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テイラー展開てんかい

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テイラー級数きゅうすうから転送てんそう
テイラー多項式たこうしき次数じすうがるにつれて、ただしい関数かんすうちかづく。このsin x と、そのテイラー近似きんじのうち、1, 3, 5, 7, 9, 11, 13 つぎ多項式たこうしきしめしている。
指数しすう関数かんすう ex (あお) と、その 0 におけるテイラー級数きゅうすう最初さいしょn + 1 こう (あか)。

数学すうがくにおいてテイラー級数きゅうすう(テイラーきゅうすう、えい: Taylor series)は、関数かんすうのあるいちてんでのしるべ関数かんすうから計算けいさんされるこう無限むげんとして関数かんすうあらわしたものである。そのような級数きゅうすうることをテイラー展開てんかい(テイラーてんかい)という。

テイラー級数きゅうすう概念がいねんスコットランド数学すうがくしゃジェームズ・グレゴリーにより定式ていしきされ、フォーマルにはイギリス数学すうがくしゃブルック・テイラーによって1715ねん導入どうにゅうされた。0 を中心ちゅうしんとしたテイラー級数きゅうすうは、マクローリン級数きゅうすう (えい: Maclaurin series) ともばれる。これはスコットランドの数学すうがくしゃコリン・マクローリンにちなんでおり、かれは18世紀せいきにテイラー級数きゅうすうのこの特別とくべつ場合ばあい積極せっきょくてき活用かつようした。

関数かんすうはそのテイラー級数きゅうすう有限ゆうげんこうもちいて近似きんじすることができる。テイラーの定理ていりはそのような近似きんじによる誤差ごさ定量ていりょうてき評価ひょうかあたえる。テイラー級数きゅうすう最初さいしょのいくつかのこうとしてられる多項式たこうしきテイラー多項式たこうしきばれる。関数かんすうのテイラー級数きゅうすうは、その関数かんすうのテイラー多項式たこうしき次数じすうやした極限きょくげん存在そんざいすればその極限きょくげんである。関数かんすうはそのテイラー級数きゅうすうがすべてのてん収束しゅうそくするときでさえもテイラー級数きゅうすうひとしいとはかぎらない。ひらき区間くかん(あるいは複素ふくそ平面へいめんひらきえんばん)でテイラー級数きゅうすうひとしい関数かんすうはその区間くかんじょう解析かいせき関数かんすうばれる。

前述ぜんじゅつとおり、一定いってい条件じょうけんしたでテイラー展開てんかい高次こうじこう無視むしすることができる。たとえばたん問題もんだいでは、かく x充分じゅうぶんちいさいことを利用りようして、正弦せいげん関数かんすう sin xx近似きんじできる。このように、関数かんすうをテイラー展開てんかいすることで計算けいさん容易よういになり、また原点げんてん近傍きんぼういを詳細しょうさい調しらべることができるようになる。

一実かずみ変数へんすう関数かんすうのテイラー展開てんかい[編集へんしゅう]

正弦せいげん関数かんすうにおけるテイラー級数きゅうすうのうち次数じすうすくないこうのみを抽出ちゅうしゅつしたもの


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てん aふく実数じっすうひらき区間くかん IR うえ無限むげんかい微分びぶん可能かのう関数かんすう fC(I)あたえられたとき、べき級数きゅうすう

関数かんすう fてん a まわりのテイラー級数きゅうすうという。ここで n!nかいじょうf(n)(a)x = a における fn つぎ微分びぶん係数けいすうである[ちゅう 1]。また、便宜べんぎてき(xa)0 は 1 であると定義ていぎする[ちゅう 2]。テイラー級数きゅうすう収束しゅうそくし、もと関数かんすう f一致いっちするとき、fテイラー展開てんかい可能かのうであるという。テイラー展開てんかいがある大域たいいきてき領域りょういきかくてん可能かのう関数かんすうは、その領域りょういきにおいて解析かいせきてき (analytic) である、またはその領域りょういきじょう解析かいせき関数かんすう (analytic function) であるという。

ここで一般いっぱんには関数かんすう f無限むげんかい微分びぶん可能かのうであってもそのテイラー級数きゅうすうxa収束しゅうそくするとはかぎらず[1]、たとえ収束しゅうそくしても一致いっちするとはかぎらない[2]ことに注意ちゅうい必要ひつようである。一致いっちするかどうかは、テイラーの定理ていりにおける剰余じょうよこう Rn が 0 に収束しゅうそくするかどうかによって判定はんていできる;ここで剰余じょうよこう Rn は、ある c ∈ (a, x)存在そんざいして、

ける。または積分せきぶんもちいて、つぎのようにあらわせる。

また、この剰余じょうよこう評価ひょうかすることで関数かんすう近似きんじ精度せいど保証ほしょうつきで数値すうちてきもとめることもできる(テイラーの定理ていり#れい参照さんしょう)。

とくa = 0 における以下いかのような展開てんかい

マクローリン展開てんかい(マクローリンてんかい、えい: Maclaurin expansion; 名称めいしょう数学すうがくしゃコリン・マクローリン由来ゆらいする)とぶ。

マクローリン級数きゅうすうれい[編集へんしゅう]

いくつかの重要じゅうよう関数かんすうのテイラー展開てんかい以下いかしめす。これらはすべて複素ふくそ解析かいせきてき関数かんすうであり、複素ふくそ変数へんすうであるとかんがえてもつ。xについてのforの範囲はんいがい実数じっすうx代入だいにゅうしたら発散はっさんする(ただし、もと関数かんすう収束しゅうそくすることもある)。

なお、tan(x), csc(x), cot(x), tanh(x)展開てんかいあらわれる Bkこう展開てんかいsec(x)展開てんかいあらわれる Ek はそれぞれベルヌーイすうこう係数けいすうオイラーすうである。また、f−1(x)f (x)ぎゃく関数かんすうであるとする。

多項式たこうしき
多項式たこうしきをマクローリン展開てんかいしたものはもと多項式たこうしき自身じしんである。
指数しすう関数かんすう
自然しぜん対数たいすう
幾何級数きかきゅうすう
こう定理ていり
三角さんかく関数かんすう
双曲線そうきょくせん関数かんすう
ランベルトのW関数かんすう

一変いっぺんすう複素ふくそ関数かんすうのテイラー展開てんかい[編集へんしゅう]

てん aふくひらけ集合しゅうごう DC うえ微分びぶん可能かのう、すなわち正則せいそく複素ふくそ関数かんすう fあたえられたとき、べき級数きゅうすう

関数かんすう fてん a まわりのテイラー級数きゅうすうという。正則せいそく関数かんすう解析かいせきせいから、てん a中心ちゅうしんとして D包含ほうがんされるような任意にんいひらきえんばん B(a,r) = { zC | |za| < r } ⊆ D うえでこの級数きゅうすうf (a)収束しゅうそくする。

剰余じょうよこう Rn複素ふくそせん積分せきぶんもちいて、つぎのようにあらわせる:

ここで C は、てん azかこみ、しゅうおよび内部ないぶDふくまれるようなはん時計とけいまわりの円周えんしゅうである。

変数へんすう関数かんすうのテイラー展開てんかい[編集へんしゅう]

テイラー展開てんかい一変いっぺんすう関数かんすうのみならず、変数へんすう関数かんすうにも適用てきようできる。d 変数へんすう関数かんすう f のテイラー展開てんかい以下いかしきである。

多重たじゅう指数しすう記法きほうもちいれば、d 変数へんすう関数かんすう f (x) のテイラー展開てんかいつぎしき表現ひょうげんされる。

アインシュタインのちぢみやく記法きほうもちいれば、変数へんすう関数かんすう f (xμみゅー) のテイラー展開てんかいつぎしきである。

うえしきμみゅー微分びぶん演算えんざんであり、ベクトル解析かいせき記法きほうでは えられる。一番いちばんうしろに f (αあるふぁμみゅー) があるが、これは f (xμみゅー)ひだり演算えんざん作用さようさせてから f (xμみゅー)引数ひきすうとして αあるふぁμみゅーあたえることをあらわしていることに注意ちゅういする。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

ちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ f0 つぎしるべ関数かんすうf 自身じしんである。
  2. ^ 0の0じょう参照さんしょう定義ていぎ衝突しょうとつけるならば、たんn = 0こう明示めいじてきき、n = 0ふくめないかたちなおせばよい。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • ハイラー, E.、ヴァンナー, G. ちょ蟹江かにえ幸博ゆきひろ やく解析かいせき教程きょうていした丸善まるぜん出版しゅっぱん、2012ねんISBN 978-4-621-06190-9https://books.google.co.jp/books?id=zML3A8iCmeUC 

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]


外部がいぶリンク[編集へんしゅう]