クロロエタン

クロロエタン
IUPAC名めい クロロエタン
別称べっしょう 塩化えんかエチル モノクロロエタン
識別しきべつ情報じょうほう
CAS登録とうろく番号ばんごう	75-00-3
KEGG	D04088
SMILES CCCl
特性とくせい
化学かがく式しき	C2H5Cl
モル質量しつりょう	64.51
示しめせ性せい式しき	CH3CH2Cl
外観がいかん	無色むしょく気体きたい
密度みつど	0.92, 液体えきたい
融点ゆうてん	−139
沸点ふってん	12.3
特記とっきなき場合ばあい、データは常温じょうおん (25 °C)・常つね圧あつ (100 kPa) におけるものである。

クロロエタン (chloroethane) は、有機ゆうき化合かごう物ぶつの一種いっしゅで、エタンの持もつ水素すいそがひとつ塩素えんそに置おき換かわった構造こうぞうを持もつハロゲン化かアルキル。塩化えんかエチル、またはモノクロロエタンとも呼よばれる。かつて、ガソリンに加くわえられていたテトラエチル鉛なまりの原料げんりょうとして広ひろく用もちいられていた。甘あまい香かおりを持もつ無色むしょくの気体きたい。毒物どくぶつ及および劇げき物ぶつ取締とりしまり法ほうにより劇げき物ぶつに指定していされている。法律ほうりつ上じょうの名称めいしょうは「クロルエチル」。

製造せいぞう

クロロエタンは、エチレンと塩化えんか水素すいそを、塩化えんかアルミニウムの触媒しょくばい下かに 130–250 ℃ の温度おんど範囲はんいで反応はんのうさせて作つくられていた。反応はんのう式しきを示しめす。

${\rm {C_{2}H_{4}+HCl\longrightarrow CH_{3}CH_{2}Cl}}$

エタノールと塩化えんか水素すいそから、あるいはエタンと塩素えんそからもクロロエタンを得えることができるが、経済けいざい性せいに劣おとる。

ポリ塩化えんかビニル製造せいぞうの副ふく生物せいぶつとして、クロロエタンが産さんする。クロロエタンの需要じゅようの規模きぼが小ちいさくなった現在げんざいでは、この副ふく生成せいせいがクロロエタンの主おもな製造せいぞう法ほうとなっている。

用途ようと

1922年ねんに始はじまりほぼ20世紀せいき終おわりまでの間あいだ、クロロエタンの主しゅ用途ようとはテトラエチル鉛なまり (Pb(C₂H₅)₄) の原料げんりょうとしてのものであった。テトラエチル鉛なまりはかつてアンチノック剤ざいとしてガソリンに加くわえられていたが、大気たいき汚染おせんや毒性どくせいが知しられるにしたがい用もちいられなくなっていった。そのため、クロロエタンの需要じゅようは極端きょくたんに落おち込こんだ。

他たのハロゲン化かアルキルのように、クロロエタンは冷媒れいばい、エアロゾルの噴霧ふんむ剤ざい、麻酔ますい薬やく（寒冷かんれい麻酔ますい、Kälteanästhesie）、発泡はっぽうスチロールの発泡はっぽう剤ざいとして用もちいられたこともあるが、いずれの用途ようとにも広ひろまってはいない。

クロロエタンに残のこされた工業こうぎょう的てきに重要じゅうような用途ようとは、セルロースからエチルセルロース（エトセル）を合成ごうせいするための原料げんりょうとしてのものである。エチルセルロースは塗料とりょうの増ぞう粘ねば剤ざいや結ゆい着ぎ剤ざい（バインダー）、化粧けしょう品ひんなどの成分せいぶんとされる。