スケルトン・インフィル住宅じゅうたく

スケルトン・インフィル住宅じゅうたく（スケルトン・インフィルじゅうたく）とは、建物たてもののスケルトン（柱はしら・梁はり・床ゆか等とうの構造こうぞう躯むくろ体たい）とインフィル（住戸じゅうこ内ないの内装ないそう・設備せつび等とう）とを分離ぶんりした工法こうほうで、分譲ぶんじょうマンションなどの集合しゅうごう住宅じゅうたくに多おおく見みられるが、ユニット工法こうほうによる戸建こだて住宅じゅうたくも同様どうようの考かんがえ方かたで造つくられている。「SI住宅じゅうたく」と略りゃくされる。

概要がいよう

本来ほんらい、マンション等とうのRCラーメン構造こうぞうを持もつ建築けんちく物ぶつの耐用たいよう年数ねんすうは、床ゆか材ざいや壁かべ材ざい、造つくり付づけ家具かぐ、キッチン家具かぐ、水みず周まわりといった内装ないそうと比くらべて著いちじるしく長ながい。しかしながら旧来きゅうらいの日本にっぽんの建築けんちくは、構造こうぞうと内装ないそうを分わけて考かんがえることをしない場合ばあいが多おおく、結果けっかとして内装ないそうの耐用たいよう年数ねんすう＝建築けんちく物ぶつ自体じたいの耐用たいよう年数ねんすうとなる構造こうぞうを招まねいている。

これはイニシャルコストを省はぶいた一部いちぶの木造もくぞう建築けんちくの慣習かんしゅうを、RC建築けんちくにも当あてはめてしまった高度こうど成長せいちょう期きの考かんがえ方かたが根底こんていにある。対たいして欧米おうべい諸国しょこくの高層こうそう建築けんちくでは、数すう百ひゃく年ねんの耐用たいよう年数ねんすうを誇ほこる資産しさん価値かちの高たかい戸建こだて建築けんちくの考かんがえ方かたを応用おうようし、構造こうぞう体たいと内装ないそうの耐用たいよう年数ねんすうを予あらかじめ想定そうていした建築けんちくがなされてきた。スケルトン・インフィルの基本きほん概念がいねんは、躯むくろ体たいはそのままで外装がいそう・内装ないそうを何なん度どでも入いれ替かえられる建造けんぞう物ぶつという点てんにある。

スケルトン・インフィルは、マサチュまさちゅーセッツ工科大学せっつこうかだいがく名誉めいよ教授きょうじゅのニコラス・ジョン・ハブラーケンが1960年代ねんだいに提唱ていしょうした「オープンビルディング」の思想しそうから生うまれたとされている。もともとこの設計せっけい概念がいねんは、1960年代ねんだい初頭しょとうにオランダの建築けんちく家かであるハブラーケンがその著書ちょしょ『サポート：マスハウジングに代かわるもの』で提唱ていしょうしたもので、鉄筋てっきんコンクリート造みやつこの集合しゅうごう住宅じゅうたくにおける設計せっけい手法しゅほうだったが、近年きんねんは一戸建いっこだて住宅じゅうたく、それも木造もくぞう住宅じゅうたくでも使つかわれるようになった。

特徴とくちょう

躯むくろ体たいと内装ないそうを分わける場合ばあいに重要じゅうようなことは、内装ないそうの配置はいちに惑まどわされない躯むくろ体たいの設計せっけいと言いえる。All Aboutによれば、特とくに重要じゅうような点てんは以下いかに示しめされる。

• PSの分離ぶんり

  スケルトン・インフィルと銘打めいうたれない多おおくのマンションの間取まどり図ずを見みると、室内しつないのキッチン・バス・トイレなどの箇所かしょに「PS」と書かかれた空間くうかんがある。これは「パイプスペース」または「パイプシャフト」と呼よばれる空間くうかんで、上下水道じょうげすいどう・ガス管かんなどを通とおす空間くうかんである。こうした配管はいかん類るいは内装ないそうと同どう程度ていどの耐用たいよう年数ねんすうであるため将来しょうらい的てきに修繕しゅうぜん工事こうじが必要ひつようとなるが、これは内壁ないへきを壊こわす大だい工事こうじとなる場合ばあいが多おおく生活せいかつに支障ししょうをきたす。スケルトンインフィルでは、PSを共用きょうよう部分ぶぶんへ配置はいちすることで内装ないそうへの影響えいきょうを避さける。これにより修繕しゅうぜん工事こうじの簡便かんべんさと、リフォーム時じの水みず周まわり設備せつびの自由じゆうな移動いどうを可能かのうとしている。

• 二に重じゅう天井てんじょう・二に重じゅう床ゆか

  スケルトン・インフィルにおいては、PSまでの室内しつない配管はいかん、各種かくしゅダクト、電気でんき配線はいせんなどを躯むくろ体たいに埋うめ込こむ事ことが出来できないため、すべての部屋へやは基本きほん的てきに二に重じゅう天井てんじょう・二に重じゅう床ゆかを持もつ。二に重じゅう壁かべを持もつ場合ばあいもある。結果けっか的てきに階かい高だかは高たかくなり、コンセント・照明しょうめい器具きぐの自由じゆうな移動いどうや増設ぞうせつなども可能かのうとなる。

• 外そと断熱だんねつ

  スケルトン・インフィルでは、室内しつない部ぶに断熱だんねつ施工しこうすることが困難こんなんであるため、外そと断熱だんねつ工法こうほうを取とることが多おおい。

定義ていぎ

スケルトン・インフィル住宅じゅうたくの定義ていぎはおよそ次つぎのようなものとされる。

• スケルトン（構造こうぞう体たい）の耐震たいしん性せいが高たかい
• 建物たてものが長持ながもちして価値かちが低下ていかしない
• 空間くうかんにゆとりがある
• 空間くうかんが整形せいけいで室内しつないに柱はしら型がたや梁はり型がたが出でない
• 多様たような間取まどりが可能かのうである
• 将来しょうらいのリフォームが容易よういである
• 設備せつび配管はいかんのメンテナンスが容易よういである

スケルトンとは柱はしら・梁りょう・床ゆかなどの構造こうぞう躯むくろ体たいを示しめし、インフィルとは間仕切まじきり壁かべ・仕上しあげ材ざい・様々さまざまな設備せつびの総称そうしょう。スケルトンとインフィルを分離ぶんりして考かんがえることにより耐震たいしん性せい、耐久たいきゅう性せいのある構造こうぞう体たいを保持ほじしつつ、室内しつないを作つくり変かえ何なん世代せだいにも渡わたって建物たてものを使つかうことができるという考かんがえ方かたである。元もと内閣ないかく総理そうり大臣だいじんの福田ふくだ康夫やすおが提唱ていしょうした「200年ねん住宅じゅうたくビジョン」もスケルトン・インフィル住宅じゅうたくにあたる。

耐震たいしん用ように開発かいはつされたSE工法こうほうを使つかっているだけで「木造もくぞうスケルトン・インフィル住宅じゅうたく」と謳うたうものも多おおい中なかで、上記じょうきの定義ていぎまで踏ふみ込こんだものとして、ミサワホームの創設そうせつ者しゃである三澤みさわ千代治ちよじが提唱ていしょうする「HABITA」、無印むじるし良品りょうひんの「窓まどの家いえ」などがある。

またユニット住宅じゅうたく供給きょうきゅう企業きぎょうには、積水化学工業せきすいかがくこうぎょうの「セキスイハイム」、ミサワホームの「ハイブリッドシリーズ」、トヨタホームの「シンセシリーズ」などがある。

なお、スケルトン状態じょうたいの住戸じゅうこは「居宅きょたく（未み内装ないそう）」として登記とうき可能かのうである。

参考さんこう文献ぶんけん

• 建築けんちく思潮しちょう研究所けんきゅうじょ 『SI住宅じゅうたく―集合しゅうごう住宅じゅうたくのスケルトン・インフィル』ISBN 978-4874608647
• 山岡やまおか淳あつし一郎いちろう『あなたのマンションが廃墟はいきょになる日ひ——建たて替かえにひそむ危険きけんな落おとし穴あな』草くさ思おもえ社しゃ、2004年ねん。ISBN 978-4794212993
• 小菊こぎく豊久とよひさ『マンションは大丈夫だいじょうぶか—住居じゅうきょとして資産しさんとして 』文藝春秋ぶんげいしゅんじゅう、2000年ねん。ISBN 978-4166601196