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コングロマリット

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

コングロマリットえい: Conglomerate)は、狭義きょうぎには、業種ぎょうしゅあいだにまたがる巨大きょだい企業きぎょうのこと。ただ、今日きょうでは、業種ぎょうしゅあいだにまたがらない巨大きょだい企業きぎょうもコングロマリットとばれることもすくなくない。ふくあい企業きぎょう(ふくごうきぎょう)(ふくあい企業きぎょうたい) や  グループ会社かいしゃ(グループがいしゃ)などとも。

ふくあい企業きぎょうたいとしてのコングロマリット[編集へんしゅう]

企業きぎょうは、通常つうじょうならば業務ぎょうむ関係かんけいのある会社かいしゃ合併がっぺいするが、業務ぎょうむ内容ないようにおいて直接ちょくせつ関係かんけいっていない企業きぎょう買収ばいしゅうなどによって、まったことなる業種ぎょうしゅ参入さんにゅう企業きぎょうグループとする企業きぎょう形態けいたいひとつがコングロマリットである。ある大手おおて企業きぎょうには「事業じぎょうはやらない」という不文ふぶんりつがある[1]が、これをあえてやるのがコングロマリットという形態けいたいである。 コングロマリットは1960年代ねんだいアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくITTリング・テムコ・ヴォートなどでさかんにおこなわれ[2]業種ぎょうしゅあいだ同士どうし相乗そうじょう効果こうかによりグループ全体ぜんたい活性かっせい株価かぶか企業きぎょう資産しさん安定あんていリスクヘッジふくむ)が期待きたいされた。

業種ぎょうしゅ参入さんにゅうむずかしさにくわえ、期待きたいした相乗そうじょう効果こうかられない、拡大かくだいしたグループの収益しゅうえき悪化あっかといった問題もんだい発生はっせいしやすい企業きぎょう形態けいたいであるが、業種ぎょうしゅえてシナジー効果こうかられた場合ばあいは、技術ぎじゅつめんブランディングにおいて非常ひじょう強力きょうりょくなものである。また、それぞれが独立どくりつした業務ぎょうむ業種ぎょうしゅであることから、M&A独立どくりつ解体かいたい再編さいへんなど事業じぎょうさい構築こうちくリストラクチャー)が比較的ひかくてきペナルティなくおこなえるため、1960年代ねんだいから1980年代ねんだいにかけて積極せっきょくてきこころみられた[3]。"経営けいえい専門せんもん"による複数ふくすうことなる業種ぎょうしゅバランスシートもと経営けいえいする手法しゅほうでこれが原因げんいん競争きょうそうりょくうしなった企業きぎょうすくなからずあり、アメリカの産業さんぎょう衰退すいたい一因いちいんとの見方みかたもある[4]

近年きんねんでは企業きぎょうにも変化へんかする市場いちばたいする柔軟じゅうなんせい要求ようきゅうされるため、コングロマリットの構築こうちく解体かいたいのサイクルも1990年代ねんだい以降いこうみじかくなりつつあるともわれるが、そもそものコングロマリットという巨大きょだい企業きぎょう形態けいたい自体じたいあしかせとなることおおい。きょだいふくあい企業きぎょうたい全盛期ぜんせいきは1960年代ねんだい1980年代ねんだいであった。

コングロマリット・ディスカウント[編集へんしゅう]

コングロマリットは、事業じぎょうあいだのシナジーが発揮はっきされず、むしろ複雑ふくざつさがマイナスにはたらいているのではとの懸念けねん株価かぶか反映はんえいされ、この懸念けねんぶんだけ、本質ほんしつてき価値かちよりもやすくなる。これを、「コングロマリット・ディスカウント」とぶ。かつて、イトーヨーカドー割安わりやすかぶ、その子会社こがいしゃセブン-イレブン成長せいちょうかぶとみられ、同業どうぎょうよりも割高わりだか株価かぶかだった。ところがかぶ会社かいしゃセブン&アイ・ホールディングス」に統合とうごうしんしゃは、統合とうごうまえ理論りろんてき価格かかくくら下落げらくしてしまった。これは、統合とうごうにより、割安わりやすかぶでも成長せいちょうかぶでもなくなり、くわえてコングロマリット・ディスカウントがきたため、と分析ぶんせきされている。ぎゃくに、コングロマリットにより、企業きぎょう価値かちたかまる効果こうか場合ばあいもあり、これを、「コングロマリット・プレミアム」とぶ。[5]

日本にっぽんのコングロマリットとその解消かいしょう実例じつれい[編集へんしゅう]

純粋じゅんすい持株もちかぶ会社かいしゃ解禁かいきん以前いぜん
戦後せんご純粋じゅんすい持株もちかぶ会社かいしゃみとめられなくなったために、この時期じき、コングロマリットのれい日本にっぽんではあまりない。この期間きかんのコングロマリットの代表だいひょうてきれいとしては、ヤマハがあげられる。ピアノなどの楽器がっき製造せいぞうメーカーである日本にっぽん楽器がっきは、ブランドめい『ヤマハ』を使つかっていた。この使つかい、社内しゃないオートバイ生産せいさんはじめたが、この「楽器がっき製造せいぞう」と「オートバイ製造せいぞう」は(実際じっさいには楽器がっき生産せいさんによりつちかった鋼管こうかん加工かこう技術ぎじゅつ展開てんかいさきとして発動はつどうパーツへ進出しんしゅつしているため関係かんけいせいつよかったが)最終さいしゅう製品せいひんにおいて特段とくだん相乗そうじょう効果こうかはなく、この2分野ぶんやともにおこなっていた時期じきはコングロマリットとべなくもない。ただこの期間きかんみじかく、オートバイ製造せいぞう部門ぶもんスピンオフされて、ヤマハ発動機やまははつどうきとして独立どくりつした。豊田自動織機製作所とよたじどうしょっきせいさくしょいち事業じぎょうとして自動車じどうしゃ生産せいさんをしていた時代じだい同様どうようである。また、繊維せんい事業じぎょういとなんでいたカネボウ戦後せんご繊維せんい化粧けしょうひん薬品やくひん食品しょくひん住宅じゅうたくの5事業じぎょう展開てんかいする「ペンタゴン経営けいえい」をおこなっており、典型てんけいてきなコングロマリットといえる。
なお、鉄道てつどう会社かいしゃゆう園地えんち経営けいえいしたりプロ野球やきゅう球団きゅうだんったりデパート経営けいえいするのは旅客りょかく輸送ゆそうやすため、NEC半導体はんどうたい電子でんし製品せいひんつくったのは川上かわかみから川下かわしもまでがける垂直すいちょく統合とうごうユニ・チャームかみ問屋とんやからかみ性質せいしつ着目ちゃくもく生理せいり用品ようひん製造せいぞうをはじめたのは隣接りんせつ分野ぶんやへの領域りょういき拡大かくだいオカモトがコンドームからタイヤ生産せいさん進出しんしゅつしたのもおなじゴム素材そざいによる事業じぎょう拡大かくだいダイエー百貨店ひゃっかてんコンビニエンスストア展開てんかいしたのも隣接りんせつ分野ぶんやへの進出しんしゅつであり、このような場合ばあいはコングロマリットとはばない。
純粋じゅんすい持株もちかぶ会社かいしゃ解禁かいきん以後いご
1997ねん純粋じゅんすい持株もちかぶ会社かいしゃ解禁かいきん以後いごは、機動きどうてきなM&Aをおこないやすくなり、教科書きょうかしょてきなコングロマリットが出現しゅつげんした。
ライブドア積極せっきょくてき買収ばいしゅうかえし、純粋じゅんすい持株もちかぶ会社かいしゃしたに、多種たしゅ企業きぎょうをぶらげるかたちになった。しかし経営けいえいにつまずき、実質じっしつてき崩壊ほうかいした。
USENももともとの事業じぎょう有線ゆうせん放送ほうそうだけであったが、純粋じゅんすい持株もちかぶ会社かいしゃとなり、積極せっきょくてき買収ばいしゅうかえし、純粋じゅんすい持株もちかぶ会社かいしゃしたに、多種たしゅ企業きぎょうをぶらげるかたちになった。しかし事業じぎょう分野ぶんや拡散かくさんしただけにわり、有線ゆうせん放送ほうそう事業じぎょう以外いがいをすべて売却ばいきゃくし、この膨張ぼうちょう縮小しゅくしょう過程かてい債務さいむげた。
スピンオフ税制ぜいせい解禁かいきん以後いご
2017ねんに、会社かいしゃ分割ぶんかつ株主かぶぬしなどが株式かぶしき売却ばいきゃくしたとみなされて課税かぜいされるのをべる、「スピンオフ税制ぜいせい」が導入どうにゅうされ、これでスピンオフがしやすくなった。
2020ねんに、コシダカホールディングスは、フィットネス事業じぎょうとカラオケ事業じぎょう分離ぶんりし、コングロマリット状態じょうたい解消かいしょうした[6]。フィットネス事業じぎょうの「カーブス」を運営うんえいする子会社こがいしゃのカーブスホールディングスを分離ぶんり上場じょうじょうした。日本にっぽん企業きぎょうでスピンオフ税制ぜいせい活用かつようするはつのケースだった[7][8]
東芝とうしば総合そうごう電機でんき企業きぎょうであるが、2021ねん11月9にち本体ほんたいとグループ企業きぎょう手掛てがける事業じぎょうを3つの会社かいしゃ再編さいへんしそれぞれが上場じょうじょうする、コングロマリットの解消かいしょう発表はっぴょうした。そのだい株主かぶぬしである海外かいがい投資とうしファンドなどが3分割ぶんかつあん反対はんたい、その2分割ぶんかつあん発表はっぴょうするも株主かぶぬし総会そうかい否決ひけつされ、スピンオフ計画けいかく中止ちゅうしになった。

なお、2023年度ねんど税制ぜいせい改正かいせいで「パーシャルスピンオフ制度せいど」が導入どうにゅうされ、減税げんぜい要件ようけん従来じゅうらい完全かんぜん分離ぶんりから株式かぶしき保有ほゆう20%未満みまんげたため、今後こんご、コングロマリットや親子おやこ上場じょうじょう解消かいしょうすす可能かのうせいがある。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ KDDI。
  2. ^ わがくにのM&Aの動向どうこう課題かだい”. 経済けいざい社会しゃかい総合そうごう研究所けんきゅうじょ. 2013ねん3がつ23にち閲覧えつらん
  3. ^ マネジメントの日米にちべい逆転ぎゃくてんはじまる-その9, https://www.jipangu.co.jp/column_page/マネジメントの日米にちべい逆転ぎゃくてんはじまる-その9 
  4. ^ マックス・ホーランド (1992ねん). ついえた野望やぼう-なぜバーグマスターしゃえたのか. ダイヤモンド社だいやもんどしゃ. ISBN 4478370729 
  5. ^ コングロマリットとは?おも手法しゅほう効果こうか注意ちゅういてん企業きぎょう事例じれい紹介しょうかい”. izul.co.jp. 2023ねん6がつ30にち閲覧えつらん
  6. ^ 日本経済新聞にほんけいざいしんぶん2021ねん11月25にち朝刊ちょうかん19めん東芝とうしば分割ぶんかつ
  7. ^ 子会社こがいしゃ株式かぶしき現物げんぶつ配当はいとう株式かぶしき分配ぶんぱいがたスピンオフ)およ特定とくてい子会社こがいしゃ異動いどうかんするおらせ”. 株式会社かぶしきがいしゃコシダカホールディングス(2019ねん10がつ10日とおか作成さくせい). 2020ねん1がつ26にち閲覧えつらん
  8. ^ スピンオフ税制ぜいせいはつ適用てきよう コシダカHD、傘下さんか事業じぎょう分離ぶんり上場じょうじょう”. 日本経済新聞にほんけいざいしんぶん(2019ねん10がつ10日とおか作成さくせい). 2020ねん1がつ26にち閲覧えつらん

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]