バナナ・パンケーキ・トレイル

バナナ・パンケーキ・トレイル（英語えいご: The Banana Pancake Trail）とは、バックパッカーやその他たの旅行りょこう者しゃが多数たすう訪おとずれることで成長せいちょうを続つづけるような、東南とうなんアジアを中心ちゅうしんとする特定とくていのエリアのこと。具体ぐたい的てきにどの通とおりがそれにあたるという明確めいかくな定義ていぎがあるわけではなく、むしろ主おもに欧米おうべいの旅行りょこう者しゃが頻繁ひんぱんに訪おとずれることで、それら旅行りょこう者しゃのニーズに応こたえるような形かたちでレストランやホテル、エンターテイメントやアトラクションなどの関連かんれん産業さんぎょうがにわかに創出そうしゅつされるなど、欧米おうべいの旅行りょこう者しゃの嗜好しこうが結果けっか的てきに地元じもとの旅行りょこう関連かんれん産業さんぎょうに多大ただいな影響えいきょうを与あたえているような場所ばしょ（あるいはそのような現象げんしょう）に対たいして用もちいられる語句ごくである。

名前なまえの由来ゆらい

バナナ・パンケーキ

「バナナ・パンケーキ」とは、欧米おうべい人じんが好このんで口くちにする朝食ちょうしょくを象徴しょうちょう的てきにい表いあらわした言葉ことばであり、「バナナ・パンケーキ・トレイル」という言葉ことば自体じたいは、数すう多おおくの欧米おうべい人じんの旅行りょこう者しゃが押おしかけることによって雨後うごの筍たけのこのように増ふえた、（地元じもとでは通常つうじょう提供ていきょうされることのない）バナナ・パンケーキのように欧米おうべい人じん好このみの朝食ちょうしょくを提供ていきょうするような、多おおくのゲストハウスやカフェ、レストランに対たいして半なかば冗談じょうだん交まじりに使つかわれる語句ごくである。

日本語にほんごには少々しょうしょう訳やくしづらい言葉ことばだが、さしずめ「バナナ・パンケーキ道どう」あるいは「バナナ・パンケーキ街がい」くらいの意味合いみあいで、かつ、もともとあった街道かいどうを指さすのではなく、元来がんらい何なにもなかったところ（あるいは地元じもとにとっては何なんの変哲へんてつもない普通ふつうの土地とち）に多数たすうの旅行りょこう者しゃが急きゅうに訪おとずれるようになったために（旅行りょこう者しゃの足あしによって踏ふみ固かためられ）自然しぜん発生はっせい的てきに生しょうじた道みちやエリア、といったようなニュアンスが込こめられている。これに加くわえ、「もともと地元じもとの人ひとは望のぞんでいなかったのだが、結果けっか的てきにそのような形かたちで生しょうじてしまった土地とち」、のようなネガティブなニュアンス（欧米おうべい人じん自身じしんが用もちいるときは皮肉ひにく、あるいは自虐じぎゃく的てきなニュアンス）も多少たしょう含ふくまれているように思おもわれる。

また、バナナ・パンケーキ・トレイルは、欧米おうべい人じんを中心ちゅうしんに高たかい人気にんきを持もつ旅行りょこうガイド、「ロンリープラネット」によって最初さいしょにその土地とちが取上とりあげられ、それが引ひき金がねとなって多数たすうの欧米おうべい人じん旅行りょこう者しゃが訪おとずれることでそれが形成けいせいされるきっかけとなることが多おおいことから、ロンリープラネットの功罪こうざいとして語かたられることが多おおい言葉ことばでもある。

具体ぐたい例れい

冒頭ぼうとうにも述のべたように、「バナナ・パンケーキ・トレイル」という語句ごくに対たいする明確めいかくな定義ていぎがあるわけではなく（例たとえばシルクロードのように、街道かいどうを特定とくていできるわけではない）、むしろそれは、「バナナ・パンケーキを提供ていきょうするような、欧米おうべい人じん好このみの土地とち」といったようなニュアンスを比喩ひゆ的てきに表あらわす言葉ことばである。

タイ、バンコクのカオサン通どおり

バナナ・パンケーキ・トレイルの典型てんけいとして有名ゆうめいなエリアとしては、例たとえばバンコクのカオサン通どおりを挙あげることができる。その他た、ホイアンやハロン湾わん、ハノイ（いずれもベトナム）、バリ島ばりとう、ロンボク島とう（同どうインドネシア）、バラナシ（インド）、シェムリアップ（カンボジア）などもバナナ・パンケーキ・トレイルの例れいとしてよく引ひき合あいに出だされる。

類例るいれい

バナナ・パンケーキ・トレイルのように、やはり多数たすうの欧米おうべい人じん旅行りょこう者しゃが訪おとずれることで自然しぜん発生はっせい的てきに形成けいせいされた「街道かいどう」の例れいとして、中南米ちゅうなんべいの「グリンゴ・トレイル」（Gringo Trail。「グリンゴ」とは、白人はくじんを少々しょうしょう揶揄やゆ的てきな意味いみを込こめて呼よぶときの言葉ことば）や、1960年代ねんだいから70年代ねんだいにアジアに形成けいせいされた、「ヒッピー・トレイル」（Hippie Trail）などを挙あげることができる。

また、そのような言葉ことばとして認識にんしきされているわけではないものの、日本にっぽん国内こくないでも「バナナ・パンケーキ・トレイル」と同様どうように、旅行りょこう関連かんれんの情報じょうほう産業さんぎょうが、その土地とちの本来ほんらいの姿すがたをより観光かんこう客きゃく向むきのものへと変容へんようさせてしまうような現象げんしょうや、そのような結果けっかとして生しょうじたエリアといったとものを取上とりあげることができるであろう。

例たとえば、どこかの鄙ひなびた温泉おんせんが「秘ひ湯ゆ」としてテレビや旅行りょこう雑誌ざっし等とうで広ひろく紹介しょうかいされることで数すう多おおくの観光かんこう客きゃくが訪おとずれるようになり、結果けっか的てきにそこが「秘ひ湯ゆ」からメジャーな観光かんこう地ちへと変容へんようしてしまうようなケースや、あるいはそれまで何なにもなかったところが映画えいがやテレビドラマのロケ地ちとして取上とりあげられたことで多数たすうの観光かんこう客きゃくが訪おとずれるようになり（昨今さっこんでは、日本人にっぽんじん観光かんこう客きゃくばかりではなく、アジア系けいの観光かんこう客きゃくがそのような現象げんしょうを作つくる場合ばあいもある）、それら観光かんこう客きゃくを当あて込こんだ旅行りょこう関連かんれん産業さんぎょうがその土地とちに育そだつなどはそのようなケースの例れいといえる。

なお、上述じょうじゅつのように「バナナ・パンケーキ・トレイル」という言葉ことばには、ネガティブなニュアンスも含ふくまれているのだが、日本にっぽんの場合ばあい、地元じもとの自治体じちたいが「まちおこし」の一環いっかんとして、何なにかの機会きかいを捉とらえ、この言葉ことばがい表いあらわしているような現象げんしょうをあえて生うみ出だそうとする場合ばあいもある。