおうする。

わせた領域りょういき全体ぜんたいは、おおきいほう長方形ちょうほうけい面積めんせき からちいさいほう長方形ちょうほうけい面積めんせき のぞいたものにひとしい。

近傍きんぼう曲線きょくせんなめらかであれば、これは不定ふてい積分せきぶん一般いっぱんできる。

変形へんけいして、

つまり部分ぶぶん積分せきぶんは、青色あおいろ領域りょういき面積めんせき領域りょういき全体ぜんたい面積めんせき赤色あかいろ領域りょういき面積めんせきからみちびかれることに相当そうとうするとかんがえること出来できる。

またこのように可視かしすることにより、関数かんすう 積分せきぶんかっているときぎゃく関数かんすう 積分せきぶん部分ぶぶん積分せきぶんもとめられることが理解りかい出来できる。実際じっさい関数かんすう ぎゃく関数かんすう関係かんけいにあり、積分せきぶん かっていれば上記じょうきのようにして計算けいさん可能かのうである。

部分ぶぶん積分せきぶんもちいた積分せきぶん計算けいさん[編集へんしゅう]

基本きほん方針ほうしん[編集へんしゅう]

部分ぶぶん積分せきぶん機械きかいてき積分せきぶんもとめられる方法ほうほうではなく、むしろある程度ていど試行錯誤しこうさくごようする場合ばあいがある。基本きほんてき方針ほうしんは、あるひとつの関数かんすうあたえられたときに、それを部分ぶぶん積分せきぶん公式こうしきてはめて変形へんけいした場合ばあい出現しゅつげんする積分せきぶんこうがもとの積分せきぶんよりも計算けいさん容易よういになるように、その関数かんすうを2つの関数かんすうせき 分割ぶんかつするというものである[2]下記かきしき分割ぶんかつ方法ほうほうさがすのに役立やくだつであろう。

右辺うへんu微分びぶんされて、ぎゃくv積分せきぶんされていることに注意ちゅういすなわち、微分びぶんされたとき単純たんじゅんかたちになる関数かんすう に、また積分せきぶんされたとき単純たんじゅんかたちになる関数かんすう選択せんたくするのがいことがかる。簡単かんたんれいとして以下いか積分せきぶんかんがえてみると、

微分びぶんすると であることから、部分ぶぶんとして選択せんたくし、また 不定ふてい積分せきぶん であることから、部分ぶぶんとして選択せんたくする。すると公式こうしきにより、

不定ふてい積分せきぶん となる。

べつれいとして、せき約分やくぶんにより簡単かんたんかたちになるように 選択せんたくすることもある。たとえばつぎれいでは、

として、また とすると、 微分びぶんすると合成ごうせい関数かんすう微分びぶんほうにより となり、 積分せきぶんすると となる。したがって公式こうしきにより、

積分せきぶん関数かんすうは 1 となり、積分せきぶんして となる。せき簡単かんたんかたちになるわせをさがすにはある程度ていど試行錯誤しこうさくご必要ひつようなことがある。

そのいくつかのテクニックを以下いかれいしめす。

れい[編集へんしゅう]

多項式たこうしき三角さんかく関数かんすう

この積分せきぶん計算けいさんするには、

とすると、

ここで 積分せきぶん定数ていすうである。

下記かきしきにおける のより高位こうい累乗るいじょうでは、

部分ぶぶん積分せきぶんかえ使つかって同様どうよう計算けいさん出来できる。1かい部分ぶぶん積分せきぶん適用てきようするたび指数しすうが1ずつがる。

指数しすう関数かんすう三角さんかく関数かんすう

部分ぶぶん積分せきぶん仕組しくみをかんがえるためによく使つかわれるれいとして、

計算けいさんする。ここでは、部分ぶぶん積分せきぶんを2かいおこなう。最初さいしょ

とすると、

となる。のこった積分せきぶんこうたいして再度さいど部分ぶぶん積分せきぶんおこなう。

として、

これらをわせて、

おな積分せきぶんこう等式とうしき両辺りょうへん出現しゅつげんしているので

変形へんけい出来できて、

となる。ただし、積分せきぶん定数ていすうである。

のような積分せきぶん同様どうよう方法ほうほう使つかって計算けいさん出来できる。

関数かんすう形式けいしきてきに1をける

さらによくられたれいげる。積分せきぶん関数かんすうを1とそれ自身じしんせきかんがえて部分ぶぶん積分せきぶんおこな方法ほうほうである。これは、積分せきぶん関数かんすうしるべ関数かんすうかっていて、さらにそのしるべ関数かんすうxじょうじた関数かんすう積分せきぶん計算けいさん可能かのう場合ばあい有効ゆうこうである。

最初さいしょれいとしてかんがえる。これを以下いかのように1と自身じしんせきとしてかんがえて、

つぎのようにおくと、

以下いかのように計算けいさん出来でき[3]

つぎれいとして 積分せきぶんかんがえる。

これを以下いかのようにえる。

つぎのようにおくと、

以下いかのように計算けいさん出来できる。

ここではぎゃく関数かんすう微分びぶんほう使用しようした。

部分ぶぶん積分せきぶん再帰さいきてき適用てきよう[編集へんしゅう]

部分ぶぶん積分せきぶんたいして再帰さいきてき適用てきようすることにより、つぎ公式こうしきる。

ここで、 の1しるべ関数かんすう は2しるべ関数かんすうであり、n しるべ関数かんすうあらわす。以下いかのように定義ていぎされる。

上記じょうきしきは、 から開始かいしして1つこうじゅん微分びぶんしてき、2つこう積分せきぶんしてけば計算けいさん出来できる(同時どうじ符号ふごう反転はんてんしながらであるが)。とくに、 がある で 0 になるときには こうまでで終了しゅうりょうするため、便利べんり公式こうしきである。

拡張かくちょう[編集へんしゅう]

因子いんしへの拡張かくちょう[編集へんしゅう]

せき微分びぶん法則ほうそく一般いっぱん参照さんしょうのこと)

3つの関数かんすう せき微分びぶん法則ほうそくたいして積分せきぶんおこなうと、同様どうよう以下いかのような結果けっかる。

一般いっぱんてき 関数かんすうせき場合ばあいは、

すなわち、

ここで右辺うへんせきは、どうこう微分びぶんった関数かんすうのぞすべての関数かんすうせきるものとする。

スティルチェス積分せきぶん[編集へんしゅう]

リーマン=スティルチェス積分せきぶん(またはスティルチェス積分せきぶん)とは、トーマス・スティルチェスによるリーマン積分せきぶん拡張かくちょうである。

リーマン=スティルチェス積分せきぶんかんしても、積分せきぶん関数かんすう および積分せきぶん関数かんすう たいして部分ぶぶん積分せきぶん公式こうしき

なるかたちつ。

また、リーマン=スティルチェス積分せきぶんおよび(狭義きょうぎの)ルベーグ積分せきぶん一般いっぱんであるルベーグ=スティルチェス積分せきぶん(またはルベーグ=ラドン積分せきぶん)にたいしても、以下いかかたち部分ぶぶん積分せきぶん公式こうしき定式ていしきされる。

2つの有界ゆうかい変動へんどう関数かんすう U, Vたいして U または V のいずれかが連続れんぞくしくは U および V がともに正常せいじょうえい: regular)となるようなてんでは、

成立せいりつする。

詳細しょうさいリーマン=スティルチェス積分せきぶんおよびルベーグ=スティルチェス積分せきぶん参照さんしょう

こう次元じげんへの拡張かくちょう[編集へんしゅう]

部分ぶぶん積分せきぶんこう次元じげん場合ばあいたいして拡張かくちょうすることが出来できる。

区分くぶんてきなめらかな境界きょうかい 有界ゆうかいひらけ集合しゅうごうとし、 へのそと単位たんいめん法線ほうせんベクトル をそれぞれ 閉包へいほうにおいてなめらかな関数かんすうおよびベクトル関数かんすうとして定義ていぎする。

このときたいしてガウスの発散はっさん定理ていり適用てきようすると、

であるから、以下いか部分ぶぶん積分せきぶん公式こうしきられる。

また、 なる あらわされるとき

となり、グリーンのだいいち恒等こうとうしきられる。

同様どうように、任意にんい階数かいすう微分びぶん可能かのうテンソルじょう たいして、発散はっさん定理ていりより以下いか部分ぶぶん積分せきぶん公式こうしきみちびかれる。

ここで テンソルせきあらわす。恒等こうとうテンソルにひとしいときは、発散はっさん定理ていりしきる。

添字そえじ表記ひょうきあらわすと以下いかのようになる。

ここで がともに2かいのテンソルであるような特殊とくしゅ場合ばあいかんがえ、1つの添字そえじちぢみやくると、

すなわ

となる。

応用おうよう[編集へんしゅう]

部分ぶぶん積分せきぶん解析かいせきがくにおけるいくつかのおう用例ようれいげる。

ガンマ関数かんすう[編集へんしゅう]

関数かんすう等式とうしき[編集へんしゅう]

ガンマ関数かんすう広義こうぎ積分せきぶんもちいて定義ていぎされる特殊とくしゅ関数かんすうである。部分ぶぶん積分せきぶん使つかうと、これがかいじょう拡張かくちょうになっていることがかる[4]

このようにして、以下いかのよくられた等式とうしきられる。

たいしてこの公式こうしきかえ適用てきようすることでかいじょうられる[4]

定義ていぎ等価とうかせい[編集へんしゅう]

ガンマ関数かんすうワイエルシュトラスのじょうせき表示ひょうじ:

もちいて定義ていぎすることもできる(オイラーの定数ていすうである)[4]

無限むげんじょうせきによる定義ていぎ広義こうぎ積分せきぶんによる定義ていぎ同値どうちであることは部分ぶぶん積分せきぶんかえすことでしめされる[4]

調和ちょうわ解析かいせき[編集へんしゅう]

調和ちょうわ解析かいせきとくフーリエ変換へんかんにおける部分ぶぶん積分せきぶんおう用例ようれいげる。よくられたれいとして、関数かんすうのフーリエ変換へんかん収束しゅうそくが、関数かんすうなめらかさに依存いぞんしていることをしめすものである。

しるべ関数かんすうのフーリエ変換へんかん

fk かい連続れんぞく微分びぶん可能かのうであり、さらk つぎまでのしるべ関数かんすう無限むげんだいで 0 に収束しゅうそくするとき、そのフーリエ変換へんかん以下いか関係かんけいしきたす。

ここで しるべ関数かんすうあらわす。

しるべ関数かんすうのフーリエ変換へんかんたいして部分ぶぶん積分せきぶん適用てきようすると、以下いか結果けっかる。

この結果けっかかえ適用てきようすることによって、一般いっぱんkたいする結果けっかられる。同様どうよう手法しゅほうしるべ関数かんすうラプラス変換へんかんもとめるさいにも利用りよう出来できる。

フーリエ変換へんかん収束しゅうそく

上記じょうき結果けっかにより、積分せきぶん可能かのうならば、

, ただし .

いかえると、 がこれらの条件じょうけん満足まんぞくするならば、そのフーリエ変換へんかん無限むげんおおだか のオーダーで収束しゅうそくするということである。とくに、 ならばフーリエ変換へんかん積分せきぶん可能かのうである。

証明しょうめいにはフーリエ変換へんかん定義ていぎからただちにられるつぎ関係かんけいもちいる。

ふし冒頭ぼうとうべたのと同様どうようかんがかたにより、つぎ結果けっかられる。

この2つの不等式ふとうしき片々へんぺんくわえて じょすることにより上記じょうき結果けっかられる。

作用素さようそろん[編集へんしゅう]

作用素さようそろんにおける部分ぶぶん積分せきぶん利用りようれいの1つとして、 ( ラプラス作用素さようそ) が においてせい作用素さようそであるということがげられる(Lp空間くうかん参照さんしょう)。

fなめらかでコンパクトなだいつならば、部分ぶぶん積分せきぶんもちいることにより以下いか結果けっかる。

その応用おうよう[編集へんしゅう]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ Konrad Königsberger: Analysis 1. Springer-Verlag, Berlin u. a., 2004, ISBN 3-540-41282-4, 202.
  2. ^ Yvonne Stry: Mathematik kompakt: für Ingenieure und Informatiker. 3., bearb. Auflage, Springer-Verlag, 2010, ISBN 3642111912, 314.
  3. ^ Otto Forster: Analysis Band 1: Differential- und Integralrechnung einer Veränderlichen. Vieweg-Verlag, 8. Aufl. 2006, ISBN 3-528-67224-2, 210.
  4. ^ a b c d 時弘ときひろ哲治てつじ, 正夫まさお, 杉原すぎはら厚吉こうきち, 速水はやみけん, 今井いまいひろし工学こうがくにおける特殊とくしゅ関数かんすう共立きょうりつ出版しゅっぱんこうけい数学すうがく講座こうざ〉、2006ねんISBN 4320016122国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかん書誌しょしID:000008218132https://id.ndl.go.jp/bib/000008218132 
  5. ^ 常微分じょうびぶん方程式ほうていしき解析かいせき力学りきがく (1998)、木村きむらしゅんぼう飯高いいたかしげる西川にしかわあお岡本おかもと和夫かずお楠岡くすおか成雄しげお (編集へんしゅう委員いいん)・伊藤いとう秀一ひでかずちょ共立きょうりつ講座こうざ 21世紀せいき数学すうがくISBN 978-4-320-01563-0共立きょうりつ出版しゅっぱん
  6. ^ Ablowitz, M. J., & Fokas, A. S. (2003). Complex variables: introduction and applications. en:Cambridge University Press.
  7. ^ 平山ひらやまひろし部分ぶぶん積分せきぶんほうによるはん無限むげん区間くかん振動しんどうがた積分せきぶん数値すうち計算けいさんほう」『日本にっぽん応用おうよう数理すうり学会がっかい論文ろんぶんだい7かんだい2ごう日本にっぽん応用おうよう数理すうり学会がっかい、1997ねん、131-138ぺーじCRID 1390001205768016384doi:10.11540/jsiamt.7.2_131ISSN 09172246 
  8. ^ 平山ひらやまひろし, 館野たての裕文ひろふみ, 平野ひらのあきらいにしえ部分ぶぶん積分せきぶんほうによる数値すうち積分せきぶんほう」『数理すうり解析かいせき研究所けんきゅうじょ講究こうきゅうろくだい1395かん京都きょうと大学だいがく数理すうり解析かいせき研究所けんきゅうじょ、2004ねん10がつ、190-195ぺーじCRID 1050001202108546176hdl:2433/25947ISSN 1880-2818 

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]