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遠隔えんかく作用さよう

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

遠隔えんかく作用さよう(えんかくさよう、英語えいご: action at a distance, nonlocal interaction )あるいは遠隔えんかく作用さようろんとは、物体ぶったい空間くうかんへだてて直接ちょくせつちからおよぼす、とする描像・とらえかた仮説かせつ接触せっしょくりょく遠隔えんかく作用さようろんでは、物体ぶったいあいだちからは、物体ぶったいあいだ距離きょりがどれほどはなれていても瞬時しゅんじつたわる、とかんがえる。たいとなる概念がいねん近接きんせつ作用さようろん)。

概要がいよう[編集へんしゅう]

ニュートン力学りきがくなどにおいて、遠隔えんかく作用さようちから説明せつめいすると、近接きんせつ作用さようとはことなり、ちから伝播でんぱ自体じたい速度そくどかんがえないでよいので、物体ぶったい同士どうし相互そうご作用さよう位置いちにしかよらず、速度そくど依存いぞんしないこと意味いみするが、これは万有引力ばんゆういんりょくによる位置いちエネルギーなどのポテンシャルエネルギーが、位置いち関数かんすうあらわせるのとおなじである。このことは、ある慣性かんせいけいと、それにたいしてとう速度そくど移動いどうする基準きじゅんけいで、ともにおな運動うんどう方程式ほうていしきたもつという相対性原理そうたいせいげんりから直接ちょくせつることができる[1]

ニュートン以前いぜん力学りきがくでは、<<ちから>>というのは物体ぶったい接触せっしょくすることではたらく、とする近接きんせつ作用さようによる説明せつめい主流しゅりゅうであった。

たとえば、「重力じゅうりょく一体いったいどのような原理げんりはたらくのか?」といういは、17世紀せいきのヨーロッパの自然しぜん哲学てつがくしゃたち(現代げんだいうところの自然しぜん科学かがくしゃたち)のあたまなやませていたが、ヨーロッパ大陸たいりく活動かつどうしていたルネ・デカルト近接きんせつ作用さようろん一種いっしゅである渦動かどうせつによって重力じゅうりょく説明せつめいしようとした。それにたいしてイギリスのアイザック・ニュートンは、ルネ・デカルトの渦動かどうせつ説明せつめいには無理むりがある、と判断はんだんし、万有引力ばんゆういんりょくというかんがかた宇宙うちゅうのあらゆる質点しつてん物体ぶったい)が、たがいにちからおよぼしあっており、そのちから質点しつてんあいだ距離きょりがどれほどはなれていても瞬時しゅんじつたわる、とするかんがかた理論りろん)を構築こうちくし、それをかれ構築こうちくした力学りきがく体系たいけい(その人々ひとびとが「ニュートン力学りきがく」とぶことになったもの)を解説かいせつした『自然しぜん哲学てつがく数学すうがくてきしょ原理げんり』(1687年刊ねんかん、つまり17世紀せいき後半こうはん)において発表はっぴょうした。このニュートンの「万有引力ばんゆういんりょく」は遠隔えんかく作用さようろんである。

ニュートンが『自然しぜん哲学てつがく数学すうがくてきしょ原理げんり』において解説かいせつした力学りきがく体系たいけい万有引力ばんゆういんりょく理論りろんによって、人々ひとびとはさまざまな物体ぶったい天体てんたい運動うんどう数値すうちもちいてかなり正確せいかく分析ぶんせきしまた予想よそうすることができるようになった。そして当時とうじ学者がくしゃたちによって熱狂ねっきょうてき支持しじされることになった(そして、自然しぜん哲学てつがくなかから近代きんだい自然しぜん科学かがく誕生たんじょうすることになった(科学かがく革命かくめい))。

ただしニュートン自身じしん遠隔えんかく作用さよう満足まんぞくしていたわけではない。ニュートンは、リチャード・ベントレーへの手紙てがみでこうべている。

物質ぶっしつではないほかなにかの仲介ちゅうかいなくして、きていない物質ぶっしつたがいに接触せっしょくすることなく作用さようし、影響えいきょうおよぼすとはかんがえられません……重力じゅうりょく物質ぶっしつ本来ほんらいそなわっている性質せいしつであって、物体ぶったいのものの媒介ばいかいなしに、作用さようちから伝達でんたつされることで、真空しんくうつうじてべつもの遠隔えんかく作用さようするということは、わたしにとって非常ひじょう不条理ふじょうりであり、哲学てつがくてき問題もんだい考察こうさつする能力のうりょくすぐれたひとならだれもそのようなかんがえにおちいることはないとしんじています。重力じゅうりょくは、つね特定とくてい法則ほうそくしたがって作用さようするエージェントによってこされるにちがいありません。しかし、このエージェントが物質ぶっしつであるかかについて、わたし読者どくしゃかんがえるところにまかせました。[ちゅう 1]

—アイザック・ニュートン、ベントレーへの手紙てがみ、1693ねん

ニュートンは重力じゅうりょく原因げんいんとして物質ぶっしつてき存在そんざいや、かみ遍在へんざいかんがえていたとされる[3][4]

18世紀せいきとおして、自然しぜん科学かがくしゃあいだではニュートン力学りきがく圧倒的あっとうてき権威けんいみとめられており、重力じゅうりょく静電気せいでんきりょくなどは遠隔えんかくてんにある物体ぶったい同士どうし作用さようによって直接ちょくせつむすばれているとする遠隔えんかく作用さようろんによって説明せつめいがなされた。ほとんどすべての自然しぜん科学かがくしゃたちが遠隔えんかく作用さようろん前提ぜんていとした理論りろん体系たいけいでものごとを分析ぶんせきしていた、といっても過言かごんではない。

ところが、その19世紀せいきはいって、電磁でんじ誘導ゆうどうなどの現象げんしょうられるようになった。当時とうじ科学かがくしゃたちは、(ある意味いみ当然とうぜんのことながら)ニュートン力学りきがくりゅう遠隔えんかく作用さようろん電磁気でんじき現象げんしょう電磁でんじ誘導ゆうどうなどを説明せつめいしようとしたのだが、そのこころみはいろいろあったものの、いずれもうまくゆかなかった。 マイケル・ファラデーは、遠隔えんかく作用さようろんもちいるわりに、<<>> という概念がいねん理論りろんてき枠組わくぐみ)によって電磁気でんじき現象げんしょう説明せつめいするあん提唱ていしょうした。そしてジェームズ・クラーク・マクスウェルがファラデーのアイデアをれた電磁気でんじき理論りろん構築こうちくした。このマクスウェル理論りろんオリヴァー・ヘヴィサイドベクトル解析かいせき形式けいしきなお理論りろん体系たいけい完成かんせいさせた。この理論りろん体系たいけいは、現代げんだいでは「古典こてんてき電磁気でんじきがく」とばれる。だがマクスウェルの理論りろん体系たいけいニュートン力学りきがく体系たいけいとのあいだには形式けいしきてきに(決定的けっていてきな)へだたり(矛盾むじゅん)がしょうじており、それをどうしたら解決かいけつできるのか?ということについて当時とうじ科学かがくしゃ物理ぶつり学者がくしゃ)らはあたまなやませることになった。アルベルト・アインシュタイン特殊とくしゅ相対性理論そうたいせいりろんつづいて一般いっぱん相対性理論そうたいせいりろん発表はっぴょう(1915ねん~1916ねん発表はっぴょう)し、科学かがくしゃによってひろれられることになったが、アインシュタインの相対性理論そうたいせいりろんでは、電磁気でんじきりょくは(そして重力じゅうりょくも)じょう理論りろんもちいた近接きんせつ作用さよう立場たちば説明せつめいされていた。こうしてニュートンりゅう遠隔えんかく作用さようによる説明せつめいは(だい一線いっせん物理ぶつりがくからは)えてゆくことになった。

ただし、現代げんだいでも学生がくせい高校こうこう段階だんかいでまずまなぶのは遠隔えんかく作用さようろん採用さいようしている古典こてん力学りきがくニュートン力学りきがく)であり、また遠隔えんかく作用さよう採用さいようしたかんがかたやモデルや数式すうしき分析ぶんせき予測よそくをすることはひろおこなわれている。なお、近接きんせつ作用さようろん物体ぶったいあいだ距離きょりによる遅延ちえんがあらわになるような場合ばあい遠隔えんかく作用さようろんあやまった結論けつろんみちびく(あるいは補正ほせいのためのあらたな概念がいねんようする)[5]近接きんせつ作用さようろんにおいては、ちから伝播でんぱ速度そくどたいして距離きょり十分じゅうぶんちいさい場合ばあい遠隔えんかく作用さようろん近接きんせつ作用さようろん結論けつろん近似きんじする(なお距離きょりが「無視むしできるほどちいさい」場合ばあいだけしか遠隔えんかく作用さようろん近接きんせつ作用さようろん結論けつろん一致いっちしない)。

なお、20世紀せいきなかばには量子力学りょうしりきがく勃興ぼっこうし、物理ぶつりがく相対性理論そうたいせいりろん段階だんかいのさらにさきすすみ、変革へんかくしてゆくことになったわけだが、やがて、量子りょうしのエンタングル状態じょうたい局所きょくしょてきに(量子りょうしあいだ距離きょり一気いっきえて)そして作用さようてき相関そうかんする、ということが理解りかいされるようになった(量子りょうしもつれ)。

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ 原文げんぶんは "It is inconceivable that inanimate brute matter should, without the mediation of something else, which is not material, operate upon, and affect other matter without mutual contact; as it must do, if gravitation, in the sense of Epicurus, be essential and inherent in it. And this is the reason why I desired you would not ascribe innate gravity to me. That gravity should be innate, inherent, and essential to matter, so that one body may act upon another at a distance through a vacuum, without the mediation of anything else, by and through which their action and force may be conveyed from one to another, is to me so great an absurdity, that I believe no man who has in philosophical matters a competent faculty of thinking, can ever fall into it. Gravity must be caused by an agent acting constantly according to certain laws; but whether this agent be material or immaterial, I have left to the consideration of my readers."[2]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ エリ・デ・ランダウイェ・エム・リフシッツ『ランダウ=リフシッツ理論りろん物理ぶつりがく教程きょうてい 力学りきがく(ぞうていだい3はん)』(広重ひろしげとおる水戸みといわおわけ) 東京とうきょう図書としょ株式会社かぶしきがいしゃ2008ねんだい36さつ p10
  2. ^ Sfetcu, N. (2019). About God in Newton's correspondence with Richard Bentley and Queries in Opticks.
  3. ^ 山本やまもと義隆よしたか重力じゅうりょく力学りきがくてき世界せかい古典こてんとしての古典こてん力学りきがく現代げんだい数学すうがくしゃ、1981ねんだい6しょうV
  4. ^ Newton’s action at a distance – Different views SetThings. 2019-01-12
  5. ^ ニュートン力学りきがくでは水星すいせい軌道きどう説明せつめいできず、一般いっぱん相対性理論そうたいせいりろん登場とうじょうまで、架空かくう惑星わくせいバルカン探索たんさくされていた。

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]