クトルク

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア（Wikipedia）』

クトルク（モンゴル語ご: Qutluq、定宗さだむね2年ねん（1247年ねん） - 大徳だいとく10年ねん1月がつ6日にち（1306年ねん1月がつ20日はつか））は、13世紀せいき後半こうはんにモンゴル帝国ていこくに仕つかえたジャアト・ジャライル部ぶ出身しゅっしんの将軍しょうぐん。

『元もと史し』には立たて伝つてされていないが、『至いたり正せい集しゅう』巻まき38「札さつ剌爾公こう祠堂しどう記き」に「札さつ剌爾（ジャライル）公おおやけ」としてその事蹟じせきが記しるされる。『新元しんもと史し』には「札さつ剌爾公こう祠堂しどう記き」を元もとにした列伝れつでんが記しるされている。なお、「札さつ剌爾公こう祠堂しどう記き」は諱いみなを「忽ゆるがせ魯忽都と」と表記ひょうきするが、『新元しんもと史し』は「忽ゆるがせ図ず魯」と表記ひょうきする。

概要がいよう[編集へんしゅう]

クトルクは、モンゴル帝国ていこく建国けんこくの功臣こうしんムカリの弟おとうとのタイスンの孫まごに当あたる人物じんぶつである。タイスンの子このトゥメテイは才識さいしきあることで知しられ、四川しせん侵攻しんこうに加くわわって嘉よしみ定府じょうふ攻略こうりゃくに功績こうせきを挙あげた。トゥメテイにはジャルグとクトルクという息子むすこがおり、長男ちょうなんのジャルグは征せい南みなみ万まん戸この地位ちいにあったが南みなみ宋そうとの戦たたかいで戦死せんししてしまった。南みなみ宋そう侵攻しんこうの総そう司令しれいであるバヤン丞相じょうしょうは未いまだ幼おさないジャルグの息子むすこではなく弟おとうとのクトルクがジャルグの地位ちいを継承けいしょうするよう働はたらきかけたため、クトルクは一族いちぞくの軍団ぐんだんを率ひきいて南みなみ宋そう平定へいてい戦せんに従事じゅうじすることになった。至いたり元もと15年ねん（1278年ねん）には昭あきら勇いさむ大将軍だいしょうぐん兼けん揚あげ州しゅう路ろ総そう管かん府ふダルガチとされ、官位かんいは昭あきら毅あつし大将軍だいしょうぐんから昭武あきたけ大将軍だいしょうぐんに進すすんだ[1]。

浙東の楊震龍りゅうが叛乱はんらんを起おこした際さいにはこれを討伐とうばつし、周辺しゅうへんの賊ぞくも風聞ふうぶんを聞きいてクトルクに降ふった。ジャルグの息子むすこのシャウチン（舒温真しん）が成長せいちょうするとクトルクは地位ちいを譲ゆずったが、江南こうなん行こう台だいはクトルクの才幹さいかんを見込みこんで福建ふっけん閩海道どう粛政廉かど訪おとずれ使しに任にんじた[2]。オルジェイトゥ・カアン（成なり宗むねテムル）が即位そくいすると、クトルクは宣せん慰使都と元帥げんすい・鎮国上じょう将軍しょうぐんとされ、葛かずら蛮宣撫せんぶ司しに招まねかれた。そこでクトルクは錫すず布ぬの・喇台・乞即・落東などを平定へいていし、諸しょ部族ぶぞくの酋長しゅうちょうの羅ら陳ひね・羅ら何なに・羅ら廉れんらも50戸こを率ひきいて降ふった。クトルクは酋長しゅうちょうらを率ひきいてオルジェイトゥ・カアンに入いれ観かんしたが、オルジェイトゥ・カアンは大おおいに喜よろこんで金きむ織衣おりいを賜たまわり、酋長しゅうちょうらには官職かんしょくを与あたえたという[3]。

大徳だいとく2年ねん（1298年ねん）、広西ひろせ両りょう江道えんどうに移うつり、叛乱はんらんを起おこした易えき奚晩・高こう仙道せんどうらを討うった。また翌年よくねんには羅ら光ひかり殿どの・羅ら伯はく牛うし・羅ら仲なか顕あきららが3万まん4千せん戸こを率ひきいて降ふった。大徳だいとく7年ねん（1303年ねん）、輔国上じょう将軍しょうぐんとして浙東道とうどうに移うつったが、翌年よくねんには母ははのため所領しょりょう（投下とうか領りょう）の東ひがし阿おもね県けんに戻もどった。その後ご、大徳だいとく10年ねん（1306年ねん）正月しょうがつ6日にちに病やまいにより60歳さいで亡なくなった[4]。

クトルクには4人にんの息子むすこがおり、寧やすし国こく路ろ総そう管かんとなった仏ふつ保ほ、早世そうせいしたアルタン・ブカ、「札さつ剌爾公こう祠堂しどう記き」を立たてた安やす僧そう[5]、兵部ひょうぶ尚書しょうしょ秩嘉議ぎ大夫たいふとなったボロトらがいた[6]。

ジャアト・ジャライル部ぶタイスン家か[編集へんしゅう]

  • グウン・ゴア（Gü’ün U’a ＞孔あな温ゆたか窟くつ哇/kǒngwēn kūwa）
    • ムカリ国王こくおう（Muqali guy-ong ＞木き華はな黎はじむ国王こくおう/mùhuálí guówáng,موقلىكويانك/mūqalī kūyānk）
    • 郡ぐん王おうタイスン（Tayisun ＞帯おび孫まご/dàisūn,طایسون/ṭāīsūn）
      • モンケ（Möngke ＞忙せわし哥/mánggē）
        • タタルダイ（Tatardai ＞塔とう塔とう児じ台だい/tǎtǎértái）
      • トゥメテイ（Tümetei ＞禿かぶろ満まん䚟/tūmǎndǎi）
        • ジャルグ（J̌arγがんまu ＞札さつ剌忽/zhálàhū）
        • クトルク（Qutluq ＞忽ゆるがせ図ず魯/hūtúlǔ）

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ 『至いたり正せい集しゅう』巻まき38札さつ剌爾公こう祠堂しどう記き,「按桓粛公、諱いみな忽ゆるがせ魯忽都と、伯はく祖そ木き華はな里さと、開国かいこく有ゆう大功たいこう、略りゃく地ち中原なかはら、首くび降くだ東平とうへい、封ふう太たい師し国王こくおう。祖そ帯たい孫まご、封ふう東ひがし阿おもね郡ぐん王おう考こう。禿かぶろ満まん䚟嗣封ふう。公おおやけ夙著才識さいしき。世よ祖そ命いのち攻おさむ蜀しょく、嘉よしみ定てい諸しょ城しろ降くだ之これ、賜金しきん符ふ。再さい統すべ蒙こうむ古こ軍ぐん五ご枝えだ、万まん人にん。至いたり元もと五ご年ねん、召帰。擢監本属ほんぞく兄けい札さつ剌忽征せい南みなみ万まん戸こ、戦歿せんぼつ。丞相じょうしょう伯はく顔がお、奏そう公こう襲かさね其職。征せい未み下した州しゅう郡ぐん、鎮維揚あげ。十じゅう五ご年ねん、以昭勇いさむ大将軍だいしょうぐん兼けん揚あげ州しゅう路ろ総そう管かん府ふ達たち魯花赤あか、官制かんせい分ぶん遂とげ復旧ふっきゅう職しょく進しん昭あきら毅あつし大将軍だいしょうぐん、又また進すすむ昭武あきたけ」
  2. ^ 『至いたり正せい集しゅう』巻まき38札さつ剌爾公こう祠堂しどう記き,「浙東楊震龍りゅう寇擾、公おおやけ討之。賊ぞく聞風降くだ、監かん真ま定じょう・河南かなん上うえ万まん戸こ。兄子せこ舒温真しん長ちょう、慨然がいぜん帰き之の。行くだり台だい薦こも其行、除のぞき福建ふっけん閩海道どう粛政廉かど訪おとずれ使し。不為ふため苛刻按部粛然しゅくぜん八番部雑民夷時時弄兵」
  3. ^ 『至いたり正せい集しゅう』巻まき38札さつ剌爾公こう祠堂しどう記き,「元げん貞さだ初はつ、選せん公こう為ため宣せん慰使都と元帥げんすい、鎮国上じょう将軍しょうぐん。建議けんぎ立りつ葛かずら蛮宣撫せんぶ司し、招来しょうらい之の。錫すず布ぬの・喇台・乞即・落東等とう番ばん、恃険怙終躬、平之ひらの。部落ぶらく帰き者しゃ三さん千せん戸こ。設しつらえ教条きょうじょう、明あきら戒賞、俄にわか龍平りゅうへい連れん思おもえ・婁浴・暮くれ梅うめ・求もとめ那な諸しょ夷えびす、皆みな願ねがい受約束やくそく。明年みょうねん、蛮酋羅ら陳ひね・羅ら何なに・羅ら廉れん部ぶ、其民五ご十じゅう戸こ降くだ、公おおやけ領りょう其酋入いれ観かん。成なり宗むね大喜だいぎ、賜金しきん織衣おりい、且官其酋」
  4. ^ 『至いたり正せい集しゅう』巻まき38札さつ剌爾公こう祠堂しどう記き,「大徳だいとく二に年ねん、移うつり広西ひろせ両りょう江道えんどう、猺獠柔やわら梗不常つね靖やすし以一之の、戮稔悪者わるもの易えき奚晩・高こう仙道せんどう、遂とげ深入ふかいり左右さゆう江こう渓けい峒経画が。明年みょうねん、地ち州しゅう守もり羅ら光ひかり殿どの・羅ら伯はく牛うし・天てん州しゅう守もり羅ら仲なか顕あらわ各かく率りつ所しょ部ぶ降くだ者しゃ、三さん万まん四よん千せん戸こ、司つかさ憲けん薦こも最さい。七なな年ねん、以輔国上くにがみ将軍しょうぐん、移うつり浙東道とうどう、為政いせい益えき務つとむ寛ひろし簡、有ゆう古長ふるなが人じん之の風ふう焉。八はち年ねん、丁ちょう太ふとし夫人ふじん憂う帰き東ひがし阿おもね。十じゅう年ねん正月しょうがつ六ろく日にち、以疾終おわり、年とし六ろく十じゅう、葬そう柯亭之の原はら」
  5. ^ 『至いたり正せい集しゅう』巻まき38札さつ剌爾公こう祠堂しどう記き,「延のべ祐ゆう丁ちょう巳み、制せい贈おく輔国上じょう将軍しょうぐん・浙東道とうどう宣せん慰使・都と元帥げんすい札さつ剌爾公こう・奉たてまつ国上くにがみ将軍しょうぐん・江こう浙等処しょ行ゆき中書ちゅうしょ省しょう参さん知ち政事せいじ・護まもる軍ぐん東平とうへい郡ぐん公おおやけ、諡おくりな桓粛。子安こやす僧そう、立たて祠ほこら東ひがし阿おもね黄き山やま走はし書しょ諗有壬みずのえ曰、先さき公葬こうそう有ゆう兆ちょう祭さい有家ありえ別業べつぎょう有ゆう祠ほこら又また用よう郷きょう人じん意い而永吾われ孝こう思おもえ焉子熟じゅく我家わがや記き其勿辞じ」
  6. ^ 『至いたり正せい集しゅう』巻まき38札さつ剌爾公こう祠堂しどう記き,「子こ四よん人にん、長ちょう仏ふつ保ほ、東平とうへい郡ぐん太夫たゆう人じん邢氏出で、寧やすし国こく路ろ総そう管かん、卒そつ。次つぎ按壇不ふ花はな、早世そうせい。次つぎ安やす僧そう、寧やすし国母こくぼ弟おとうと、歴れき八番淮東福建三道宣慰使秩通奉大夫。次つぎ孛羅、東平とうへい郡ぐん太夫たゆう人じん黄き氏し出で、今こん兵部ひょうぶ尚書しょうしょ秩嘉議ぎ大夫たいふ」

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

「https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=クトルク&oldid=99828796」から取得しゅとく