トシ (アステカ神話しんわ)

Telleriano-Remensis絵え文書ぶんしょに描えがかれたトシ

トシ（Toci）は、アステカ神話しんわの女神めがみ。老おいた地ち母はは神しんであり、癒いやしの女神めがみでもある。

「トシ」とはナワトル語ごで「我々われわれの祖母そぼ」を意味いみする。

トシはさまざまな形容けいよう語句ごくを持もつ。『フィレンツェ絵え文書ぶんしょ』によれば、テテオ・インナン（teteo innan「神かみ々の母はは」）、トラリ・イヨロ（tlalli iyollo「大地だいちの心臓しんぞう」）などを別名べつめいとして持もつ。

ベルナルディーノ・デ・サアグンによれば、トシはテマスカルテシ、すなわちテマスカル（蒸むし風呂ぶろ小屋こや）の祖母そぼという別名べつめいを持もち、産婆さんばや治療ちりょう者しゃの守護神しゅごじんであった。トシはしばしば浄化じょうかの女神めがみであるトラソルテオトルと同一どういつ視しされ、図像ずぞう上じょうもトラソルテオトルと同様どうように顔かおに黒くろい印しるしがあり、木綿もめんの紡錘ぼうすいを頭あたま飾かざりにつけている。しかし同時どうじに戦たたかいの神かみでもあり、盾たてや弓矢ゆみやを手てにしている。

メシカのメキシコ盆地ぼんちへの移住いじゅうの伝説でんせつでは、メシカがコルワカンに住すんだとき、ウィツィロポチトリはメシカにコルワカンの主あるじの娘むすめのひとりを自分じぶんに仕つかえる生いき神がみとして招まねくように命令めいれいした。娘むすめがやってくるとメシカは彼女かのじょを生贄いけにえにして、その皮かわをはぎ、メシカの若者わかものに着きせてトシの格好かっこうをさせてウィツィロポチトリに仕つかえさせた。メシカに招まねかれてやってきたコルワカンの主あるじはこれを見みて大おおいに怒いかり、メシカをテスココ湖この湿地しっちまで追おいだした。その結果けっかメシカは湖みずうみの中なかの島しまに住すみ、そこにテノチティトランの町まちを作つくった。

アステカ暦れきではシウポワリのオチパニストリ（第だい11月がつ、グレゴリオ暦れきの9月がつごろ）にトシの祭まつりがあり、これは収穫しゅうかく祭さいでもあった。この祭まつりでは産婆さんばが女性じょせいにトシの格好かっこうをさせて生贄いけにえとして捧ささげた。

参考さんこう文献ぶんけん

• Miller, Mary; Taube, Karl (1993). The Gods and Symbols of Ancient Mexico and the Maya: An Illustrated Dictionary of Mesoamerican Religion. Thames & Hudson. ISBN 0500050686 （日本語にほんご訳やく：『図説ずせつマヤ・アステカ神話しんわ宗教しゅうきょう事典じてん』東洋とうよう書林しょりん、2000年ねん）
• Read, Key Almere; González, Jason J. (2000). Handbook of Mesoamerican Mythology. ABC-CLIO, Inc. ISBN 0874369983