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ダイレクト・ボックス

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

ダイレクト・ボックス とは、電気でんき楽器がっきおよび電子でんし楽器がっきミキシング・コンソール接続せつぞくするためにもちいるインピーダンス変換へんかんである。レコーディングの現場げんばなどにおいて機器ききあいだのインピーダンスの相違そうい調節ちょうせつし、直接ちょくせつ(=スピーカーとマイクをかいさないという意味いみ)つなぐ目的もくてきもちいられる。しばしばD.I (ディー・アイ)ともばれる。

開発かいはつ経緯けいい

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楽器がっきごとのおと分離ぶんり明確めいかくにする録音ろくおん手法しゅほうおよ音楽おんがくていいき方向ほうこうへのレンジ拡大かくだいともない、楽器がっきようアンプから再生さいせいされるおとをマイクでひろって収録しゅうろくする技法ぎほう限界げんかいかんじたエンジニアが、エレキベースエレキギターなどの電気でんき楽器がっきをミキシング・コンソールやヘッド・アンプなどへ直結ちょっけつつないで録音ろくおん(いわゆるラインろくり)するために開発かいはつされた。そのピックアップから出力しゅつりょくされる楽器がっき本体ほんたいのサウンドを、よりクリアに収録しゅうろくするための方法ほうほうとしてひろくスタジオなどに普及ふきゅうした。

録音ろくおん現場げんばでの使用しようれい

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1960年代ねんだい中頃なかごろのイギリスでは4トラック・レコーダーでのレコーディングが一般いっぱんてきで、ビートルズをはじめとする当時とうじのバンドはトラックすうりなくなるたびにリダクション・ミックス(バウンス、いわゆるピンポン録音ろくおん)することによってトラックのきをつくっていた。だが、その作業さぎょうかえうち最初さいしょリズムたいとして録音ろくおんされるベースギターのおとすうかいにわたりコピーをかえされることになってしまい、ミキシングするころには「輪郭りんかくがぼやけたおと」になってしまっていた。この問題もんだい対処たいしょするため、ジョージ・マーティンジェフ・エメリックからの要請ようせいけたアビー・ロード技術ぎじゅつじんが、録音ろくおんコンソールやヘッド・アンプ、またはテープレコーダーにエレキ・ベースやエレキ・ギターのハイ・インピーダンス出力しゅつりょくのジャックからていインピーダンスの機器きき直接ちょくせつ(ダイレクト)接続せつぞく(インジェクション)出来でき機器きき製作せいさくした。この発明はつめいにより、ミュージシャンやレコーディング・エンジニアののぞむエッジがするど音色ねいろでレコーディングすることが可能かのうになった。

いちれいとして、ジョン・レノンが『レボリューション』のイントロでかせるおもいがんだディストーション・サウンドは、かれエピフォン・カジノを2だいのダイレクト・ボックス(より正確せいかくにはマイク・プリアンプ)を経由けいゆしてミキシングコンソールに接続せつぞくし、オーバーヒート寸前すんぜんまで信号しんごう飽和ほうわさせることでつくられた。また、アルバム「アビイ・ロード収録しゅうろくの『ジ・エンド』で3まわと6まわのギター・ソロに登場とうじょうするジョン・レノンのギター・サウンドもダイレクトボックスの賜物たまものである。

原理げんり構成こうせい

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ダイレクトボックスの機能きのうインピーダンス整合せいごう平衡へいこう平衡へいこう変換へんかんふたつである。

エレキ・ギターのピックアップのインピーダンスはすうひゃくkΩおめがすうMΩおめが程度ていどであり、マイクやライン入出力にゅうしゅつりょくのインピーダンスすうひゃくΩおーむすうじゅうkΩおめがにくらべていちじるしくおおきい。そのまま接続せつぞくするとマイク音声おんせいとうくらべてていレベルの入力にゅうりょく信号しんごうとなり、これを増幅ぞうふくするために雑音ざつおん影響えいきょうおおきくなる。またインピーダンス整合せいごうはなんらかの周波数しゅうはすう特性とくせいをともなうため、音色ねいろ変化へんかしょうじうる。ダイレクトボックスはギターピックアップにわせたこうインピーダンスの入力にゅうりょくていインピーダンスの出力しゅつりょくとなっており、周波数しゅうはすう特性とくせい配慮はいりょしたインピーダンス変換へんかんである。

同時どうじに、伝送でんそう経路けいろでのノイズをける平衡へいこう信号しんごう変換へんかんする。平衡へいこう信号しんごうへの変換へんかんはエレキ・ギター/ベースにかぎらず、電子でんしキーボードや家庭かていようステレオ機器ききなどの出力しゅつりょく音声おんせい長距離ちょうきょり伝送でんそうする場合ばあい有効ゆうこうである。

エフェクターではないため基本きほんてきには音色ねいろ変化へんかはないように設計せっけいされるが、実際じっさいには回路かいろ素子そし特性とくせいからなんらかの音色ねいろ変化へんかはある。使用しようしゃはこれを利用りようしてえらぶこともある。回路かいろ素子そしトランスオペアンプあるいは真空しんくうかんなど多様たようである。なお、インピーダンス変換へんかんのみで平衡へいこう出力しゅつりょくたない機種きしゅについてはダイレクトボックスとはわずにプリアンプ/バッファーアンプ呼称こしょうする場合ばあいがある。

パッシブがた

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初期しょきのものはインピーダンス変換へんかん平衡へいこう平衡へいこう変換へんかん1個いっこのトランスでねる構成こうせいであった。この構成こうせい電源でんげん不要ふよう構造こうぞうがシンプルであるが、入力にゅうりょくインピーダンスをある程度ていど以上いじょうたかくできないという難点なんてんがある。この構成こうせいをパッシブ(受動じゅどうがたぶ。同様どうよう回路かいろはSURE-SM58のようなダイナミックマイクのなかにもられる。

アクティブがた

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のち入力にゅうりょくインピーダンスをたかくするために入力にゅうりょくだん真空しんくうかんFETなどによるアンプもちいた構成こうせい一般いっぱんてきとなった。現在げんざいではこのタイプが主流しゅりゅうである。このタイプの出力しゅつりょくがわはトランスもしくは電子でんし平衡へいこう出力しゅつりょくとなっている。この構成こうせいをアクティブ(能動のうどうがたぶ。外部がいぶ電源でんげん接続せつぞくするほか乾電池かんでんちやファンタム電源でんげん出力しゅつりょくがわ信号しんごう経路けいろから供給きょうきゅうされる)の製品せいひんがある。

付加ふか機能きのう

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  • 入力にゅうりょくスルージャック
入力にゅうりょくジャックと並列へいれつ接続せつぞくされ、楽器がっき出力しゅつりょく分岐ぶんきして楽器がっきようアンプなどへ接続せつぞくするためにもちいる。または、チューナーなどの周辺しゅうへん機器きき接続せつぞくする場合ばあいにも使つかわれる。
  • グラウンドリフトスイッチ
ダイレクトボックスのフレームグラウンド楽器がっきようアンプなどとれている場合ばあいに、接地せっちされた商用しょうよう電源でんげんコンセントなどとミキサーとのあいだでおたがいの接地せっち電位でんい一致いっちしないなどの理由りゆうでグラウンドループによるハムノイズが発生はっせいすることがある。この場合ばあいXLRタイプコネクターの1ばんピン(GND)をはなすか入力にゅうりょくがわ回路かいろをフレームグラウンドからはなすことでグラウンドループを回避かいひする。
機種きしゅによって手法しゅほうことなる場合ばあいがあるので使用しようさい仕様しよう確認かくにんしておくことがのぞましい。
  • 位相いそう反転はんてんスイッチ
バランス出力しゅつりょく極性きょくせいえる。
  • フィルター
ていいきあるいはこういきをカットする機能きのうである。カットオフ周波数しゅうはすう固定こてい(あるいは選択せんたくしき)の構成こうせい一般いっぱんてきだが連続れんぞく可変かへんしき機種きしゅもある。
  • PAD(減衰げんすい
トランスあるいはダイレクトボックスないのヘッドアンプが飽和ほうわしないように挿入そうにゅうされる減衰げんすいである。
機種きしゅによっては楽器がっきようアンプのスピーカー出力しゅつりょく減衰げんすい可能かのう構成こうせいになっているものもあるが、仕様しよう確認かくにんして回路かいろ焼損しょうそんしないように注意ちゅういする必要ひつようがある。
  • ゲイン
ダイレクトボックス内部ないぶ増幅ぞうふくつタイプがり、増幅ぞうふく可変かへん出来できるようになっている機種きしゅがある。

関連かんれん項目こうもく

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