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女神めがみ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
ギリシア神話しんわ女神めがみアプロディーテー

女神めがみ(めがみ)とは、女性じょせい姿すがたかみのこと。

解説かいせつ

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多神教たしんきょうにおいては、往々おうおうにしてかみにも性別せいべつ存在そんざいし、そのうち女性じょせいかみ女神めがみしょうする。たいして男性だんせいかみ男神おかみ(おがみ)とぶ。

女性じょせい子供こどもむという属性ぞくせいゆえに原始げんし宗教しゅうきょう神話しんわ世界せかいでは「ははしん」として表現ひょうげんされることがおおい(NEUMANN・p.95、後述こうじゅつ論文ろんぶん)。日本にっぽん土偶どぐうもヨーロッパからシベリアにいたるユーラシア大陸たいりくにおいて後期こうき旧石器時代きゅうせっきじだい以後いごひろ分布ぶんぷする狩猟しゅりょう採集さいしゅう漁労ぎょろうみん女神めがみぞう一環いっかんとらえられている(後述こうじゅつ論文ろんぶん)。狩猟しゅりょう採集さいしゅう漁労ぎょろうみん女神めがみ信仰しんこうは、農業のうぎょうみん女神めがみ信仰しんこう根本こんぽんてきことなり、農業のうぎょう社会しゃかいではははしん信仰しんこう顕著けんちょられるが、前者ぜんしゃ信仰しんこうでは大地だいち生産せいさんせい生命せいめいりょくたいする認識にんしき信仰しんこうはない(後述こうじゅつ論文ろんぶん)。前者ぜんしゃ信仰しんこう重要じゅうようなのは、獲物えものれるかどうかであり、それはちょう自然しぜんてきちから左右さゆうされる(後述こうじゅつ論文ろんぶん)。土偶どぐう出産しゅっさん多産たさんねが気持きもちからつくられた「おさん女神めがみ」の性格せいかくをもち、子供こども老後ろうごささえとして必要ひつようであり、土偶どぐうはおさん女神めがみ同時どうじに「いえしん」としての性格せいかくももつ(『古代こだいがく研究けんきゅう 159』 古代こだいがく研究けんきゅうかい 2002ねん12月、p.1に所収しょしゅうすみはやし文雄ふみお土偶どぐう女神めがみ』)。すみはやし文雄ふみおは、土偶どぐうはあくまで多産たさん信仰しんこう基本きほんであり、「ものす」性格せいかくと「もの作物さくもつ)の成長せいちょうまもる」性格せいかくゆうした女神めがみ信仰しんこうは、農耕のうこう社会しゃかい日本にっぽんでは、弥生やよい古墳こふん時代じだい以降いこう)からであるとする(『古代こだいがく研究けんきゅう 159』 p.4)。そしてイザナミ関連かんれんした神話しんわかんしても、稲作いなさく農業のうぎょうとの接点せってんがないことから(ははしんてき性格せいかくはみられるものの)、はら神話しんわ縄文じょうもん時代じだい東南とうなんアジアからつたえられたもので、のちに高天原たかまがはら神話しんわまれたとする(『古代こだいがく研究けんきゅう 159』 p.7)。一方いっぽうで、てんあきら大神おおがみほうもの農業のうぎょう社会しゃかい女神めがみとしての性格せいかくをもち、農耕のうこう守護しゅごしゃであるてんあきら大神おおがみ農耕のうこう妨害ぼうがいしゃであるスサノオ対立たいりつという信仰しんこう成立せいりつする(『古代こだいがく研究けんきゅう 159』 pp.8 - 9)。

うつくしいわか女性じょせいや、ふくよかな体格たいかくははおもわせる姿すがたのものがおおい。なかにはモイライよう年老としおいた女神めがみや、カーリーようおそろしい姿すがたものもいる。大地だいち性愛せいあいつかさどかみは、各地かくちにおいてたいてい女神めがみである。それらは往々おうおうにして母性ぼせいむすびつけられ、まとめて「ははしん」とばれる。かみ人間にんげんのような性別せいべつがあるかどうかは神学しんがくにおいては議論ぎろん研究けんきゅう対象たいしょうであり、かみには性別せいべついとする立場たちばからは、たん外見がいけん人間にんげん女性じょせい酷似こくじするかみとされる。

アブラハムの宗教しゅうきょうのような一神教いっしんきょうにおいては、唯一ゆいいつ存在そんざいであるかみには性別せいべつ存在そんざいせず、したがって女神めがみ存在そんざいしない。ちちなるかみというかたも、「ちち」とはちから象徴しょうちょうとされ、さらにキリスト教きりすときょうにおいてはイエス・キリストが「アッバ」(ヘブライで「おとうちゃん」という意味いみ幼児ようじ)とかみんでいたことから、したしさ、親密しんみつさをあらわすものとされ、性別せいべつしてはいないとされる。一方いっぽうフランス革命かくめい以降いこうフランスにおいては、キリストきょうからだっするかんがえにおいて、信仰しんこう対象たいしょうではなくたんなる象徴しょうちょうとして、女神めがみたてまつられた(自由じゆう女神めがみ)。またヨーロッパの多神教たしんきょう時代じだい民話みんわなどを、近代きんだい以降いこう翻案ほんあんするにあたっても、具体ぐたいてきかみからたんなる女神めがみへとえられる場合ばあいおおい(かねおのなど)。このためヨーロッパでは各地かくち女神めがみぞう散見さんけんする。また、カトリックにおいては聖母せいぼマリア崇敬すうけい対象たいしょうとされ、女神めがみてきあつかっているとられることもある。

日本にっぽん神話しんわ高天原たかまがはら神話しんわ)における役割やくわり

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性差せいさ存在そんざいすることによって、一神教いっしんきょうのような男性だんせい優位ゆうい社会しゃかい主張しゅちょうするながれとはことなる物語ものがたり形成けいせいつながっている。れいとして、イザナギイザナミ婚姻こんいんたんにおいて、おとこからさきこえをかけなかったために失敗しっぱいしたといったながれがあり、一見いっけんすると男性だんせい優位ゆうい物語ものがたりとしてかたられているようにえるが、そのまれたおとこしんであるヒルコはいし(ながし)、女神めがみたるヒルメをてているところは女性じょせい優遇ゆうぐうといえるものであり、河合かわい隼雄はやお著書ちょしょ中空なかぞら構造こうぞう日本にっぽん深層しんそう』において、男性だんせい優位ゆうい女性じょせい優位ゆうい物語ものがたり交互こうごかたらせることで、カウンターバランスを成立せいりつさせ、男女だんじょたがいに欠点けってんおぎなうことで安定あんていはかっているとした社会しゃかい思想しそう神話しんわによってかたらせているとしている。またアマテラススサノオの「きよしんしめ勝負しょうぶ」では、男神おかみしたアマテラス=女神めがみたいして、女神めがみしたスサノオ=男神おかみたせている。女神めがみ存在そんざいは、一方いっぽうせい優遇ゆうぐうするといった一辺倒いっぺんとう社会しゃかい否定ひていつながっているともいえよう。

かみすめらぎ正統せいとう』に「しん(おかみ)かげしん(めがみ)」と表記ひょうきされているように、陰陽いんよう思想しそうしたでは女神めがみは「かげ」に比定ひていされる(『かみみつるないではかげしん表記ひょうき度々たびたびもちいられている)。また、日本にっぽんでは女神めがみ呼称こしょうほかに「ひめしん(ひめがみ)」という言葉ことばもちい、これにたいして男神おかみを「彦神(ひこがみ)」と呼称こしょうする(『広辞苑こうじえん だいろくはん岩波書店いわなみしょてんより)。

山神さんじん女神めがみ関係かんけい

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日本にっぽんでは山神さんじん女神めがみ場合ばあいおおく(後述こうじゅつしょ p.103)、山神さんじん男神おかみ場合ばあい狩猟しゅりょう伐採ばっさい芸能げいのうつかさどる。みず生命せいめいはぐくもりやま基本きほんてき女性じょせい原理げんりとして表現ひょうげんされるため、やま男女だんじょはいると女神めがみ嫉妬しっとしたり、女性じょせい入山にゅうざん自体じたいきらはなしおおいとされ、山神さんじん生産せいさんつかさど以上いじょう日本語にほんごの「ヲンナ」は「ヲミナ」=むのであるととらえられている[1]

柳田やなぎだ國男くにおは『いもうとちから』において、霊山れいざんにおける女性じょせいりをきんじる結界けっかいがんは、おおくは、やま中腹ちゅうふくにあり、本当ほんとう入山にゅうざんきんじていたのなら、中腹ちゅうふく結界けっかいがんくのは不自然ふしぜんであり、むしろきんじていたのではなく、あしよわ女性じょせい頂上ちょうじょうまでのぼらずとも参拝さんぱいできるようにとの配慮はいりょからと考察こうさつする。

女神めがみわらいの関係かんけい

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ギリシア神話しんわにはかなしみにしずんだ大地だいち女神めがみデメテルバウボ英語えいごばん[2]というおんなみずからの性器せいきせ、わらわせ、大地だいち生産せいさんりょく回復かいふくさせたはなしがあり、日本にっぽん神話しんわにもアメノウズメ性器せいきせ、かみ々がわらい、アマテラスがくちひらいたはなしられ、おこれる自然しぜん(デメテルやアマテラス)に豊穣ほうじょう多産たさん回復かいふくさせるためにおこなはなし類型るいけいであり、自然しぜん再生さいせいさせることは、女神めがみわらわせ、機嫌きげんもどすことで、そうした神話しんわ女性じょせいせることで女神めがみわらいをる)として表現ひょうげんされたものと松本まつもと信広のぶひろ解釈かいしゃくしている[3]関連かんれん不明ふめいだが、古墳こふん時代じだい女性じょせい埴輪はにわなかには性器せいき強調きょうちょうしたものがみられる[4]。また、「ケルト世界せかいのかなりふる神話しんわてき存在そんざい」で、「慣例かんれいでシーラ・ナ・ギグとばれて」いる存在そんざいは、「これについての文字もじ資料しりょう皆無かいむであるが、創造そうぞう破壊はかい女神めがみとして紹介しょうかいされることがおおい」が、「アメノウズメとおなじような猥褻わいせつ動作どうさをしている」[5]

女神めがみかず

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古事記こじき』にしるされる280はしら前後ぜんこう神武じんむ東征とうせい以後いごのぞく)のうち性別せいべつかみ性別せいべつしょうかみ男神おかみのぞいた女神めがみかずは65はしら前後ぜんこうである。このうちオオゲツヒメ殺害さつがいされており(『』ではウケモチ)、またクシナダヒメ姉妹しまいしんヤマタノオロチころされているため、厳密げんみつかず不明ふめい全体ぜんたいすうやく4ぶんの1とギリシア神話しんわ比較ひかくしてすくないが、これは日本にっぽん神話しんわにおいて無性むしょう性別せいべつしょうかみがギリシア神話しんわくらべておおいためであり、れいとして、はちしゅ雷神らいじん因幡いなば白兎しろうさぎ、サヒモチのかみ=サメなど人外じんがいしん豊富ほうふにいる。本州ほんしゅう大倭おおやまとゆたか秋津島あきつしま)=てん虚空こくう豊秋とよあきべつも『』における男神おかみ女神めがみじゅんからいえば、女神めがみだが、明記めいきされていないなど不明瞭ふめいりょう部分ぶぶんがある。

備考びこう

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  • 女神めがみねたはしらというのもあり、たとえば、かみとしての四国しこくは、からだひとつにかおよっつで、かおにはそれぞれめいがあり、おとこめい2、おんなめい2で男女だんじょたいとなっていると『古事記こじき』には記述きじゅつされている(れい伊予いよこくかみめいはエヒメとしるされ、女神めがみとしてあつかわれる)。
  • もと女神めがみまつっていたものが、仏教ぶっきょう厳密げんみつには空海くうかい)の影響えいきょうによって男神おかみとされるようになったれいとしては、伏見ふしみ稲荷いなり神社じんじゃがある[6]ぎゃく観音かんのん菩薩ぼさつなどのように、男神おかみだったのが女神めがみとして信仰しんこうされるようになったれいもある。

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ 千葉ちばこうればおそろしい 日本人にっぽんじん風習ふうしゅう河出かわで文庫ぶんこ 2016ねん ISBN 978-4-309-41453-9 p.103.
  2. ^ バウボ』 - コトバンク
  3. ^ 古川ふるかわのりむかしばなしのなぞ あのとこの神話しんわがく角川かどかわソフィア文庫ぶんこ 2016ねん ISBN 978-4-04-400080-6 p.104.
  4. ^ 女性じょせいはにわ そのよそおいとしぐさ』 埼玉さいたま県立けんりつ博物館はくぶつかん 1998ねん p.28.
  5. ^ フィリップ・ヴァルテール『ユーラシアの女性じょせい神話しんわ-ユーラシア神話しんわ試論しろんⅡ』(渡邉わたなべ浩司こうじ渡邉わたなべ裕美子ゆみこやく中央大学ちゅうおうだいがく出版しゅっぱん2021ねん ISBN 978-4-8057-5183-1、202ぺーじ
  6. ^ せき裕二ゆうじ寺社じしゃかたはた正体しょうたい祥伝社しょうでんしゃ新書しんしょ 2018ねん ISBN 978-4-396-11553-1 pp.33 - 36.

関連かんれん項目こうもく

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