(Translated by https://www.hiragana.jp/)
微分作用素 - Wikipedia コンテンツにスキップ

微分びぶん作用素さようそ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
アニュラスうえ定義ていぎされた調和ちょうわ函数かんすう調和ちょうわ函数かんすうは、重要じゅうよう微分びぶん作用素さようそであるラプラス作用素さようそかくぞくするような函数かんすうである。

数学すうがくにおける微分びぶん作用素さようそ(びぶんさようそ、differential operator)は、微分びぶん演算えんざん (D = ddx) の函数かんすうとして定義ていぎされた作用素さようそである。ひとまずは表記ひょうきほう問題もんだいとして、微分びぶん演算えんざんを(計算けいさん科学かがくにおける高階たかしな函数かんすうおな仕方しかたで)入力にゅうりょく函数かんすうべつ函数かんすうかえ抽象ちゅうしょうてき演算えんざんかんがえるのが有効ゆうこうである。

ほんこうでは、もっともよくあつかわれる種類しゅるいである線型せんけい作用素さようそおもあつかう。しかし、シュヴァルツ微分びぶん英語えいごばんのような線型せんけい微分びぶん作用素さようそ存在そんざいする。

定義ていぎ

[編集へんしゅう]

函数かんすう空間くうかん から函数かんすう空間くうかん への写像しゃぞう 存在そんざいし、ぞうとなるような函数かんすう (つまり )が存在そんざいすることを仮定かていする。

微分びぶん作用素さようそは、 およびその

なるかたちふく高階たかしな微分びぶんによって有限ゆうげん生成せいせいされる作用素さようそう。ここに、非負ひふ整数せいすうれつ 多重たじゅう指数しすうばれ、ながさとばれ、n-次元じげん空間くうかんないひらき領域りょういきじょう函数かんすうであり、 である。上記じょうきは、函数かんすうとしての微分びぶんであるが、シュヴァルツちょう函数かんすう佐藤さとうちょう函数かんすう意味いみでの微分びぶんとしたり、またもとにする微分びぶん演算えんざん時折ときおり えらぶこともある。

記法きほう

[編集へんしゅう]

もっともよくある微分びぶん作用素さようそは、微分びぶんをとる操作そうさ変数へんすう x についていちかい微分びぶんをとる作用素さようそのよくある記法きほうとして

などがげられる。より高次こうじの、n-かい微分びぶんをとる作用素さようそ

などでかれる。変数へんすう x函数かんすう f微分びぶん

などであらわすこともある。 記号きごう D使つかうことは、ヘヴィサイドによりはじめられ、かれ微分びぶん方程式ほうていしき研究けんきゅうなか

かたち微分びぶん作用素さようそかんがえた。もっとかける微分びぶん作用素さようそのひとつに、

定義ていぎされるラプラス作用素さようそがある。微分びぶん作用素さようそとして、オイラー作用素さようそϑ[1]

定義ていぎされる。この作用素さようそ固有こゆう函数かんすうz単項式たんこうしき

であり、homogeneity operator ともばれる。n-変数へんすうのテータ作用素さようそは、

によりあたえられる。一変いっぺんすう同様どうように、Θしーた固有こゆう空間くうかんは、ひとし多項式たこうしき全体ぜんたい空間くうかんである。

よくある数学すうがく記法きほうしたがえば、微分びぶん作用素さようそ引数ひきすう作用素さようそ自身じしん右側みぎがわくのが通常つうじょうであるが、べつ記法きほうもちいることもある。作用素さようそ作用素さようそ左側ひだりがわにある函数かんすう作用素さようそ右側みぎがわにある函数かんすうほどこした結果けっかや、両側りょうがわほどこした結果けっかを、以下いかのような矢印やじるししるす:

そのような、双方向そうほうこう矢印やじるし記法きほうは、量子力学りょうしりきがく確率かくりつりゅうたば英語えいごばん記述きじゅつすることによく使つかわれる。

微分びぶん作用素さようそ ∇ は、ナブラ作用素さようそともばれ、重要じゅうようベクトル微分びぶん作用素さようそである。物理ぶつりがくにおいて頻繁ひんぱんに、マックスウェルの方程式ほうていしき微分びぶんがたのようなところにあらわれる。さん次元じげん直交ちょっこう座標ざひょうけいでは ∇ は

定義ていぎされる。∇ は様々さまざま対象たいしょう勾配こうばい回転かいてん発散はっさんおよびラプラシアン計算けいさん使つかわれる。

随伴ずいはん作用素さようそ

[編集へんしゅう]

あたえられた線型せんけい微分びぶん作用素さようそ

たいし、その随伴ずいはん作用素さようそとは

たす作用素さようそ T*う。ここに、記号きごう ,スカラーせきまたは内積ないせきである。つまり、この定義ていぎはスカラーせき定義ていぎのしかたに依存いぞんする。

一変いっぺんすう形式けいしき随伴ずいはん

[編集へんしゅう]

自乗じじょう積分せきぶん函数かんすう全体ぜんたい函数かんすう空間くうかんにおいて、標準ひょうじゅんてきなスカラーせき

定義ていぎされる。ここに g(x) うえよこぼうは、g(x)複素ふくそ共役きょうやくあらわしている。さらに f または gxa および xb においてえているという条件じょうけんくわえれば、T随伴ずいはん

により定義ていぎすることができる。この定義ていぎしき上記じょうきのスカラーせき定義ていぎ依存いぞんしていない。それゆえに、これを随伴ずいはん作用素さようそ定義ていぎとして採用さいようすることもある。この定義ていぎしきしたがって定義ていぎされた T*T形式けいしき随伴ずいはんばれる。

形式けいしき自己じこ随伴ずいはん作用素さようそとは、自身じしんの(形式けいしき随伴ずいはん作用素さようそひとしい作用素さようそう。

変数へんすう随伴ずいはん作用素さようそ

[編集へんしゅう]

ΩおめがRnなか領域りょういきとし、PΩおめが うえ微分びぶん作用素さようそとすると、P随伴ずいはん作用素さようそは、同様どうよう方法ほうほう双対そうついせいにより L2(Ωおめが)定義ていぎされる。すべてのなめらかな L2 函数かんすう f, g について、

つ。なめらかな函数かんすうL2なか稠密ちゅうみつであるので、これは L2稠密ちゅうみつ部分ぶぶん集合しゅうごうじょう随伴ずいはん作用素さようそ定義ていぎする。P*稠密ちゅうみつ定義ていぎされた作用素さようそである。

ストゥルム・リウヴィル作用素さようそは、よくられた形式けいしき自己じこ随伴ずいはん作用素さようそである。この 2かい線型せんけい微分びぶん作用素さようそ Lつぎかたちくことができる。

この性質せいしつは、うえ形式けいしき随伴ずいはん定義ていぎ使つか証明しょうめいすることができる。

この作用素さようそは、ストゥルム・リウヴィル理論りろん中心ちゅうしんてき役割やくわりたし、そこではこの作用素さようそ固有こゆう函数かんすう固有こゆうベクトル対応たいおう)がかんがえられている。

微分びぶん作用素さようそ性質せいしつ

[編集へんしゅう]

微分びぶん演算えんざん D線型せんけい英語えいごばんである。すなわち、

たす。ここに fg函数かんすうであり、a定数ていすうである。

函数かんすう係数けいすうD変数へんすうとする任意にんい多項式たこうしきも、微分びぶん作用素さようそである。また、微分びぶん作用素さようそ合成ごうせい

という規則きそくもとづいてあつかうことができるが、いくつかの注意ちゅうい必要ひつようである。まず、作用素さようそ D2かんする任意にんい函数かんすう係数けいすうは、D1適用てきようするのに必要ひつようなだけのなんばい微分びぶん可能かのうでなければならないことである。そのような(函数かんすう係数けいすうの)作用素さようそたまきるには、すべての係数けいすう任意にんい階数かいすうしるべ函数かんすうもちいることを仮定かていせねばならない。だいに、このたまきかわにはならないことである。作用素さようそ gD一般いっぱんには Dgひとしくない。事実じじつとして、量子力学りょうしりきがく基本きほんてき関係かんけいしき

れいげることができる。D変数へんすうとする定数ていすう係数けいすう多項式たこうしきであるような作用素さようそ全体ぜんたい部分ぶぶんたまきは、対照たいしょうてきかわである。この部分ぶぶんたまきは、べつ方法ほうほう特徴付とくちょうづけることができる。このたまき平行へいこう移動いどう不変ふへん作用素さようそのすべてからなる。

微分びぶん作用素さようそシフト定理ていり英語えいごばん(shift theorem)もしたがう。

変数へんすう場合ばあい

[編集へんしゅう]

おな構成こうせいほうは、へん微分びぶんたいしてもむことができる。ことなる変数へんすうかんする微分びぶん演算えんざんは、かわ作用素さようそさだめる(かい微分びぶん対称たいしょうせいこう参照さんしょう)。

多項式たこうしき係数けいすう微分びぶん作用素さようそたまき

[編集へんしゅう]

一変数多項式係数微分作用素環

[編集へんしゅう]

Rたまきとする。R うえX および D変数へんすうとするかわ多項式たこうしきたまき RX; D両側りょうがわイデアル I[D, X] − 1生成せいせいされるもの;

とするとき、剰余じょうよたまき RX; D/IR うえの一変数多項式係数微分作用素環とぶ。このたまきかわ単純たんじゅんたまきである。その任意にんいもとXaDb (mod I)かたち単項式たんこうしきR-線型せんけい結合けつごうとして一意いちいくことができる。これにより、このたまきうえ多項式たこうしきユークリッド除法じょほう対応たいおうする演算えんざん保証ほしょうされる。

R[X] うえの(標準ひょうじゅん微分びぶんたいする)微分びぶんぐんは、RX; D うえぐん同一どういつすることができる。

変数へんすう多項式たこうしき係数けいすう微分びぶん作用素さようそたまき

[編集へんしゅう]

Rたまきとする。X1, …, Xn および D1, …, Dn変数へんすうとする 2n-変数へんすうかわ多項式たこうしきたまき RX1, …, Xn; D1, …, Dn のイデアル I

(ここに δでるたクロネッカーのデルタ)とするとき、剰余じょうよたまき RX1, …, Xn; D1, …, Dn⟩/In-変数へんすう多項式たこうしき係数けいすう微分びぶん作用素さようそたまきぶ。このたまきかわ単純たんじゅんたまきである。任意にんいもとmod I

かたち単項式たんこうしきR-線型せんけい結合けつごうとして一意いちいくことができる。

座標ざひょう依存いぞんしない記述きじゅつ

[編集へんしゅう]

微分びぶん幾何きかがく代数だいすう幾何きかがくにおいて、ふたつのベクトルたばあいだ微分びぶん作用素さようそ座標ざひょう依存いぞん記述きじゅつをすることが便利べんりなことがある。E および F微分びぶん多様たようたい M うえのベクトルたばとする。切断せつだん空間くうかんじょうR-線型せんけい写像しゃぞう P: Γがんま(E) → Γがんま(F)k-かい線型せんけい微分びぶん作用素さようそであるとは、ジェットたば英語えいごばん Jk(E)とおして分解ぶんかいするときにう。すなわち、ベクトルつか線型せんけい写像しゃぞう

存在そんざいして、

つ。ここに jk: Γがんま(E) → Γがんま(Jk(E)) は、E任意にんい切断せつだんにそのk-つぎのジェット英語えいごばん対応付たいおうづける延長えんちょう (prolongation) 写像しゃぞうである。

これはちょうど、あたえられた E切断せつだん sたいし、てん xM における P(s)x における sk-かい無限むげんしょういにより完全かんぜん決定けっていされることを意味いみする。とくにこのことから、P(s)(x)sにより決定けっていされることがしたがい、またこれは微分びぶん作用素さようそ局所きょくしょてきであるということであらわされる。基本きほんてき結果けっかは、このステートメントのぎゃくである任意にんいの(線型せんけい局所きょくしょ作用素さようそ微分びぶん作用素さようそであるというペートルの定理ていり英語えいごばん(Peetre theorem)である。

かわたまきろんとの関係かんけい

[編集へんしゅう]

おなじことではあるが、線型せんけい微分びぶん作用素さようそじゅん代数だいすうてき記述きじゅつは、つぎのようになる。R-線型せんけい写像しゃぞう P は、任意にんいk + 1 なめらかな函数かんすう たいして

つときに、k-線型せんけい微分びぶん作用素さようそである。ここに、括弧かっこせき は、交換こうかん

として定義ていぎされる。この線型せんけい微分びぶん作用素さようそ特徴とくちょうけは、線型せんけい微分びぶん作用素さようそかわ代数だいすううえぐんあいだ特別とくべつ写像しゃぞうであり、この概念がいねんかわたまきろん一部いちぶなせることをしめしている。

関連かんれん項目こうもく

[編集へんしゅう]

参考さんこう文献ぶんけん

[編集へんしゅう]
  1. ^ Weisstein, Eric W. "Theta Operator". mathworld.wolfram.com (英語えいご).

外部がいぶリンク

[編集へんしゅう]