サイケデリック体験 たいけん (psychedelic experience)とは、サイケデリックス (幻覚 げんかく 剤 ざい を指 さ す英単語 えいたんご )に誘導 ゆうどう される一時 いちじ 的 てき な変性 へんせい 意識 いしき 状態 じょうたい である。典型 てんけい 的 てき な幻覚 げんかく 剤 ざい には、LSD 、メスカリン 、シロシビン 、2C-I 、DMT 、5-MeO-DMT などがある。アシッド・トリップ はLSDによるサイケデリック体験 たいけん を指 さ す。
サイケデリック の語 かたり は、「心 しん をあらわにする」という意味 いみ のギリシャ語 ご に由来 ゆらい する。サイケデリック体験 たいけん は、探索 たんさく 的 てき に、あるいは学習 がくしゅう 、娯楽 ごらく (英語 えいご 版 ばん ) 、宗教 しゅうきょう 的 てき ・神秘 しんぴ 的 てき 、また治療 ちりょう (英語 えいご 版 ばん ) の文脈 ぶんみゃく で用 もち いられる。
サイケデリック体験 たいけん とは、(幻覚 げんかく 剤 ざい を指 さ す英語 えいご の)サイケデリックス に誘導 ゆうどう される一時 いちじ 的 てき な変性 へんせい 意識 いしき 状態 じょうたい である[ 注釈 ちゅうしゃく 1] 。意識 いしき のサイケデリックな変性 へんせい 状態 じょうたい とは、一般 いっぱん 的 てき に普通 ふつう の(シラフの)状態 じょうたい に比 くら べて、高次 こうじ の(高 たか い、超越 ちょうえつ 的 てき な)状態 じょうたい といった特徴 とくちょう がある。例 たと えば、心理 しんり 学者 がくしゃ のベニー・シャノン (英語 えいご 版 ばん ) はアヤワスカによるトリップの報告 ほうこく から、中毒 ちゅうどく 中 ちゅう に起 お きていることが真実 しんじつ とみなされ、普段 ふだん 認識 にんしき している世界 せかい を幻想 げんそう とする評価 ひょうか が一般 いっぱん 的 てき であると述 の べている[ 1] 。
同様 どうよう に、心理 しんり 学者 がくしゃ のスタニスラフ・グロフ はLSDの体験 たいけん をこう説明 せつめい する。「存在 そんざい の本質 ほんしつ への複雑 ふくざつ で啓示 けいじ 的 てき な洞察 どうさつ …それは典型 てんけい 的 てき には、日々 ひび の生活 せいかつ において共有 きょうゆう されている認識 にんしき や信念 しんねん よりも、この知識 ちしき には究極 きゅうきょく 的 てき に意味 いみ があり『真実 しんじつ 』であるという確 かく 実感 じっかん を伴 ともな う[ 2] 」哲学 てつがく 者 しゃ のアラン・ワッツ によれば、サイケデリック体験 たいけん は道教 どうきょう や禅 ぜん での意識 いしき の変容 へんよう に似 に ているものであり、こう説明 せつめい する。「不完全 ふかんぜん な知覚 ちかく の矯正 きょうせい あるいは病気 びょうき の治療 ちりょう に近 ちか く…さらなる事実 じじつ を知 し りたい、より高 たか い技術 ぎじゅつ を得 え たいという欲望 よくぼう の進展 しんてん ではなく、むしろ誤 あやま った習慣 しゅうかん や見方 みかた を捨 す て去 さ るということです[ 3] 」
ティモシー・リアリー らによる1964年 ねん の『チベット死者 ししゃ の書 しょ サイケデリック・バージョン 』(原題 げんだい The Psychedelic Experience )では、サイケデリック体験 たいけん とは、規模 きぼ と内容 ないよう に制限 せいげん のない体験 たいけん だが、言語 げんご 的 てき 概念 がいねん ・時間 じかん 空間 くうかん の超越 ちょうえつ 、自我 じが やアイデンティティの超越 ちょうえつ だとされる[ 4] 。レスター・グリンスプーン らによる『サイケデリック・ドラッグ』の第 だい 4章 しょう は「サイケデリック体験 たいけん の特性 とくせい 」であり、ある逸話 いつわ が一般 いっぱん 的 てき な体験 たいけん であるかのように誤解 ごかい されやすいが、その体験 たいけん は幅広 はばひろ く夢 ゆめ や神話 しんわ のように多様 たよう であり、数 すう 十 じゅう の体験 たいけん が直接 ちょくせつ 引用 いんよう されている[ 5] 。4000以上 いじょう のセッションを行 おこな ってきたスタニスラフ・グロフの『深層 しんそう からの回帰 かいき 』も、膨大 ぼうだい で多様 たよう な体験 たいけん の記録 きろく である[ 2] 。
psychedelic(サイケデリック)という言葉 ことば は、ハンフリー・オズモンドが作 つく り出 だ したもので、意味 いみ は「心 しん をあらわにする」ということで、psyche(心 しん )に作用 さよう する幻覚 げんかく 剤 ざい の能力 のうりょく が由来 ゆらい である[ 6] 。アシッド・トリップはLSDによるサイケデリック体験 たいけん を指 さ している[ 7] 。
「トリップ」という言葉 ことば はアメリカ軍 ぐん の科学 かがく 者 しゃ が生 う んだもので、1950年代 ねんだい にLSDの実験 じっけん を指 さ していた[ 8] 。
バッド・トリップ(bad trip、薬物 やくぶつ による一時 いちじ 的 てき な精神病 せいしんびょう など)は心 しん を乱 みだ し、不快 ふかい で、恐 おそ ろしく、サイケデリック体験 たいけん をトラウマと変 か えうる。より強 つよ い作用 さよう が生 しょう じる高 こう 用量 ようりょう の摂取 せっしゅ により起 お こりやすい。
症状 しょうじょう はぼんやりした不安 ふあん 感 かん や疎外 そがい 感 かん から、おさまらない恐怖 きょうふ 、完全 かんぜん な狂気 きょうき 、または宇宙 うちゅう 崩壊 ほうかい (英語 えいご 版 ばん ) までである。精神療法 せいしんりょうほう におけるサイケデリックに関 かん する専門 せんもん 家 か (英語 えいご 版 ばん ) は、不快 ふかい な体験 たいけん は有害 ゆうがい で好 この ましくない不要 ふよう なものであるとみなされるのではなく、適切 てきせつ に対処 たいしょ された場合 ばあい に大 おお きな恩恵 おんけい を得 え る可能 かのう 性 せい もあるものだと説明 せつめい している。バッドトリップは、不慣 ふな れだったり、薬物 やくぶつ 使用 しよう 者 しゃ が無責任 むせきにん であったり、トリップのための適切 てきせつ な心構 こころがま えや環境 かんきょう がないといったことでより悪 わる くなり、体験 たいけん の過程 かてい での対処 たいしょ されていない心理 しんり 的 てき な葛藤 かっとう がきっかけとなりそれが反映 はんえい される[ 9] 。
シロシビンの用量 ようりょう と体験 たいけん に関 かん する研究 けんきゅう が実施 じっし され[ 10] 、研究 けんきゅう 者 しゃ は半分 はんぶん の低 てい 用量 ようりょう でも神秘 しんぴ 的 てき な体験 たいけん だという特徴 とくちょう が生 しょう じることに変 か わりはないが、不安 ふあん と恐怖 きょうふ を感 かん じることが5分 ぶん の1に減少 げんしょう するとしている[ 11] 。
神秘 しんぴ 的 てき ・宗教 しゅうきょう 的 てき 体験 たいけん [ 編集 へんしゅう ]
サイケデリック体験 たいけん には、神秘 しんぴ 的 てき ・宗教 しゅうきょう 的 てき な経験 けいけん 的 てき 現象 げんしょう のあらゆる側面 そくめん が含 ふく まれる。シロシビン (マジックマッシュルーム の成分 せいぶん )による2つの研究 けんきゅう は、確実 かくじつ に神秘 しんぴ 的 てき な種類 しゅるい の経験 けいけん のきっかけになると結論 けつろん している[ 12] 。ジョンズ・ホプキンス大学 だいがく におけるより新 あたら しい研究 けんきゅう は、「神秘 しんぴ 主義 しゅぎ 尺度 しゃくど 」(mysticism scale)と呼 よ ばれる質問 しつもん 票 ひょう が含 ふく まれている、非 ひ 日常 にちじょう 体験 たいけん である変性 へんせい 状態 じょうたい のために設計 せっけい されたいくつかの質問 しつもん 票 ひょう によって神秘 しんぴ 体験 たいけん を識別 しきべつ した[ 12] 。
また幻覚 げんかく 剤 ざい には、世界中 せかいじゅう で宗教 しゅうきょう 的 てき に使用 しよう された長 なが い歴史 れきし があり、しばしばエンセオジェン と呼 よ ばれており、それはこうした種類 しゅるい の体験 たいけん を生 しょう じさせる傾向 けいこう が理由 りゆう である[ 13] 。
現代 げんだい 宗教 しゅうきょう においても、ネイティブ・アメリカン・チャーチ やサント・ダイミ のように、サイケデリック体験 たいけん を中心 ちゅうしん とした信仰 しんこう と宗教 しゅうきょう 的 てき な活動 かつどう が存在 そんざい している。霊 れい や祖先 そせん の世界 せかい と対話 たいわ する方法 ほうほう だと見 み なされる[ 14] 。
サイケデリック体験 たいけん には、明 あき らかにグノーシスのような性質 せいしつ があり、意識 いしき を高 たか め個人 こじん 的 てき な発達 はったつ に深 ふか く貢献 こうけん するような学習 がくしゅう 体験 たいけん である。このため、アヤワスカやシロシビン含有 がんゆう キノコのような一部 いちぶ の植物 しょくぶつ に由来 ゆらい する幻覚 げんかく 剤 ざい は、時 とき に「植物 しょくぶつ の先生 せんせい 」(plant teacher)と呼 よ ばれる[ 15] 。同様 どうよう に、シロシビンと神秘 しんぴ 主義 しゅぎ に関 かん する研究 けんきゅう の追跡 ついせき 調査 ちょうさ を行 おこな った研究 けんきゅう 者 しゃ によれば、シロシビンは、行動 こうどう 、態度 たいど 、価値 かち 観 かん における長期 ちょうき 的 てき な変化 へんか を予測 よそく できるような、個人 こじん 的 てき でスピリチュアルな重要 じゅうよう な神秘 しんぴ 体験 たいけん を起 お こすものである[ 12] [ 16] 。
オルダス・ハクスリーの遍在 へんざい 精神 せいしん 説 せつ [ 編集 へんしゅう ]
内的 ないてき 探索 たんさく 者 しゃ (英語 えいご 版 ばん ) であるオルダス・ハクスリー のその著書 ちょしょ 『知覚 ちかく の扉 とびら 』では、サイケデリック体験 たいけん の重要 じゅうよう 性 せい を説明 せつめい するために、遍在 へんざい 精神 せいしん 説 せつ (英語 えいご 版 ばん ) を挙 あ げている。社会 しゃかい 規範 きはん を学 まな ぶことや、特 とく に生物 せいぶつ 的 てき なことが原因 げんいん で、人間 にんげん は遍在 へんざい 精神 せいしん の状態 じょうたい には通常 つうじょう は気 き がつかない。ハクスリーによれば、中枢 ちゅうすう 神経 しんけい 系 けい の主 おも な機能 きのう として私 わたし たちが知覚 ちかく しているものの大 だい 部分 ぶぶん は遮断 しゃだん されている[ 17] 。
ハクスリーによれば、生 い き残 のこ るために脳 のう はこうした知覚 ちかく を選別 せんべつ している。社会 しゃかい は記号 きごう システムを生 う み出 だ し、私 わたし たちの現実 げんじつ を構造 こうぞう 化 か し、気 き づきを減 へ らすために、このフィルターを支 ささ えている[ 17] 。
サイケデリック療法 りょうほう とは、プシュケー (psyche、心 しん )の有益 ゆうえき な探索 たんさく を助 たす けるための幻覚 げんかく 剤 ざい の使用 しよう に関 かか わる治療 ちりょう 的 てき な行為 こうい である。薬物 やくぶつ を伴 ともな うそのセッションでは、心理 しんり 療法 りょうほう 家 か は、患者 かんじゃ が内的 ないてき な体験 たいけん を探索 たんさく できるよう非 ひ 指示 しじ 的 てき に支援 しえん する。薬物 やくぶつ によるセッションの前 まえ に、患者 かんじゃ には準備 じゅんび のための心理 しんり 療法 りょうほう が行 おこな われ、またセッションの後 のち ではその体験 たいけん を統合 とうごう するために行 おこな われる[ 18] [ 19] 。
幻覚 げんかく 剤 ざい に基 もと づく精神 せいしん 医学 いがく の初期 しょき の施術 しじゅつ 者 しゃ は、イギリスの精神 せいしん 科 か 医 い であるハンフリー・オズモンド (英語 えいご 版 ばん ) であり、彼 かれ がサイケデリックという言葉 ことば を造語 ぞうご している。オズモンド自身 じしん のLSDの使用 しよう は、統合 とうごう 失調 しっちょう 症 しょう を有 ゆう する彼 かれ の患者 かんじゃ の内的 ないてき な精神 せいしん 状態 じょうたい の理解 りかい を助 たす けたと言 い っている[ 20] 。
スタニスラフ・グロフ もこの分野 ぶんや の実践 じっせん 者 しゃ であり、心理 しんり 療法 りょうほう におけるLSDの使用 しよう を開拓 かいたく した[ 21] 。
グロフはサイケデリック体験 たいけん を「無意識 むいしき 的 てき な精神 せいしん 機能 きのう の非特異 ひとくい 的 てき 増幅 ぞうふく 」だと特徴 とくちょう づけ、オットー・ランク の理論 りろん である、未 み 解決 かいけつ の原初 げんしょ 的 てき な出生 しゅっしょう 時 じ の外傷 がいしょう の記憶 きおく の観点 かんてん からLSD体験 たいけん の現象 げんしょう 学 がく を分析 ぶんせき した[ 22] 。
サイケデリック体験 たいけん による自我 じが の死 し は、末期 まっき の病気 びょうき の患者 かんじゃ (末期 まっき がん患者 かんじゃ など)が自身 じしん の通常 つうじょう の自分勝手 じぶんがって な価値 かち 観 かん の外 そと から、理性 りせい 的 てき に死 し に近 ちか づくことを可能 かのう とする。迫 せま り来 く る、避 さ けられない死 し の苦痛 くつう を対処 たいしょ し理解 りかい できるものとすることを研究 けんきゅう は証明 しょうめい している。生 せい から死 し への移行 いこう が、単 たん に人生 じんせい のひとつの歩 あゆ みだと理解 りかい できる。こうした取 と り組 く みは、ハーバーUCLA医療 いりょう センターのチャールズ・グロフによって積極 せっきょく 的 てき に進 すす められている。
^ よく知 し られた幻覚 げんかく 剤 ざい にはLSDやシロシビン含有 がんゆう のマジックマッシュルームなどがある
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