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ハイブリッドHDD

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
SSHD Seagate 1000Gb

ハイブリッドHDD(ハイブリッドハードディスクドライブ、Hybrid HDD)は、ハードディスクドライブ以下いかHDD)にフラッシュメモリキャッシュメモリとして搭載とうさいした記憶きおく装置そうちである。SSHD(Solid State Hybrid Drive)とも表記ひょうきされる。

概要がいよう

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HDDは半導体はんどうたいメモリくらべてアクセスがおそく(とくシーク)、長年ながねんコンピュータ機器きき性能せいのうボトルネックとなっていた。また、プラッタとヘッドの駆動くどうモーター使つかっているので消費しょうひ電力でんりょくおおきく、ノートパソコンモバイル端末たんまつなどのようなバッテリー使つか機器ききの、駆動くどう時間じかんみじかさにつながっていた。物理ぶつりてき駆動くどうをするため情報じょうほう機器きき使つかわれている部品ぶひんなかではこわれやすいものの1つである。

この解決かいけつさくの1つに、ソリッドステートドライブ以下いかたんにSSD)によるHDDのえがある[1]。しかし、高速こうそくしょう電力でんりょくはかれる反面はんめん、SSDの容量ようりょう単価たんかはHDDにおと[1]。そのため、フラッシュメモリとHDD両方りょうほう特徴とくちょう高速こうそくしょう電力でんりょくだい容量ようりょう)をつ、ハイブリッドHDDが開発かいはつされた。

だい1世代せだい(2007ねん - 2008ねん

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だい1世代せだいのハイブリッドHDDでは、Windows Vista/7による高速こうそく機能きのうWindows ReadyDrive (en) の利用りよう前提ぜんていとなっている[2]。そのため、Vista以外いがいのOSでは、効果こうか発揮はっきできない[2]

動向どうこう評価ひょうか

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2007ねん9がつ内蔵ないぞうハイブリッドHDDは日本にっぽん国内こくない一般いっぱんには出回でまわっておらず、NECなどの一部いちぶノートパソコンに採用さいようされているにとどまった。またごくわずかな数量すうりょうながら、自作じさくけいショップで「内蔵ないぞうがたHDD」が限定げんてい販売はんばいされたが、開店かいてん直後ちょくご完売かんばいとなるなど一部いちぶのユーザーのあいだおおきな注目ちゅうもくあつめた。

2007ねん10がつ後半こうはんになって、シーゲイトからだい容量ようりょうフラッシュ搭載とうさいひんとしてははつの2.5インチハイブリッドHDD「Momentus 5400 PSD」シリーズが発売はつばいされ、12月にはサムスンからも販売はんばい開始かいしした。これにより、一般いっぱんユーザもハイブリッドHDDの入手にゅうしゅ簡単かんたんになった。しかし、自作じさくけい専門せんもんショップでもあつかっていない場合ばあいおおく、販売はんばいしている店舗てんぽすうかぎられていた。

2007ねん登場とうじょうしただい4世代せだいIntel Centrinoプラットフォームでは「Intel Turbo Memory」が導入どうにゅうされた[3]。これは通常つうじょうのHDDと専用せんようのフラッシュメモリをわせることでWindows ReadyDriveとWindows ReadyBoost利用りよう可能かのうにする[4]

2008ねんまつ時点じてんでサポートしているOSがWindows Vistaしか存在そんざいせず、またVista自身じしん普及ふきゅうりつひくさもあり、あまり普及ふきゅうしなかった。また、ストレージ容量ようりょうおおきい3.5インチがたハイブリッドHDDは普及ふきゅう価格かかくたい発売はつばいされず、注目ちゅうもくひくかった。さらに、実際じっさい性能せいのう向上こうじょうりつ通常つうじょうハイブリッドHDDとくらべて10%程度ていどとどまったことでユーザーへの訴求そきゅうりょくよわ[5]、SSDのてい価格かかくあいまって製品せいひん開発かいはつ一時いちじ中断ちゅうだんした。

だい2世代せだい(2010ねん - )

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2010ねん登場とうじょうしただい2世代せだいのハイブリッドHDDでは、キャッシュコントローラーがストレージに内蔵ないぞうされ、デバイスとしてのあつかいは通常つうじょうのHDD/SSDと同様どうようになる。そのため特別とくべつなOSの機能きのう必要ひつようとせず、シリアルATAインターフェイスが適合てきごうしさえすればよい。

速度そくどてきにはSSDにはおよばないものの、OSや使用しよう頻度ひんどたかいアプリ起動きどうについては、SSDとHDDのなかあいだ~80%程度ていど速度そくど実現じつげんすることにより、メリットをかんじられるものとなっている。

動向どうこう

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2010ねん5がつ、Seagateより、2.5インチハイブリッドHDD「Momentus XT」シリーズが発売はつばいされた[6]。2013ねんには3.5インチモデルも追加ついかされ、2015ねん現在げんざいではフラッシュメモリの容量ようりょうは8 GBとなっている。

東芝とうしばウェスタン・デジタルといったメーカーも2013ねん以降いこう相次あいついで製品せいひん[7]発表はっぴょうし、ハイブリッドHDD(メーカー呼称こしょうは「SSHD」「ソリッドステートハイブリッドディスク」)は製品せいひんジャンルのひとつとして定着ていちゃくしている。

類似るいじ技術ぎじゅつ

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2010ねんごろから、別々べつべつ市販しはんされているHDDとSSDをわせ、自分じぶんでハイブリッドHDDを構築こうちくできる自作じさくキットも登場とうじょうしている。HDDBOOSTなどの名称めいしょう販売はんばいされているこれらは、OSをさいインストールすることなくHDDの速度そくど向上こうじょうさせることができる(SSDはキャッシュとなり、みはSSD、HDD同時どうじおこなわれる)。

Intel 7 Series以降いこうのチップセット搭載とうさいでRAID機能きのう装備そうびした機種きしゅでは「Intel Smart Response Technology」が利用りよう可能かのうである。これはSSDをHDDのキャッシュとして利用りようするもので、ドライバーレベルのハイブリッドHDDともいえる。この進化しんかがたといえるのが、インテルOptaneメモリー・テクノロジー[8]およびAMD StoreMI[9]/FuzeDrive[10]となる。さらにRAIDコントローラー/カードメーカー各社かくしゃ標準ひょうじゅんあるいはオプションとしてIntelと同等どうとう機能きのう提供ていきょうしている[11]

利点りてん

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高速こうそくせい
フラッシュメモリは、ハードディスクに比較ひかくして、シーク動作どうさ回転かいてん時間じかんなどの時間じかんいにひとしい。このため頻繁ひんぱん要求ようきゅうされるデータ(とくにハードディスクない分散ぶんさんしているデータ)をフラッシュメモリにたくわえることで、データアクセスの高速こうそくはかることが可能かのう
高速こうそく起動きどう
フラッシュメモリは電源でんげんっても内容ないよう保持ほじされるので、コンピュータ機器きき電源でんげんる(シャットダウン休止きゅうし状態じょうたいへの移行いこうをする)さいに、再開さいかい必要ひつようなデータをフラッシュメモリにたくわえることで、次回じかいのOSの起動きどう高速こうそく可能かのう
しょう電力でんりょく
フラッシュメモリにないデータが要求ようきゅうされた場合ばあいや、みキャッシュがいちはいになった場合ばあいにだけプラッタ回転かいてんさせ、普段ふだん停止ていしさせることで大幅おおはばしょう電力でんりょくはかこと可能かのう。これにより、ノートパソコンとう駆動くどう時間じかんを、大幅おおはばばすことができるといわれる。またキャッシュ効果こうかにより、ヘッドのシーク動作どうさやモーター駆動くどう回数かいすうる。ただしプラッタを再度さいど回転かいてんさせるさいおおきな電力でんりょく必要ひつようとなるため、だい容量ようりょうのフラッシュメモリが搭載とうさいされていない場合ばあい効果こうかひくい。
しずかおんせい
HDDそのものの駆動くどうおさえられることから、せいおんにも効果こうかがある。
ねつ対策たいさく
HDDの駆動くどう時間じかんすくなければ、HDDの機械きかいてき動作どうさにより発生はっせいするねつ低減ていげんさせられる。よってそのぶん、コンピュータ機器きき機器ききないほか装置そうちへの影響えいきょう低減ていげんする(機器きき故障こしょうりつがる可能かのうせいがある)とともに、機器ききはいねつファンの回転かいてんすうおさえるかゼロにすることができ、せいおんせい向上こうじょうする場合ばあいがある。
たい衝撃しょうげきせい
システムが稼働かどうちゅうであっても、HDDのプラッタが回転かいてんしておらず、ヘッドがアンロードされている時間じかんがよりながくなること期待きたいされる。これにより、ストレージに衝撃しょうげきくわわった場合ばあい故障こしょうりつ低減ていげん期待きたいされる。

欠点けってん

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コスト増加ぞうか
フラッシュメモリと特別とくべつなコントローラチップを搭載とうさいするぶんどう容量ようりょうのHDDより10~20%ほど割高わりだかになる(だい1世代せだい場合ばあい)。
キャッシュデータの性能せいのう劣化れっか
HDD休止きゅうししている状態じょうたいでフラッシュメモリじょう存在そんざいしないデータをみだそうとするとHDDのスピンアップが必要ひつようとなり、そのぶんアクセスの遅延ちえんきる。
OSのサポートが必須ひっすだい1世代せだいのみ)
だい1世代せだいのハイブリッドHDDは対応たいおうOS以外いがいでは通常つうじょうのHDDとしてしか動作どうさせずそのメリットを享受きょうじゅできない。
おもなターゲットがノートパソコン
消費しょうひ電力でんりょく課題かだい改善かいぜんするため、ノートパソコンでの利用りようおも市場いちばターゲットとなっている。そのため、ハイブリッドHDDのメインストリームは2.5インチがたとなっている。3.5インチがた製品せいひん存在そんざいするが、品種ひんしゅすくない。

製品せいひん

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だい1世代せだい

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だい2世代せだい

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脚注きゃくちゅう

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  1. ^ a b だい106かい ハードディスクの最新さいしん動向どうこう2 -劇的げきてき進化しんかとこれから-”. TDK. 2023ねん7がつ16にち閲覧えつらん
  2. ^ a b [WinHEC 2006#05]ゲーマーにも無関係むかんけいではない,Windows Vista時代じだいのPCストレージ高速こうそく機能きのう”. 4gamer.net. 2023ねん7がつ16にち閲覧えつらん
  3. ^ “Santa Rosa”ののこ部分ぶぶんをチェック”. PC Watch. もと麻布あざぶ春男はるお週刊しゅうかんPCホットライン. 2023ねん7がつ16にち閲覧えつらん
  4. ^ 位置付いちづけが明確めいかくになったHDDキャッシュ「Robsonテクノロジ」”. PC Watch. もと麻布あざぶ春男はるお週刊しゅうかんPCホットライン. 2023ねん7がつ16にち閲覧えつらん
  5. ^ 日本にっぽんHDD協会きょうかい2008ねん4がつセミナーレポート~HDDたいSSD、その行方ゆくえ議論ぎろん”. PC Watch (2008ねん4がつ23にち). 2016ねん9がつ16にち閲覧えつらん
  6. ^ SLC 4GB内蔵ないぞうのハイブリッドHDDが登場とうじょう、フラッシュをだい容量ようりょう、Seagateせい”. AKIBA PC Hotline! (2010ねん7がつ17にち). 2016ねん9がつ16にち閲覧えつらん
  7. ^ 東芝とうしば型番かたばん末尾まつびに「H」が製品せいひん、ウェスタン・デジタルは「WD Blue SSHD」シリーズ
  8. ^ インテル® Optane™ テクノロジー”. Intel Corporation. 2020ねん3がつ30にち閲覧えつらん
  9. ^ StoreMI Technology for Socket AM4 motherboard”. Advanced Micro Devices, Inc.. 2020ねん3がつ30にち閲覧えつらん
  10. ^ Improve PC Performance|FuzeDrive”. Enmotus. 2020ねん3がつ30にち閲覧えつらん
  11. ^ れいMarvell=HyperDuo、Broadcom MegaRAID=CacheCade Pro、Adaptec=Max IQ。