ノのースウエスト航空すうえすとこうくう327便びん

ノのースウエスト航空すうえすとこうくう327便びん

当該とうがい機体きたい N543US
出来事できごとの概要がいよう
日付ひづけ	2004年ねん6月がつ29日にち (2004-06-29)
概要がいよう	テロリストによるハイジャックの疑うたがい 人種じんしゅパニック
現場げんば	空中くうちゅう
乗客じょうきゃく数すう	不明ふめい
乗員じょういん数すう	不明ふめい
負傷ふしょう者しゃ数すう	0
生存せいぞん者しゃ数すう	不明ふめい
機種きしゅ	ボーイング757-200
運用うんよう者しゃ	ノのースウエスト航空すうえすとこうくう
機体きたい記号きごう	N543US
出発しゅっぱつ地ち	デトロイト・メトロポリタン・ウェイン・カウンティ空港くうこう
目的もくてき地ち	ロサンゼルス国際こくさい空港くうこう

ノのースウエスト航空すうえすとこうくう327便びんは、2004年ねん6月29日にち、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく・ミシガン州しゅうロムルスのデトロイト・メトロポリタン・ウェイン・カウンティ空港くうこうからカリフォルニア州しゅうロサンゼルスのロサンゼルス国際こくさい空港くうこうまでのフライトで、ボーイング757-200型がた機きN543USが使用しようされた。

サンディエゴでの仕事しごとに向むかう13人にんのシリア人ひとミュージシャンのグループの行動こうどうを、何人なんにんかの乗客じょうきゃくが不審ふしんに感かんじ、テロ攻撃こうげきもしくはそのリハーサルであるドライランなのではないかという懸念けねんを持もった。そのような乗客じょうきゃくの一人ひとりであるジャーナリストのアニー・ジェイコブセンがこの件けんについての記事きじを書かき、全米ぜんべいで注目ちゅうもくされるようになった。

『ワシントン・タイムズ』紙しが情報じょうほう自由じゆう法ほうに基もとづく情報じょうほう公開こうかいを請求せいきゅうし、国土こくど安全あんぜん保障ほしょう省しょう監察かんさつ官かんによる報告ほうこく書しょの修正しゅうせい版ばんが2007年ねん5月がつに発表はっぴょうされた。

事件じけん

当該とうがい機きには、離陸りりく前まえに14人にんの中東ちゅうとう系けいの男性だんせいが搭乗とうじょうした。14人にんのうち13人にんはアメリカに短期たんきビザで滞在たいざいしているシリア国籍こくせきの人物じんぶつで、現金げんきんで購入こうにゅうした片道かたみち航空こうくう券けんを使用しようしていた。ビザの期限きげんは6月がつ10日とおかで、延長えんちょう申請しんせい中ちゅうだった（最終さいしゅう的てきに延長えんちょうが認みとめられた）。

フライト中ちゅう、夫おっととともに搭乗とうじょうしていた『ウーマンズ・ウォールストリート』の記者きしゃアニー・ジェイコブセンは、彼かれらが不審ふしんな行動こうどうをしていると感かんじた。ジェイコブセンの主張しゅちょうによれば、客室きゃくしつ乗務じょうむ員いんの一人ひとりが、男おとこたちが不審ふしんな行動こうどうをしていると思おもったと機内きないのスカイマーシャルに通知つうちしていた。しかし、そのスカイマーシャルによれば、客室きゃくしつ乗務じょうむ員いんは単たんにジェイコブセンに対たいする懸念けねんを伝つたえてきただけだったと述のべた。ジェイコブセンとその夫おっとは、自分じぶんたちの懸念けねんが真剣しんけんに受うけ取とられていないと感かんじ、ますます声こえを上あげるようになった。スカイマーシャルは、この2人ふたりの方ほうこそテロリストではないかと考かんがえ、2人ふたりの身元みもとを明あきらかにするために、それをき出きだそうとした。

ジェイコブセンは、『ウーマンズ・ウォールストリート』に"Terror in the Skies, Again?"というこの一見いっけんについての一連いちれんの記事きじを書かき、同どう便びんの他ほかの乗客じょうきゃくもジェイコブセンの話はなしを裏付うらづけていると主張しゅちょうした。その1人ひとりは、自身じしんが目撃もくげきしたものに大変たいへん恐怖きょうふし、もう飛行機ひこうきには乗のらないと語かたった。他たの乗客じょうきゃくは、死しを覚悟かくごしたと語かたった。同どう便びんの乗客じょうきゃくの1人ひとりが、『ワシントン・タイムズ』紙しにこの一いち件けんについて確認かくにんした。

CNNのアーロン・ブラウンによると、この一いち件けんをめぐる議論ぎろんはインターネット・ミームとなった。ジェイコブセンの記事きじは、中国ちゅうごく語ご、スワヒリ語ご、ドイツ語ごなど多おおくの言語げんごに翻訳ほんやくされ、世界中せかいじゅうに広ひろまった。

ジェイコブセンは『ウーマンズ・ウォールストリート』の記事きじで、彼女かのじょが不審ふしんに思おもった行動こうどうを詳くわしく述のべている。彼女かのじょによると、搭乗とうじょう前まえ、男おとこたちはお互たがいに会話かいわをせず、グループのようには見みえなかったという。搭乗とうじょう中ちゅう、男おとこたちは他たの男おとことアイコンタクトを取とり、同意どういしたかのようにうなずいていたという。そのうちの1人ひとりは、整形せいけい外科げか用ようの履物はきものを履はいており、離陸りりく直前ちょくぜんに「席せきを替かえたい」と大声おおごえで訴うったえていた。飛行ひこう中ちゅうに1度ど、1人ひとりの男おとこが大おおきなマクドナルドの袋ふくろをトイレに持もって行いったが、戻もどってきたときには空そらになっており、他たの男性だんせい2人にんとすれ違ちがう際さいに親指おやゆびを立たててサインをしていた。別べつの男おとこは、布ぬのの塊かたまり、カメラ、携帯けいたい電話でんわなどの物体ぶったいをトイレに持もって行いった。飛行ひこう中ちゅう、男おとこたちは一斉いっせいに立たち上あがってトイレに向むかい、2・3人にんのグループに分わかれて通路つうろに集あつまっていた。スーツ姿すがたにサングラスをかけた男おとこは、コックピットのドアから1フィートほど離はなれたところに立たっていた。機長きちょうが着陸ちゃくりくの開始かいしをアナウンスすると、7人にんの男おとこたちは一斉いっせいに立たち上あがり、それぞれ4分ふんほどかけてトイレに向むかった。最後さいごにトイレから出でた男おとこは、他たの男おとことすれ違ちがうときに人差ひとさし指ゆびで首筋くびすじをなぞりながら「ノー」と言いったように見みえた。

飛行機ひこうきがロサンゼルスに到着とうちゃくすると、不審ふしんな行動こうどうをしていたとジェイコブセンが主張しゅちょうした14人にんは尋問じんもんと身元みもと確認かくにんのために拘留こうりゅうされた。連邦れんぽう航空こうくう保安ほあん局きょくは、彼かれらがサンディエゴのカジノへ演奏えんそうのために向むかっていたシリアのバンドメンバーであると結論けつろんづけた。しかし、ジェイコブセンは、航空こうくう保安ほあん局きょくは14人にんのうち2人にんを簡単かんたんに調査ちょうさしただけで、空港くうこうを出でた後のちに男おとこたちがどこに行いったか誰だれも特定とくていしていないと主張しゅちょうしている。シクアン・カジノ&リゾートは、その2日にち後ごにシリアの歌手かしゅヌール・マンナが自身じしんのバックバンドとともに来きてそこでパフォーマンスを行おこなったことを確認かくにんした。

報告ほうこくへの反応はんのう

後日ごじつ、『タイム』誌しのインタビューで、この便びんに搭乗とうじょうしていたスカイマーシャルは次つぎのように述のべている。「メインパートナーや私わたしは、飛行機ひこうきや乗客じょうきゃくに対たいする差さし迫せまった脅威きょういを感かんじたことは一いち度どもありませんでした。（中略ちゅうりゃく）その乗客じょうきゃくが327便びんでの行動こうどうに不安ふあんを感かんじたのは理解りかいできますが、そのような行動こうどうは異常いじょうではありますが、セキュリティ上じょうの問題もんだいではありませんでした。飛行機ひこうきへの脅威きょういはありませんでした。」監察かんさつ官かんが作成さくせいした国土こくど安全あんぜん保障ほしょう省しょうの報告ほうこく書しょによると、このスカイマーシャルは当該とうがいのシリア人じんの旅行りょこうビザの期限きげんが切きれていることには気きづいていたが、その情報じょうほうを上司じょうしに報告ほうこくしていなかったことが明あきらかになった。

さらに、そのエアマーシャルたちは、ジェイコブセンが中東ちゅうとう系けいの人物じんぶつの存在そんざいに過剰かじょう反応はんのうし、他たの乗客じょうきゃくをパニックに陥おとしいれ、より大おおきな問題もんだいを引ひき起おこす危険きけん性せいがあったと考かんがえていた。また、ジェイコブセンの行動こうどうが、どの人物じんぶつがエアマーシャルであるかをテロリストが特定とくていするために行いったものである可能かのう性せいを懸念けねんし、ジェイコブセンがフライト全体ぜんたいを危険きけんにさらす可能かのう性せいがあったと述のべている。

国土こくど安全あんぜん保障ほしょう省しょうの監察かんさつ官かん事務所じむしょは、32か月げつ間あいだに渡わたって327便びんの一いち件けんの調査ちょうさを行おこなったが、その報告ほうこく書しょは機密きみつ扱あつかいとなっている。しかし、公開こうかいされた修正しゅうせい版ばんの報告ほうこく書しょにより、この飛行機ひこうきに乗のっていた音楽おんがくグループのプロモーターが、2004年ねん1月がつにも同様どうようの事件じけんに巻まき込こまれていたことが明あきらかになった。

『ワシントン・タイムズ』紙しの記事きじでは、ノのースウエスト航空すうえすとこうくう327便びんの一いち件けんが、民間みんかん機きを含ふくむ将来しょうらいのテロ攻撃こうげきのための「ドライラン」であると一部いちぶのエアマーシャルが考かんがえていると主張しゅちょうしたが、そのエアマーシャルの名前なまえや所属しょぞく、もしくは匿名とくめいであったのかについては記載きさいされていない。続報ぞくほうでは、「情報じょうほう自由じゆう法ほう」に基もとづく情報じょうほう開示かいじの請求せいきゅうをしたことを明あきらかにした。

航空機こうくうきパイロット組合くみあい連合れんごう(CAPA)の会長かいちょうのゲイリー・ベッチャーは、ジェイコブセンはおそらくドライランを目撃もくげきした可能かのう性せいが高たかく、自身じしんも似にたような経験けいけんを何なん度どもしていると述のべた。エアマーシャルのP・ジェフリー・ブラックは、327便びんの一いち件けんはテロのための調査ちょうさかドライランであるという自身じしんの見解けんかいを示しめした。アメリカン航空こうくうのパイロットのマーク・ボゴシアンは、ジェイコブセンが述のべたような事件じけんは、航空こうくう会社かいしゃの乗務じょうむ員いんが以前いぜんから知しっている「汚きたない小ちいさな秘密ひみつ」であると述のべた。

ジェイコブセンの元もとの記事きじは電子でんしメールで広ひろく拡散かくさんされた。都市とし伝説でんせつなどのファクトチェックを行おこなうWebサイト「スノープス」でジェイコブセンの主張しゅちょうの信憑しんぴょう性せいが議論ぎろんされたが、そこでは「虚偽きょぎ」と結論けつろん付つけられた。