(Translated by https://www.hiragana.jp/)
密度 - Wikipedia コンテンツにスキップ

密度みつど

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
密度みつど
density
りょう記号きごう ρろー
次元じげん L−3 M
SI単位たんい キログラムごと立方りっぽうメートル (kg/m3)
CGS単位たんい グラムまい立方りっぽうセンチメートル (g/cm3)
MTS単位たんい トンごと立方りっぽうメートル (t/m3)
FPS単位たんい ポンドごと立方りっぽうフィート (lb/ft3)
プランク単位たんい プランク密度みつど (ρろーP)
テンプレートを表示ひょうじ

密度みつど(みつど)は、一般いっぱんには、対象たいしょうとするなにかのこんいの程度ていどしめかたりである。ただし、科学かがくにおいて、たん密度みつどといえば、単位たんい体積たいせきあたりの質量しつりょう(質量しつりょう空間くうかん微分びぶん[ちゅう 1])をすことがおおい。

広義こうぎには、あるりょう物理ぶつりりょうなど)が、空間くうかん(3次元じげん)あるいはめんうえ(2次元じげん)・せんうえ(1次元じげん)に分布ぶんぷしていたとして、これらの空間くうかんめんせん微小びしょう部分ぶぶんじょう存在そんざいする当該とうがいりょうと、それぞれ対応たいおうする体積たいせき面積めんせきながたいするのことを[ちゅう 2](それぞれ、体積たいせき密度みつどめん密度みつどせん密度みつどぶ)。微小びしょう部分ぶぶん通常つうじょう単位たんいたい単位たんい面積めんせき単位たんいながたりに相当そうとうする場合ばあいおお[ちゅう 3]勿論もちろん、4次元じげん以上いじょう仮想かそうてき場合ばあいでもこの関係かんけい成立せいりつし、密度みつど定義ていぎすることができる。

その密度みつどとしては、状態じょうたい密度みつど電荷でんか密度みつど磁束じそく密度みつど電流でんりゅう密度みつどかず密度みつどなど様々さまざまりょう物理ぶつりりょう)に対応たいおうする密度みつど存在そんざいする(あるいは定義ていぎできる)。物理ぶつりりょう以外いがいでも人口じんこう密度みつど個体こたいぐん密度みつどかくりつ密度みつど、などの様々さまざまなところでもちいられている。密度みつど効果こうかというかたりもある。

密度みつど比重ひじゅうちが

[編集へんしゅう]

みず密度みつど(g/cm3あらわした数値すうち)とその比重ひじゅうはほとんどおなじであることもあって、混同こんどうされやすいが、根本こんぽんてきことなる概念がいねんである。

なお、密度みつど比重ひじゅう計量けいりょうほうにおける物象ぶっしょう状態じょうたいりょうぜん89りょう)である。ただし、密度みつど典型てんけい72りょうふくまれており、取引とりひき証明しょうめいにおける規制きせい対象たいしょうになるが、比重ひじゅうは「確立かくりつされた計量けいりょう単位たんいのない17の物象ぶっしょう状態じょうたいりょう」のひとつであり、規制きせい対象たいしょうになっていない。

ひょう 密度みつど比重ひじゅうちが
項目こうもく 密度みつど 比重ひじゅう
定義ていぎ  質量しつりょう/体積たいせき[1]  物質ぶっしつ質量しつりょう/同一どういつ体積たいせきゆうするみず質量しつりょう[2]
次元じげん  ゆう次元じげん  次元じげん
計量けいりょう単位たんい  kg/m3、g/m3、g/L[ちゅう 4]  なし
(れい)じゅんみず  0.99997495 g/cm3[3]  1.0000(定義ていぎにより)

単位たんい体積たいせきたりの質量しつりょう

[編集へんしゅう]

密度みつど単位たんい

[編集へんしゅう]

つぎしきかたち定義ていぎされる。

(ρろー:密度みつど m:質量しつりょう V:体積たいせき)

単位たんい体積たいせきたりの質量しつりょうとしての密度みつど国際こくさい単位たんいけい (SI) では キログラムごと立方りっぽうメートル(kg/m3)を一貫いっかんせい のある組立くみたて単位たんいとして使用しようする。日本にっぽん計量けいりょうほうでは、kg/m3、g/m3 、g/L の3つがさだめられている[4]以下いかでは、( )ないは、計量けいりょうほう列記れっきされていない単位たんいによるものである。

1 kg/m3 = 1000 g/m3 = 1 g/L (= 0.001 g/cm3)

たとえば、みず密度みつど標準ひょうじゅん気圧きあつ温度おんど3.984 °C)は、

999.97495 kg/m3 = 999974.95 g/m3 = 999.97495 g/L (= 0.99997495 g/cm3)

g/cm3という単位たんい国際こくさい単位たんいけい (SI)では一貫いっかんせいのない単位たんいであるが、この単位たんいでの密度みつどは、みずたいする比重ひじゅうとほとんどおなじであって直感ちょっかんてきかりやすいためによく使用しようされる。ただし、比重ひじゅう次元じげんりょうであることに注意ちゅうい[ちゅう 5]

1 g/cm3 = 1 kg/L = 1 t/m3 = 1000 kg/m3

密度みつど種類しゅるい

[編集へんしゅう]
  • 密度みつど物質ぶっしつ真実しんじつ状態じょうたい密度みつど物体ぶったい表面ひょうめん内部ないぶ気孔きこう部分ぶぶんのぞいた物体ぶったいそのものの体積たいせきで、物体ぶったい質量しつりょうった
  • かけ密度みつど物体ぶったい表面ひょうめん気孔きこう体積たいせきのぞくが、内部ないぶ気孔きこう体積たいせきふくめてもとめた密度みつど
  • かさみ密度みつどこなたい容器ようきないめ、容器ようきない隙間すきま体積たいせきなして測定そくていした密度みつど(この場合ばあいかけ密度みつどともいう)。
  • タップ密度みつどこなたい容器ようきめるさい振動しんどうさせてより充填じゅうてんさせて測定そくていしたかさ密度みつど

一般いっぱんに 密度みつど ≧ かけ密度みつど ≧ かさ密度みつど

いろいろな物質ぶっしつ密度みつど

[編集へんしゅう]

以下いかでは、単位たんいとしての一貫いっかんせいはないが、よく使つかわれる[ちゅう 6] g/cm3 = 103 kg/m3 によるものを列記れっきする[5]

密度みつど測定そくてい方法ほうほう

[編集へんしゅう]
アルキメデスほう
アルキメデスの原理げんり利用りようする方法ほうほう空気くうきちゅう水中すいちゅうでの質量しつりょうをそれぞれ測定そくていし、両者りょうしゃから体積たいせきもとめて密度みつど算出さんしゅつする。
比重ひじゅうびんほう
比重ひじゅうびんおもさ、試料しりょうをいれた比重ひじゅうびんの質量しつりょう、さらに置換ちかんえきくわえてびんをたしたとき質量しつりょう比重ひじゅうびん置換ちかんえきたしたとき質量しつりょう測定そくていし、体積たいせき質量しつりょう算出さんしゅつする。

科学かがくじょう密度みつど概念がいねん歴史れきし

[編集へんしゅう]

古代こだい

[編集へんしゅう]

我々われわれはいろいろなものをげただけで、大抵たいてい直接ちょくせつ密度みつどかんることができる[7]したがって、密度みつど概念がいねんはそれが「質量しつりょう÷体積たいせき」で定義ていぎされるずっとまえから存在そんざいしていた[8]まえ純金じゅんきんぎんきんメッキされたものされても、だれでもってくらべればどちらが純金じゅんきんかはすぐかる。それはその密度みつどが2ばいちがうからである[8][ちゅう 7]しかし、もっと微妙びみょうになると判定はんていむずかしくなる。アルキメデスなぞきしたという「ヒエロンおう王冠おうかんなぞ問題もんだい[ちゅう 8]では、アルキメデスは「おもさの減少げんしょうぶんは、物体ぶったいどう体積たいせきみずおもさにひとしい」という原理げんり発見はっけんし、おなおもさの物体ぶったい浮力ふりょく相違そういは「密度みつど比重ひじゅう概念がいねん」を数量すうりょうてき認識にんしきさせることとなった[10]

中世ちゅうせいヨーロッパのおもさと比重ひじゅう区別くべつ

[編集へんしゅう]

12世紀せいきから13世紀せいきにかけてアラビアからラテン語らてんご翻訳ほんやくされた「アルキメデスのしょ」の稿本こうほん[ちゅう 9]によれば、「2つのおもさの相互そうご関係かんけいじゅう仕方しかたかんがえられる。そのひとつの方法ほうほう種類しゅるいによるもので、もうひとつは総額そうがくによるものである。種類しゅるいによるものはたとえばかねおもさをぎんおもさとくらべたいときにもちいられるもので、これはかねぎんおおきさを基礎きそとしてなされなければならない[12]」・「総額そうがくによってというのは、われわれが目方めかたろうとしてそれらのかたまりのおおきさがどうであろうとおかまいなしに、かねのあるかたまりはぎんのあるかたまりよりもおもいと判定はんていするときの、2つの物体ぶったい相互そうごおもさの関係かんけいである[12]」とべている。さらに「2つのおおきさがひとしい物体ぶったいにおいて、その目方めかたがよりおおくのカルクリ[ちゅう 10]かずひとしいものは、その種類しゅるいにおいてよりおもい」・「おな種類しゅるい物体ぶったいでは、おおきさと目方めかた比例ひれいしている」・「種類しゅるいによるおもさのひとしい物体ぶったいといわれるのは、そのひとしいおおきさの目方めかたひとしいものである[13]」としている。この稿こうもとのアルキメデスのほんなかには比重ひじゅう、または密度みつど概念がいねんてこないが、この稿本こうほんには質量しつりょう比重ひじゅう明確めいかく区別くべつされた記述きじゅつくわえられている[11]

ガリレオとニュートンの原子げんしろんてき密度みつど概念がいねん

[編集へんしゅう]

1590ねんごろガリレオ・ガリレイの『運動うんどうについて』では、「普通ふつうにいう物体ぶったいおもさ」と「物体ぶったい本来ほんらい固有こゆうおもさ」を区別くべつし、「普通ふつうおもさ」は浮力ふりょく抗力こうりょくなどの外力がいりょく変化へんかするが、「本来ほんらいおもさ」は変化へんかしないものとかんがえた[14]。ガリレオは「物体ぶったいかけのおもさが変化へんかしているときでも、物体ぶったいおおきさと密度みつどわらない」ことを根拠こんきょに、物体ぶったい本来ほんらいおもさは「密度みつど×体積たいせき」でまるりょうであるとした[14]。ガリレオは古代こだい原子げんしろんしゃ[ちゅう 11]かんがえをいて「この(おなじ)物質ぶっしつからつくられている物体ぶったいなかでも、おな体積たいせきちゅうにこの物質ぶっしつ粒子りゅうしをよりおおふくんでいるものが、よりみつであるとよばれたのである」とのべている。ガリレオは古代こだい原子げんしろんしゃ同様どうように、密度みつどを「単位たんい体積たいせきたりにふくまれる原子げんしかず」によってあらわされるものとかんがえた[17]アイザック・ニュートンはガリレオの原子げんしろんてき密度みつど概念がいねんおなじことを、その著書ちょしょ自然しぜん哲学てつがく数学すうがくてきしょ原理げんりPrincipia(1687ねん)において採用さいようし、質量しつりょうを「密度みつど×体積たいせき」によって定義ていぎしている[18]。ガリレオもニュートンもとも原子げんしろんてき思考しこううえでは、質量しつりょうおもさよりも密度みつどほう根源こんげんてきりょうかんがえていた[7]

中国ちゅうごく密度みつどひょう

[編集へんしゅう]

東洋とうよう文献ぶんけん密度みつどかれているもっとふるいものは西暦せいれき紀元きげん1世紀せいきの『漢書かんしょ』の「しょく貨志」の冒頭ぼうとう部分ぶぶんてくる「黄金おうごん方寸ほうすん而重いちきん」である[19]。これは「黄金おうごんいちすん立方りっぽうおもさがいちきんだ」ということである。これを今日きょう換算かんさんすると18.56 g/cm3であるので、誤差ごさは4 %らずのよいである[20]。これはおそらくかんだいには「黄金おうごん方寸ほうすんいちきん」がおもさの単位たんい基礎きそとしてもちいられていて、かんだいおもさの単位たんいながさの単位たんいかねおもさをもとにしてめられていたとかんがえられる[20]

3世紀せいきの『孫子まごこさんけい』の密度みつどひょうでも「黄金おうごん方寸ほうすん而重いちきん」とおなもちいられて[21]いてどうなまりてつ密度みつど今日きょうちかいが、白金しろがねぎん?)はぎんとすればが1.5ばいおおきく、単位たんいちがいなのか誤記ごきなのか、あるいは白金はっきんぎんではないなにかをさしていたかはわからない。[22]

江戸えど時代じだい和算わさん密度みつど

[編集へんしゅう]

江戸えど時代じだいには密度みつどのことを「軽重けいちょう」とんでいた[23]吉田よしだ光由みつよしの『ちりこう』のはつ版本はんぽん寛永かんえいはちねん:1627ねん)は、1595ねん中国ちゅうごくさんしょさん法統ほうとうむね』の密度みつどひょううつしたっている。しかし中国ちゅうごくしょ日本にっぽんとも尺貫法しゃっかんほう使つかっていたが、単位たんいおおきさはちがっていた。それなのに数値すうちをそのままうつしたので、そのただしいものではなかった[24]。たとえばぎん密度みつどただしいの1.8ばいおおきくなってしまった[25]吉田よしだ光由みつよし密度みつどそのものの物理ぶつりてき関心かんしんかったことをしめしている。このようなあいだちがいのうつしは江戸えど時代じだいほか和算わさんしょにもられる[26]

1640ねん今村いまむらともしょういんさん』には『ちりこう』の密度みつどひょう訂正ていせいした数値すうちせられている。今村いまむらともしょうは『ちりこう』の密度みつどひょうを5/6ばいして、単位たんい換算かんさんしようとした。この結果けっかきん密度みつどただしいちかづいたが、てつなまりどう密度みつどは『ちりこう』よりもわるくなってしまった。1660年代ねんだいには和算わさんしょ密度みつどひょういちじるしく多様たようした。おなじゅん物質ぶっしつ密度みつどことなれば、当然とうぜんそのどれが一番いちばんしんちかいかが問題もんだいになってくる[27]。1684ねんには『増補ぞうほ算法さんぽう闕擬しょう』が同一どういつ物質ぶっしつ密度みつどについて複数ふくすう数値すうちをあげて、読者どくしゃ疑問ぎもん喚起かんきした[28]貞享ていきょうよんねん(1687ねん)には『あらためさん綱目こうもく』がかね密度みつど測定そくていほうげた[28]。そのなかの「金重かねしげあるとい」でこたえとして「きむ小判こばんいち立方りっぽうすんあたりのおもさを測定そくていするには、まず目盛めもりがほどこされている器物きぶつきむ小判こばんなんじゅうりょうおおれ、そのうえからみずをいっぱいにれる。そしてつぎみずがこぼれないようにかね小判こばんし、水位すいいがった部分ぶぶん体積たいせきなに立方りっぽうすんかを測定そくていする。そして、この体積たいせきしたきむ小判こばんそう質量しつりょうると小判こばん使つかわれているかね純度じゅんどかる。そのほか、純度じゅんどはかりたいものはこれにならえ」とかれている[29]。しかしその測定そくてい結果けっかかれていない。著者ちょしゃ和算わさん実際じっさいには実験じっけんしなかったのである[30]。このみずかね体積たいせきはか方法ほうほうは『あらためさん』でもげられていた[31]

儒学じゅがく密度みつどへの関心かんしん低下ていか

[編集へんしゅう]

このように「かね本当ほんとう密度みつどはどれほどか」という問題もんだいが1680年代ねんだい和算わさん明確めいかくげられたかにえたが、この問題もんだいはこれ以降いこう和算わさんには本格ほんかくてき追求ついきゅうされることがかった[32]かねぎんみず密度みつどはこれ以降いこうただしいちかづくどころか、かえって多様たようする傾向けいこうさえられた[31]。『ちりこう』の密度みつどひょう寛永かんえいはちねん(1631ねんばんのまま、江戸えど時代じだい全期ぜんきつうじてひゃくしゅ以上いじょう出版しゅっぱんされ、訂正ていせいされることがかった[31]和算わさんしょ物理ぶつりてきな・実験じっけんてき測定そくてい事項じこうかんしては1660年代ねんだい以後いご停滞ていたい退歩たいほした[33]。1660年代ねんだい和算わさんしょには「じゅん物質ぶっしつ密度みつど一定いってい」というかんがえまでぐらついていたし、1684ねん和算わさんしょ増補ぞうほ算法さんぽう闕擬しょう』では物理ぶつりてき測定そくていたいする関心かんしん低下ていかするとともに、書物しょもつによって密度みつどおおきくことなることにたいする疑問ぎもんこらなくなってしまった[33]。この傾向けいこうは18世紀せいき以降いこうには顕著けんちょとなった。この原因げんいんとしては徳川とくがわ吉宗よしむねとおる改革かいかく(1720ねんごろ)で、儒学じゅがくおもんじられ、それ以降いこう江戸えど常識じょうしきとなったことの影響えいきょうおおきいという[34]儒学じゅがく物質ぶっしつかんでは「密度みつど物質ぶっしつ固有こゆう定数ていすうである」とはみとめられていなかったので、密度みつど測定そくていへの関心かんしんがもたれなくなった[34]

金座きんざにおけるかね密度みつど測定そくてい

[編集へんしゅう]

和算わさん密度みつど実用じつようせいからはなれたとしても、江戸えど時代じだいにはかね小判こばんぎんばんひろ流通りゅうつうしていたので、その密度みつど問題もんだいになった[35]幕府ばくふ当事とうじしゃかね密度みつど和算わさん数字すうじわないことをにとめて、金座きんざめいじてかね密度みつど実測じっそくさせとおるじゅうよんねん(1729ねん)に130もんめ/立方りっぽうすん結果けっかた。これは『ちりこう』や『孫子まごこさんけい』のより大幅おおはばちいさかった。しかし、今日きょうかね密度みつど19.3 g/cm3換算かんさんすると143.2もんめ/立方りっぽうすんであるので、金座きんざちいさすぎる。これは測定そくてい使つかったかね純度じゅんどわるかったというよりは、「かね1立法りっぽうすんおもさ」と幕府ばくふわれたので、実際じっさいかねを1すん立方体りっぽうたいつくったため、体積たいせき精度せいどわるかったのだとかんがえられる[36]

西洋せいよう密度みつど導入どうにゅう

[編集へんしゅう]

このような測定そくていおこなわれたきっかけは将軍しょうぐん徳川とくがわ吉宗よしむね蘭書らんしょ解禁かいきん政策せいさく[ちゅう 12]。で西洋せいようれきさんしょの『れきさん全書ぜんしょ』(1726ねん舶来はくらい)の和訳わやくがなされ、西洋せいよう密度みつどはじめて日本にっぽん紹介しょうかいされたためとかんがえられている[38]。このほんにはかね密度みつど19、ぎん密度みつど10.3とあたえられていた。そこでヨーロッパの日本にっぽんとのちがいをただすことが金座きんざでの密度みつど測定そくてい動機どうきになった[38]

宅間たくまりゅう和算わさん密度みつど

[編集へんしゅう]

関西かんさい地方ちほう和算わさんちいさな会派かいはであった「宅間たくまりゅう [ちゅう 13]」の和算わさんしょ『(増補ぞうほさんがく稽古けいこ大全たいぜん(さんがくけいこたいぜん)』(松岡まつおかのういち:1806ねん)は、当時とうじとしてはめずらしく物理ぶつり実用じつようてき事柄ことがらおおくの関心かんしんられた分厚ぶあつ啓蒙けいもうしょである[23]。そのしょでは密度みつどが「すんおも」・「せきしげる」という用語ようごあらわされ、かね144もんめみず7ぬき400などの記載きさいされている。現代げんだいではかね19.3 g/cm3=143.2もんめ/すん3みず1 g/cm3=7かん420もく/しゃく3 となるので、かなり正確せいかくである[23][ちゅう 14]。「すんじゅう」・「せきしげる」という言葉ことば江戸えど時代じだいにおいて密度みつどあらわ数少かずすくない述語じゅつごらしい用語ようごとして注目ちゅうもくあたいするものであるという[39]

商人しょうにんもちいた密度みつど 

[編集へんしゅう]

ぜに貨学の古典こてんてき大著たいちょさん貨図彙』(文化ぶんかじゅうねん:1815ねん)には、和算わさんしょ金座きんざ測定そくていよりも現在げんざいちか数値すうちあたえられている[40]ぎん密度みつどかね密度みつどよりもずっとちいさいことは金貨きんか銀貨ぎんかあつかっていた商人しょうにんたちには十分じゅうぶんよくられていた[41]。それにもかかわらず和算わさんたちは自分じぶんたちのもちいている密度みつどあやしまなかったのである[41]江戸えど時代じだいにはアルキメデスの原理げんりられていなかったので、浮力ふりょくもちいてサンプルの比重ひじゅうはか方法ほうほうられることがかった[42]。そこで西洋せいよう数値すうちおと結果けっかしかられなかった。むしろ江戸えど時代じだい密度みつど測定そくているにしたがって改善かいぜんされるということがかった[43]江戸えど時代じだい前半ぜんはん人口じんこうえて、土木どぼく工事こうじ経済けいざい活動かつどう活発かっぱつだった。その時代じだい和算わさん金属きんぞくみず密度みつどふか関心かんしんち、改善かいぜんしようとした[44]。しかし江戸えど時代じだい後半こうはん人口じんこう増加ぞうかまり、経済けいざい停滞ていたいすると[ちゅう 15]、そのような物理ぶつりてき実用じつようてき問題もんだいたいする意慾いよく減退げんたいし、すでに書物しょもつかれているものだけにたよることになり、ふるい『ちりこう』の密度みつどひょうがそのままうつされるだけになった[46]

はじめて「浮力ふりょく原理げんり」と密度みつど言及げんきゅうしたほん

[編集へんしゅう]

日本にっぽん書物しょもつはじめて浮力ふりょく原理げんり言及げんきゅうしたのは文政ぶんせいじゅうねん(1827ねん)の青地あおち林宗りんそううみかん瀾』である。このしょでは「しょうすい[ちゅう 16]こう浮力ふりょく原理げんり説明せつめいされ、アルキメデスの発見はっけんであるとあきらかにしている[47]。これをいだほんでは密度みつどのことを「もとしげる」という術語じゅつごあらわすようになった。「密度みつど」という訳語やくご明治めいじになってからの「物理ぶつりがく訳語やくごかい」(明治めいじ16–18ねん:1883–1885ねん)ではじめて採用さいようされた。比重ひじゅうかたり初出しょしゅつは『理化りか新説しんせつ』(明治めいじねん:1869ねん)である[48]

注釈ちゅうしゃく

[編集へんしゅう]
  1. ^ 直観ちょっかんてきには、かくてんにおける物質ぶっしつりょう(質量しつりょう)という意味いみ
  2. ^ ことなる物理ぶつりりょうどうしの演算えんざんられたあたらしいりょうであるため、組立くみたて単位たんいあらわされるものであり、正確せいかくではない。
  3. ^ より正確せいかくには、この微小びしょう部分ぶぶん微分びぶんかんがえる微分びぶんしょうおなじであるが、物理ぶつりりょうことなる場合ばあい純粋じゅんすい幾何きかがくのようなあらわことができないため、かくてんにおける物理ぶつり単位たんいあたりのおおきさであらわしている。
  4. ^ この3つは法定ほうてい計量けいりょう単位たんいとなっている単位たんいである。
  5. ^ 比重ひじゅう定義ていぎ計量けいりょう単位たんい規則きそく平成へいせいよんねん通商産業省つうしょうさんぎょうしょうれいだいはちじゅうごう)の別表べっぴょうだい1でしめされており、このひょうちゅう計量けいりょう単位たんいらんに「(計量けいりょう単位たんいさない)」としるされていて、比重ひじゅう次元じげんりょうであることが明示めいじされている。
  6. ^ 理科りか年表ねんぴょうでもg/cm3単位たんいによる数値すうちげている。理科りか年表ねんぴょう2020、pp.392-393
  7. ^ このような直感ちょっかんてき密度みつどかんかたについて、科学かがく史家しか板倉いたくらきよしせんは、「てつ1 kgと綿めん1 kgはどちらがおもいか」という問題もんだいに、おおくのひとは「てつほうおもい」とかんじることを指摘してきしている[9]
  8. ^ アルキメデスがヒエロン2せいから、かね王冠おうかんじりものがはいってないか調しらべるようにわれた故事こじ。その発見はっけんアルキメデスの原理げんりばれる浮力ふりょく原理げんりである。(詳細しょうさいアルキメデス参照さんしょうのこと。)
  9. ^ 液体えきたいちゅうにあるものにかんするアルキメデスのしょ」Moody & Clagett:The Medieval Science of Weightsの41-51ぺーじラテン原文げんぶん英文えいぶん併記へいき)より板倉いたくらきよしせん訳出やくしゅつしたもの[11]
  10. ^ この稿本こうほんおもさの最小さいしょう単位たんいとしているもの[12]
  11. ^ 古代こだいギリシャデモクリトスレウキッポスはじまり、エピクロスおもさの概念がいねん基盤きばんにすることで一応いちおう完成かんせい理論りろん共和きょうわせいローマ時代じだい詩人しじんルクレチウスはエピクロスをとなえて原子げんしろんくわしく紹介しょうかいするのこ[15]、その中世ちゅうせいから近代きんだい科学かがくがる時代じだいのヨーロッパにおおきな影響えいきょうあたえた[16]
  12. ^ 従来じゅうらいとおる改革かいかくかんやく西洋せいよう科学かがくしょ禁書きんしょ緩和かんわおこなわれたとされていたが、実際じっさいには17-18世紀せいき中国ちゅうごくから輸入ゆにゅうされたイエズスかいがかかわってかれた漢文かんぶん科学かがくしょ影響えいきょうがほとんどまったく日本にっぽん書物しょもつあらわれていないことから、実際じっさいには吉宗よしむね学問がくもん奨励しょうれいは「儒学じゅがく奨励しょうれい」であり、「禁書きんしょ緩和かんわ」とは「特別とくべつ許可きょか学者がくしゃ幕府ばくふ書庫しょこない閲覧えつらんゆるされただけ」であり、実態じったいは「禁書きんしょ出版しゅっぱん統制とうせい制度せいど」がとおる改革かいかくおこなわれたのだろうとかんがえられている[37]
  13. ^ 宅間たくまりゅうからは天文学てんもんがくこよみさん主要しゅよう人物じんぶつ輩出はいしゅつしており、寛政かんせい改暦かいれきにも従事じゅうじしている[23]
  14. ^ 中村なかむら邦光くにみつ論文ろんぶんではみず密度みつど単位たんいすんもちいられているが、それでは7かんやく27 kgと計算けいさんわないので単位たんいしゃく訂正ていせいした。しゃく3なら(30 cm)327000 cm3=27 kgであるから、みず密度みつどう。
  15. ^ これについては板倉いたくらきよしせん歴史れきし見方みかたかんがかた』でくわしくろんじている[45]
  16. ^ しょうすいとは「水中すいちゅうにてものおもさをたたえ(はか)る」からきた言葉ことば。のちに「みずしょうほう」とばれるようになった[47]

出典しゅってん

[編集へんしゅう]
  1. ^ 体積たいせき#体積たいせき容積ようせき
  2. ^ 比重ひじゅう#定義ていぎ
  3. ^ みず性質せいしつ#密度みつど
  4. ^ 計量けいりょう単位たんいれい 別表べっぴょうだいいち こうばん19、「密度みつど」のらん
  5. ^ 数値すうち理科りか年表ねんぴょう2020、p.392 単体たんたい密度みつど
  6. ^ [1] Density maximum and molecular volume at the temperature of maximum density のaのらん 
  7. ^ a b 板倉いたくら中村なかむら 1990a, p. 138.
  8. ^ a b 板倉いたくら中村なかむら 1990a, p. 139.
  9. ^ 板倉いたくらきよしせん 1978, pp. 69–83.
  10. ^ 中村なかむら邦光くにみつ 2007, pp. 35–36.
  11. ^ a b 板倉いたくらきよしせん 1958, p. 196.
  12. ^ a b c 板倉いたくらきよしせん 1958, p. 197.
  13. ^ 板倉いたくらきよしせん 1958, p. 198.
  14. ^ a b 板倉いたくらきよしせん 1961, p. 29.
  15. ^ 板倉いたくらきよしせん 2004.
  16. ^ スティーブン・グリーンブラッド 2012.
  17. ^ 板倉いたくらきよしせん 1961, p. 30.
  18. ^ ニュートン 1977, p. 15.
  19. ^ 板倉いたくら中村なかむら 1990a, p. 140.
  20. ^ a b 板倉いたくら中村なかむら 1990a, p. 141.
  21. ^ 板倉いたくら中村なかむら 1990a, pp. 143–144.
  22. ^ 中村なかむら邦光くにみつ 2007, pp. 38–39.
  23. ^ a b c d 中村なかむら邦光くにみつ 2016, p. 46.
  24. ^ 中村なかむら邦光くにみつ 2007, pp. 40‐41.
  25. ^ 板倉いたくら中村なかむら 1990a, p. 147.
  26. ^ 板倉いたくら中村なかむら 1990a, p. 146-147.
  27. ^ 板倉いたくら中村なかむら 1990b, p. 162.
  28. ^ a b 板倉いたくら中村なかむら 1990b, p. 163.
  29. ^ 中村なかむら邦光くにみつ 2007, p. 42.
  30. ^ 板倉いたくら中村なかむら 1990b, pp. 164–165.
  31. ^ a b c 板倉いたくら中村なかむら 1990b, p. 165.
  32. ^ 板倉いたくら中村なかむら 1990b, p. 65.
  33. ^ a b 板倉いたくら中村なかむら 1990b, p. 170.
  34. ^ a b 中村なかむら邦光くにみつ 2007, pp. 44–45.
  35. ^ 板倉いたくら中村なかむら 1990b, p. 171.
  36. ^ 板倉いたくら中村なかむら 1990b, p. 172.
  37. ^ 中村なかむら邦光くにみつ 2007b, pp. 81–84.
  38. ^ a b 板倉いたくら中村なかむら 1990b, p. 173.
  39. ^ 中村なかむら邦光くにみつ 2016, p. 47.
  40. ^ 板倉いたくら中村なかむら 1990b, p. 174.
  41. ^ a b 板倉いたくら中村なかむら 1990b, p. 175.
  42. ^ 板倉いたくら中村なかむら 1990b, p. 179.
  43. ^ 板倉いたくら中村なかむら 1990b, p. 181.
  44. ^ 板倉いたくら中村なかむら 1990b, p. 182.
  45. ^ 板倉いたくらきよしせん 1986, pp. 103–120.
  46. ^ 板倉いたくら中村なかむら 1990b, p. 183.
  47. ^ a b 中村なかむら邦光くにみつ 2007, p. 47.
  48. ^ 中村なかむら邦光くにみつ 2007, p. 48.

参考さんこう文献ぶんけん 

[編集へんしゅう]
  • 板倉いたくらきよしせん「ニュートンの質量しつりょう定義ていぎとガリレイ・ニュートンの原子げんしろん」『科学かがく研究けんきゅうだい59ごう岩波書店いわなみしょてん、1961ねん、29-31ぺーじ 国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかん
  • 板倉いたくらきよしせん中村なかむら邦光くにみつ初期しょき和算わさんしょにおける金属きんぞくみず密度みつど」『日本にっぽんにおける科学かがく研究けんきゅう萌芽ほうが挫折ざせつ』、仮説かせつしゃ、1990ねん、138-158ぺーじ 全国ぜんこく書誌しょし番号ばんごう:92054782初出しょしゅつ科学かがく研究けんきゅう』1980ねんふゆだい136ごう
  • 板倉いたくらきよしせん中村なかむら邦光くにみつ「1660ねん以降いこう和算わさんしょそのにおける金属きんぞくみず密度みつど」『日本にっぽんにおける科学かがく研究けんきゅう萌芽ほうが挫折ざせつ』、仮説かせつしゃ、1990ねん、159-187ぺーじ 全国ぜんこく書誌しょし番号ばんごう:92054782初出しょしゅつ科学かがく研究けんきゅう』1981ねんなつだい138ごう
  • 板倉いたくらきよしせん中世ちゅうせいにおけるアルキメデスの原理げんりおもさ・かるさ」『物理ぶつりがく研究けんきゅう : だい1かんだい1-5ごう』、仮説かせつ実験じっけん授業じゅぎょう研究けんきゅうかい物理ぶつりがく研究けんきゅう復刻ふっこく刊行かんこうかい、1990ねん、196-199ぺーじ (オリジナルは日本にっぽん科学かがく学会がっかい物理ぶつりがく分科ぶんかかい, 日本にっぽん物理ぶつり学会がっかい物理ぶつりがく懇談こんだんかいへんよって1958ねん5がつから1959ねん5がつあいだ発行はっこうされた)国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかんサーチ
  • アイザック・ニュートン ちょ中野なかのざるじん やく『プリンシピア 自然しぜん哲学てつがく数学すうがくてき原理げんり講談社こうだんしゃ、1977ねんISBN 4-06-122139-6 
  • 中村なかむら邦光くにみつ江戸えど時代じだい日本にっぽんにおける円周えんしゅうりつ逆行ぎゃっこう現象げんしょう」『計量けいりょう研究けんきゅうだい38かんだい1ごう日本にっぽん計量けいりょう学会がっかい、2016ねん、42-48ぺーじ 国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかん
  • 板倉いたくらきよしせん科学かがくてきとはどういうことか : いたずら博士はかせ科学かがく教室きょうしつ仮説かせつしゃ、1978ねん 全国ぜんこく書誌しょし番号ばんごう:80004621
  • 板倉いたくらきよしせん歴史れきし見方みかたかんがかた (いたずら博士はかせ科学かがく教室きょうしつ ; 3)』仮説かせつしゃ、1986ねん 全国ぜんこく書誌しょし番号ばんごう:87013668
  • 中村なかむら邦光くにみつ江戸えど時代じだいにおける「浮力ふりょく原理げんり」と「密度みつど比重ひじゅう」の概念がいねん」『江戸えど科学かがく史話しわ』、そうふうしゃ、2007ねん、35-48ぺーじISBN 978-4-88352-133-3 
  • 中村なかむら邦光くにみつとおる改革かいかくにおける「禁書きんしょ緩和かんわ」は本当ほんとうか」『江戸えど科学かがく史話しわ』、そうふうしゃ、2007b、81-91ぺーじISBN 978-4-88352-133-3 
  • 板倉いたくらきよしせん原子げんしろん歴史れきし誕生たんじょう勝利しょうり追放ついほううえ)』仮説かせつしゃ、2004ねんISBN 4-7735-0177-4 全国ぜんこく書誌しょし番号ばんごう:20682258
  • スティーブン・グリーンブラッド ちょ河野こうの純治すみはる やくいちよんいちななねんそのいちさつがすべてをえた』柏書房かしわしょぼう、2012ねんISBN 978-4-7601-4176-0 

関連かんれん項目こうもく

[編集へんしゅう]