テルアビブの白しろい都市とし

テルアビブの白しろい都市とし - 近代きんだい化か運動うんどう （イスラエル）
ラビンスキー邸てい
英名えいめい	White City of Tel-Aviv – the Modern Movement
仏ふつ名めい	Ville blanche de Tel-Aviv – le mouvement moderne
面積めんせき	140.399994 ha （緩衝かんしょう地域ちいき 197 ha）
登録とうろく区分くぶん	文化ぶんか遺産いさん
登録とうろく基準きじゅん	(2), (4)
登録とうろく年ねん	2003年ねん
公式こうしきサイト	世界せかい遺産いさんセンター（英語えいご）
使用しよう方法ほうほう・表示ひょうじ

エンゲル邸てい（建築けんちく家か: Zeev Rechter、1933年ねん）。近代きんだい主義しゅぎ建築けんちくの象徴しょうちょう的てきな一いち例れいとなった大だい邸宅ていたく。テルアビブで柱はしらの上うえに立たてられた最初さいしょの住宅じゅうたくでもある。

テルアビブの「白しろい都市とし」（ヘブライ語ご : העיר הלבנה, ha-ʿir ha-levana）は、1920年代ねんだいから1950年代ねんだいにかけて白色はくしょくや明あかるい色いろの建造けんぞう物ぶつ群ぐんが建たてられたテルアビブの街まち区くの名称めいしょうである。それらの建造けんぞう物ぶつはバウハウス様式ようしきあるいはインターナショナル・スタイルが採用さいようされている。

テルアビブの中心ちゅうしん地区ちくでは、いまだにそうした様式ようしきの建物たてものを4000軒けん以上いじょうも見みることができ、これは一いち都と市内しないに集中しゅうちゅうしているものとしては世界せかいでも類るいを見みないものである。このことから、この「白しろい都市とし」は20世紀せいき前半ぜんはんの建築けんちくや都市とし計画けいかくを考かんがえる上うえで逸いっすることの出来できない優すぐれた例証れいしょうとして、2003年ねんにユネスコの世界せかい遺産いさんに登録とうろくされた。同時どうじにそれは、この町まちが育はぐくんできた伝統でんとうや文化ぶんか、あるいは取とり巻まく気候きこう的てき要件ようけんといったものに、建築けんちく様式ようしきをどう馴化じゅんかさせるかというユニークな例証れいしょうにもなっている。

歴史れきし的てき背景はいけい

テルアビブが建設けんせつされたのは、イスラエルの地ちがまだオスマン帝国ていこく領りょうだった1909年ねんのことである。19世紀せいきを通つうじて大挙たいきょして来きたユダヤ人じんの移民いみんたちは、ヤッフォ（ジャッファ）の古ふるい港町みなとちょうに溢あふれかえっていた。その結果けっか、ユダヤ人じんたちはヤッフォの北きたの砂丘さきゅう地帯ちたいに聖書せいしょの時代じだい以来いらいとなるユダヤ人じん都市としを建たて始はじめたのである。

テルアビブの発展はってんは第だい一いち次じ世界せかい大戦たいせん中なかには停滞ていたいしたが、東ひがしヨーロッパ、ソビエト連邦れんぽう、イエメンからの移民いみんが増大ぞうだいしていった。ドイツでナチスが権力けんりょくを掌握しょうあくした1933年ねん以降いこう、テルアビブにも夥おびただしい数かずのユダヤ人じん難民なんみんが流入りゅうにゅうした。そうした難民なんみんの中なかには建設けんせつ業者ぎょうしゃや職人しょくにん、さらには建築けんちく家かなどが含ふくまれており、ことに建築けんちく家かたちの多おおくは1933年ねんにナチスの命令めいれいで閉校へいこうに追おいやられたバウハウスで研とぎ鑚を積つみ、その影響えいきょうを受うけていた。

審美しんび的てき、機能きのう主義しゅぎ的てき、経済けいざい的てきな側面そくめんを併あわせ持もった建築けんちく様式ようしきを推進すいしんしていたバウハウスが閉校へいこうに追おい込こまれたことによって、そこで学まなんだ有能ゆうのうな建築けんちく家かたちが失業しつぎょうしてあぶれていたという状況じょうきょうがあった。その一方いっぽうで、流入りゅうにゅうする移民いみんたちによってテルアビブでの住居じゅうきょ需要じゅようは急増きゅうぞうしており、確立かくりつされた建築けんちく様式ようしきを持もたない白紙はくしのキャンバスのような存在そんざいであったこの町まちでは、数すう百ひゃく軒けん単位たんいで新あたらしい建物たてものが必要ひつようとされていた。こうした状況じょうきょうの組くみ合あわせがまたとない好機こうきを創出そうしゅつする形かたちになった。こうしてバウハウス様式ようしきは、テルアビブのデザイナーたちに、過去かこに頼たよることなく新あたらしい環境かんきょうを創出そうしゅつできる建築けんちく的てきアプローチを提供ていきょうしたのである。

都市とし計画けいかくの枠組わくぐみはパトリック・ゲデスによる1925年ねんの基本きほん計画けいかくの中なかに策定さくていされており、そこでは緑地りょくちを内包ないほうする居住きょじゅう街がい区くに沿そって大通おおどおりを配置はいちすることが定さだめられていた。

ヨーロッパから中東ちゅうとうへ

バウハウス様式ようしきは第だい一いち次じ世界せかい大戦たいせん後ごのヨーロッパでの美術びじゅつと機能きのう性せいの統一とういつを反映はんえいして創出そうしゅつされたものである。テルアビブでは、この様式ようしきが理想りそうと考かんがえられた。建造けんぞう物ぶつ群ぐんは早はやく、そして安価あんかに建造けんぞうされることができた。

しかし、建造けんぞう物ぶつ群ぐんは地中海ちちゅうかい性せい気候きこうと砂漠さばくの気候きこうという両りょう極端きょくたんな気候きこうに適合てきごうするものでなければならなかった。白しろをはじめとする明あかるい色彩しきさいは、熱ねつを反射はんしゃする。壁かべはプライバシーのためだけでなく、日除ひよけとしての役割やくわりも果はたすのである。また、ヨーロッパではバウハウス様式ようしきの重要じゅうような要素ようそであった、採光さいこう用ようのガラス張がらすばりの大おおきな区画くかくは、照てりつける熱ねつや光ひかりを余あまり取とり入いれずに済すむように、奥おくまった小ちいさな窓まどに置おき換かえられた。

西側にしがわには長ながく狭せまいバルコニーが配置はいちされ、その真上まうえにはさらにバルコニーが載のる形かたちで陰かげを作つくっている。このバルコニーは住民じゅうみんに海うみからの微風びふうを届とどけてくれる。傾斜けいしゃのある屋根やねは平坦へいたんな屋根やねに置おき換かえられ、その屋根やねは住民じゅうみんたちが晩ばんに涼すずんだり、社交しゃこうの場ばとして用もちいるための共用きょうようスペースにもなった。後のちにはピロティが採用さいようされ建造けんぞう物ぶつ群ぐんは柱はしらの上うえに立たてられた。それによって建物たてものの下したを風ふうが通とおりぬけアパートメントを冷却れいきゃくしてくれるだけでなく、子供こどもたちに遊あそび場ばを提供ていきょうすることにもなった。

影響えいきょう

数すう百ひゃくに及およぶ新あたらしい建造けんぞう物ぶつ群ぐんで用もちいられた建築けんちく様式ようしきや建設けんせつ手法しゅほうは、この近代きんだい的てきな都市としにある特徴とくちょう的てきな生活せいかつ文化ぶんかを付つけ加くわえる形かたちになった。建造けんぞう物ぶつのほとんどはコンクリート製せいのため、暑あつさを視野しやに入いれていたその革新かくしん的てきなデザインにもかかわらず、夏なつには耐たえがたい暑あつさになるのである。そのため、テルアビブの住民じゅうみんたちは、夕方ゆうがたになると通とおりに繰くり出だし、建物たてものの間あいだにある小ちいさな公園こうえんや急増きゅうぞうしたカフェへと足あし繁しげく通かよい、夕涼ゆうすずみを楽たのしんだ。この伝統でんとうはいまでもテルアビブのカフェに根付ねついている。

アパートメント・ブロックには、保育ほいく所しょ、郵便ゆうびん局きょく、店舗てんぽ、洗濯せんたく屋やなど様々さまざまなサービス業ぎょうが入はいっている。また、土どと接点せってんを持もつことが極度きょくどに重要じゅうようなことと見みなされていることから、住民じゅうみんたちは建物たてものの隣となりや背後はいごの区画くかくに自身じしんの菜園さいえんを持もつことが奨励しょうれいされている。このことは、概がいして様々さまざまな文化ぶんかや出自しゅつじの異ことなる難民なんみんたちで構成こうせいされていた住民じゅうみんたちに、共同きょうどう体たいの感覚かんかくを植うえ付つけた。

不幸ふこうなことに、建設けんせつ当時とうじ以降いこうの建造けんぞう物ぶつ群ぐんの多おおくは、廃墟はいきょといってよい状態じょうたいになるまで顧慮こりょされてこなかったし、そうして放置ほうちされたものの中なかには建築けんちく上じょうの古典こてんと言いいうるものも含ふくまれていた。さらには、保護ほご政策せいさくが定さだめられるよりも前まえに破壊はかいされてしまったものもある。

とはいえ、多おおくは既すでに本来ほんらいの姿すがたに修復しゅうふくされており、少すくなくとも保護ほごや修復しゅうふくの対象たいしょうになっている建造けんぞう物ぶつは1500件けんにもなる。

登録とうろく基準きじゅん

この世界せかい遺産いさんは世界せかい遺産いさん登録とうろく基準きじゅんのうち、以下いかの条件じょうけんを満みたし、登録とうろくされた（以下いかの基準きじゅんは世界せかい遺産いさんセンター公表こうひょうの登録とうろく基準きじゅんからの翻訳ほんやく、引用いんようである）。

• (2) ある期間きかんを通つうじてまたはある文化ぶんか圏けんにおいて、建築けんちく、技術ぎじゅつ、記念きねん碑ひ的てき芸術げいじゅつ、都市とし計画けいかく、景観けいかんデザインの発展はってんに関かんし、人類じんるいの価値かちの重要じゅうような交流こうりゅうを示しめすもの。
• (4) 人類じんるいの歴史れきし上じょう重要じゅうような時代じだいを例証れいしょうする建築けんちく様式ようしき、建築けんちく物ぶつ群ぐん、技術ぎじゅつの集積しゅうせきまたは景観けいかんの優すぐれた例れい。

ギャラリー

テルアビブには4000以上いじょうのバウハウス様式ようしきの建造けんぞう物ぶつ群ぐんがある。そのうち、特とくに有名ゆうめいなものはロスチャイルド大通おおどおりにある。

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  エステル劇場げきじょう（映画えいが館かん）。現在げんざいはホテル。
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  Pagoda House
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  Polishuk House
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  Thermometer house
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  Yitzhaki House（建築けんちく家か: Pinhas Hitt, 1933年ねん）。温室おんしつで分断ぶんだんされている2棟むねの住宅じゅうたくで互たがいに鏡かがみ写うつしになっている。
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  ロスチャイルド大通おおどおり106番地ばんち

Kikar Levana

関連かんれん項目こうもく

• テルアビブ
• バウハウス

外部がいぶリンク

• テルアビブ市しによる「白しろい都市とし」の説明せつめい（英語えいご）
• テルアビブのバウハウス様式ようしきの建造けんぞう物ぶつ群ぐんの写真しゃしん