チェリク (アスト部ぶ)

チェリク（モンゴル語ご: Čelig,? - ?）とは、13世紀せいき末すえから14世紀せいき初頭しょとうにかけてモンゴル帝国ていこく（大だい元もとウルス）に仕つかえたアス人じん将軍しょうぐんの一人ひとり。『元もと史し』などの漢文かんぶん史料しりょうでは徹とおる里さと(chèlǐ)と記しるされる。

概要がいよう[編集へんしゅう]

チェリクらアス人じんは元来がんらいカフカース地方ちほうに住すまうアラン人じん（＝現在げんざいのオセット人じん）が、「バトゥの征せい西にし」においてカフカース地方ちほうに侵攻しんこうしたモンケ（後ごの第だい4代だい皇帝こうてい）によって東方とうほうに移住いじゅうさせられて形成けいせいされた集団しゅうだんであった。チェリクの父ちち別べつ吉きち八はちも時期じきは不明ふめいであるがモンケに仕つかえるようになり、南みなみ宋そう親おや征せいに従軍じゅうぐんして武功ぶこうを挙あげたことが記録きろくされている^[1]。

別べつ吉きち八はちの息子むすこチェリクはモンケの死後しごに即位そくいしたクビライに仕つかえて親衛隊しんえいたい（ケシクテイ）の箭や筒とう士し（コルチ）に任にんじられた。チェリクは主おもに中央ちゅうおうアジアを支配しはいするカイドゥとの戦たたかいで活躍かつやくし、カイドゥ軍ぐんの前ぜん鋒ほこさきを撃退げきたいしたことや、敵てきの畜牧を奪うばって自軍じぐんの糧食りょうしょくにした功績こうせきなどでクビライから鈔3500錠じょうを与あたえられている^[2]。

オルジェイトゥ・カーン（成なり宗むねテムル）の治世ちせいには盗賊とうぞくを討伐とうばつして3000人にん余あまりを捕虜ほりょとし、そこで獲得かくとくした捕虜ほりょ・家畜かちくはバルグの地ちに供給きょうきゅうした。オルジェイトゥ・カーンの治世ちせいには対たいカイドゥ軍ぐんの司令しれい官かんとしてカイシャン（後ごの武たけ宗はじめクルク・カーン）が起用きようされ、チェリクもカイシャンの指揮しき下かに入はいり、その武功ぶこうを賞賛しょうさんされて銀ぎんの酒さけ器きを与あたえられている。その後ご、カイシャンが即位そくいすると、1309年ねん（至大しだい2年ねん）にチェリクは左ひだり阿おもね速はや衛まもる僉事の地位ちいを授さづけられる厚遇こうぐうを受うけた。1313年ねん（皇すめらぎ慶けい2年ねん）には湘寧王おうデルゲル・ブカの指揮しき下かにあってモンゴル高原こうげんに赴おもむいているが、これ以後いごのチェリクの記録きろくはない^[3]。

チェリクの息子むすこシレムンは1328年ねん（致和元年がんねん/天てん順じゅん元年がんねん/天てん暦れき元年がんねん）に勃発ぼっぱつした天てん暦れきの内乱ないらんに大だい都と派は側がわに立たって参戦さんせんし、潮しお河川かせんで知ち院いんのトク・テムルとともにオルジェイ・バートルら12人にんらと遭遇そうぐうし、8人にんを殺ころして4人にんを捕虜ほりょとして連つれ帰かえる功績こうせきを挙あげた。その後ごも宜興いいしんにおいてシラ・ナイマンタイらを撃退げきたいし、両家りょうけ店てんでトゥマンダルの兵へいを撃うち破やぶった。同年どうねん11月がつにはそれまでの功績こうせきを賞しょうして左ひだり衛まもる阿おもね速はや親おや軍ぐん都と指揮しき使し司し僉事の地位ちいを授さづけられている^[4]。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

^ 赤坂あかさか2010,157-159頁ぺーじ
^ 『元もと史し』巻まき135列伝れつでん22徹てっ里さと伝でん,「徹とおる里さと、阿おもね速そく氏し。父ちち別べつ吉きち八はち、在ざい憲けん宗時むねとき従したがえ攻おさむ釣魚ちょうぎょ山さん、以功受賞じゅしょう。徹とおる里さと事ごと世よ祖そ、充たかし火ひ児じ赤あか。従したがえ征せい海うみ都と、奮戈撃げき其前鋒ほこさき、官軍かんぐん二に人にん陥おちい陣じん、掖わき而出之の、以功受賞じゅしょう。後ご従したがえ征せい杭くい海うみ、獲え其牛馬ば畜牧、悉以給きゅう軍ぐん食しょく。帝みかど嘉之よしゆき、賞しょう鈔三さん千せん五ご百ひゃく錠じょう、仍以分ぶん賚士卒そつ」
^ 『元もと史し』巻まき135列伝れつでん22徹てっ里さと伝でん,「成なり宗時むねとき、盜ぬすめ拠よりどころ博はく落脱児じ之の地ち、命いのち将兵しょうへい討之、獲え三さん千せん餘人よにん、誅其酋長しゅうちょう還かえ。奉たてまつ命いのち同どう客きゃく省しょう使し抜都児じ等とう往八はち児じ胡えびす之の地ち、以前いぜん所しょ獲え人口じんこう畜牧悉給其主。軍ぐん還かえ、帝みかど特とく賜たまもの鈔一百ひゃく錠じょう。武たけ宗はじめ居きょ潜せん邸てい、亦また以銀酒しゅ器き賞しょう之の。至大しだい二に年ねん、立たて左ひだり阿おもね速はや衛まもる、授本衛まもる僉事、賜金しきん符ふ。皇すめらぎ慶けい二に年ねん、従したがえ湘寧王おう北きた征せい、以功賜たまもの一珠いちじゅ虎とら符ふ」
^ 『元もと史し』巻まき135列伝れつでん22徹てっ里さと伝でん,「子こ失しつ列れつ門もん、直ちょく宿衛しゅくえい。致和元年がんねん秋あき八はち月がつ、従したがえ知ち院いん脱だつ脱だつ木き児じ至いたり潮しお河川かせん、獲え完かん者しゃ八はち都と児じ・愛あい的てき斤きん等とう十じゅう二に人にん、戮八はち人にん、執と四よん人にん帰京ききょう師し。復ふく於宜興きょう遇ぐう失しつ剌・乃馬台だい等とう、迎むかい戦せん、奮戈撃げき死し二に人にん、以功賞しょう白金はっきん・楮こうじ幣ぬさ。天てん暦れき元年がんねん、従したがえ撃げき禿かぶろ満まん台だい児じ之の兵へい于両家か店てん、殺ころせ其四よん人にん、復ふく以功受賞じゅしょう。従したがえ戦せん薊あざみ州しゅう、又また殺ころせ其四よん人にん。十一月じゅういちがつ、又また追つい殺ころせ十じゅう二に人にん于檀子こ山やま、以功授左衛まもる阿おもね速はや親おや軍ぐん都と指揮しき使し司し僉事」

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

赤坂あかさか恒明つねあき「モンゴル帝国ていこく期きにおけるアス人じんの移動いどうについて」塚田つかだ誠之せいし編へん『中国ちゅうごく国境こっきょう地域ちいきの移動いどうと交流こうりゅう』有志ゆうし舎しゃ、2010年ねん
『元もと史し』巻まき135列伝れつでん22徹てっ里さと伝でん

[1] 赤坂あかさか2010,157-159頁ぺーじ

[2] 『元もと史し』巻まき135列伝れつでん22徹てっ里さと伝でん,「徹とおる里さと、阿おもね速そく氏し。父ちち別べつ吉きち八はち、在ざい憲けん宗時むねとき従したがえ攻おさむ釣魚ちょうぎょ山さん、以功受賞じゅしょう。徹とおる里さと事ごと世よ祖そ、充たかし火ひ児じ赤あか。従したがえ征せい海うみ都と、奮戈撃げき其前鋒ほこさき、官軍かんぐん二に人にん陥おちい陣じん、掖わき而出之の、以功受賞じゅしょう。後ご従したがえ征せい杭くい海うみ、獲え其牛馬ば畜牧、悉以給きゅう軍ぐん食しょく。帝みかど嘉之よしゆき、賞しょう鈔三さん千せん五ご百ひゃく錠じょう、仍以分ぶん賚士卒そつ」

[3] 『元もと史し』巻まき135列伝れつでん22徹てっ里さと伝でん,「成なり宗時むねとき、盜ぬすめ拠よりどころ博はく落脱児じ之の地ち、命いのち将兵しょうへい討之、獲え三さん千せん餘人よにん、誅其酋長しゅうちょう還かえ。奉たてまつ命いのち同どう客きゃく省しょう使し抜都児じ等とう往八はち児じ胡えびす之の地ち、以前いぜん所しょ獲え人口じんこう畜牧悉給其主。軍ぐん還かえ、帝みかど特とく賜たまもの鈔一百ひゃく錠じょう。武たけ宗はじめ居きょ潜せん邸てい、亦また以銀酒しゅ器き賞しょう之の。至大しだい二に年ねん、立たて左ひだり阿おもね速はや衛まもる、授本衛まもる僉事、賜金しきん符ふ。皇すめらぎ慶けい二に年ねん、従したがえ湘寧王おう北きた征せい、以功賜たまもの一珠いちじゅ虎とら符ふ」

[4] 『元もと史し』巻まき135列伝れつでん22徹てっ里さと伝でん,「子こ失しつ列れつ門もん、直ちょく宿衛しゅくえい。致和元年がんねん秋あき八はち月がつ、従したがえ知ち院いん脱だつ脱だつ木き児じ至いたり潮しお河川かせん、獲え完かん者しゃ八はち都と児じ・愛あい的てき斤きん等とう十じゅう二に人にん、戮八はち人にん、執と四よん人にん帰京ききょう師し。復ふく於宜興きょう遇ぐう失しつ剌・乃馬台だい等とう、迎むかい戦せん、奮戈撃げき死し二に人にん、以功賞しょう白金はっきん・楮こうじ幣ぬさ。天てん暦れき元年がんねん、従したがえ撃げき禿かぶろ満まん台だい児じ之の兵へい于両家か店てん、殺ころせ其四よん人にん、復ふく以功受賞じゅしょう。従したがえ戦せん薊あざみ州しゅう、又また殺ころせ其四よん人にん。十一月じゅういちがつ、又また追つい殺ころせ十じゅう二に人にん于檀子こ山やま、以功授左衛まもる阿おもね速はや親おや軍ぐん都と指揮しき使し司し僉事」

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