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テルル128 (Tellurium-128・128Te) とは、テルルの同位体の1つ。
128Teは、天然に存在するテルルの31.74%を占める同位体である。これは130Teの34.08%に次いで多くを占める同位体である。128Teは厳密には放射性同位体であるが、その半減期は2.2×1024年[注釈 1]と極端に長く、放射性崩壊が確認されている核種では最長の寿命を持つ[1]。これは宇宙の年齢の約160兆倍も長く、1秒に1個の128Teの崩壊を観測するためには、計算上2万トン以上の128Te塊を用意しないといけない[注釈 2]。半減期がこれほど極端に長いのは、二重ベータ崩壊という極めて稀な崩壊モードを取るためである。128Teの結合エネルギーは8448.74keV[2]であるが、128Teの同重体で原子番号の1つ大きい128Iは8445.48keV[3]であり、差は-3.34keVである。通常のベータ崩壊を起こすには親核種より娘核種の結合エネルギーが大きくなければならず、結合エネルギーの差が負となる関係はベータ崩壊を起こさない。しかし、原子番号が2つ大きい128Xeは8443.30keV[4]と、差が5.44keVと正の値をとる。このような場合では、128Te原子核の2個の中性子がそれぞれ1個ずつ電子と反電子ニュートリノを放出し、2個の陽子に変化して128Xeへと崩壊する。このような崩壊モードを二重ベータ崩壊と呼ぶが、この現象は極めて稀にしか発生しない。
なお、130Teも半減期が7.9×1020年という極端に寿命の長い放射性同位体である。これは、安定同位体を持ちつつも、安定同位体より放射性同位体の割合が多い元素であることを示している。このような元素はテルルの他にレニウムとインジウムしか知られていない珍しいものである。ただし、比較される核種である187Reは412億 (4.12×1010) 年、115Inは441兆 (4.41×1014) 年であり、それらと比べれば128Teや130Teは桁違いに長い[1][注釈 3]。
128Teの親核種には128Iと128Sbが知られている。両者および128Sbの親核種のいずれもが短命な核種であり、人工的に生成される放射性同位体である[2][3][5]。128Iは半減期24.99分をもってその6.9%が陽電子放出によって128Teに崩壊する。ちなみに残りの93.1%はベータ崩壊によって128Teと同じ128Xeへと崩壊する。128Sbは半減期9.01時間をもって100%がベータ崩壊によって128Teに崩壊する[1]。
また、128Teには核異性体である128mTeが存在し、半減期0.0000037秒を持って核異性体転移によって128Teへと崩壊する[1]。
また、原子炉や核兵器において中性子線による核分裂反応で生じる核分裂生成物の1つでもある。235Uでは1.7×10-6、239Puでは4×10-7の確率で発生する[6]。
128Teが二重ベータ崩壊することは、1988年にW.J. Linらによって発見された。Linらは、カナダのケベック州に産出する年代の古いテルルの鉱物を調べた。テルル化ニッケルの組成を持つメロネス鉱 (Melonite・NiTe2) 、およびテルル化鉛の組成を持つテルル鉛鉱 (Altaite・PbTe) に含まれる128Xeの同位体組成比を計測した結果、128Teの半減期が算出されたが、このときの値は1.8×1024年と現在の値より小さなものとなっている。また、このときには同時に130Xeから130Teの半減期も求められた[7]。
- ^ あえて漢数字表記をすれば2秭2000垓年であり、一般的に使われている命数法で言えば2.2×1兆×1兆年となる。
- ^ 半減期と原子量から、1gの128Teは4.7×10-11Bqの放射能を持つ事が分かる。詳しい計算はベクレルの項目も参照。
- ^ なお、テルルの安定同位体とされている6個の核種も、未確認であるが非常に半減期の長い放射性同位体である可能性がある。もしそれら全てが放射性同位体と確認された場合は、これまでに挙げた事情が適用できなくなる。