数学 すうがく の特 とく に解析 かいせき 学 がく における陰 かげ 函数 かんすう (いんかんすう、英 えい : implicit function ; 陰 かげ 伏 ふく 函数 かんすう )は、陰 かげ 伏 ふく 方程式 ほうていしき すなわち適当 てきとう な多 た 変数 へんすう 函数 かんすう (しばしば多 た 変数 へんすう 多項式 たこうしき )R によって R (x 1 , …, xn ) = 0 の形 かたち に表 あらわ される関係 かんけい によって(その函数 かんすう の引数 ひきすう のうちの一 ひと つの変数 へんすう の値 ね (英語 えいご 版 ばん ) を残 のこ りの変数 へんすう に関係付 かんけいづ けることによって)陰 かげ 伏 ふく 的 てき (implicitly) に定義 ていぎ される函数 かんすう を言 い う[ 1] :204–206 。
例 たと えば、単位 たんい 円 えん を定 さだ める陰 かげ 伏 ふく 方程式 ほうていしき は x 2 + y 2 − 1 = 0 であり、このときの y に対 たい する陰 かげ 函数 かんすう y = f (x ) は、x 2 + (f (x ))2 − 1 = 0 によって陰 かげ 伏 ふく 的 てき に定 さだ められる。この陰 かげ 伏 ふく 方程式 ほうていしき が、x の連続 れんぞく 函数 かんすう として f を定 さだ めるのは −1 ≤ x ≤ 1 に対 たい してのみ、かつ函数 かんすう の値 ね として非負 ひふ の値 ね のみ(あるいは非 ひ 正 せい の値 ね のみ)を取 と るものとしたときである(非負 ひふ または非 ひ 正 せい の二 ふた つの連続 れんぞく な枝 えだ がある)。陰 かげ 函数 かんすう 定理 ていり はこのような関係 かんけい がいつ陰 かげ 伏 ふく 函数 かんすう を定義 ていぎ するのかという十分 じゅうぶん 条件 じょうけん を与 あた えるものである。
R が多 た 変数 へんすう 多項式 たこうしき であるときの R (x 1 , …, xn ) = 0 なる形 かたち の関係 かんけい に対 たい して、この関係 かんけい を満足 まんぞく する変数 へんすう の値 ね の組 くみ 全体 ぜんたい の成 な す集合 しゅうごう を、n = 2 のときは陰 かげ 伏 ふく 曲線 きょくせん 、n = 3 のときは陰 かげ 伏 ふく 曲面 きょくめん (英語 えいご 版 ばん ) と呼 よ ぶ。このような陰 かげ 伏 ふく 方程式 ほうていしき は代数 だいすう 幾何 きか 学 がく の基盤 きばん であり、古典 こてん 的 てき な代数 だいすう 幾何 きか 学 がく では多項式 たこうしき の零 れい 点 てん を記述 きじゅつ する陰 かげ 伏 ふく 方程式 ほうていしき からなる連立 れんりつ 方程式 ほうていしき の解 かい を研究 けんきゅう する。そのような零 れい 点 てん 集合 しゅうごう はアフィン代数 だいすう 的 てき 集合 しゅうごう と呼 よ ばれる。
微分 びぶん 方程式 ほうていしき の解 かい は一般 いっぱん には陰 かげ 函数 かんすう の形 かたち で得 え られる[ 2] 。
よくある種類 しゅるい の陰 かげ 函数 かんすう は逆 ぎゃく 函数 かんすう である。函数 かんすう f の逆 ぎゃく 函数 かんすう は、f の独立 どくりつ 変数 へんすう と従属 じゅうぞく 変数 へんすう の役割 やくわり を入 い れ替 か えると得 え られる。つまり、f が x の函数 かんすう であるとき、f の逆 ぎゃく 函数 かんすう f −1 は、x を y の式 しき として方程式 ほうていしき y = f (x ) を解 と くことで与 あた えられ、その解 かい が x = f −1 (y ) である。別 べつ ない方 いかた をすると、陰 かげ 伏 ふく 方程式 ほうていしき R (x , y ) = y − f (x ) = 0 を x について解 と いたものが逆 ぎゃく 函数 かんすう である。例 たと えばランベルトのオメガ函数 かんすう は、陰 かげ 伏 ふく 方程式 ほうていしき y − xe x = 0 を x について解 と いた陰 かげ 伏 ふく 函数 かんすう (つまり y の逆 ぎゃく 函数 かんすう )として与 あた えられる。
代数 だいすう 函数 かんすう は係数 けいすう がそれ自身 じしん 多項式 たこうしき であるような多項式 たこうしき 方程式 ほうていしき を満足 まんぞく する函数 かんすう である。例 たと えば一変 いっぺん 数 すう x に関 かん する代数 だいすう 函数 かんすう は、陰 かげ 伏 ふく 方程式 ほうていしき
a
n
(
x
)
y
n
+
a
n
−
1
(
x
)
y
n
−
1
+
⋯
+
a
0
(
x
)
=
0
{\displaystyle a_{n}(x)y^{n}+a_{n-1}(x)y^{n-1}+\dotsb +a_{0}(x)=0}
を y について解 と くことで与 あた えられる。ここで、各 かく 係数 けいすう ai (x ) は x の多項式 たこうしき である。代数 だいすう 函数 かんすう は解析 かいせき 学 がく および代数 だいすう 幾何 きか 学 がく において重要 じゅうよう な役割 やくわり を果 は たす。代数 だいすう 函数 かんすう の簡単 かんたん な例 れい は、単位 たんい 円 えん の方程式 ほうていしき x 2 + y 2 −1 = 0 を y について解 と いた y = ±√ 1 − x 2 である。
ただし、この陽 ひ に表 あらわ された解 かい を特定 とくてい することをせずとも、この単位 たんい 円 えん の陰 かげ 伏 ふく 的 てき な解 かい に言及 げんきゅう することは可能 かのう である。例 たと えば y に関 かん する二 に 次 じ 、三 さん 次 じ および四 よん 次 じ 方程式 ほうていしき に対 たい しては同様 どうよう に陽 ひ に表 あらわ された解 かい を求 もと めることができるが、例 たと えば
y
5
+
2
y
4
−
7
y
3
+
3
y
2
−
6
y
−
x
=
0
{\displaystyle y^{5}+2y^{4}-7y^{3}+3y^{2}-6y-x=0}
のような五 ご 次 じ あるいはより高次 こうじ の方程式 ほうていしき においては、一般 いっぱん には解 かい を陽 ひ にすることはできない。それにもかかわらず、陰 かげ 伏 ふく 多 た 価 あたい 函数 かんすう g を含 ふく む陰 かげ 伏 ふく 解 かい y = g (x ) に関 かん して考 かんが えることができる。
単位 たんい 円 えん の方程式 ほうていしき の場合 ばあい を一 ひと つの特徴 とくちょう 的 てき な例 れい として、必 かなら ずしも任意 にんい の方程式 ほうていしき R (x , y ) = 0 が一価 いっか 函数 かんすう のグラフを導 みちび くわけではないことに注意 ちゅうい すべきである。あるいは C が三 さん 次 じ 多項式 たこうしき でそのグラフに「起伏 きふく 」がある(つまり極大 きょくだい 値 ち と極小 きょくしょう 値 ち を持 も つ)ようなものとしたとき、方程式 ほうていしき x − C (y ) = 0 の陰 かげ 伏 ふく 的 てき に定義 ていぎ する函数 かんすう もそのような例 れい を与 あた える。したがって、陰 かげ 函数 かんすう が「真 しん の」(つまり一価 いっか の)函数 かんすう となるためには、陰 かげ 伏 ふく 方程式 ほうていしき のグラフの一部分 いちぶぶん に話 はなし を限 かぎ る必要 ひつよう があることがわかる。陰 かげ 函数 かんすう は、x -軸 じく のある部分 ぶぶん に「ズームイン」して、函数 かんすう の不都合 ふつごう な枝 えだ を「取 と り払 はら って」しまった後 うしろ でのみ、真 しん の函数 かんすう を得 え ることに成功 せいこう するということがしばしばある。そうすれば、y を表 あらわ す方程式 ほうていしき を他 た の変数 へんすう の陰 かげ 函数 かんすう として書 か くことができる。
定義 ていぎ 方程式 ほうていしき R (x , y ) = 0 が他 た の病的 びょうてき な性質 せいしつ を持 も つこともある。例 たと えば、垂直 すいちょく 線 せん の方程式 ほうていしき x = 0 は y について解 と くことで与 あた えられる函数 かんすう f (x ) というものを導 みちび くことは全 まった くない。このような問題 もんだい を避 さ ける目的 もくてき で、許 ゆる される方程式 ほうていしき の種類 しゅるい や定義 ていぎ 域 いき に様々 さまざま な制約 せいやく 条件 じょうけん を課 か すことが頻繁 ひんぱん に行 おこな われる。陰 かげ 函数 かんすう 定理 ていり はこのような病的 びょうてき な性質 せいしつ の種類 しゅるい を扱 あつか う一様 いちよう な方法 ほうほう を提供 ていきょう する。
微分 びぶん 積分 せきぶん 学 がく において陰 かげ 函数 かんすう 微分 びぶん 法 ほう (implicit differentiation ) と呼 よ ばれる手法 しゅほう は、連鎖 れんさ 律 りつ を用 もち いて陰 かげ 伏 ふく 的 てき に定義 ていぎ された函数 かんすう を微分 びぶん する。[ 3]
陰 かげ 伏 ふく 函数 かんすう y (x ) を微分 びぶん するに際 さい して、定義 ていぎ 方程式 ほうていしき R (x , y ) = 0 を y について陽 ひ に解 と いてからそれを微分 びぶん するということは、一般 いっぱん には可能 かのう でない。その代 か わり、R (x , y ) を x および y に関 かん して微分 びぶん して、それから dy ⁄dx に関 かん する一 いち 次 じ 方程式 ほうていしき を解 と いて x および y の式 しき として陽 ひ に書 か かれた導 しるべ 函数 かんすう を得 え るということができる。方程式 ほうていしき が陽 ひ に解 と けるという場合 ばあい であってさえも、陰 かげ 函数 かんすう 微分 びぶん で得 え られる式 しき は、一般 いっぱん により単純 たんじゅん で扱 あつか いが容易 ようい である。
陰 かげ 函数 かんすう 微分 びぶん の一般 いっぱん 公式 こうしき ― R (x , y ) = 0 のとき、陰 かげ 伏 ふく 函数 かんすう y (x ) の導 しるべ 函数 かんすう は
d
y
d
x
=
−
∂
R
/
∂
x
∂
R
/
∂
y
=
−
R
x
R
y
{\displaystyle {\frac {dy}{dx}}=-{\frac {\partial R/\partial x}{\partial R/\partial y}}=-{\frac {R_{x}}{R_{y}}}}
で与 あた えられる[ 4] :§ 11.5 。ここに、Rx および Ry はそれぞれ R の x および y に関 かん する微分 びぶん を表 あらわ す。
上記 じょうき の公式 こうしき は、R (x , y ) = 0 の両辺 りょうへん の(x に関 かん する)全 ぜん 微分 びぶん を得 え るために多 た 変数 へんすう の連鎖 れんさ 律 りつ を適用 てきよう すれば、
∂
R
∂
x
d
x
d
x
+
∂
R
∂
y
d
y
d
x
=
0
{\displaystyle {\frac {\partial R}{\partial x}}{\frac {dx}{dx}}+{\frac {\partial R}{\partial y}}{\frac {dy}{dx}}=0}
となることから導 みちび かれる。
単位 たんい 円 えん は x 2 + y 2 = 1 を満足 まんぞく する点 てん (x , y ) 全体 ぜんたい の成 な す集合 しゅうごう として陰 かげ に定義 ていぎ することができる。点 てん A の周 まわ りで y は函数 かんすう y (x ) として、具体 ぐたい 的 てき には g 1 (x ) = √ 1 − x 2 として表 あらわ される。接線 せっせん が垂直 すいちょく となる点 てん B の周 まわ りではそのような函数 かんすう は存在 そんざい しない。
R (x , y ) が R 2 内 うち の滑 なめ らかな部分 ぶぶん 多様 たよう 体 たい M によって与 あた えられ、この部分 ぶぶん 多様 たよう 体 たい の点 てん (a , b ) がその点 てん における接 せっ 空間 くうかん が垂直 すいちょく でない(つまり ∂R /∂y ≠ 0 )ならば、M は点 てん (a , b ) の十 じゅう 分 ふん 小 ちい さな近傍 きんぼう において、f が滑 なめ らかな函数 かんすう となるような媒介 ばいかい 表示 ひょうじ (英語 えいご 版 ばん ) (x , f (x )) によって与 あた えられることが示 しめ せる。
より俗 ぞく ない方 いかた をすれば、考 かんが えているグラフの接線 せっせん が垂直 すいちょく でない限 かぎ り、陰 かげ 函数 かんすう は存在 そんざい して微分 びぶん することができるということである。方程式 ほうていしき
R
(
x
,
y
)
=
0
{\displaystyle R(x,y)=0}
が与 あた えられている標準 ひょうじゅん 的 てき な場合 ばあい において、R に関 かん する条件 じょうけん は偏 へん 微分 びぶん の意味 いみ で確認 かくにん することができる[ 4] :§ 11.5 。
^ Chiang, Alpha C. (1984). Fundamental Methods of Mathematical Economics (Third ed.). McGraw-Hill
^ Kaplan. Advanced Calculus
^ implicit differentiation - PlanetMath .(英語 えいご )
^ a b Stewart, James (1998). Calculus Concepts And Contexts . Brooks/Cole Publishing Company. ISBN 0-534-34330-9